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第十六話 「少女」

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「逃げて!」
少女は叫ぶ。
ダメだこのままじゃ、あの男の人が怪我させられる…
少女はそう考えていた。
あの2人を相手にするのは、同じ能力者。それも生徒会の人か風紀員の人。そのどちらかだ。

「逃げて、そこの人」

少女は再び叫ぶ。
目の前の男が、女子を返り討ちにしたとの噂がある有名人だとしても相手が悪い。

「大丈夫。任せろ」

と男は引こうとしない。
意地っ張りでプライドが高いのが、男というものだとでも言うのだろうか。
こういう時男というのは面倒な人種だと、少女は思った。

「いいんじゃない。いうこと聞かないのが、男なのよ。それにもう逃さないから」

と既に逃す気もないようだ。
逃げて欲しかった。それは、男では勝てないからだ。少女を虐めていた女2人は、男では勝てない。
逃げないのは、これは彼が気づいてないからだろう。
なら、教えてあげればいい。
そうすれば、男も逃げるに違いない。

私は息を大きく吸い込んだ。彼女達は…
「そこの人! 彼女達は元生徒会長と副会長をしてた2人なの!! だから、あなたでは勝てない。だから逃げて!!!」

と、少女は叫ぶように伝えた。
これで聞こえなかったとは言わせない。
これで逃げるはずだ…

「そうだったのか…有り難う教えてくれて」

聞こえてた。分かってくれた。
少女は安堵のため息を吐く。
さて、私はこの後タダじゃ済まないだろうな…
まぁ、いつものことだ。何も気にすることはない。

「でも俺は逃げない」

「え…逃げない……え?」

私は戸惑った。彼は何を言ってるの?私は彼にちゃんと伝えたよね。
私は安堵したはずなのに、また焦り出す。

「は、ははははは」

女が笑い出す。私をみて笑い出したのだと、すぐに分かった。

「あぁ、だから男に何言っても無駄だって言ったのにね~。そんなこと知った所でこの男は聞きやしないわよ。もしそれ聞いて逃げるくらいなら、立ち向かってこないよ元から」

まるで男のことを熟知しているかのような発言をする。
そうよね。女を返り討ちにして有名になった男が、そう簡単に逃げるわけないわよね。気づくべきだった。
もう…しらない。好きにして。
少女は諦めた。目の前の男がどうなろうと自分に責任ないわ。
忠告したもの。

でも…
少女は男の顔をみる。なんでそんなに勝つ気満々なのだろう。
どうしてか、男の顔をみてもしかしたら…と期待してしまう自分がいたことに少女は驚いた。
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