こんなはずじゃなかった

弟よりも大事な自分

「ねえ！スイ！！あんた転校して！！」
春休みのゆったりとした時間をぶち壊す大声と共に部屋に入ってきた姉:蓮花レンゲを布団の中から睨む。

「レン、、年頃の弟の部屋にノックもせず入るなよ」
もぞもぞと寝過ぎた頭を起こすよう、布団から起き上がる。
ん？　あいつ、今なんつった？
「て、てんこう？、、、ってか、レン仕事は?」
眠い目を擦りつつ、肩で呼吸をしている仁王立ちの姉から時計に視線を変える。

「しっかり目を覚ませ！！緊急事態で頼み込んで抜けてきたの！！時間無いからちゃんと聞いて！睡蓮君！」

ベッドに上がり俺の足を跨ぎ肩を揺さぶる行為に起き抜けの身体はめまいを起こす。
「やめろ、、き、気持ち悪い、聞くから、、オェ」
揺さぶりをやめて、真剣な目で青くする弟の顔を覗き込み姉は言った。
「睡蓮君、、あなた叔父様の学校に転校して！」


「はい？」

.......こいつ何言ってんの？

姉は面倒臭いことや頼みごとがある時、必ず俺を君付で呼ぶので、呼ばれた瞬間面倒な頼みだと薄々思っていたが、今回のは意味がわからん。

なぜ、意味がわからないかと言うと、俺、崎原睡蓮はこの春高校一年生になる。この春休み後、合格したての高校に通うのだが、通ってもいないうちに転校だと？？しかも叔父の学校に通いたく無いから地元の高校に受験したのに。

「あんたが変態叔父様の学校に行きたくないのもわかるし、私だって可愛い私の弟をあの変態に渡したくない！！だけど、だけど、私にビックチャンスが来たのよ！！だからこのビューティーでエレガントな優しいお姉様の為に犠牲になってーー！私を直木様の側に居させてーー！そしてマルコス様に会わせてー！！」

「おい？結局可愛い弟を犠牲にするのかよ。直木？マルコス？落ち着いて説明しろ」

姉は俺の胸ぐらを掴み必死な形相で叫んだがいまいちよく分からないが、弟より自分が一番らしいのはよくわかった。

姉は胸ぐらから手を離し、順を追って話始めた。

まとめると、姉の職場の崇拝している凄腕直木佳苗さんという美容師さんがアメリカの一流スタイリスト様マルコス・カウディの店で研修を受ける事になり、それに一緒に経験の為行ってみないかと電話があったのが本日先程叔父からあったそうだ。その条件が、俺が叔父の学校への入学、、、。

「、、、あのやろう、、」

俺の両親は3年前交通事故で亡くなった。父の実家はいくつもの会社を経営しており、その一つが学校だ。
母もかなりな大手企業の娘で歳の離れた妹がいるだけだった為、父が長男だが婿養子となり母を支えていた為、父の代わりに叔父:崎原海斗が引き継いだ。まあ、祖父に言わせれば父は優し過ぎた為トップには向かないからよかったらしい。