上 下
16 / 47

第16話 放課後の教室で甘々なキスを

しおりを挟む
【大柳教頭視点・校長室】


 校長が逮捕されて小一時間。
 大柳教頭は事情聴取を終えて、誰も居なくなった校長室の椅子で一息ついていた。足を組み、タバコを吹かす大柳。

 その表情かおには邪悪な笑みがこぼれている。


「……ふはは。奥村め、怒りやすい性格があだとなったな。予想通り、この私をブン殴ってくれた。こうなった以上、この席は私のものとなろう」


 大柳はこうなることを予測していた。遙と遥の情報を大親友である『天満 総一郎』から聞かされていたからだ。
 あの独身の校長が二人の関係を許さず、退学に追い込むのではないかと大柳は考えていた。それは見事に的中。

 顔を殴られるという痛い目には遭ったものの、計画を前倒しに出来た。そう、大柳教頭は、いつか校長の座を奪おうと目論もくろんでいたのだ。


「天満くんの結婚は予想外だった……だが、まあいい。あとは彼と小桜さんを別れさせ、我が孫娘・あおいと結婚させる。それが葵との約束なのだ。天満くんには悪いが、小桜さんとは別れてもらう。
 ただ、校長を追い払ってくれた礼くらいはしてやろう。しばらくは幸せな一時を過ごすがいい、天満くん。ふふふ、ふははははは……!!」


 後日、教頭は校長へ昇進した。


 * * *


【遙視点・教室】


 放課後になった。
 あの校長の事件が全校に広まることはなく、落ち着いた様子だった。あの時は授業が始まっていたから、見られなくて本当に良かった。
 下手すりゃ、俺と遥が結婚している事実がバレていただろうな。

 クラスメイトは、どんどん帰宅していく。教室内には、俺と遥だけが残った。

 教室の一番隅の席に座り、スマホを弄る俺。前の席の遥が振り向いて笑った。

「綺麗な夕焼け空だね。静かになったし、二人きり……ドキドキしてきた」

 遥はてのひらかかげて指輪を示した。
 キラキラと光る銀色の円環リング
 俺が渡した結婚指輪だ。

「校長という脅威もいなくなったし、これで卒業まで一緒だな」
「うん、今すっごく幸せ」

 手を合わせ、にぎり合う。
 恋人繋ぎをしてしまった。
 なにこの青春シーン。
 陰キャの俺に相応しくない光景すぎる。

 遥は、手を離してこちらへ方へ向かってきた。それから、俺のひざの上に乗ろうとした。

「ちょ、遥!」
「ダ、ダメ? こういうの憧れだったから」
「それ、男としてはロマンすぎるよ。いいの?」
「うん、すっごく緊張するけど……思い切る」

 思い切りが良すぎるよ。でも、そういうのは嫌いではない。つまり、遥を俺のひざの上に乗せて“ぎゅっ”と抱きしめるってことだ。

 なにそのご褒美。

 心臓がバクバクしている中、遥は背中を預けてきた。……軽っ! しかも華奢きゃしゃだな。体重をほとんど感じない。いったい、何キロなんだか。


「ふわふわだな、遥」
「そう? 自分では分からないや」

 ブラウスとかスカートがヒラヒラして、くすぐったい。布越しから伝わって来る肌の感触とか……興奮する。
 遥は、スレンダーの割りにムチムチ感があるし、むしろ、モチモチしていた。素晴らしい肌質だ。

「ぎゅっとしていいか?」
「うん。いっぱい抱きしめて」

 誰もいない教室内で、俺は遥を背後から“ぎゅぅ”と抱きしめる。……幸せ。とにかく幸せだ。こんな時間が永遠に続けばいいのにな。

「こんな風に抱きしめるっていいものだな」
「わ、わたしも遙くんに“ぎゅっ”とされて嬉しい。それにね、なんだかキスしたくなっちゃった」

 突然の要求に、俺は慌てる。
 キ、キスだって?

 あの唇と唇を重ね合わせるヤツだよな。

 もちろん、俺は経験皆無の“童帝”なのだ。そんな行為は今までの人生一度もなかった。そもそも、この『背後からぎゅ~』も死ぬほど緊張しているし、今にも気絶しそうなほど心臓がバックンバックンしていた。
 だけど、そんなカッコ悪いところは遥に見せられないので、感情を押し殺してした。だが、今の『キスしたくなっちゃった』の一言で、俺の中の何かが崩壊した。


「は、遥……その、先におっぱい触りたい」
「へ……お、おっぱい!? ちょ、いきなりぃ!?」


 やべ、つい興奮してストレートに言ってしまった。だって、俺は男。化けの皮が剥がれれば――欲望に忠実な猛犬なのだ。

 さすがの遥も耳まで真っ赤にして、焦っていた。


「い、いいよな。俺たち夫婦なんだし」
「……うぅ、教室内で恥ずかしいよ。誰かに見られたらお嫁にいけなくなっちゃう!」

「いや、既に俺の嫁だが」
「……あ!」


 そう、俺の嫁。奥さん。
 まごうことなき妻である。


「いや、無理にとは言わないよ。遥にも心の準備があるだろうし」
「じゃ、じゃあ、先にキスして! それならいいよ」
「本当か!」
「うん。ただし、乱暴にしないでね。優しく愛情を込めてね」


 くるりとこちらを向く遥。
 向き合う事によって、俺の心臓は破裂寸前となった。やべえ、遥が可愛すぎて――死ぬ。死んでしまう。このまま昇天しそうだ。

 だけど、キス……したい。

 あの桜色の唇に重ね合わせたい。
 それから、あのはち切れそうな胸を俺の手で……。


 俺は、遥にキスしようと顔を近づけていった――その時だった。突然、教室の扉が開き、誰かがズカズカ入ってきた。


「そこ不純異性交遊禁止です!!」


 な、なんだあああああ!?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

【完結】俺のセフレが幼なじみなんですが?

おもち
恋愛
アプリで知り合った女の子。初対面の彼女は予想より断然可愛かった。事前に取り決めていたとおり、2人は恋愛NGの都合の良い関係(セフレ)になる。何回か関係を続け、ある日、彼女の家まで送ると……、その家は、見覚えのある家だった。 『え、ここ、幼馴染の家なんだけど……?』 ※他サイトでも投稿しています。2サイト計60万PV作品です。

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

俺がカノジョに寝取られた理由

下城米雪
ライト文芸
その夜、知らない男の上に半裸で跨る幼馴染の姿を見た俺は…… ※完結。予約投稿済。最終話は6月27日公開

坊主頭の絆:学校を変えた一歩【シリーズ】

S.H.L
青春
高校生のあかりとユイは、学校を襲う謎の病に立ち向かうため、伝説に基づく古い儀式に従い、坊主頭になる決断をします。この一見小さな行動は、学校全体に大きな影響を与え、生徒や教職員の間で新しい絆と理解を生み出します。 物語は、あかりとユイが学校の秘密を解き明かし、新しい伝統を築く過程を追いながら、彼女たちの内面の成長と変革の旅を描きます。彼女たちの行動は、生徒たちにインスピレーションを与え、更には教師にも影響を及ぼし、伝統的な教育コミュニティに新たな風を吹き込みます。

13歳女子は男友達のためヌードモデルになる

矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。

処理中です...