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猫と睡蓮
しおりを挟むなんか…熱い…
ゴロリとフカフカのベッドの中、寝返りをうつ。
あれ?こんなにフカフカだったか?
横向きに態勢を変えた身体に腕が巻きつく。
その腕の感触に徐々に覚醒する頭。
ここは?
薄らと重い瞼を開けると、日差しが差し込む大きい窓。
ハッと、昨日の出来事が鮮明に脳裏に浮かび、カッと、一瞬で顔が赤らむ。
「起きたい?睡蓮くん…。」
背後の温もりと、回された腕。
甘い囁きが耳を擽る。
「……」
どんな顔をしていいか分からず、寝ているフリを続けることにした睡蓮。
「…クスッ…頸が赤く染まっているよ?耳まで…。可愛いな…起きないと、食べちゃうよ?」
耳に舌を這わせ、柔らかい耳たぶに歯を立てる。
「ひゃあ!!」
擽ったさにビクリと身体が跳ねる。
「おはよ、睡蓮。」
文句を言おうと振り向いた瞬間、とろけんばかりの甘い笑顔に、言葉が出ずに枕に顔を押し付けた。
うう…!!
その顔は反則だ…。
うつ伏せでバタバタと足を動かす睡蓮の様子に、クスクスと楽しそうに笑う海斗は赤い頸にキスをする。
「ねぇ、睡蓮くん。このままずっと、ベッドに居たいけど…ちょっと欲しいものが出来たから出かけようか?」
「欲しいもの?」
チラッと枕から顔を動かして、海斗を見ると、上半身を起こし、こちらを伺っていた。
起こした頭を撫でる海斗の手の気持ち良さに、つい手に擦り寄る。
「…やっぱり似てる…欲しいな。」
ポソリと呟く海斗の言葉に首を傾げると、いきなりベッドから降りた海斗に抱き上げられる。
「わあ!!」
「昨日…いや明け方まで無理させたから僕が運ぶよ。ほら、まずはお風呂だ。」
「じ、自分で歩けるよ!!」
バタバタと足をバタつかせるが、海斗の腕の中からは逃れられず、そのまま風呂場へと直行。
お風呂場でバンビの様に足をかくかくと震えさせた睡蓮の可愛さについ、もう一回戦挑んでしまった海斗は、申し訳無さそうに、ぐったりした睡蓮のお世話に励み、車へと乗せる。
「…どこ行くんだよ…。」
全身の重だるさにため息をつきつつ、ムカつく気持ちを海斗に向け、海斗の足をつねりまくる。
「いたたっ!運転中!危ないからやめてね!!イタッ!睡蓮くん!…後で、叩いていいから!危ないよ!!」
叩いていいという言質を取り、足から手を離す。
「ふぅ…今からペットショップ。」
「ペットショップ!?なんで!?」
ビックリして、怒っていたのを忘れて、海斗の方へ視線を向けると、かっこいい海斗の横顔が目に入り、つい俯いてしまった。
何故か、昨日よりかっこよく見える…くそっ!!
睡蓮の様子をチラッと視線を動かして、伺う。
「どうしたの?辛い?…ごめんね、無理させて。思いついたら動かないといられなくてね。すぐ帰るからね?」
俯いたのを勘違いした海斗の言葉にホッと息を吐く。
「何しに行くの?」
「昨日、睡蓮くんが猫みたいだと思ったら、どうしても睡蓮の様な猫を飼いたくてね。…まだ学生の睡蓮くんをずっと側に置けないでしょ?…まぁ、学校なんて僕がどうとでも出来るけどね…。いや、その方が猫を飼うよりいいか?
……出席した事にして僕の側で…お世話して…いいな…。」
後半、急にブツブツと呟き出した海斗の瞳が薄暗くなり、ゾッと背筋に悪寒が走る。
「ね、猫!!いいな!猫飼うの!?」
慌てて猫の話に戻す。
「…ああ、猫好き?」
フッと瞳に光が戻り、チラッと睡蓮に視線を向ける海斗にコクコクと頷く。
「フフッ。睡蓮も好きなら飼うか。しょうがないね。卒業まで我慢しよう。…僕も今のうちに色々準備するため忙しいから、なかなか睡蓮くんと一緒に入れないからね。猫ならずっと一緒にいれるだろう?」
理由が酷すぎるが、つっこめない。
それで色々我慢してくれるならありがたい為、黙って座っている事にした。
暫くすると、可愛い猫と犬の看板が目に入り、駐車場に停める。
ちょっとワクワク。
ペットショップなんて入ること無いもんな。
たまに、モールとかに入っていると可愛くて見ちゃうけど。
ワクワクしている様子の睡蓮の可愛さに癒されながら、海斗は睡蓮の手を握りしめた。
「さあ、行こうか。可愛い子がいるといいな。」
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