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190 一対一
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檻の中に横たわっているアドルとミライを見て、わたしは息が止まりそうなほどの焦燥感を覚えていた。
もう死んでいるのではないかと気が気ではなかった。
「ユリ、落ち着くのじゃ。二人共、息はあるのじゃ」
「ディーネの言う通りよ。命に別状はなさそう。今のところはね」
「ホント!?良かった・・・良くないけど、良かった・・・」
ディーネとアフロの見立てでは気絶、あるいは昏睡しているだけとのことだが、火の精霊に囚われて命を握られているという事態に変わりはない。
安心と同時に、今度は怒りが沸々と湧き上がる。
「火の精霊!・・・許せない・・・」
「この二人を見つける機会を得たのは、お前等が我を階下に突き落としたからだ」
・・・火の精霊が戻ってくるのが少し遅かったのはそのためか。
こっちもこっちで色々あったし、気づけなかったのが悔しいわ。
「階下の窓から見えたのでな。外の人間共と一緒に吹き飛ばしてやろうかと思ったが、お前に縁のある人間には利用価値があると思って、魔力で捕縛して連れてきたのだ」
「この卑怯者!」
「勘違いするな。人質には違いないが。この人間共の命を盾にして、お前に無抵抗で死ねとは言わん。それにこの人間共はいわば我にとっても恩人だ」
「恩人?一体どう言う・・・」
「この者達は我がバルゴの体を乗っ取る契機を作ったのではないか。お陰で容易くこの体を得ることができた」
火の精霊は左手の拳を握ったり開いたりしながらそう答えた。
確かに、人体発火魔術を作用させてバルゴを倒したのはアドル達だ。
更に言えば、バルゴの個体番号というべき数字をその場で丸暗記できたミライこそが真のMVPと言えるかもしれない。
「・・・なら、人質はなんのために取ったのよ」
「提案のためだ」
「提案?」
「娘。一対一で決着をつけようじゃないか。我かお前、どちらかが倒されるまでこの場で戦うのだ。逃げることは許さん。逃げたらこの人間共を殺す」
「わたしに選択肢が無い時点で、全然提案とは言えないじゃない・・・」
一対一、つまりこちらはディーネやアフロ達と共同戦線を張ることができないという事らしい。
戦隊モノばりに、わたしと精霊達で同時に攻撃するような戦い方はダメということか。
「・・・それで、わたしが勝てば二人を解放して、この星の人達の皆殺しも諦めるということでいいのね」
「うむ。我が倒されれば、我は再び忌まわしい呪縛に囚われるだろう。そうなれば我は人間共に手出しができぬ。無論、我が勝てばその人間共々この星の人間を皆殺しにする・・・ああ、もうひとつあったな・・・」
「もうひとつって何・・・えっ!?」
その時、火の精霊の姿が忽然と消えた。
直後、悲鳴があがった。
「きゃあああああっ!!」
「サラちゃん!」
檻の直上で、サラの体が真っ二つに斬られていた。
檻の上に着地した火の精霊の手には歴代の王が持つ、抜身の剣が握られていた。
「サラちゃん!サラちゃん!!!」
「ユリ、ごめん、二人を助けようとして・・・失敗しちゃっ・・・」
サラは最後まで言葉を言い切ることができなかった。
カピバラの姿を模したサラの依代はその輪郭を歪め、パアッと中空で飛散するように消えていった。
「ふむ。どうやら風の精霊が独断で動いたようだが、もしも人質を勝手に救出するような素振りを見せればすぐに人質を殺す。良いな」
「サラちゃん・・・」
サラは火の精霊の隙を突いてアドル達を救出しようとしたらしい。
しかし火の精霊はそれを見逃さなかった。
それにしても、話の途中だったので油断していたとはいえ、完全に見失うほどに、尋常ではないスピードで火の精霊は跳躍してサラを斬ったのだ。
