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【295】 オルビスの塔を目指せ

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 帝国・レッドムーンは朝でも人通りが多く、たくさんの人達が行き交って活気があった。早朝からオープンするアイテムショップや飲食店も多い。


「海底監獄・イグノラムスへ行く前に腹を満たしておくか。ルナ、ソレイユはどうだ?」

 俺がくと、二人ともうなずいた。


「わたしは賛成です。これから戦闘にもなるかもしれませんし、腹が減ってはなんとやらですよ」

「あたしも何も食べてないのよね~」


 これから長丁場になるであろうと想定。となると、先に贅沢しておく方が良いと考えた。いっぱい食べてやる気モチベをあげていこう。

 この『N地区』といえば有名な喫茶店・・・・・・があった。そう、喫茶店『エンジョイ』である。オーナー『ノレッジ』さんとは懇意にさせて頂いている。


 中央噴水広場より少しいった先に喫茶店はあった。


「あー、エンジョイね」


 納得するソレイユはそうつぶやく。ルナも上機嫌に笑っていた。そういえば、最近はよく通っていると言っていたな。

 お店に入るとゴシック眼鏡を掛けたノレッジさんが振り向いた。


「おぉ、カイトくん。それにルナ様にソレイユ様。これはこれは、わざわざご来店ありがとうございます。まさか来て下さるとは」

「おはようございます、ノレッジさん」
「ええ、ルナ様。いつもお美しい。ソレイユ様はいつも可憐だ」


「お世辞でも嬉しいです」
「と、当然でしょ」


 照れるルナとソレイユ。二人ともちょっと困惑さえしていた。ノレッジさんめ、二人の前で鼻の下を伸ばしすぎだ。それよりオーダーを進めよう。

 隅のテーブルに着き、俺の隣にルナ。正面にソレイユとなった。メニューを取り出し、いつもの・・・・を注文。タマゴサンドと珈琲コーヒーセットだ。


「みんな、いつものヤツな」


 ノレッジさんは注文を受け、厨房へ向かって行った。その間、俺は今後のプランを話す事にした。


「朝食が済み次第、次は『オルビスの塔』だ」
「あの、海人様。どうして『オルビスの塔』なのですか?」

「良い質問だね、ルナ。うん、あの塔には“大賢者”がいる。これでもう分かるだろ」

「あぁ。なるほど、パラディ・アプレミディ卿ですね」

「そう、アプレミディ卿……俺のじっちゃんに海底監獄・イグノラムスへ行く方法を聞く。元々、海底監獄をデザインし、設置したのはじっちゃんだ。つまり、行き方を知っているわけだ」


 ポンッと手を叩くソレイユ。
 感心し、納得さえしていた。


「なるほどね。カイト、頭良いわね!」
「海底監獄が出来る前、大監獄・ベイリービーズだってじっちゃんの手柄らしいからな。まあ、あの大監獄は脱獄されちまって廃止なったようだけど」

「ええ、ベルガマスク・セルリアンの件があったからね」


 だからもっと厳重にすべく、海の底に監獄を作ったのだという。じっちゃんのヤツ、とんでもないな。

 そんな話をしているとノレッジさんが料理を運んできた。


「タマゴサンドと自家製珈琲コーヒーですよ~。ごゆっくり」


 コトンと置かれていくお皿とカップ。おぉ、タマゴと珈琲の香ばしい良い匂いだ。食欲がそそられる。


「これ、これですよ。海人様っ」


 瞳をキラキラ輝かせるルナは、テンションが高かった。すっかりこの店の虜だな。でも、気持ちは分かる。ここのタマゴサンド最強に美味いんだよな。味付けが絶妙な塩梅あんばいで、何度食べても美味しいし、飽きない。これを食ってないヤツは人生を損していると言っても過言ではない。

「う~ん、おいしい」

 既にソレイユは、タマゴサンドをモシャモシャ食っていた。よっぽど腹が減っていたようだな。俺も食べようっと。


 サンドされているパンの生地からみ出るほどボリューミーな黄金色のタマゴ。この時点で“味”は完全保証されている。手に持ち、口へゆっくりと運ぶ。一瞬で広がるサクサクっとしたパン生地と卵のトロトロっとした食感。


 最強の組み合わせ。
 そして、幸せ。


 ――うまいっ!!
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