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【250】 あの場所にて

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 セイフの街を出る前、レベル売買をした際に『バイオレットダンジョン』の位置情報を入手した。あのお客さんの中に同じダンジョンを目指す人が多数いたから、助かったな。

「中立国・サテライトの少し南方なのですね。その奥地にある森に隠された遺跡があって、でもそれは偽物で……その更に奥にある滝の裏側にあるのがバイオレットダンジョンと……そんな場所に隠されていたとは驚きです」


 ルナが驚いていた。
 俺もビックリしたけどな。滝の裏にダンジョンなんて初耳だ。しかも『デビルフォール』なんて……何だか不吉すぎる名称だ。なんでそんな名前を付けたかな。

 けれど、今や結構な中堅ちゅうけん・大手ギルドが殺到しているらしいし、攻略もどんどん進んでいるようだ。その中に例の『セレネイド』も含まれているだろう。


 とにかく、そのダンジョンを目指して森を歩いていた。この森は、かつて俺とルナの出会った場所でもある。

 チラッと横顔を盗み見ると、ルナは俺の視線に気づいて微笑む。どうやら、ルナも同じ気持ちらしく、ちょっと照れ臭そうだった。そして、まさにその現場に辿り着く。またこの場所に来るとはな。


「……ん、どうしたの? お兄ちゃんもルナさんも」


 何事かとミーティアは困惑する。事情を知らないソレイユとペイルさんもハテナ状態だ。そうだろうね、話していないし。でも、良い機会だ、俺とルナの出会い話を軽く教えておくか。


「実はな――」


 この森でルナに助けられ、セイフの街で商売を始めた事、それをきっかけにソレイユやミーティアと出会い、そして、イルミネイトを作った裏話をした。


「いや、あたしは知ってたけどね!?」


 突っ込んでくるソレイユ。
 ああ、なんだ、知ってたのか。帝国の騎士――しかも皇族と繋がりの強い大貴族の『エクリプス家』なのだから知っていて当然か。ルナとは子供の頃からの付き合いらしいし。

「ええ。ソレイユに送り出され、わたしは海人様と出逢えたのですよ。もちろん、他の方の助力もありますけれど……ソレイユがいなければ今のわたしは無かったでしょう」


 へえ、それは知らなかったな。
 詳しく聞く所によればソレイユがルナの背中を押したらしい。それは意外というか何というか。過去どんなやり取りがあったか分からなけど、ちょっと気になるな。


「さて、行こうか。本来の目的を果たそう」


 俺が提案すると、皆歩き出した。でも、ルナだけは俺の前で立ち止まる。赤い瞳をこちらへ静かに向け、ただ見つめて来ていた。


「海人様、ありがとうございます」
「礼を言うのは俺の方さ。いつもありがとう」


 お互いに礼を述べてしまい、何だか不思議な空気に包まれていた。あまりに変だったから、一緒になって苦笑する。


「行こうか、ルナ」
「はい、海人様。ずっと……出来れば永遠に、この手を貴方あなた様に引いて欲しいのです」


 あの日の雨の様に右手を差し出され――俺はその輝かしい白い手を握った。そうだ、今度は俺が引っ張っていく。


 ◆


 森には危険すぎるモンスターが生息している。当たり前のように襲って来るので、対処する必要があるわけだが……。


「蛇系のモンスター『デッドリーパイソン』か。デカいな! しかも『Lv.3300』と中ボスレベル並。皆、気を付けろ! コイツは猛毒の牙を持っているからな」


 ――と、ミーティアが教えてくれた。スキル『モンスター解析』があるので、それで詳細が分かるのだ。しかも魔法を展開し、パイソンにダメージを与えていた。さすが我が妹、万能ダークエルフだな!


 だが、デッドリーパイソンの耐久力はかなりあるようだ。ただデカイだけの蛇ではないらしいな。


「う~ん、この蛇って魔法防御力MDEF高すぎ~!」


 相性が悪いのだろう、ミーティアの魔法はイマイチだった。こんな事もあるんだな。あと場所の所為せいもあり、本気を出せないのもあるんだろうな。狭い森の中なので大魔法なんて放てば被害が甚大じんだいだから、中~上級魔法しか発動出来ていなかった。

 となると、前衛である俺、ソレイユ、ペイルさんでデッドリーパイソンを討伐するしかない。


「ミーティア、下がれ。ルナ、支援を頼む」
「分かりました。グロリアスブレッシングとグロリアスアジリティです……!」


 二つの全体支援スキルが掛かる。
 パーティ全員が恩恵おんけいを受けた。

 ブレッシングは基本能力を底上げし、単純に三倍にする効果。アジリティは移動速度と攻撃速度をアップする効果があった。これが有ると無いではかなりの違いがあった。そもそも、ルナの使うのは大賢者の『グロリアス』の付く超上位スキル。

 シマープリーストにしか使えない特殊聖属性魔法。だからこそ、頂点に立つ聖職者なわけだ。


「よし、このまま押し切る。ソレイユ、頼めるか……? いや、お前に頼みたい」
「うーん、蛇は苦手なのよねえ。しかも、あんな大木のようにデカいし……あぁ気持ち悪い。でもアレ、倒したら経験値もガッポリよね。うん、頑張る」


 聖剣マレットを構え、一歩前へ出るソレイユさん。どうやら、やってくれるらしいな。俺はもちろん『レベル売買』スキルを使う。


「ああ、頼む。ペイルさんは俺の指示を待ってくれ」
「了解した。……にしてもカイト、貴方は素晴らしい指揮能力を持っているな。こんな見事に仲間を纏め上げるとは、感服だ」


 そう脱帽され、俺は悪い気はしなかった。


「まあ、皆大切な部下であり、仲間だからな。死なせるワケにはいかないし、その為に必死にもなるさ」

「そうか、頼もしいな。そして、羨ましくもある……私ももっと早く貴方と出逢えていればな……運命は残酷だな」

「かもな。けど、今は仲間だし、助け合う時だ。さあ、蛇野郎の攻撃が来るぞ……! ここを突破して、ダンジョンへ行く。もう直ぐそこだからな、絶対に倒す」


 聖剣マレットを持つソレイユが疾風となり、動き出す。俺は同時にスキルを発動する。敵のスキルレベルを下げる為に――!
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