・・・わたし一人でこんな化け物に勝てるのだろうか。
それにサラちゃんが依代を失うほどのダメージを受けるなんて・・・
「ディーネちゃん、アフロちゃん、サラちゃんが・・・!」
「ユリよ。落ち着くのじゃ。精霊が本当の意味で死ぬことは無いのじゃ」
「でも、でも・・・」
「火の精霊!その提案、承知したわ!」
「アフロちゃん!?」
アフロが勝手に承諾の返事をしてしまった。
もっとも、異論を挟む余地も無いので回答としてはそれしか無いのだが。
わたしが取り付く島もないままに、アフロは続けて火の精霊に言った。
「戦う前に少しユリと話がしたいのだけど、いいかしら?」
「・・・手短に済ませよ」
「ええ。すぐに済むわ」
◇
サラが消滅してしまったショックで意気消沈したわたしは、ディーネとサラのほうにフラフラと歩いていった。
アフロがせっかく確保してくれた時間だが、アドルとミライが捕まり、さらにサラが消えてしまったこの状況にわたしの頭の中は真っ白で、何の話もできそうには思えなかった。
そんなわたしの元へ、おもむろにアフロも近づいてきた。
アフロはわたしの頭をガシッと掴むと、自分の顔をわたしの顔のすぐ近くまで寄せた。
そしてアフロは実の言葉ではなく、魔力の核を通じて念話で話しかけてきた。
(・・・ユリ、落ち着きなさい)
(でもアフロちゃん。サラちゃんが・・・わたしはどうすれば・・・あんなのに勝てる気がしないよ・・・)
(落ち着きなさい)
(痛っ!)
アフロの頭突きがわたしのおでこにヒットした。
わたし、さっきから油断しすぎだ。
(ユリ・・・いえ、サラ。聞こえてるんでしょ?)
(・・・・・・・・・・・・はあい、ユリ)
サラの声がはっきり聞こえてきた。
そして今はサラの魔力を体内からはっきりと感じ取る事ができている。
(サラちゃん!?あれ、わたしの中!?)
(サラは依代を捨ててアナタの中の風の核に避難したの。だからサラは無事よ。バツが悪くて核の中に隠れてたのよ)
(そうなの!?・・・もう、サラちゃんてば・・・でも無事で良かったよ)
(あー、まあ無事といえるかどうか分からないけどね。あーあ。あの依代、気に入ってたのになあ・・・あ、いやいや、そうじゃなくて、その・・・。ユリ、心配かけてごめんなさい)
わたしはサラの謝罪なんかどうでもよかった。
わたしの心はサラの無事を確認することができた安心感で一杯だった。
(サラちゃん、依代はまた後で作ってあげるからね。でもせっかくだから今度は風の精霊らしいものにしない?)
(そうね・・・検討してみるわ)
いつになくしおらしい素直なサラに、わたしはクスッと笑ってしまった。
(教えてくれてありがとうアフロちゃん。少し元気出たわ)
(いいのよ。元はと言えばサラが悪いのよ)
(あっひどっ・・・いえ、なんでもないです)
(ほんとよ。サラが入り込んできたから、なんとなくここが手狭になった感じがするのだわ)
(ミっちゃんてば・・・サラちゃんと仲良くしててね)
(そうよミネルヴァ。これからもっと手狭になるんだから)
(えっ?)
(えっ?)
アフロの言葉にわたしとミネルヴァが同時に反応した。
そしてアフロがディーネに目配せをする。
(ディーネも、いいわね)
(うむ。承知したのじゃ)
(えーと、何を承知したの?)
(決まってるじゃない。依代を捨てるのよ)
(あー・・・そういうことね)
わたしも理解した。
わたしはタイマンで戦わなければならないのだ。
ディーネもアフロも、参戦できないのであれば依代を捨ててわたしの中で一緒に戦う、そう言っているのだ。
(わたしはそのほうが心強いわ。せっかくの依代だけど、またちゃんと作ってあげるからね)
(あんたが負けなければね)
(ミっちゃん、身も蓋もないことを・・・)
(いい、ユリ。ワタシとディーネも依代を捨ててユリの中の核に入ることで、多少はユリの魔力が強化される。勝算は少しでも上げるべきよ、分かるわね?)
