20 / 31
第一章
第四話 ロルフ -5-
しおりを挟む
ガストールファミリーを抜けてからの俺はすっかり腑抜けになってしまっていた。
お世話になっている人が最後まで俺を気にかけてくれたこと、そして結局は憲兵隊に突き出されかねないような綱渡りなことをしてまでも俺の面倒を見てくれていたということが情けなかったのだ。
そしてギャングを抜けたにも関わらず亡霊は俺に付きまとい、彼らが俺を責め続けていく恐怖から何かをするということもできなかった。
冒険者カードを再発行はしたものの単独で仕事をこなせる自信はなく、仕事をすることはなかった。
だから結局はギャング時代に貯めた金で酒を飲み亡霊を忘れるだけの日々を過ごしていた。
そんなクズだったからだろう。冒険者時代に世話になっていた酒場で転々としながら酒を朝から晩まで飲み続けていた俺は、1つを除いて出入り禁止にされてしまった。
そこは辛気くさい顔をした仏頂面の男が経営する店で、毎日のように喧しい男が仕事を受けている酒場だった。
毎日毎日店が開いてから閉まるまで飲み続けていたある日、ついに俺が帰ることができないまで酒に溺れた日があった。
そんな俺を見かねたマスターは、元々は宿屋であったという酒場の空き室を使わせてくれた。
そこは埃っぽく薄暗い部屋で、マスターも本来ならば人を泊める場所ではないがそこしかなかったと頭を下げてしまうほどの部屋ではあったが、オーラフたちとつるんでいたころの部屋を思い出し、妙に落ち着く場所でもあった。
だからしばらくその部屋を借りたいと頼み込んだ結果、渋々ではあるもののマスターが折れたために貸してもらうことができた。
そしてそこからでて酒場で酒を飲み続けて寝るだけという生活をしていたある日、そこの酒場である男に話しかけられた。
「よう、ガストールのロルフ。ヴィサのクイスマといえばわかるかな」
クイスマ、確かヴィサの中でも実力者だった男だ。一度ヘマをした相手であるから記憶には強く残っていた。
「いや、人違いだろう」
だが、そうだとしても答える義理はなかった。それ故マトモには取り合わない。
「まあいい、情報だけ伝えに来た。ガストールファミリーは壊滅した」
思わずグラスから手を離してしまいそうになるが、慌てて力を入れ直す。エールを叩きつけるように置いてからクイスマの胸ぐらを掴もうとしたが、その手をひねられてしまった。
「落ち着いてよく聞け。ガストールファミリーもだが、ヴィサも壊滅さ。最後に一人で抗戦したガストールが部屋に敷き詰めた爆薬に火を着けて巻き添えにしたからな」
「それを、それを俺に伝えてどうするつもりだ!」
「いや、どうもしないさ。ただ俺は俺の仕事を果たしただけだ、それじゃあな」
クイスマは俺の手を離すなり足払いをした。俺が起き上がったときには既にクイスマの姿は無く、店を飛び出しても人一人いなかった。
クイスマの言ったことを信じるわけではない。だがそれが事実かを確かめるため俺はアジトの方へと足を運んだ。
俺の目に写ったのは粉々になり、所々から煙が立ち上っているアジトであった。
誰に聞くまでもなく、ガストールファミリーは壊滅したということの証左がそこにはあった。
気がつくとその場で俺は蹲り、泣いていた。
お世話になっている人が最後まで俺を気にかけてくれたこと、そして結局は憲兵隊に突き出されかねないような綱渡りなことをしてまでも俺の面倒を見てくれていたということが情けなかったのだ。
そしてギャングを抜けたにも関わらず亡霊は俺に付きまとい、彼らが俺を責め続けていく恐怖から何かをするということもできなかった。
冒険者カードを再発行はしたものの単独で仕事をこなせる自信はなく、仕事をすることはなかった。
だから結局はギャング時代に貯めた金で酒を飲み亡霊を忘れるだけの日々を過ごしていた。
そんなクズだったからだろう。冒険者時代に世話になっていた酒場で転々としながら酒を朝から晩まで飲み続けていた俺は、1つを除いて出入り禁止にされてしまった。
そこは辛気くさい顔をした仏頂面の男が経営する店で、毎日のように喧しい男が仕事を受けている酒場だった。
毎日毎日店が開いてから閉まるまで飲み続けていたある日、ついに俺が帰ることができないまで酒に溺れた日があった。
そんな俺を見かねたマスターは、元々は宿屋であったという酒場の空き室を使わせてくれた。
そこは埃っぽく薄暗い部屋で、マスターも本来ならば人を泊める場所ではないがそこしかなかったと頭を下げてしまうほどの部屋ではあったが、オーラフたちとつるんでいたころの部屋を思い出し、妙に落ち着く場所でもあった。
だからしばらくその部屋を借りたいと頼み込んだ結果、渋々ではあるもののマスターが折れたために貸してもらうことができた。
そしてそこからでて酒場で酒を飲み続けて寝るだけという生活をしていたある日、そこの酒場である男に話しかけられた。
「よう、ガストールのロルフ。ヴィサのクイスマといえばわかるかな」
クイスマ、確かヴィサの中でも実力者だった男だ。一度ヘマをした相手であるから記憶には強く残っていた。
「いや、人違いだろう」
だが、そうだとしても答える義理はなかった。それ故マトモには取り合わない。
「まあいい、情報だけ伝えに来た。ガストールファミリーは壊滅した」
思わずグラスから手を離してしまいそうになるが、慌てて力を入れ直す。エールを叩きつけるように置いてからクイスマの胸ぐらを掴もうとしたが、その手をひねられてしまった。
「落ち着いてよく聞け。ガストールファミリーもだが、ヴィサも壊滅さ。最後に一人で抗戦したガストールが部屋に敷き詰めた爆薬に火を着けて巻き添えにしたからな」
「それを、それを俺に伝えてどうするつもりだ!」
「いや、どうもしないさ。ただ俺は俺の仕事を果たしただけだ、それじゃあな」
クイスマは俺の手を離すなり足払いをした。俺が起き上がったときには既にクイスマの姿は無く、店を飛び出しても人一人いなかった。
クイスマの言ったことを信じるわけではない。だがそれが事実かを確かめるため俺はアジトの方へと足を運んだ。
俺の目に写ったのは粉々になり、所々から煙が立ち上っているアジトであった。
誰に聞くまでもなく、ガストールファミリーは壊滅したということの証左がそこにはあった。
気がつくとその場で俺は蹲り、泣いていた。
0
お気に入りに追加
2
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる