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18.カロリナ、下町を大いに沸かせた。
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カロリナを見送ったフベルトは落ちていた腕を持ってボレックに近づいた。
「おぃ、誰か腕を繋げてやれ!」
そう言うと腕を合わせて回復魔法を唱え始める。
「ボレック、俺からの命令だ。餓鬼共の面倒を貴様が取れ!」
「頭、どうして、ぐわぁ」
腕が繋がるときの痛みが走り、言葉が途切れた。
ボレックだけではなく、周りの者も不満そうだった。
力自慢の会頭が情けなく、媚び諂ったのだ。
「いいか、野郎共! 今、見送ったカロリナ様はラーコーツィ侯爵家のご令嬢だ。侯爵家だ。この国で王の次に偉いと言われるラーコーツィ家だ」
「あんなチビが!」
「どうして侯爵家の餓鬼が!」
「会頭、どういうことです」
「俺も判らん。だが、おまえらも聞いているだろう。誰かれなく噛みつく狂犬の黒虎会のシャイロックが尻尾を振って犬のように従っている」
「聞いたぞ。北で金山の採掘を手伝っているとか」
「それで最近は静かだったのか!」
「1ヶ月半ほど前の事だ。フードを付けた怪しい二人の子供が現れて、シャイロックを死の恐怖に落としたらしい。その子供は青い瞳に、美しい金髪、左目の下に泣きホクロがあり、耳の尖った妖精種の召使いが控えていた」
ざわざわざわと周り若い衆から血の気が下がる音が聞こえたようだ。
あのシャイロックが恐れた存在なのか?
ズル賢く、誰にでも噛みつき、手段を選ばない悪党だ。
信じられない。
蛇竜会も何度も煮え湯を飲まされた。
8党と呼ばれる悪党だが、黒虎会は頭1つ抜け出した存在であった。
少なくと蛇竜会は2つ悪党と連合を組んで睨みを利かせている。
そんなシャイロックが二人の餓鬼にやり込められたと聞いたときは胸がすっといた。
シャイロックも焼きが回ったと、喜んで乾杯した。
まさか、あの餓鬼らが?
「おい、誰か! こいつの腕が切られたのを見た奴はいるか?」
フベルトも見ていないが、その断面の鮮やかさから技量が図れる目を持っていた。
見た奴に説明させようと思ったが、誰も名乗りでない。
「おい、おまえは見たか?」
「俺は蹴られた所しか」
「おまえは目が良かっただろう」
「すいません。見えませんでした」
誰も見ていなかった。
おい、おい、目の前でいながら誰も見てないのか?
皆の背筋に冷たい物が走った。
子分達はやっと正気というか、完璧な実力差を感じた。
「あれは妖精種といって見た目通りの年齢じゃない。俺らより遥かに年上だ。技量も桁違いだ。おまえら、助かってよかったな!」
フベルトは呆れるように呟いた。
「これが貴族って奴か!」
貴族が化け物だと思い知った。
もう二度とお目に掛かりたくない。
フベルトはそう思った。
そう思ったが、カロリナとの出会いで運命を変わったことをまだ知らない。
◇◇◇
「拙いわ。こんな拙い肉は始めてよ」
「お嬢ちゃん、店先で『拙い』、『拙い』と文句をいうのが止めてくれ!」
「拙い物を拙いというのに、何がおかしいの?」
「貴族のお嬢ちゃんの口が合わないかもしれないが、せめて他で言ってくれ!」
店主の言い分ももっともであった。
肉串は銅貨3枚だ。
普通の肉ではその値段で売れない。
でも、そんなことはカロリナには関係ない。
これほど拙い肉を食べたことがなかったので驚いていた。
「カロリナ様、申し訳ございません。こんな店を紹介してしまい」
「ニナが悪い訳ではないわ。この肉が拙いのが悪いのよ」
「お嬢ちゃん、だから店先で騒がないでくれ!」
「店主、この肉を捌いて、もう一度焼き直しなさい」
「ウチはそういうサービルはしてないんだよ」
影はそっと近づいて大銀貨4枚を手渡した。
串100本分を超える対価だ。
「材料費を貰うつもりはない。捌いて焼いて貰えるか!」
「普通はやらないが仕方ない」
角一角兎を手早く解体すると、串に刺してタレを付けて焼き直す。
中々の手際であった。
焼き始めると、おいしそうないい香りが漂ってくる。
カロリナの思った通りだ。
「やはり、おいしくなったわ」
「カロリナ様、凄くおいしいです」
「そうでしょう」
影、エル、アザ、レフ、ジクがおいしそうに食べると、周りが涎を垂らしている。
「隠れていないで出ていらっしゃい。一緒に食べましょう」
風、木葉、花がつむじ風のように姿を現わす。
「お嬢様、感謝します」
「やった、美味しそうだ」
「わぁ~い、お嬢様は話せ~る」
突然に現れた少女らに周りの民衆が唖然としている。
「そこの者ら、皆も立ってないで食べるがよい。皆で食べた方が美味い」
「お嬢様、よろしいのですか?」
「構わん。好きなだけ食べよ」
「お嬢様」
「お嬢様、万歳」
「ありがとうござます」
皆が口々に礼を言うと串屋に群がった。
「これではすぐに無くなってしまうよ」
アザは串が無くなることが心配なようだ。
「アンブラ、残りの兎ときつねも捌かせよ」
「畏まりました」
串屋はまた大銀貨を受け取った。
大儲けだ!
