上 下
262 / 309

【262】 地底湖ダンジョン

しおりを挟む
 ベータルートへ降りる前に俺は洞窟と一体化しているペイルにたずねた。

「教えてくれ」
「今更何を聞きたい」
「今更も何もまだそこまで詳しく聞いていない。ペイル、君は確か【共和国・ブルームーン】の元竜騎兵だったな」

 静かにうなずく彼女は何処どこか遠くを見つめ、生い立ちを話した。


「私は幼い頃からドラグーンに憧れていてな。父はそれは立派な竜騎兵で、ベルガマスク・セルリアン将軍の右腕として補佐していた。私はそんな父の背中を追っていた……以上だ」

「以上!? それだけ?」


 ペイルはゆっくり立ち上がり、やっぱり遠くを見つめた。


「残念ながら、私は幼少の頃から不器用すぎてな。恋のひとつもした事がないのだ。ずっと剣とドラゴン一筋でブルームーンの為に尽力していた」


 どうやらその道一筋だったようだ。
 ハルバードを極め、その才を認められたようだな。そして、あの『魔導兵器・ミラージュ』の開発にも携わったという。


 そんな今はその魔導兵器を止める為に俺達と共にいる。決して悪いヤツではないし、裏切るとかそういう素振りもないし一緒にいる限り、頼もしいヤツだなと俺は思う。

 内心でそう評価していると、ルナが口を開く。


「ペイル、もしソレイユを助けて戴けるのであれば、貴女をオルビス騎士団へ入れたいと思うんです」

「はい? ルナさん。貴女にそのような権限はないでしょう……」


 そういえば説明していなかった気がする。


「ルナは【帝国・レッドムーン】の皇女だぞ」
「へ? そうなのか!? ――では、あのフォトンやアルバが言っていたことは」

「本当だ」


 ガタガタと震え、理解し始めると何故か土下座するペイル。信じていなかったのかよ。

「ごめんなさい、まったく信じていなかった……! いや、その美貌だからどこか小国のお姫様かご令嬢かとは思ったのだが、まさか【帝国・レッドムーン】の皇女殿下で有らせられるとは」

「頭を上げてください、ペイル。わたし達はもう仲間ではありませんか」
「ル、ルナ様……ありがたきお言葉!」


 どうやら、この件が無事に終わればペイルはオルビス騎士団に入団できるかもしれないらしい。元は敵かもしれなかったけれど、こうして行動を共にすればペイルが良いヤツだって分かった。


 ◆


 ――穴を下りていく。

 どうやら、天然の螺旋らせん階段になっているようで、かなり地下まで続いていた。こりゃ凄いな。

 下りれば下りるほど水音が激しくなり――やがて、大きな湖が見えた。あおい湖だ。

 まるで空がそのまま落ちてきたような澄み切った湖。


「綺麗ですね」


 その光景にうっとりするルナだが、俺もそれには同意だ。まさかこの洞窟の地下にこんな広々とした地底湖があるとはな。
 微かにだがモンスターの気配もある。

 あれが言っていた水属性モンスターか。まだ水面に影が見えるくらいで実物を確認できない。かなり危険らしいから慎重に進んだ方が良さそうだ。


「通路は狭い。二人とも湖に落ちないよう気をつけてくれ」


 ルナもペイルも壁に沿って歩く。
 それほど湖と距離がないからな、迫力満点だし……ちょっと怖かった。しかしこれ、落ちたら助からないかもな。


 少しずつ湖に沿って歩いていくのだが、やはり水属性モンスターが生息していた。敵は少なからずいるようだな。何やら怪しい気配が泳いで来ていた。


「アレはなんですか」

「……! ルナ、そばを離れるなよ。モンスターはともかく、こんな深い湖に転落したら確実に死ぬからな」

「え、ええ……でも、モンスターが」


 その通り、水属性モンスターが出現。
 エビのようなカニのような甲殻類が道を塞ぐ。

 でけえ……でかすぎんだろ!


「モンスターを調べる魔導具アイテム『インベスティゲイト』でヤツを調べた。カイト、あれは『シドネイア』という節足せっそくモンスターらしいぞ!」


 おぉ、モンスター解析アイテムか。
 そんなモノがあったとはな。
 ミーティアがいない今は助かるな。


[モンスター名]:シドネイア
[レベル]:8130
[習得スキル]:ウォーターキャノン Lv.10、ハイドロプレス Lv.10、ヴェノムダストLv.8、


「敵はかなりデカイから、それほど素早くはないはずだ。俺がヤツのレベルを落とす。ペイル、悪いが前衛を頼めるか」

「任されよ。あの甲殻類を我がハルバードのさびにしてくれようぞ」


 コイツを倒して先へ進むぞ。
 待ってろ、ソレイユ、ミーティア!
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