(うん。分かるよ・・・二人共、お願い)
わたしは小さく頷き、二人を抱きしめた。
(わたしと一緒に戦ってね。そして、勝とう!)
(うむ。当たり前なのじゃ)
(負けたら承知しないわよ。ところでユリ。あとひとつ。ワタシ達を取り込んだ後、火の精霊と戦う前に提案してみてほしいことがあるのよ)
◇
「話は終わったのかね」
「ええ。待たせたわね」
立っているのはわたしと火の精霊だけとなった屋上広場で、わたしは火の精霊の正面に立った。
「精霊共の姿が消えたようだが・・・依代を捨ててお前が取り込んだのだな」
「戦うのはわたし一人なんだし、別に卑怯じゃないわよね。人質をとるような人に文句は言わせないわよ」
「ふん。まあいい。では始めようか」
「ちょっと待って!」
わたしの待ったに、火の精霊の眉がピクッと動くのが見えた。
表情が少しイライラしているようにも見える。
「まだ何かあるのか」
「あの・・・やっぱりわたしも得物が欲しいの。たぶんアドルが魔力剣をもっているはずよ。それを取らせてもらっていいかしら。二人を起こしたり、逃がすようなことはしないと誓うわ」
「・・・いいだろう」
「ありがと」
これから生死をかけて戦う相手にお礼をいうのもアレだと思ったが、わたしは短く礼を言うと、檻に近づいていった。
檻の中に目を向けると、先刻と変わらずアドルとミライが倒れている。
胸の上下の動きで、呼吸していることが分かる。
・・・二人共、必ず助けるから。
少しだけ待ってて。
幸い、手の届く位置に二人共横たわっているので、わたしは二人を起こさないようにそーっと体を弄り、魔力剣を見つけた。
魔力剣はわたしとエスカで開発したもので、かの有名なSF映画をヒントに考案した武器だ。
刀身が無く、握る部分しかないので見た目は壊れた剣だが、この握りに魔力を通すことで・・・
「よし、魔力の刃が出た。壊れてないね!」
火の精霊の魔力を受け止めるには心許ないが、受け流す、あるいは一撃に耐えるという点では役に立つと思われた。
それに魔力で具現化した刀身には重量もないので、わたしでも軽く振るうことができる。
わたしはブンブンと剣を振って具合を確かめた後、最後にもう一度檻の中に目を向けた。
ミライが規則正しい呼吸をしながら檻の中で横たわっている。
・・・ミライちゃんの愛らしい寝顔は出会った時から変わってないね。
わたし、ミライちゃんと出会っていなかったらきっとここまで来れなかったよ。
だから、ミライちゃんのためにも絶対勝つからね。
そしてアドルに目を向ける。
・・・檻がなければキスでもするんだけどね。
でも寝込みを襲ったりしたら『はしたない!』って怒るかな?
まあ、怒られてもいいんだけど。
でも、必ず助けるから、その時にはきっと・・・
そしてわたしは檻に背を向け、元の立ち位置へと戻った。
「待たせたわね」
「武器はそれか」
「ええ。いい武器でしょ?」
「ついでに別れは済ませたか?接吻でもしておけばよかったのではないか?」
「そんなことはしません!」
「寝込みを襲う、はしたない娘だと笑ってやったものを」
「・・・」
・・・火の精霊に言われるとなんかムカつくわね。
しようとしたけど物理的にできなかっただけなんだけど。
だったらせめてもっと隙間の大きい檻にしてくれればよかったものを。
「問題ないわ。貴方を倒して、檻から出したら好きなだけするわよ。さあ、かかってきなさい!!!」
気合一発、わたしは自分にハッパをかけるように大声を出した。
そして魔力剣を正眼に構え、同時に全身に魔力を充填させて防御を強化した。
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
火の精霊は動かない。
わたしの出方を伺っているのだろうか。
ならばこちらから行くか・・・それとも先に動いたほうが負けか・・・
重度の集中で額から汗が落ちる。
(ユリ、目で追うのではなく、魔力の接近を察知しなさい)
(分かってる!)
アフロのアドバイスが直接脳裏へと伝わる。
わたしは既に魔力を薄く広く周囲に放出していた。
集中力を研ぎ澄ませ、周りの雑音も聞こえない。
そして唐突に、ヒュッと火の精霊の姿が消えた。
しかしわたしは姿が消える前に魔力の揺らぎを感知していた。
バチッという音と共に、わたしの斜後ろに火の精霊が出現していた。
「・・・ほう、今のを躱すか」
目では追えなかった。
しかし、動く姿は『視え』た。
火の精霊の依代は実体のある肉体であり、動かしているのは火の精霊の魔力である。
レーダーのように周囲に張り巡らされたわたしの魔力は、物体と魔力の両方が干渉するのを検知し、動きを捉えていた。
火の精霊はすれ違いざまにわたしの首を狙い、横から薙ぎ払おうとしてた。
わたしは魔力剣を火の精霊の進行方向に逆らわず、受け流すように立ててその剣撃を躱すことに成功した。
無論見てから動いたのでは遅い。
わたしは自分の手の動きをも魔力で制御し、高速で反応したのだ。
「ええ。どう?簡単にはやられないわよ」
「いいぞ。楽しい。楽しいな」
「・・・余裕ね。なんか腹立つわ」
実際のところ、やはり受け流すタイミングもまだギリギリ一杯であることは否めない。
受け流した後、そのまま反撃につなげるのが理想的だがやはり難しそうだ。
だったら・・・
「今度はこっちから!」
「むっ!」
わたしは無数の風の刃を召喚し、火の精霊の全方位から攻撃した。
同時に左手を指鉄砲の形にして、人差し指の先に水球を召喚する。
「ばあん!」
指鉄砲も打撃音も、単なる気分の問題で無意味ではあるが、魔力はイメージだ。
イメージの力が強ければ魔力の威力も上がる。
わたしは風の刃と時間差をつけて、水球を火の精霊の体に向けて放った。
火の精霊は無数の風の刃を火壁の防御で受けとめ、最後に水球を左手て受け止めようとした。
水球は具現化した水そのものだが、魔力を纏った水は銃弾以上の威力と速度で火の精霊に向かう。
とはいえ、火の精霊であれば難なく魔力防御で受け止められるだろう。
火の精霊だけではなく、わたしもそう思っている。
・・・でも、もし、水球の中に異物が混ざってたら?
案の定、火の精霊は水球を受け止めた。
しかし、その掌にはピンポン玉大の大穴が空いていた。
穴のあいた掌からは血が流れ出している。
「貴様、何をした・・・」
火の精霊が憤りの声を上げた。
その顔は、痛みか怒りか判断できないが、歪んでいた。
・・・まあ、精霊だし、痛みではないわよね。
でも元は人間の体だから血は流れるんだね。
んで、わたしが何をしたかって?
わたしはあらかじめ拾っておいた城の瓦礫を水球で包み、高速で飛ばしたのだ。
風の刃は火の精霊の注意を引き付け、瓦礫に気が付かせないためのフェイクだ。
城の瓦礫は魔力によっては破壊されない。
ならば、逆に考えてみれば『城の瓦礫は魔力を無効化する』のではないかと思ったのだ。
案の定、火の精霊は魔力で水球を止めた。
しかし城の瓦礫は魔力で止めることができず、その推進力のまま火の精霊の掌をぶち抜いていったのだ。
目論見通り、うまくいった!
「ふふっ。わたしが何をしたかって?それは『企業秘密』よ。教えるもんですか。さあ火の精霊、覚悟なさい!」
攻撃の糸口を掴むことができたわたしは、高揚感の高まりを感じていた。
しかし同時にもう一人、高揚感で暴走しかけていた。
(さあ見事にユリの攻撃が決まった!さて、このまま調子に乗ったユリは火の精霊を追い詰めることができるのか・・・)
(うるさいですよサラちゃん!私の中で実況しないで!)
