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41. 止まらぬ欲望 *

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 胸の突起を嬲られながら、耳を内側からも外側からも犯されて、聴覚ごと溶かされていく刺激に、綾春は息を上げながらもStay待てを続けていた。
 体が少しでも傾きかけると、蓮哉が片手で持っているベルトの先をビンッと伸ばして叱咤する。それがまた、綾春に姿勢維持を続けさせてもいた。

 まだ姿勢を崩していいとは言われていない。
 耳を舐りながら「まだだ」と囁かれると、ずくずくと疼きっぱなしの体は悲鳴を上げながらも、きちんと男の要求に応えようと必死で跪き続けた。綾春としても、この姿勢は心地良い。
 Kneelで跪かせたSubを躾ける愉悦を、蓮哉に好きなだけ味わってもらいたかった。

「は、っ……はぁ……。蓮哉さん、グレア、もっと……」
「ふっ、はは。綾春、まだまだいけるんだ。すごいなぁ」

 瞬間、男が放つグレアがさらに重くなる。
 びりびりと体が重くなるのと同時に、しっかり手綱を握られている感覚に、はひゅっ……と息が詰まった。

「グレア、気持ちいい?」
「ん……いい……。息、できなく、なりそ……で……いい……」

 蓮哉のグレアは、Sランクとあってか、ずっしりと重い。
 それでもまだ、おそらく本気を出していない。

 どこまでも、果てのないグレアの重さに綾春は酔いしれる。

Stay待ては終わりでいいよ。もう動いていい、視線も外して構わない。気持ちいいのに、よく我慢してお座りできたな。Good boyとってもいい子だ

 蓮哉がそっと離れていき、その言葉を紡がれたと同時に、ぐらりと体が傾いだ。なんとか倒れずにはいたけれど、浴びせられるグレアと弄られてじんじんと疼く乳首からの感覚に、堪らず腰を折って前屈みになってしまった。

「はぁ……」

 自然と熱を帯びる体が、じんわりと汗ばむ。

(やば、い……気持ちいいの、止まんない……)

 いくら蓮哉とのプレイが気持ちよくても、まだ服を脱いで、胸を弄られながら耳朶を食まれた程度なのに。いつもよりは過ぎた行為だけれど、セックスには程遠い。それなのに、普通のセックスのときの何倍も、体が敏感になっていた。

「綾春、そろそろ下も脱ごうか。Prerentいいところ、見せてくれる?」

 嬉しそうに笑む蓮哉の気配がする。
 命じられたコマンドに体を震わせながら顔を上げると、にっこりと人の悪い笑顔を向けられた。——ああ、自分を支配しているあるじの目だ。

「セーフワードは覚えているだろ? どうしても嫌なら言って。そうでないなら……わかるよな?」

 くらくらと目眩がする。
 男の色香と、重く纏わりつく甘いグレアと、強烈なコマンドに。

 はっ、はっ、と息を浅くさせながら、動き出せずにいると、蓮哉はぐいっとベルトを引っ張った。本気の力で引かれてたそれに従うように、綾春は強制的に膝立ちにさせられ、ぐっと蓮哉の顔が近づいた。

「綾春」
「やる……やれる、から……」

 至近距離で、鋭くも甘く名前を呼ばれて、躊躇う心は見事に吹き飛んだ。
 いそいそと立ち上がり、綾春は履いているジョガーパンツに手をかける。

 この間も手首はベルトで固定されているので、服が脱ぎにくい。けれど蓮哉はベルトを外すことも、緩めることもなく、黙って綾春のことを見ていた。
 熱い視線を感じながら、不自由な手でなんとかウエスト部分の布を掴む。中に履いているボクサーパンツを残して、まずはボトムスをずりずりと引き下ろして裾から足を抜いた。靴が邪魔だったので、一緒に脱ぎ捨てる。

 蓮哉の目の前に立ったのは、灰色のボクサーパンツに、シャツと同じアースカラーであわせたアンクル丈の靴下だけを身に着けた綾春だ。手首は蓮哉のベルトで固定され、その先は躾け中の犬のようにリードよろしく主人の手中へと伸びている。

