上 下
7 / 107

7話

しおりを挟む
「すまない、結城くん」

「いや、気にしないで下さい…てか、重い」

「それもすまない」

今僕はイケメンを支えながら、洞窟の出口を目指している。

イケメンの装備が重くて、運ぶのに大変な思いをしている。

「君は本当に平気の様だね」

「どこを見て言ってるんですか? もうキツイですよ」

汗を流しながらイケメンを運んでいる状況。どこからどうみても大丈夫ではない。今すぐにでもこの男を捨てて自由になりたい。

「……その様だね。すまない、迷惑をかけて」

「そう思うのなら、今度からは倒れる前に申告して下さい」

僕は必死だった。
なんたって、僕は非戦闘員。
力仕事は苦手だからだ。

「さぁ、見えてきましたよ」

「あぁ、そのようだね」

僕は目の前の光に目を眩ませながら、洞窟を後にした。

ーーーー

「帰ってきたぞ!」

ある男が声を上げた。
その周りの者たちも声を上げて、歓迎している。
どうやら戻ってきたらしい。
何一つ心配などしていなかったが…

「リーダーさんよ、お呼びですよ」

僕は駆け寄ってきた男に預けた。
やっと重荷が取れた…

「リーダー!」
「すまない、俺は何もできなかった。最後までたどり着き原因を究明することすら叶わなかった。すまないみんな」

謝るイケメンの元にみんなが集まってくる。

「そんなこと気にしないでいいよ。お前が無事に戻ってきてくれたことだけで俺たちは満足なんだ」

と男は言った。
周りの者たちも「そうよ」「そうだ、気にするな」と優しい言葉をかけている。リーダーの男は涙を流しながら、輪の中にいた。

その様子を遠くから見ても分かる通り、仲間たちに囲まれた良きリーダーであること。慕われている事などが良く伺える。

僕には関係ある話だが、どこか他人事だった。

「俺たちはまだレベルが足りなかった。もっと強くなってから出直そう。さぁ、みんな帰ろう」

「おー!!」

なんということだろう。
統率が取れている。僕はもう蚊帳の外状態になっていた。

ーーーー

「結城、ありがとう」
見たことあるが知らない男に話しかけられる。元クラスメイトの誰かだ。

「ん? なんのこと?」

「リーダーを連れて戻ってきてくれたことだよ。俺たちは洞窟の奥まで行けそうになかった。もし、奥で倒れていても助けることができなかった。だから感謝している」

「あぁ、うん。どうも」

頭を下げて返答した。

男はそれだけ言うと、列に戻って行った。

感謝されるようなことをした覚えはないんだけどな。

最後列で僕は前方で和気あいあいとしたみんなを見ていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

魔力無し判定の令嬢は冒険者を目指します!

まるねこ
ファンタジー
エフセエ侯爵家に産まれたばかりのマーロアは神殿で魔力判定を行い、魔力なしと判定されてしまう。 貴族は皆魔力を持っているのが当たり前のこの世の中。 侯爵は貴族社会では生き難いと考え、領地の端にある小さな村へマーロアを送る事を決めたのだった。 乳母兼侍女のビオレタの息子ファルスと共に成長していく。 ある日、ファルスと私は村の畑で魔獣に遭遇する。 魔獣と目が合い、攻撃されかけた時、マーロアの身体から光の玉が飛び出した。 もしかして……。 魔獣を倒すので人によってはグロと感じるかもしれません。 Copyright©︎2022-まるねこ

過労死した聖女は死に戻った先で安らぎを手に入れる~私を利用し続けた王家や婚約者はもう不要です~

砂礫レキ
恋愛
男爵令嬢エリスティア・フィリル。 女神ラーヴァの愛し子である彼女は癒しの力が使えた。 それを聞きつけた王室により十歳の頃に四歳上の第二王子アキムと婚約させられる。 しかしそれを理由に王宮暮らしになったが最後、エリスティアは王族の体の不調をひたすら治療させられる生活になった。 王子との婚約は囮で実際はエリスティアを王宮に隔離し飼い殺しの治癒奴隷にする為連れてきたのだ。 アキムとは婚約者らしいことは全くせず朝から晩まで一人で治癒力を使い続けるエリスティア。 ある日王妃セイノの腰痛の治療後、とうとう過労死してしまう。 すると女神ラーヴァがあらわれ謝罪された上でエリスティアは十年前の世界に戻されることになった。 今度は絶対アキムと婚約せず王家の奴隷にはならないと固く誓いながら。