サラに染みついた実況癖は、当分の間抜けないかもしれない。
もう死んでいるのではないかと気が気ではなかった。
「ユリ、落ち着くのじゃ。二人共、息はあるのじゃ」
「ディーネの言う通りよ。命に別状はなさそう。今のところはね」
「ホント!?良かった・・・良くないけど、良かった・・・」
ディーネとアフロの見立てでは気絶、あるいは昏睡しているだけとのことだが、火の精霊に囚われて命を握られているという事態に変わりはない。
安心と同時に、今度は怒りが沸々と湧き上がる。
「火の精霊!・・・許せない・・・」
「この二人を見つける機会を得たのは、お前等が我を階下に突き落としたからだ」
・・・火の精霊が戻ってくるのが少し遅かったのはそのためか。
こっちもこっちで色々あったし、気づけなかったのが悔しいわ。
「階下の窓から見えたのでな。外の人間共と一緒に吹き飛ばしてやろうかと思ったが、お前に縁のある人間には利用価値があると思って、魔力で捕縛して連れてきたのだ」
「この卑怯者!」
「勘違いするな。人質には違いないが。この人間共の命を盾にして、お前に無抵抗で死ねとは言わん。それにこの人間共はいわば我にとっても恩人だ」
「恩人?一体どう言う・・・」
「この者達は我がバルゴの体を乗っ取る契機を作ったのではないか。お陰で容易くこの体を得ることができた」
火の精霊は左手の拳を握ったり開いたりしながらそう答えた。
確かに、人体発火魔術を作用させてバルゴを倒したのはアドル達だ。
更に言えば、バルゴの個体番号というべき数字をその場で丸暗記できたミライこそが真のMVPと言えるかもしれない。
「・・・なら、人質はなんのために取ったのよ」
「提案のためだ」
「提案?」
「娘。一対一で決着をつけようじゃないか。我かお前、どちらかが倒されるまでこの場で戦うのだ。逃げることは許さん。逃げたらこの人間共を殺す」
「わたしに選択肢が無い時点で、全然提案とは言えないじゃない・・・」
一対一、つまりこちらはディーネやアフロ達と共同戦線を張ることができないという事らしい。
戦隊モノばりに、わたしと精霊達で同時に攻撃するような戦い方はダメということか。
「・・・それで、わたしが勝てば二人を解放して、この星の人達の皆殺しも諦めるということでいいのね」
「うむ。我が倒されれば、我は再び忌まわしい呪縛に囚われるだろう。そうなれば我は人間共に手出しができぬ。無論、我が勝てばその人間共々この星の人間を皆殺しにする・・・ああ、もうひとつあったな・・・」
「もうひとつって何・・・えっ!?」
その時、火の精霊の姿が忽然と消えた。
直後、悲鳴があがった。
「きゃあああああっ!!」
「サラちゃん!」
檻の直上で、サラの体が真っ二つに斬られていた。
檻の上に着地した火の精霊の手には歴代の王が持つ、抜身の剣が握られていた。
「サラちゃん!サラちゃん!!!」
「ユリ、ごめん、二人を助けようとして・・・失敗しちゃっ・・・」
サラは最後まで言葉を言い切ることができなかった。
カピバラの姿を模したサラの依代はその輪郭を歪め、パアッと中空で飛散するように消えていった。
「ふむ。どうやら風の精霊が独断で動いたようだが、もしも人質を勝手に救出するような素振りを見せればすぐに人質を殺す。良いな」
「サラちゃん・・・」
サラは火の精霊の隙を突いてアドル達を救出しようとしたらしい。
しかし火の精霊はそれを見逃さなかった。
それにしても、話の途中だったので油断していたとはいえ、完全に見失うほどに、尋常ではないスピードで火の精霊は跳躍してサラを斬ったのだ。
・・・わたし一人でこんな化け物に勝てるのだろうか。
それにサラちゃんが依代を失うほどのダメージを受けるなんて・・・
