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第十五話 「助け」

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「私は大丈夫」
と少女は言った。
どこからどう見ても大丈夫という言葉には、聞こえなかった。
助けを求めている。
不破は、少女の言葉を聞いてもなお、女の腕を話すことをしなかった。

「おい、大丈夫っていてるだろう! そろそろ離せよ」

「できない。お前がまずその子を離さないかぎり、こちらも話すつもりはない」

「あ、そうかよ。なら……痛い目を見てもらうしかないってわけだ」

女は不破が離すつもりがないことを知るや否や、スカートのポケットに忍ばせていたつまようじを取り出した。
つまようじ?
明らかに能力を使うつもりなのが見て取れる。
しかし、どんな能力なのか考えても分からない。
不破は身構える。

「や、やめて」

と少女は叫ぶように言ったが、その意見は聞き入れてもらえなかった。
そして、つまようじは不破に襲い掛かる。

「これでもくらえ!」

不破目掛けて、つまようじを振る動作をした。
その動作に合わせて、不破はバックステップをとり、少し距離を取った。
つまようじ自体の長さなど知れている。少し後ろに飛んだだけで避けられる。
つまようじを持った女の大振りの腕が当たらない程度の距離感を取っている状況。
振り終わったつまようじは、何も発生させずにいた。
そして、「だっさ~」と女たちは笑っていた。
どうやらだまされたらしい。つまようじを取り出されると、てっきり能力に必要なものなのだと錯覚してしまう。
それを逆手に取った、遊びだった。

「さすがに、女子にケンカをふるだけのことはあるね、あんた。つまようじ出されて、普通に警戒するのはさすがだわ」

今までの感情任せのしゃべり方ではなく、落ち着いたしゃべり方になっている。
これが本来のしゃべり方なのだろう。
不破はこの時、感じていた。
気軽に手を出したものの、相手を軽く見てしまったのは失敗だったかもしれないと……

「あんたでしょ? 女子相手に暴れている男子って?」

と女は言った。女は、不破のことを知っているらしい。
不破であることに気が付くのは、女の分析の能力が高いことを意味していた。
決して、バカなどと呼べぬ相手であることが不破には予想外であった。
しかも、こちらは相手の能力が何でるのかすら、分かっていない状況。
なかなか手ごわい相手であることに間違いはなかった。

「どうしたの? さっきまでの威勢のよさはどこに行ったわけ?」

何も返答しない不破に対して、おちょくるように言葉を吐き出す。
あおり属性と頭脳の良さが相まって、めんどくさい相手になっていた。

「無視ってわけね……じゃあ、そろそろ能力使ってもいいかしら?」

不破は無言で身構えた。

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