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第22話 任務始動 新たなる刺客
しおりを挟むコンコンッ!
ドアをノックする。すると中からエリザベス様の声が帰ってくる。
「…入って」
言われるがまま女は部屋の中に入る。
「それで私に命令とは何ですか?」
入った部屋の中は真っ暗だった。唯一明かりがついているのはエリザベスの周りだけだった。
「ふふ、あなたには…殺して欲しいの」
「はい? 誰をですか」
女は聞き返す。
すると、エリザベスはまた不気味に笑みを浮かべながら、こう答えた。
「決まってますでしょ! あの忌まわしい国の勇者ですわ」
忌まわしい国と言うのは、隣国のキキタコのことを言っているのだろう。その勇者と言うことは、つい先日あった勇者同士の親善試合で、我が国の勇者に勝利したあの勇者の事だろう…
「分かりました」
女は二つ返事で答えた。
それは彼女には断る理由がなかったからだ。
彼女が最も得意とするのが、暗殺などの隠密行動だったからである。
だが、相手は勇者…一筋縄では行かないかもしれない。
女は三度尋ねる。
「殺す方法は?」
「任せるわ。殺せるなら、どんな手段でもいいわよ」
「分かりました」
女はそれだけ聞けたら十分だった…
「勇者様。お待ちしておりました」
今日の特訓を終え、城に戻ってきた勇者を姫様が待っていた。
「どうしたんです姫様?」
周りを見渡すが、姫様以外の姿はなかった。いつもなら女騎士が傍にいるのだが、まだ学校の方に行っていて帰ってきてないらしい。
「実はですね、勇者様に1つ頼みたいことがありまして…」
その顔はいつも通りニコニコしているように見える。
でも、勇者に頼むということは、結構重要なことなのかもしれない、と思っていた。
「分かりました。で、どう言った頼み事なんですか?」
多分だが、拒否権はないだろうけど、内容を聞くことにした。
「ここでは、何ですので、私の部屋でお話します」
姫様と勇者は部屋に向かうことになった。
部屋に着くなり、いつものように定位置に姫様は座った。勇者もその近くのソファーに腰をかける。
「で、話の内容について聞いても?」
早速本題に入る。
「では、まず『勇者殺し』ってご存じですよね」
「はい、知ってます」
最近ヴェロニカに教えて貰ったばかりだった。あの後もある程度の詳しい話は聞いていた。
まず、勇者殺しの特徴として聞いたのが、服装が黒いマントに黒い被り物をしていて顔が分からないと言うこと。
次に、いつも行動を起こすのは夜。闇に紛れて行動をしているため、目撃者などが極端に少ないと言うこと。
そして…殺しをするのは、勇者が相手の時のみ……
「それなら、話が早いです。勇者様にはその『勇者殺し』を倒して欲しいのです!」
「え、『勇者殺し』をですか…?」
「はい、そうです」
「…すいません、無理です」
勇者は断った。どうしてか? それは…勝てないからだ。
だって、今までの勇者全員殺してるヤバいやつだぜ? 勝てるわけないじゃん。言うならば、『勇者キラー』と呼ぶレベルだ…
だからここは、姫様にも分かってもらって…
「そうですか……無理ですか…」
「はい…」
悪いと思いつつも、この件は手に余る。
「では、勇者様は死ぬだけですね」
「はい? 死ぬ? どゆことですか??」
勇者は戸惑っていた。
突然姫様に死ぬなんて言われたら、戸惑うよ、さすがに。
そんな勇者を尻目に姫様は笑っていた。
「よく考えてください。勇者殺しを倒せないなら、殺されるだけなのです。勇者様はいずれ、嫌でも勇者殺しに出会うことになりますから」
「それはどうし…」
ここまで言って理解した。
勇者殺しに狙われているのは自分だと言うことに…
勇者は気づいた、姫様の命令は元から断れるようなものでは無かったことに…
実行する以外ないことに…
勇者少し考えてから、重くなった口を開いた。
「分かりました。受けます…」
「良かったです。ふふっ」
相変わらず笑顔な姫様。まるでその手の平の上で転がされているかのような感覚だった…
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