「ディーネちゃん、アフロちゃん、サラちゃんが・・・!」
「ユリよ。落ち着くのじゃ。精霊が本当の意味で死ぬことは無いのじゃ」
「でも、でも・・・」
「火の精霊!その提案、承知したわ!」
「アフロちゃん!?」
アフロが勝手に承諾の返事をしてしまった。
もっとも、異論を挟む余地も無いので回答としてはそれしか無いのだが。
わたしが取り付く島もないままに、アフロは続けて火の精霊に言った。
「戦う前に少しユリと話がしたいのだけど、いいかしら?」
「・・・手短に済ませよ」
「ええ。すぐに済むわ」
◇
サラが消滅してしまったショックで意気消沈したわたしは、ディーネとサラのほうにフラフラと歩いていった。
アフロがせっかく確保してくれた時間だが、アドルとミライが捕まり、さらにサラが消えてしまったこの状況にわたしの頭の中は真っ白で、何の話もできそうには思えなかった。
そんなわたしの元へ、おもむろにアフロも近づいてきた。
アフロはわたしの頭をガシッと掴むと、自分の顔をわたしの顔のすぐ近くまで寄せた。
そしてアフロは実の言葉ではなく、魔力の核を通じて念話で話しかけてきた。
(・・・ユリ、落ち着きなさい)
(でもアフロちゃん。サラちゃんが・・・わたしはどうすれば・・・あんなのに勝てる気がしないよ・・・)
(落ち着きなさい)
(痛っ!)
アフロの頭突きがわたしのおでこにヒットした。
わたし、さっきから油断しすぎだ。
(ユリ・・・いえ、サラ。聞こえてるんでしょ?)
(・・・・・・・・・・・・はあい、ユリ)
サラの声がはっきり聞こえてきた。
そして今はサラの魔力を体内からはっきりと感じ取る事ができている。
(サラちゃん!?あれ、わたしの中!?)
(サラは依代を捨ててアナタの中の風の核に避難したの。だからサラは無事よ。バツが悪くて核の中に隠れてたのよ)
(そうなの!?・・・もう、サラちゃんてば・・・でも無事で良かったよ)
(あー、まあ無事といえるかどうか分からないけどね。あーあ。あの依代、気に入ってたのになあ・・・あ、いやいや、そうじゃなくて、その・・・。ユリ、心配かけてごめんなさい)
わたしはサラの謝罪なんかどうでもよかった。
わたしの心はサラの無事を確認することができた安心感で一杯だった。
(サラちゃん、依代はまた後で作ってあげるからね。でもせっかくだから今度は風の精霊らしいものにしない?)
(そうね・・・検討してみるわ)
いつになくしおらしい素直なサラに、わたしはクスッと笑ってしまった。
(教えてくれてありがとうアフロちゃん。少し元気出たわ)
(いいのよ。元はと言えばサラが悪いのよ)
(あっひどっ・・・いえ、なんでもないです)
(ほんとよ。サラが入り込んできたから、なんとなくここが手狭になった感じがするのだわ)
(ミっちゃんてば・・・サラちゃんと仲良くしててね)
(そうよミネルヴァ。これからもっと手狭になるんだから)
(えっ?)
(えっ?)
アフロの言葉にわたしとミネルヴァが同時に反応した。
そしてアフロがディーネに目配せをする。
(ディーネも、いいわね)
(うむ。承知したのじゃ)
(えーと、何を承知したの?)
(決まってるじゃない。依代を捨てるのよ)
(あー・・・そういうことね)
わたしも理解した。
わたしはタイマンで戦わなければならないのだ。
ディーネもアフロも、参戦できないのであれば依代を捨ててわたしの中で一緒に戦う、そう言っているのだ。
(わたしはそのほうが心強いわ。せっかくの依代だけど、またちゃんと作ってあげるからね)
(あんたが負けなければね)
(ミっちゃん、身も蓋もないことを・・・)
(いい、ユリ。ワタシとディーネも依代を捨ててユリの中の核に入ることで、多少はユリの魔力が強化される。勝算は少しでも上げるべきよ、分かるわね?)
