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【213】 新しい日々を
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イルミネイトへ入り、久しぶりに自室へ。
「ふぅ、やっぱり我が家は落ち着く」
「そうですよね。このお店が一番です」
今まで色々あったけれど、ようやく平和が戻った。最強ギルド・シャロウは正式に解体され、他に所属したメンバーも残らず解散させられ、散り散りに。なにかも消え去った。
「幹部メンバーも海底監獄送りか」
ルナから聞かされ、俺は少し溜息をつく。
アトモスフィア、バオ、コレリック、エフォールは、帝国・レッドムーンで散々暴れた過去もあり、また、世界を陥れようとした罪もあって『大罪人指定』となったようだ。
「――となると、もう会う事もないか」
「ええ、海底監獄に収監されると、二度と地上へは戻ってこれないです。一生を海底で過ごすんです……」
しかも、その海底監獄はあの大賢者パラディ・アプレミディ卿が監修しており……脱獄不可能になっている。そもそも、脱獄しようものなら、海底の水圧で押しつぶされて死ぬ。テレポート不可能領域にもなっているから、転移系スキル・アイテムも使用不可能。
だから、もう出て来れない。
「そうか。シャロウはこれでもう……」
「最強ギルドは消えてなくなりました。もう、カイト様を縛る物はありませんし、悩む必要もないんです」
「ああ、肩の荷が下りたよ。気が楽になった」
となると、後は王子か。
「アズールはどうなった?」
「中立国乗っ取りとか彼も罪が多かったので……。オルビス騎士団が詳しく取り調べを進めていくと彼は観念し、ベルガマスクやブラック卿との共謀やら白状していたんですが、次第に、白髪になるほどに精神的ショックを受け――今は精神病院へ移されたようですね」
……そんな事に。
自業自得としか言いようがない。
――三日後――
イルミネイトのミーティアの部屋で、今後の話を聞いていた。
「……ミーティアがクラールハイト家へ?」
「違うよ、クラールハイトじゃなくて『ムンドゥス』だよ~」
そうだった。
今はクラールハイトではなく、ムンドゥスと名を変えていた。つまり、ミーティア・ムンドゥスとなるわけだが――慣れないなあ。
「もうクラールハイトじゃないからね。私には私の色があるし、新しい貴族として頑張っていく」
「そうかぁ、淋しくなるなあ」
「?」
首を捻るミーティアは、不思議そうに俺を見ていた。あれ……なんか違ったか?
「えっと、あれ……ミーティアは、その元クラールハイトのムンドゥス家へ戻るんじゃないの?」
「そんなワケないよ~。ただ名前を変えただけ。あの家はメイドさんとかいっぱいいるし、管理は任せてる。だからね、たまに遊びに行けるよ。ムンドゥス家は、私とお兄ちゃんの家でもあるんだよ」
そう抱きつかれ、俺は動揺した。
マジか!
「まあ、ミーティアが良いなら良いか」
「うん、良いんだよ~。だから、私はイルミネイトっというか、カイトの傍にいるよ。だって離れたくないもん」
「おう、俺もだ」
優しく金色の頭を撫でてあげた。
ミーティアは気持ちよさそうにして、眠たそうに可愛い欠伸をした。……そうだな、この子は俺の妹だ。
そうそう、ミーティアの借金は俺がきちんと返済した。コレリックは収監されてしまったので、存続している『ファルベ家』に対して二億をキッチリ、耳揃えて完済した。
ファルベ家の方は、今回の戦争の件もあり、かなり危機的状況だったようで――二億が皮肉にも存続の糧となったようだ。
ファルベ家にとって、これは屈辱の極みとなったが……不気味なくらい大人しく、中立国・特区で立て直しているようだ。
「……寝たか」
俺の膝の上で寝てしまったミーティアをベッドへ寝かせた。なんて可愛い寝顔だ。この笑顔の為なら、俺はまだまだ『レベル売買』の商売を続けられる。
◆
部屋を出て――一階へ降りれば、既にお客様の姿がチラホラ。今日もレベルを求めて来た冒険者で溢れかえっていた。
「カイト様、お客様がお見えですよ」
ルナのエンジェルスマイルでまずは迎えられ、俺のやる気は一層アップした。よぉし、過去最高の売り上げを叩き出してやる。
「平和になったはずなのに、どうしてこうお客が多いのよ~…!」
頭を抱えるソレイユは混乱気味だった。
戦争が終わったからこそだろう。
ずっと戦争の舞台となっていた『クラウソラス高原』付近には近寄れなかった。そのせいで、今まで行けなかったフィールドダンジョンも多かったらしい。攻略を目指す冒険者が増えてしまった結果、こうなったと。
「新ダンジョンの難易度がやたら高いんだってさ、ワンダから聞いたよ。レベル5000以上が推奨されているんだってさ」
「そんなにー! ……でも需要あるんだし、お金になるんだし……頑張らなきゃね」
「そうだ、ソレイユ。今日が無事に終わったら、明日は休業にしてパ~っとやろうぜ」
サムズアップを交わし、気合を入れた。
「ルナ、準備はいいね」
「ええ、わたしはいつでも大丈夫です」
さっそくお客様を迎えよう。
レベル売買開始だ。
「ふぅ、やっぱり我が家は落ち着く」
「そうですよね。このお店が一番です」
今まで色々あったけれど、ようやく平和が戻った。最強ギルド・シャロウは正式に解体され、他に所属したメンバーも残らず解散させられ、散り散りに。なにかも消え去った。
「幹部メンバーも海底監獄送りか」
ルナから聞かされ、俺は少し溜息をつく。
アトモスフィア、バオ、コレリック、エフォールは、帝国・レッドムーンで散々暴れた過去もあり、また、世界を陥れようとした罪もあって『大罪人指定』となったようだ。
「――となると、もう会う事もないか」
「ええ、海底監獄に収監されると、二度と地上へは戻ってこれないです。一生を海底で過ごすんです……」
しかも、その海底監獄はあの大賢者パラディ・アプレミディ卿が監修しており……脱獄不可能になっている。そもそも、脱獄しようものなら、海底の水圧で押しつぶされて死ぬ。テレポート不可能領域にもなっているから、転移系スキル・アイテムも使用不可能。
だから、もう出て来れない。
「そうか。シャロウはこれでもう……」
「最強ギルドは消えてなくなりました。もう、カイト様を縛る物はありませんし、悩む必要もないんです」
「ああ、肩の荷が下りたよ。気が楽になった」
となると、後は王子か。
「アズールはどうなった?」
「中立国乗っ取りとか彼も罪が多かったので……。オルビス騎士団が詳しく取り調べを進めていくと彼は観念し、ベルガマスクやブラック卿との共謀やら白状していたんですが、次第に、白髪になるほどに精神的ショックを受け――今は精神病院へ移されたようですね」
……そんな事に。
自業自得としか言いようがない。
――三日後――
イルミネイトのミーティアの部屋で、今後の話を聞いていた。
「……ミーティアがクラールハイト家へ?」
「違うよ、クラールハイトじゃなくて『ムンドゥス』だよ~」
そうだった。
今はクラールハイトではなく、ムンドゥスと名を変えていた。つまり、ミーティア・ムンドゥスとなるわけだが――慣れないなあ。
「もうクラールハイトじゃないからね。私には私の色があるし、新しい貴族として頑張っていく」
「そうかぁ、淋しくなるなあ」
「?」
首を捻るミーティアは、不思議そうに俺を見ていた。あれ……なんか違ったか?
「えっと、あれ……ミーティアは、その元クラールハイトのムンドゥス家へ戻るんじゃないの?」
「そんなワケないよ~。ただ名前を変えただけ。あの家はメイドさんとかいっぱいいるし、管理は任せてる。だからね、たまに遊びに行けるよ。ムンドゥス家は、私とお兄ちゃんの家でもあるんだよ」
そう抱きつかれ、俺は動揺した。
マジか!
「まあ、ミーティアが良いなら良いか」
「うん、良いんだよ~。だから、私はイルミネイトっというか、カイトの傍にいるよ。だって離れたくないもん」
「おう、俺もだ」
優しく金色の頭を撫でてあげた。
ミーティアは気持ちよさそうにして、眠たそうに可愛い欠伸をした。……そうだな、この子は俺の妹だ。
そうそう、ミーティアの借金は俺がきちんと返済した。コレリックは収監されてしまったので、存続している『ファルベ家』に対して二億をキッチリ、耳揃えて完済した。
ファルベ家の方は、今回の戦争の件もあり、かなり危機的状況だったようで――二億が皮肉にも存続の糧となったようだ。
ファルベ家にとって、これは屈辱の極みとなったが……不気味なくらい大人しく、中立国・特区で立て直しているようだ。
「……寝たか」
俺の膝の上で寝てしまったミーティアをベッドへ寝かせた。なんて可愛い寝顔だ。この笑顔の為なら、俺はまだまだ『レベル売買』の商売を続けられる。
◆
部屋を出て――一階へ降りれば、既にお客様の姿がチラホラ。今日もレベルを求めて来た冒険者で溢れかえっていた。
「カイト様、お客様がお見えですよ」
ルナのエンジェルスマイルでまずは迎えられ、俺のやる気は一層アップした。よぉし、過去最高の売り上げを叩き出してやる。
「平和になったはずなのに、どうしてこうお客が多いのよ~…!」
頭を抱えるソレイユは混乱気味だった。
戦争が終わったからこそだろう。
ずっと戦争の舞台となっていた『クラウソラス高原』付近には近寄れなかった。そのせいで、今まで行けなかったフィールドダンジョンも多かったらしい。攻略を目指す冒険者が増えてしまった結果、こうなったと。
「新ダンジョンの難易度がやたら高いんだってさ、ワンダから聞いたよ。レベル5000以上が推奨されているんだってさ」
「そんなにー! ……でも需要あるんだし、お金になるんだし……頑張らなきゃね」
「そうだ、ソレイユ。今日が無事に終わったら、明日は休業にしてパ~っとやろうぜ」
サムズアップを交わし、気合を入れた。
「ルナ、準備はいいね」
「ええ、わたしはいつでも大丈夫です」
さっそくお客様を迎えよう。
レベル売買開始だ。
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