こんなはずじゃなかった

B介

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長き耐えたダムの崩壊4

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「んっ!!」

白旗上げた睡蓮の上に覆い被さり、荒々しく唇を奪う海斗。

熱く滑った舌が睡蓮の口内を暴れ回る。


「~ん!海…アッンン!」

激しいキスに戸惑い、名前を呼ぼうとするが、僅かな隙間も許さないとばかりに齧り付く海斗の様子に、いつもの余裕を感じなかった。

絡めつく舌と甘い唾液に、徐々に睡蓮の強張りも取れ、いつの間にか海斗の首に腕を回して、海斗の舌に自ら絡める。

睡蓮から応えるようなキスに、切なくなる程胸を締め付けられた海斗は、更に密着する為、海斗を抱きしめる。

「ンッ…睡蓮…ハァ…ンンッ!悪い子だ…いつのまにか、キスに…ンン…慣れてるな…」

「アッ…ごめっ…ンンッ!海…斗。」

キスの合間に責める海斗に、睡蓮は何故か申し訳なく感じてしまう。


叔父の自分への執着には気づいていた。
しかし、愛といっても、親愛の上での執着だと感じていた。

だが、学園でのキスで、多分違うのだろうと…だが、考えることから逃げていた。

ずっと思って大切にしてくれていた海斗…。

重い愛だったが、親を失った蓮花と俺を守り助けてくれた海斗はなんだかんだ言って、掛け替えの無い存在だ。


だからこそ、親愛だと思い込みたかったのかもしれない。

長いキスからゆっくりと唇が離された。

まだ、離れがたい気持ちのように銀糸が唇を繋ぐ。


見下ろす海斗の瞳が、まだ見たこと無い輝きを放っていた。

熱く、それでいて鋭く…俺しか見ていない瞳。


「睡蓮…愛している。」


ビクッと自分の身体が反射的に動いた。

その様子に、海斗はクスリと笑った。


「そう、怯えるな。お前の気持ちはわかっている。思考もな。兄貴や義姉さんを失ってから俺に家族を求めていた事も、そして俺の気持ちに気づきながらも、家族としての存在を失いたくなくて、誤魔化し、親愛とした事も…。」


ニヤリと意地悪く笑う海斗にゾッとする。


「海斗…。」

本当にお前怖い。


「クスッ…俺が怖い?」


ドキンッ!!

俺…口に出してないよな?

「睡蓮は顔に出やすいからすぐわかるよ。」

「怖い、怖すぎます!」

ヒッ!と、口元を引き攣らせ、正直に答えた。


「クスッ…あー!本当に可愛い!大好き!愛してる!もう、本当に食べて、俺の一部にしたい!!!」


ガブッと頬を噛まれて、怖さに涙目になる。


「ふふっ!冗談?だよ。」

じゃあ、何故、はてなマークつけるんだ!!

お前ならやりそうで怖い!!!


プルプルと小動物の様に震えると、海斗は、愛でる様に頭を撫でる。


「あーあ!可愛い。睡蓮、大丈夫だ。俺はずっとお前の家族だ。」


「海斗…。」

優しい声と微笑みに、海斗を見つめた。

「ずっと家族だ。安心しろ。お前の叔父だ。そして、恋人であり、俺の生涯のパートナーにしたい。」


生涯のパートナー?

キョトンとする睡蓮の頬を優しく包む。


「お前と籍を入れたいって事だ。」

コソッと耳元で言われたことに、パンクするかの様に、ボンッと顔を赤くした。


「ななななななっ!か、か、海斗!せ、籍って!?」

パニクる俺をよそに、海斗はズボンの後ろポケットに手を差し込んだ。

そして、その手を自らの口元に当てた。


もう片方手で、ハワハワしている睡蓮の左手を取り、また口元に運び、薬指をパクリと咥え込む。


「ひゃっ!」

熱く濡れる感触に戸惑うと、海斗はゆっくりと睡蓮の指を解放した。


解放された指を見て、睡蓮はさらに顔を赤らめ、驚愕し指を凝視した。


パクパクと魚の様に動く口からは言葉が出てこない。


細く白い左薬指には光る、睡蓮の瞳の色に似ている宝石をあしらった指輪が嵌め込まれていた。


「やはりよく似合う…探すの大変だったんだよ。睡蓮のその美しいブルーグレーの様な宝石がなかなか無くてね。どうにか見つけたよ。ブルーグレーの珍しいダイヤだ。」

うっとりと睡蓮の指を見つめ、優しく触れる海斗に、ハッと睡蓮も動き出す。

「ダイヤ!?おまっ!何を!!」


「婚約指輪だよ。」

当然とばかりに応える海斗に、ポカンとしてしまう。

へ?…婚約指輪?

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