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【197】 星力

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 聖歌『グロリア』が鼓膜こまくを刺激した。
 この可愛い鼻歌は、ルナだ。

 上機嫌に部屋の掃除とかしているらしく、俺は薄っすらまぶたを開けて状況を理解した。


「……そか、俺、夢でじっちゃんと……」


 大賢者がじっちゃんだったとはな。
 どうして夢に出現し、俺に教えてくれたのかさだかではない。何れ教えてくれる機会もあるだろうけれど――今は、とにかく。


 こっそり起き上がって、ルナの背後に向かった。それから狙いを定めて、後ろから――。


「愛しているよ、ルナ」
「――きゃぁっ、カイト様!? お、起きておられたのですね……心臓がばくばくしました。酷いですよ、もう。でも、嬉しいです。わたしもカイト様を愛しています」


 むすっとふくらむルナだったが、直ぐに表情を切り替えて笑った。


「ごめんな」
「いえ。……あ、そうでした。ワンダがお待ちしておりますよ」
「そうだったな。詳しい事を聞かないと」

「これからの事をお話になられるのでしょう……イルミネイトの存続にも関わるかもしれません。共和国と中立国の動きも活発になっておりますし」


 最近では、ギルド『エルドラード』の不穏な動きもあった。エーデルにノーブルの出現。この分だと、ギルドマスターのオールも姿を現すかもしれない。

 大事に……いや、なってるけど、もっと酷い状況になる前に対策をせねば。

 その為にもワンダから情報を提供してもらう。


「行こう」
「ええ」


 ◆


 一階の食堂に集まると、既にソレイユとミーティア、そして、ワンダとリーベの姿があった。みんなこちらに注目し、特に俺に視線が集まった。そう見られると照れるというか……。


「みんな集まっているな。ワンダ、さっそく話を聞かせて貰うぞ」

「承知した」


 席へつくと、さっそく話が始まった。


「――まず、エルドラードはブルームーン側だ。というか、元から青側だな。彼等は、レッドムーンへ復讐したかったようだな」


「復讐だと?」


「ああ、この拠点を持っていたのもその為だ。かつて、エルドラド族は、レッドムーンと深い関係あった。オルビスに仕えていたのだよ」


 なんだって……初耳だぞ。
 一方、ルナは知っているようで驚く素振りもなかった。いつになく冷静で、皇女の顔をしているようにも見えた。


「エルドラド族は、星力テアという奇跡の力を持っていた。誓約の力だ。我々は、月と太陽から魔力を得ている。だから誓約は『星力テア』となるのだ」

「よ、よく分からん」


 隣に座るソレイユがひじで小突いて来た。


「カイト、前に言ったでしょ。星力テアは一部の者しか知らないって」
「あ、そか」

「そう、一部の権力者に伝えられた力だ。それを伝授してくれたのがエルドラド族。おかげで、オルビスは力を手に入れ、大きく成長を遂げた。やがて、大きくなり過ぎたオルビスは力を……リスクを分散させるべく『七つの貴族』に振り分けたのだよ。
 それからだ。エルドラド族と決裂したのは――」


「どうして喧嘩別れしちまったんだよ」

「そうではない。エルドラド族が力を伝授した見返りを欲したのだよ」


「……何を?」

「更なる力を」


 ワンダは俺を見た。
 俺?


「月と太陽の誓約だ。千年も達成されず、放置されていたクエストをヤツ等は欲した。その意図を汲んだ初代オルビス王は拒絶した。何故なら、それは『原初』への到達を意味していたからだ。それに触れるという事は、神になるに等しい行為。だが、実際は――」


 また俺を見て来た。
 ……ああ、俺が召喚されたって事ね。


「それからだ。彼等は独立し、共和国・ブルームーンを建国した。ここ数十年、海の向こうにある国々を治めるは、エキナセア姫。エキナセア・ヘブンリーだ。今や、世界最強ギルド・シャロウと手を組み、中立国・サテライトさえ我が物とした姫君さ」


 驚いた。そこまで調べ上げていたとは。
 予想以上の情報量に俺は驚くばかりだった。


「そういう事だったとはな」
「ここからだ本題だ」


 そうだな、まだブラック卿やベルガマスク・セルリアンについて聞いていない。アトモスフィアの事も。ヤツ等はこれからどう動いて来るのだろうか。


「教えてくれ、ワンダ」
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