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第11話 勇者VS勇者 前編
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次の日…
僕たちは他国に来ていた。
まぁ、モーガン国なのだが…
なぜ、僕たちがモーガン国に来ているのかと言うと、これから勇者同士で戦わされるらしい。その会場となるコロシアムの控え室に招かれていた。
「楽しみだね~」
ガリューゲルさんはニコニコしながら僕たちに向かって言う。特に、姫様に向かって言っているように見える。
「そうですね」
姫様もニッコリしながら言っている。
コイツらはお気楽でいいな。これから戦うのは僕だというのに。
「はぁ、棄権しようかな…」
「ダメに決まっているだろう!」
「でもよ、あっちの勇者はあの扉を吹き飛ばすだけの力持ってるんだぜ。勝てるわけないだろ」
「それでも行け」
「はぁー」
気が重い。
ここまで来てしまったからもう逃げようが無いのだが、逃げたい。
「行きますよ」
「はい…」
僕は姫様に連れて試合会場まで連れていかれる。
「それでは、やって参りました!」
テンションの高い声が、マイク越しにコロシアム全体に響き渡る。
「わが国モーガン国の勇者と隣国のキキタコ国の勇者との夢の対決ですぅ!!」
わぁー!
コロシアム内はすごい盛り上がっていた。それよりも、やっぱり国名がダサい。そのせいで、僕までダサく感じるのは気のせいだろうか…
コロシアム内にはほとんどキキタコから来た人間はいない。ほぼ完全アウェイ状態となっていた。まぁ、期待されてないだけ、気が楽ではある。
先ほど姫様に聞いたが、ここずっと勇者が召喚される度に対決していたらしい。そして、わが国の成績は…全敗らしい。
八百長かと疑ったが、違うらしい。それはそれで悲しいが。
試合前のアナウンスが終わり、そろそろ試合が始まろうとしていた。
「そろそろですよ、準備はいかがですか?」
「バッチリだ!」
「剣はどうした勇者?」
「あ! 忘れてた!」
「「……」」
姫様と女騎士が不安そうな顔で僕のことを見ていた。実際、空気を変えてやろうと思ってのボケだったんだが、逆に空気が悪くなってしまった。
しかし、そんな中ガリューゲルさんだけが、少し違っていた。僕のことを心配しているなどの感じには取れない目をしながら見ていた。
「ガリューゲルさんちょっといいですか?」
僕はそんなガリューゲルさんに話しかけた。突然名前を呼ばれたことで、ビックリするが、すぐにいつも通りの顔に戻る。
「なんだい?」
「ちょっと聞きたいことがあって…少し向こうで…」
と姫様達がいる方向とは逆をさし、人気の少ない方に誘導した。
「何が聞きたいんだい?」
「対戦相手の事です」
「対戦相手? ゴメンだけど、どんな能力なのかは分からないよ?」
「構いません。分かるに越したことはないですけど、僕が知りたいのはヤツの…」
それから少しすると僕とガリューゲルさんは姫様の元に戻った。当然必要な事はガリューゲルさんから情報を得ることに成功した。これで、勝てる可能性が僅かだが出てきた。
「もう宜しいのですか? でしたら、もう始まりますので、下へ」
「分かりました」
「……」
「どうされました?」
先ほどから不安な表情で僕のことを見ている姫様に問いかける。
「いえ、どうかご無事で…」
「努力しますよ」
僕は姫様に手を振りながら下へと降りた。
下へ降りると、武器を持った兵が立っていた。
「貴様が勇者か?」
「そうだ」
「ここで待て」
言われるがまま待つ。
扉の先にはこれから僕が戦う場所がある。そして、アナウンスが僕を試合場に招いた。
「行け」
兵士が僕の背中を押した。僕はその勢いに任せて、舞台に登場した。
その瞬間、コロシアムはシーンとなる。先程までの騒がしさが嘘のようだ。
それでも僕は堂々とコロシアムの中央に向かって進む。そこには既に敵国の勇者が立っていた。
僕はその勇者に向かって手を上げた。
「悪い、遅くなって」
まるでデートに遅れた彼氏の様に話しかけた。しかし、勇者は嫌な顔一つしない。それどころか、僕に向かって握手を求めてきた。
「今日はよろしく!」
「ああ…」
思った以上に紳士だった。昨日の怒りも姫様に侮辱した僕に向かってのもので普通ならこんなに誠実な少年のようだ。ホントに勇者らしい勇者だ。
僕は握手を交わす。
「では、試合開始をこの方にして頂きましょう!」
マイクを持った実況者が、手を高く斜め上に向けた。その方向には、頑丈にガラス張りとなった個室があった。そこにいた人物は言うまでもなく…
「それじゃあ始めなさい」
とそう言ったのはエリザベス姫だった。
そして、その開始の合図に向こうの勇者は「了解!」と返事をした。
こうして、勇者と勇者の力比べは始まったのだった。
僕たちは他国に来ていた。
まぁ、モーガン国なのだが…
なぜ、僕たちがモーガン国に来ているのかと言うと、これから勇者同士で戦わされるらしい。その会場となるコロシアムの控え室に招かれていた。
「楽しみだね~」
ガリューゲルさんはニコニコしながら僕たちに向かって言う。特に、姫様に向かって言っているように見える。
「そうですね」
姫様もニッコリしながら言っている。
コイツらはお気楽でいいな。これから戦うのは僕だというのに。
「はぁ、棄権しようかな…」
「ダメに決まっているだろう!」
「でもよ、あっちの勇者はあの扉を吹き飛ばすだけの力持ってるんだぜ。勝てるわけないだろ」
「それでも行け」
「はぁー」
気が重い。
ここまで来てしまったからもう逃げようが無いのだが、逃げたい。
「行きますよ」
「はい…」
僕は姫様に連れて試合会場まで連れていかれる。
「それでは、やって参りました!」
テンションの高い声が、マイク越しにコロシアム全体に響き渡る。
「わが国モーガン国の勇者と隣国のキキタコ国の勇者との夢の対決ですぅ!!」
わぁー!