【完結】地味令嬢の願いが叶う刻

白雨 音
恋愛
男爵令嬢クラリスは、地味で平凡な娘だ。 幼い頃より、両親から溺愛される、美しい姉ディオールと後継ぎである弟フィリップを羨ましく思っていた。 家族から愛されたい、認められたいと努めるも、都合良く使われるだけで、 いつしか、「家を出て愛する人と家庭を持ちたい」と願うようになっていた。 ある夜、伯爵家のパーティに出席する事が認められたが、意地悪な姉に笑い者にされてしまう。 庭でパーティが終わるのを待つクラリスに、思い掛けず、素敵な出会いがあった。 レオナール=ヴェルレーヌ伯爵子息___一目で恋に落ちるも、分不相応と諦めるしか無かった。 だが、一月後、驚く事に彼の方からクラリスに縁談の打診が来た。 喜ぶクラリスだったが、姉は「自分の方が相応しい」と言い出して…  異世界恋愛:短編(全16話) ※魔法要素無し。  《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆ 

狂乱令嬢ニア・リストン

南野海風
ファンタジー
 この時代において、最も新しき英雄の名は、これから記されることになります。  素手で魔獣を屠る、血雨を歩く者。  傷つき倒れる者を助ける、白き癒し手。  堅牢なる鎧さえ意味をなさない、騎士殺し。  ただただ死闘を求める、自殺願望者。  ほかにも暴走お嬢様、爆走天使、暴虐の姫君、破滅の舞踏、などなど。  様々な異名で呼ばれた彼女ですが、やはり一番有名なのは「狂乱令嬢」の名。    彼女の名は、これより歴史書の一ページに刻まれることになります。  英雄の名に相応しい狂乱令嬢の、華麗なる戦いの記録。  そして、望まないまでも拒む理由もなく歩を進めた、偶像の軌跡。  狂乱令嬢ニア・リストン。  彼女の物語は、とある夜から始まりました。

【完結】冤罪で殺された王太子の婚約者は100年後に生まれ変わりました。今世では愛し愛される相手を見つけたいと思っています。

金峯蓮華
恋愛
どうやら私は階段から突き落とされ落下する間に前世の記憶を思い出していたらしい。 前世は冤罪を着せられて殺害されたのだった。それにしても酷い。その後あの国はどうなったのだろう? 私の願い通り滅びたのだろうか? 前世で冤罪を着せられ殺害された王太子の婚約者だった令嬢が生まれ変わった今世で愛し愛される相手とめぐりあい幸せになるお話。 緩い世界観の緩いお話しです。 ご都合主義です。 *タイトル変更しました。すみません。

異世界で俺だけレベルが上がらない! だけど努力したら最強になれるらしいです?

澤檸檬
ファンタジー
旧題 努力=結果  異世界の神の勝手によって異世界に転移することになった倉野。  実際に異世界で確認した常識と自分に与えられた能力が全く違うことに少しずつ気付く。  異世界の住人はレベルアップによってステータスが上がっていくようだったが、倉野にだけレベルが存在せず、行動を繰り返すことによってスキルを習得するシステムが採用されていた。  そのスキル習得システムと異世界の常識の差が倉野を最強の人間へと押し上げていく。  だが、倉野はその能力を活かして英雄になろうだとか、悪用しようだとかそういった上昇志向を見せるわけでもなく、第二の人生と割り切ってファンタジーな世界を旅することにした。  最強を隠して異世界を巡る倉野。各地での出会いと別れ、冒険と楽しみ。元居た世界にはない刺激が倉野の第二の人生を彩っていく。

元公爵夫人の、死ぬまで続けたいお仕事について。

羊蹄
恋愛
ポーリーン、28歳。元公爵夫人です。 旦那の浮気で離婚したのに、なぜついてくるんですか。 信じません! 戻りません! では、こうしましょう。 公爵様にぴったりの奥様を、わたくしがコーディネートしてさしあげます! 2021.11.21 完結 ……… 『地味子と結婚なんて可哀想なので、婚約者の浮気相手に尽くします!』サブストーリーです。

乙女ゲームのヒロインに転生、科学を駆使して剣と魔法の世界を生きる

アミ100
ファンタジー
国立大学に通っていた理系大学生カナは、あることがきっかけで乙女ゲーム「Amour Tale(アムール テイル)」のヒロインとして転生する。 自由に生きようと決めたカナは、あえて本来のゲームのシナリオを無視し、実践的な魔法や剣が学べる魔術学院への入学を決意する。 魔術学院には、騎士団長の息子ジーク、王国の第2王子ラクア、クラスメイト唯一の女子マリー、剣術道場の息子アランなど、個性的な面々が在籍しており、楽しい日々を送っていた。 しかしそんな中、カナや友人たちの周りで不穏な事件が起こるようになる。 前世から持つ頭脳や科学の知識と、今世で手にした水属性・極闇傾向の魔法適性を駆使し、自身の過去と向き合うため、そして友人の未来を守るために奮闘する。 「今世では、自分の思うように生きよう。前世の二の舞にならないように。」

処理中です...