(うん。分かるよ・・・二人共、お願い)
わたしは小さく頷き、二人を抱きしめた。
(わたしと一緒に戦ってね。そして、勝とう!)
(うむ。当たり前なのじゃ)
(負けたら承知しないわよ。ところでユリ。あとひとつ。ワタシ達を取り込んだ後、火の精霊と戦う前に提案してみてほしいことがあるのよ)
◇
「話は終わったのかね」
「ええ。待たせたわね」
立っているのはわたしと火の精霊だけとなった屋上広場で、わたしは火の精霊の正面に立った。
「精霊共の姿が消えたようだが・・・依代を捨ててお前が取り込んだのだな」
「戦うのはわたし一人なんだし、別に卑怯じゃないわよね。人質をとるような人に文句は言わせないわよ」
「ふん。まあいい。では始めようか」
「ちょっと待って!」
わたしの待ったに、火の精霊の眉がピクッと動くのが見えた。
表情が少しイライラしているようにも見える。
「まだ何かあるのか」
「あの・・・やっぱりわたしも得物が欲しいの。たぶんアドルが魔力剣をもっているはずよ。それを取らせてもらっていいかしら。二人を起こしたり、逃がすようなことはしないと誓うわ」
「・・・いいだろう」
「ありがと」
これから生死をかけて戦う相手にお礼をいうのもアレだと思ったが、わたしは短く礼を言うと、檻に近づいていった。
檻の中に目を向けると、先刻と変わらずアドルとミライが倒れている。
胸の上下の動きで、呼吸していることが分かる。
・・・二人共、必ず助けるから。
少しだけ待ってて。
幸い、手の届く位置に二人共横たわっているので、わたしは二人を起こさないようにそーっと体を弄り、魔力剣を見つけた。
魔力剣はわたしとエスカで開発したもので、かの有名なSF映画をヒントに考案した武器だ。
刀身が無く、握る部分しかないので見た目は壊れた剣だが、この握りに魔力を通すことで・・・
「よし、魔力の刃が出た。壊れてないね!」
火の精霊の魔力を受け止めるには心許ないが、受け流す、あるいは一撃に耐えるという点では役に立つと思われた。
それに魔力で具現化した刀身には重量もないので、わたしでも軽く振るうことができる。
わたしはブンブンと剣を振って具合を確かめた後、最後にもう一度檻の中に目を向けた。
ミライが規則正しい呼吸をしながら檻の中で横たわっている。
・・・ミライちゃんの愛らしい寝顔は出会った時から変わってないね。
わたし、ミライちゃんと出会っていなかったらきっとここまで来れなかったよ。
だから、ミライちゃんのためにも絶対勝つからね。
そしてアドルに目を向ける。
・・・檻がなければキスでもするんだけどね。
でも寝込みを襲ったりしたら『はしたない!』って怒るかな?
まあ、怒られてもいいんだけど。
でも、必ず助けるから、その時にはきっと・・・
そしてわたしは檻に背を向け、元の立ち位置へと戻った。
「待たせたわね」
「武器はそれか」
「ええ。いい武器でしょ?」
「ついでに別れは済ませたか?接吻でもしておけばよかったのではないか?」
「そんなことはしません!」
「寝込みを襲う、はしたない娘だと笑ってやったものを」
「・・・」
・・・火の精霊に言われるとなんかムカつくわね。
しようとしたけど物理的にできなかっただけなんだけど。
だったらせめてもっと隙間の大きい檻にしてくれればよかったものを。
「問題ないわ。貴方を倒して、檻から出したら好きなだけするわよ。さあ、かかってきなさい!!!」
気合一発、わたしは自分にハッパをかけるように大声を出した。
そして魔力剣を正眼に構え、同時に全身に魔力を充填させて防御を強化した。
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
火の精霊は動かない。
わたしの出方を伺っているのだろうか。
ならばこちらから行くか・・・それとも先に動いたほうが負けか・・・
重度の集中で額から汗が落ちる。
(ユリ、目で追うのではなく、魔力の接近を察知しなさい)
(分かってる!)
