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51. 救国の英雄。(第3場 プロローグ)

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旧聖ミレス帝国は東の魔族と戦った。
そして、戦いに敗れた。
帝国は失墜し、聖ミレス王国、プロイス帝国、オリテラ帝国に分裂した。
帝国の威信を取り戻そうとしたのはプロイス帝国の皇帝。
皇帝は東征を進める。

討伐軍の指揮官であったアール将軍は半島北東の異教徒ジャジーラ族と和議を独断し、新興国ジャジーラを建国した。
プロイス帝国から離脱であった。
兵も少なく、食糧もない。
それでどう戦えという。

増援、そんな場合でない。
プロイス帝国は兄弟・親族・家臣が造反し、崩壊の危機に直面していた。
皇帝は自ら皇帝の座を降り、独立を認め、自ら王となることで鎮めた。
ジャジーラ国のアール代表はプロイス王より王の称号を貰い、アール王国となる。
魔族討伐の東征の時代が終わった。

プロイス王国騎士団はそれを認めない。
魔族の亜種、亜人どもと共存などあり得ないし、聖ミレス法王に従わないプロイス王を認めない。
騎士団長プーは国王に叛旗を翻し、騎士国家プー王国を宣言して、プロイス帝国に戦争を仕掛けた。
そして、亜人の住む異教徒の国をアール王国に宣戦布告した。
初代アール王は建国直後に首都ジャジーラを奪われ、東へと逃げた。
森の民、妖精族のラーコーツィ。
海の民、海洋族のセーチェー。
二つの部族と契約を交わし、プー王国騎士団を追い返して、東に新たな王都アールを築いた。
騎士国家プー王国は建国以来、500年の敵であった。
聖地ジャジーラ奪還が悲願であった。

100年前、ラーコーツィ領都の賢者ナータンが予言した。

『聖地ジャジーラ奪還を成し遂げる救国の乙女が天より遣わされる』

人は涙した。
彼らの祖先の多くは土地を追われてやってきた。
子から孫へ、その孫へと伝えられた。
神の啓示の日は近い。
ラーコーツィ領都の大司教が言う。

「聖女が降臨しました。聖女が英雄を導いて、この地にやってくるでしょう」

人々は歓喜した。
先祖から悲願、夢、希望。
西の楽園エデンに帰ろう。
聖女が誰を差し、英雄が誰か!
そんなこと、聞かなくても判る。
大司教様に認められた聖女様は一人しかいない。
また、英雄『ゴブリン・スレイヤ―』も一人しかいない。
約束の日が近づいていた。

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