無限初回ログインボーナスを貰い続けて三年 ~辺境伯となり辺境領地生活~

桜井正宗
ファンタジー
 元恋人に騙され、捨てられたケイオス帝国出身の少年・アビスは絶望していた。資産を奪われ、何もかも失ったからだ。  仕方なく、冒険者を志すが道半ばで死にかける。そこで大聖女のローザと出会う。幼少の頃、彼女から『無限初回ログインボーナス』を授かっていた事実が発覚。アビスは、三年間もの間に多くのログインボーナスを受け取っていた。今まで気づかず生活を送っていたのだ。  気づけばSSS級の武具アイテムであふれかえっていた。最強となったアビスは、アイテムの受け取りを拒絶――!?

チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?

桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」  その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。  影響するステータスは『運』。  聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。  第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。  すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。  より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!  真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。 【簡単な流れ】 勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ 【原題】 『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』

無能スキルと言われ追放されたが実は防御無視の最強スキルだった

さくらはい
ファンタジー
 主人公の不動颯太は勇者としてクラスメイト達と共に異世界に召喚された。だが、【アスポート】という使えないスキルを獲得してしまったばかりに、一人だけ城を追放されてしまった。この【アスポート】は対象物を1mだけ瞬間移動させるという単純な効果を持つが、実はどんな物質でも一撃で破壊できる攻撃特化超火力スキルだったのだ―― 【不定期更新】 1話あたり2000~3000文字くらいで短めです。 性的な表現はありませんが、ややグロテスクな表現や過激な思想が含まれます。 良ければ感想ください。誤字脱字誤用報告も歓迎です。

神速の成長チート! ~無能だと追い出されましたが、逆転レベルアップで最強異世界ライフ始めました~

雪華慧太
ファンタジー
高校生の裕樹はある日、意地の悪いクラスメートたちと異世界に勇者として召喚された。勇者に相応しい力を与えられたクラスメートとは違い、裕樹が持っていたのは自分のレベルを一つ下げるという使えないにも程があるスキル。皆に嘲笑われ、さらには国王の命令で命を狙われる。絶体絶命の状況の中、唯一のスキルを使った裕樹はなんとレベル1からレベル0に。絶望する裕樹だったが、実はそれがあり得ない程の神速成長チートの始まりだった! その力を使って裕樹は様々な職業を極め、異世界最強に上り詰めると共に、極めた生産職で快適な異世界ライフを目指していく。

ブラック宮廷から解放されたので、のんびりスローライフを始めます! ~最強ゴーレム使いの気ままな森暮らし~

ヒツキノドカ
ファンタジー
「クレイ・ウェスタ―! 貴様を宮廷から追放する!」  ブラック宮廷に勤めるゴーレム使いのクレイ・ウェスターはある日突然クビを宣告される。  理由は『不当に高い素材を買いあさったこと』とされたが……それはクレイに嫉妬する、宮廷魔術師団長の策略だった。  追放されたクレイは、自由なスローライフを求めて辺境の森へと向かう。  そこで主人公は得意のゴーレム魔術を生かしてあっという間に快適な生活を手に入れる。    一方宮廷では、クレイがいなくなったことで様々なトラブルが発生。  宮廷魔術師団長は知らなかった。  クレイがどれほど宮廷にとって重要な人物だったのか。  そして、自分では穴埋めできないほどにクレイと実力が離れていたことも。  「こんなはずでは……」と嘆きながら宮廷魔術師団長はクレイの元に向かい、戻ってくるように懇願するが、すでに理想の生活を手に入れたクレイにあっさり断られてしまう。  これはブラック宮廷から解放された天才ゴーレム使いの青年が、念願の自由なスローライフを満喫する話。 ーーーーーー ーーー ※4/29HOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝! ※推敲はしていますが、誤字脱字があるかもしれません。 見つけた際はご報告いただけますと幸いです……

無人島Lv.9999 無人島開発スキルで最強の島国を作り上げてスローライフ

桜井正宗
ファンタジー
 帝国の第三皇子・ラスティは“無能”を宣告されドヴォルザーク帝国を追放される。しかし皇子が消えた途端、帝国がなぜか不思議な力によって破滅の道へ進む。周辺国や全世界を巻き込み次々と崩壊していく。  ラスティは“謎の声”により無人島へ飛ばされ定住。これまた不思議な能力【無人島開発】で無人島のレベルをアップ。世界最強の国に変えていく。その噂が広がると世界の国々から同盟要請や援助が殺到するも、もう遅かった。ラスティは、信頼できる仲間を手に入れていたのだ。彼らと共にスローライフを送るのであった。

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位

処理中です...