「いいね。可愛い。でも、まだ終わってない」

 男の視線が向いているのは、紛れもなく綾春の股間だ。

「ふ、ぅ……はぁ……ぁ、っ……」
「ほら、下着も。俺はPresentいいところを見せてって言ったんだけど?」
「ぁ……うん、っ……。わかって、る、から……ッ」

 綾春だって、ボトムスを脱いだだけで命令を遂行したとは思っていない。
 でも、下着を脱ぐというのはつまり、性器を晒すということだ。

 わかっている。
 蓮哉のコマンドは〈Presentいいところを見せろ〉——要は、性器を晒せという意味だ。

 その命令にきちんと従いたい。
 けれど、下着を脱いでしまったら……もう半勃ちになっている性器を見られてしまうということだ。

「綾春。どうした? できない?」

 もしかして、勃ってるのが恥ずかしいの? と言われて、ビクンッと体が震えた。

(うぅ……バレてる……)

 もう下着一枚なのだから、そりゃバレるだろう。
 ぎりぎり消え去らずに頭の隅で静観している理性が、綾春を嘲笑っていた。

 下着を脱がずとも、ボクサーパンツの前は明らかにふっくらと膨らんでいる。先走りこそ染みていないが、通常時とは言えない形に変わったそこを蓮哉が見逃しているわけはない。むしろ、先ほどから痛いほどの視線を感じている。

「それなら、カウントしようか。五秒数えてできなければ、お仕置きな」
「え、あ……待っ……」

 そんなの聞いてないと焦る綾春に、意地悪な笑みを浮かべ、蓮哉は口を開いた。

「五……」

 それは温情なのか、戯れなのか。
 蓮哉はゆっくりとカウントダウンを始めた。

「四……、ほらいいのか? あと三秒だ」

 急き立てる声に、頭の中が真っ白になっていく。

「さーん……」

 くすくすと、蓮哉の唇が弧に歪む。

 二の言葉が聞こえるか否かというタイミングで、綾春は目をぎゅっと瞑りながら、ボクサーパンツを勢いよく下ろした。
 カウントダウンが終わってしまう前に、と急いたために、ベルトで纏め上げられた手首が擦れて痛い。頭上で響く二と一の声に息を荒げ、転びそうになりながらも下着を全て脱ぎ去る。そして、なんとかゼロのカウントが終わる前に、体を起こして、男の前にふるりと震える性器を晒した。

 手で隠したい気持ちが抑えきれずに、腹の前あたりでうずうずと手を揺らす。意識をして耐えなければ、性器を隠すように腕を下ろしてしまいそうで、恐ろしかった。

「ははっ、Good boyよくできました。お仕置きが嫌だったんだ?」

 悦びに満ちた声に、全身がびりびりとした。

「ちゃんとPresent見せてくれて偉いな」
「っ……。蓮哉さん、俺の……見られて、嬉しい……?」
「嬉しいよ、すごく」

 目を細めて口角を上げる蓮哉の表情にドクドクと拍動が速まる。
 彼が喜んでくれたのなら、恥を忍んで見せた甲斐がある。

「……いいね。顔も蕩けてるけど、こっちもとろとろだ」
「ぁ……言わない、で……」

 指摘されて下を向けば、勃ち上がった己の性器からはとろとろと先走りの蜜が漏れていた。ついさっきまでは、汚すこともなかったのに……。
 蓮哉に見られて、カウントダウンをされて煽られて、お仕置きと羞恥を天秤にかけられたことで、Subとしての本能が性の快感に繋がって、蜜となって溢れてしまったらしい。

「っふふ……つらそうだ。足が震えてる」
「ぅん……立ってるの、きつい……」
「じゃあ、こっちにおいで。ベッドの上でRoll仰向けに。手で隠すのはもちろん無し」

 羞恥とグレアに煽られて、体の力はぐずぐすと抜けていく。立っている時間は僅かだったのに、足が震えてずっと立っているのがつらい。
 それを素直に訴えると、蓮哉は笑いながらも綾春をベッドへと誘導してくれた。

 ごろんと仰向けに横たわると、蓮哉が綾春の脚を跨ぐ。

「綾春はそのまま気持ちよくなってて」

 そう言うと、蓮哉はおもむろに身を屈め、綾春の性器をぱくりと口に含めた。

「や、うそ……あ、ひぁっ」

 いきなり与えられた感触に腰が大きく跳ねる。
 慌てて蓮哉の頭に手を伸ばして、離してくれと髪の間に指を絡めるが、グレアで溶けた体では思うように力が入らない。そのうちにも、蓮哉は綾春の性器をしゃぶるように舐めていった。

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