群がった皆も大喜び。
カロリナは冒険ギルドに行くことを忘れて胸を張っていた。
そして、食べそこなった子供達に串をごちそうすることを誓った。
「じゃぁ、みんなで角一角兎を取りに行きましょう」
角一角兎は魔物であり、東の山にはいない。
カロリナの行動範囲が広がりそうであった。
「おぃ、誰か腕を繋げてやれ!」
そう言うと腕を合わせて回復魔法を唱え始める。
「ボレック、俺からの命令だ。餓鬼共の面倒を貴様が取れ!」
「頭、どうして、ぐわぁ」
腕が繋がるときの痛みが走り、言葉が途切れた。
ボレックだけではなく、周りの者も不満そうだった。
力自慢の会頭が情けなく、媚び諂ったのだ。
「いいか、野郎共! 今、見送ったカロリナ様はラーコーツィ侯爵家のご令嬢だ。侯爵家だ。この国で王の次に偉いと言われるラーコーツィ家だ」
「あんなチビが!」
「どうして侯爵家の餓鬼が!」
「会頭、どういうことです」
「俺も判らん。だが、おまえらも聞いているだろう。誰かれなく噛みつく狂犬の黒虎会のシャイロックが尻尾を振って犬のように従っている」
「聞いたぞ。北で金山の採掘を手伝っているとか」
「それで最近は静かだったのか!」
「1ヶ月半ほど前の事だ。フードを付けた怪しい二人の子供が現れて、シャイロックを死の恐怖に落としたらしい。その子供は青い瞳に、美しい金髪、左目の下に泣きホクロがあり、耳の尖った妖精種の召使いが控えていた」
ざわざわざわと周り若い衆から血の気が下がる音が聞こえたようだ。
あのシャイロックが恐れた存在なのか?
ズル賢く、誰にでも噛みつき、手段を選ばない悪党だ。
信じられない。
蛇竜会も何度も煮え湯を飲まされた。
8党と呼ばれる悪党だが、黒虎会は頭1つ抜け出した存在であった。
少なくと蛇竜会は2つ悪党と連合を組んで睨みを利かせている。
そんなシャイロックが二人の餓鬼にやり込められたと聞いたときは胸がすっといた。
シャイロックも焼きが回ったと、喜んで乾杯した。
まさか、あの餓鬼らが?
「おい、誰か! こいつの腕が切られたのを見た奴はいるか?」
フベルトも見ていないが、その断面の鮮やかさから技量が図れる目を持っていた。
見た奴に説明させようと思ったが、誰も名乗りでない。
「おい、おまえは見たか?」
「俺は蹴られた所しか」
「おまえは目が良かっただろう」
「すいません。見えませんでした」
誰も見ていなかった。
おい、おい、目の前でいながら誰も見てないのか?
皆の背筋に冷たい物が走った。
子分達はやっと正気というか、完璧な実力差を感じた。
「あれは妖精種といって見た目通りの年齢じゃない。俺らより遥かに年上だ。技量も桁違いだ。おまえら、助かってよかったな!」
フベルトは呆れるように呟いた。
「これが貴族って奴か!」
貴族が化け物だと思い知った。
もう二度とお目に掛かりたくない。
フベルトはそう思った。
そう思ったが、カロリナとの出会いで運命を変わったことをまだ知らない。
◇◇◇
「拙いわ。こんな拙い肉は始めてよ」
「お嬢ちゃん、店先で『拙い』、『拙い』と文句をいうのが止めてくれ!」
「拙い物を拙いというのに、何がおかしいの?」
「貴族のお嬢ちゃんの口が合わないかもしれないが、せめて他で言ってくれ!」
店主の言い分ももっともであった。
肉串は銅貨3枚だ。
普通の肉ではその値段で売れない。
でも、そんなことはカロリナには関係ない。
これほど拙い肉を食べたことがなかったので驚いていた。
「カロリナ様、申し訳ございません。こんな店を紹介してしまい」
「ニナが悪い訳ではないわ。この肉が拙いのが悪いのよ」
「お嬢ちゃん、だから店先で騒がないでくれ!」
「店主、この肉を捌いて、もう一度焼き直しなさい」
「ウチはそういうサービルはしてないんだよ」
影はそっと近づいて大銀貨4枚を手渡した。
串100本分を超える対価だ。
「材料費を貰うつもりはない。捌いて焼いて貰えるか!」
「普通はやらないが仕方ない」
角一角兎を手早く解体すると、串に刺してタレを付けて焼き直す。
中々の手際であった。
焼き始めると、おいしそうないい香りが漂ってくる。
カロリナの思った通りだ。
「やはり、おいしくなったわ」
「カロリナ様、凄くおいしいです」
「そうでしょう」
影、エル、アザ、レフ、ジクがおいしそうに食べると、周りが涎を垂らしている。
「隠れていないで出ていらっしゃい。一緒に食べましょう」
風、木葉、花がつむじ風のように姿を現わす。
「お嬢様、感謝します」
「やった、美味しそうだ」
「わぁ~い、お嬢様は話せ~る」
突然に現れた少女らに周りの民衆が唖然としている。
「そこの者ら、皆も立ってないで食べるがよい。皆で食べた方が美味い」
「お嬢様、よろしいのですか?」
「構わん。好きなだけ食べよ」
「お嬢様」
「お嬢様、万歳」
「ありがとうござます」
皆が口々に礼を言うと串屋に群がった。
「これではすぐに無くなってしまうよ」
アザは串が無くなることが心配なようだ。
「アンブラ、残りの兎ときつねも捌かせよ」
「畏まりました」
串屋はまた大銀貨を受け取った。
大儲けだ!
群がった皆も大喜び。
カロリナは冒険ギルドに行くことを忘れて胸を張っていた。
そして、食べそこなった子供達に串をごちそうすることを誓った。
「じゃぁ、みんなで角一角兎を取りに行きましょう」
角一角兎は魔物であり、東の山にはいない。
カロリナの行動範囲が広がりそうであった。
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