コロシアム内はすごい盛り上がっていた。それよりも、やっぱり国名がダサい。そのせいで、僕までダサく感じるのは気のせいだろうか…
コロシアム内にはほとんどキキタコから来た人間はいない。ほぼ完全アウェイ状態となっていた。まぁ、期待されてないだけ、気が楽ではある。
先ほど姫様に聞いたが、ここずっと勇者が召喚される度に対決していたらしい。そして、わが国の成績は…全敗らしい。
八百長かと疑ったが、違うらしい。それはそれで悲しいが。
試合前のアナウンスが終わり、そろそろ試合が始まろうとしていた。
「そろそろですよ、準備はいかがですか?」
「バッチリだ!」
「剣はどうした勇者?」
「あ! 忘れてた!」
「「……」」
姫様と女騎士が不安そうな顔で僕のことを見ていた。実際、空気を変えてやろうと思ってのボケだったんだが、逆に空気が悪くなってしまった。
しかし、そんな中ガリューゲルさんだけが、少し違っていた。僕のことを心配しているなどの感じには取れない目をしながら見ていた。
「ガリューゲルさんちょっといいですか?」
僕はそんなガリューゲルさんに話しかけた。突然名前を呼ばれたことで、ビックリするが、すぐにいつも通りの顔に戻る。
「なんだい?」
「ちょっと聞きたいことがあって…少し向こうで…」
と姫様達がいる方向とは逆をさし、人気の少ない方に誘導した。
「何が聞きたいんだい?」
「対戦相手の事です」
「対戦相手? ゴメンだけど、どんな能力なのかは分からないよ?」
「構いません。分かるに越したことはないですけど、僕が知りたいのはヤツの…」
それから少しすると僕とガリューゲルさんは姫様の元に戻った。当然必要な事はガリューゲルさんから情報を得ることに成功した。これで、勝てる可能性が僅かだが出てきた。
「もう宜しいのですか? でしたら、もう始まりますので、下へ」
「分かりました」
「……」
「どうされました?」
先ほどから不安な表情で僕のことを見ている姫様に問いかける。
「いえ、どうかご無事で…」
「努力しますよ」
僕は姫様に手を振りながら下へと降りた。
下へ降りると、武器を持った兵が立っていた。
「貴様が勇者か?」
「そうだ」
「ここで待て」
言われるがまま待つ。
扉の先にはこれから僕が戦う場所がある。そして、アナウンスが僕を試合場に招いた。
「行け」
兵士が僕の背中を押した。僕はその勢いに任せて、舞台に登場した。
その瞬間、コロシアムはシーンとなる。先程までの騒がしさが嘘のようだ。
それでも僕は堂々とコロシアムの中央に向かって進む。そこには既に敵国の勇者が立っていた。
僕はその勇者に向かって手を上げた。
「悪い、遅くなって」
まるでデートに遅れた彼氏の様に話しかけた。しかし、勇者は嫌な顔一つしない。それどころか、僕に向かって握手を求めてきた。
「今日はよろしく!」
「ああ…」
思った以上に紳士だった。昨日の怒りも姫様に侮辱した僕に向かってのもので普通ならこんなに誠実な少年のようだ。ホントに勇者らしい勇者だ。
僕は握手を交わす。
「では、試合開始をこの方にして頂きましょう!」
マイクを持った実況者が、手を高く斜め上に向けた。その方向には、頑丈にガラス張りとなった個室があった。そこにいた人物は言うまでもなく…
「それじゃあ始めなさい」
とそう言ったのはエリザベス姫だった。
そして、その開始の合図に向こうの勇者は「了解!」と返事をした。
こうして、勇者と勇者の力比べは始まったのだった。
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