アフロのアドバイスが直接脳裏へと伝わる。
わたしは既に魔力を薄く広く周囲に放出していた。
集中力を研ぎ澄ませ、周りの雑音も聞こえない。
そして唐突に、ヒュッと火の精霊の姿が消えた。
しかしわたしは姿が消える前に魔力の揺らぎを感知していた。
バチッという音と共に、わたしの斜後ろに火の精霊が出現していた。
「・・・ほう、今のを躱すか」
目では追えなかった。
しかし、動く姿は『視え』た。
火の精霊の依代は実体のある肉体であり、動かしているのは火の精霊の魔力である。
レーダーのように周囲に張り巡らされたわたしの魔力は、物体と魔力の両方が干渉するのを検知し、動きを捉えていた。
火の精霊はすれ違いざまにわたしの首を狙い、横から薙ぎ払おうとしてた。
わたしは魔力剣を火の精霊の進行方向に逆らわず、受け流すように立ててその剣撃を躱すことに成功した。
無論見てから動いたのでは遅い。
わたしは自分の手の動きをも魔力で制御し、高速で反応したのだ。
「ええ。どう?簡単にはやられないわよ」
「いいぞ。楽しい。楽しいな」
「・・・余裕ね。なんか腹立つわ」
実際のところ、やはり受け流すタイミングもまだギリギリ一杯であることは否めない。
受け流した後、そのまま反撃につなげるのが理想的だがやはり難しそうだ。
だったら・・・
「今度はこっちから!」
「むっ!」
わたしは無数の風の刃を召喚し、火の精霊の全方位から攻撃した。
同時に左手を指鉄砲の形にして、人差し指の先に水球を召喚する。
「ばあん!」
指鉄砲も打撃音も、単なる気分の問題で無意味ではあるが、魔力はイメージだ。
イメージの力が強ければ魔力の威力も上がる。
わたしは風の刃と時間差をつけて、水球を火の精霊の体に向けて放った。
火の精霊は無数の風の刃を火壁の防御で受けとめ、最後に水球を左手て受け止めようとした。
水球は具現化した水そのものだが、魔力を纏った水は銃弾以上の威力と速度で火の精霊に向かう。
とはいえ、火の精霊であれば難なく魔力防御で受け止められるだろう。
火の精霊だけではなく、わたしもそう思っている。
・・・でも、もし、水球の中に異物が混ざってたら?
案の定、火の精霊は水球を受け止めた。
しかし、その掌にはピンポン玉大の大穴が空いていた。
穴のあいた掌からは血が流れ出している。
「貴様、何をした・・・」
火の精霊が憤りの声を上げた。
その顔は、痛みか怒りか判断できないが、歪んでいた。
・・・まあ、精霊だし、痛みではないわよね。
でも元は人間の体だから血は流れるんだね。
んで、わたしが何をしたかって?
わたしはあらかじめ拾っておいた城の瓦礫を水球で包み、高速で飛ばしたのだ。
風の刃は火の精霊の注意を引き付け、瓦礫に気が付かせないためのフェイクだ。
城の瓦礫は魔力によっては破壊されない。
ならば、逆に考えてみれば『城の瓦礫は魔力を無効化する』のではないかと思ったのだ。
案の定、火の精霊は魔力で水球を止めた。
しかし城の瓦礫は魔力で止めることができず、その推進力のまま火の精霊の掌をぶち抜いていったのだ。
目論見通り、うまくいった!
「ふふっ。わたしが何をしたかって?それは『企業秘密』よ。教えるもんですか。さあ火の精霊、覚悟なさい!」
攻撃の糸口を掴むことができたわたしは、高揚感の高まりを感じていた。
しかし同時にもう一人、高揚感で暴走しかけていた。
(さあ見事にユリの攻撃が決まった!さて、このまま調子に乗ったユリは火の精霊を追い詰めることができるのか・・・)
(うるさいですよサラちゃん!私の中で実況しないで!)
サラに染みついた実況癖は、当分の間抜けないかもしれない。
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