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【283】 闇より出でし者・ヤークト公爵

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 あれから、ソレイユの帰りを待っていた。待てど暮らせど気配はない。

 夜空が青く染まっていく。
 きっと今日は『ブルームーン』だからだろう。嫌な空気が張り詰めていた。


「……ソレイユ、早く帰って来い」


 空を見上げながら心配していると、読書をしていたルナが立ち上がって焦っていた。


「微量ながら魔力を感じます。何か接近してきているような」
「なんだって?」


 俺よりルナの方がそういう気配とかに敏感だ。つまり、何かしらイルミネイトに向かってきている――?

 闇夜に注視していると、最上階の窓ガラスが全て吹っ飛んだ。


「――――うわッ!!!」


 吹き飛ばされそうになる俺だったが、高レベルが幸いして何とか姿勢を低くする程度で耐えられた。そのままルナを庇いにいく。


「……海人様、これはいったい」
「さあ、分からん」


 外から人影が侵入してくる。
 青白い光が下りて来て姿を現す。

 人間……か?


『早くも、私の周りをぎ回て来たようなのでね、こちらから挨拶にきた次第だ』


 かつんかつんと足音を立ててこちらに向かってくる高身長の男。高級な紳士服に身を纏っている。サングラスのようなものを掛け、表情はあまり伺えない。


 コイツはいったい何者だ?


「挨拶に来た? どういう事だ」

「君が送り込んできた帝国の騎士・ソレイユ殿はこちらで預かっている。なぁに、さすがの私も命までは取らぬよ」

「お……お前、まさか『ヤークト公爵』か!」

「その通り。カイト、お前の事は知っている。だから先手を打ちに来た」
「なんだって?」


 ヤークト公爵は、ニヤリと笑う。
 コイツ何か企んでいるな……! そうさせない。俺がその前に公爵を止める。大切な仲間であるソレイユを返して貰う。


「お~っと、動かない方がいい。ルナ様が傷つくぞ?」
「んだと……なッ!! ルナ!!」


 振り向いた瞬間にはルナが『宝石』に閉じ込められていた。あ、あれは……『パライバトルマリン』か……! あんな人型サイズは見た事がない。ありえない……!


「どうだ、驚いたかね」
「て、てめぇ……ルナを解放しやがれ!」
「それには私の条件を呑んでもらわねばならないな」

「条件、だと」

「そうとも。カイト、貴様の店『イルミネイト』とお前自身を私の物とする。今後『レベル売買』は我が物となって貰う、というわけだ」

「つまり、俺の力が欲しいのか」
「そうだ。お前は特別だ。いや、それだけではない……ルナ様やソレイユ殿、そして、そこの・・・ダークエルフも従えている。その力が欲しいのだよ」


 ……そこのダークエルフ?

 しまった、ミーティアが俺の部屋に!!


「お兄ちゃん、そいつ……ルナさんを!! ゆるせな――――え」


 杖を取り出し、大魔法を向ける前にもミーティアは『宝石』に閉じ込められた。……嘘だろ、あのミーティアすらも簡単に封印されちまうのかよ。

 何なんだこの公爵の力は……。


「もうやめろ、公爵!」
「なら、私の物になるのだな?」

「……くっ。それは……」


 その時、異常を察知したジェネラル氏、プライム、ナイツ、モニカが現れた。


「ほう、まだ仲間がいたのか。しかも、パラレログラムの連中か。雑魚に用はない。カイト、少しだけ時間をやろう。ソレイユ殿、ルナ様、ミーティアを返して欲しければ、我が公爵低に一人で来るが良い。それまでは三人の命は保証しよう」


 宝石の塊となったルナとミーティアが公爵の方へ浮遊していく。……奪われてなるものか!!


 俺は手を伸ばし、それ・・を待った。



「来やがれッ、聖剣『マレット』!!」

「ほう、聖剣を扱えるのか。ソレイユ殿も必死に抵抗していたな。だが、それは絶対に止めておくべきだ」

「黙れ……!」


 聖剣を呼び寄せて手にした俺は、そのまま必殺技を打ち込もうとしたが――無理だ!! 野郎、ルナとミーティアを盾にしやがった……! コイツ、この野郎……!!


「ふふふははははは……!」
「おまええええええ!!」


 くそう、やられた。
 これでは攻撃不可能。
 ルナとミーティアを巻き込んでしまう。


 動けないでいると、背後のプライムが吼える。


「おい、なんとかならないのかよカイト!」
「……無理だ」


 聖剣を手から離し、俺は手を挙げた。


「ほう。懸命だな、カイト。二人が、いや三人がそれほど大切らしいな。ならば、取り戻しに来るがいい。待っているぞ」

「……分かった。必ずお前を後悔させてやる」

「面白い。面白いぞ……。『コピーマスター』と呼ばれたこの私にどう抗うつもりなのか……それはそれで一興だ」

「コピーマスターだって?」

「そうとも。我が力は『コピー』の能力。だから、今まで見てきたスキルをほとんど使用できる。だがな、お前の『レベル売買』だけは違った。それだけはコピー不可能だったのだよ」

 それで欲しているわけか。

「そんな力があるなら俺なんて必要ないだろ」
「言ったろう、お前は特別だとな。まあ、今日は頃合いだ……これでおさらばとしようか」


 ヤツはこちらに手を向けた。
 何をする気だ?



『――――――テンペスト!!!』



 こ、これは最強の風属性魔法。
 コレリックの十八番おはこだぞ。

 まさか、あの当時の戦闘を見ていたのか……いや、それよりこの暴風雨……! なんとかして止めないと……! 俺は風に抵抗して必死になってマレットをなんとか拾い上げた。



『ガグンラーズ……!!!』



 低姿勢での必殺スキルだったから、威力が半減。けれど、敵のテンペストを打ち破った。その代わり、最上階であるこの部屋は吹き飛んだけど……。


 ……野郎、逃げたか!
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