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【185】 スキルレベルアップ

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 アトモスフィアの実力は未知数。
 シャロウに所属していたあの頃は、一度しか彼女の力を目撃していない。記憶が確か・・ならな。


「ひとつだけ聞く。この計画はお前のか? 共和国ブルームーンか? 中立国サテライトか? それとも、あのブラック卿か……」


「計画などない。全ては『誓約』と『融合』の導き。全ての者に、全ての世界にへだたりのない、レベルなき世界を再構築する。そして、人種の垣根を越えた種族の融合……全人類をエルフ、いや、ダークエルフにする。それが平等にして公平な世界。戦争も憎しみの無い、差別なき世界が生まれるのだ」


 それが、コイツの目指す世界か。
 でもそれは……結局、コイツが得をするディストピアだ。そもそも、ダークエルフにする? なぜ、ダークエルフなんだ。


「もういい、アトモスフィア。お前が世界をおとしいれるというのなら、俺が阻止そしする」


 自身のレベルは『9999』、敵は『1』しかない。けれど、装備によるステータス補正によって、アトモスフィアに軍配が上がっている。
 武器も防具もレベルが存在しているが、それを下げたところで微々びびたるモノ。ならば、俺のレベルを信じ、物理攻撃でヤツをたおす。


「――ほう、カイト。その赤い刃の短剣でこの私に挑むか」

「お前を止める――!!」


 ルナの横を通り過ぎて、俺は一気にアトモスフィアの前へ。グラディウスを振り下ろすが――ベルガマスクにはばまれた。あのミーティアが見せてくれた映像にあった、バリアのようなもので防御ガードされた。


「カイト、お前のうわさは聞いている。レベル売買スキル、聞いていたより脅威は感じない。その脆弱ぜいじゃくな力で挑もうなど片腹痛い!」

「勝手に俺の女を呼び捨てにすんな、この脱獄者!」


 両手で力をめていく。
 すると、剣先がわずかに通っていく感覚があった。

 手応え有り!


「くっ、貴様!」
「商人を舐めんなよ!!」


 俺とベルガマスクの膠着こうちゃく状態が続いていると、アトモスフィアが宙から飛んで来やがった――クソ!


「させませんよ」
「チッ……」


 ルナが対応してくれた。ありがたい!

 その隙に俺は全身全霊でナイフを落とし、青いバリアを破った。


「くぉ……ッ!!」
「ベルガマスク! お前の、負けだ!!」


 零距離攻撃で俺は――



『――――――アルフォズル!!!』



 唯一の一撃必殺スキルを放った。


「ぐあぁぁぁぁぁぁ…………!!」


 地面にめり込むベルガマスクは、大きなクレーターに沈んだ。あとは、アトモスフィアだが――。


「残念だが、これまでだ」
「逃がすかよ……!」
「逃げるのではない。転進さ」


 屁理屈へりくつを!
 俺は、二発目のスキル発動に備えた。
 これでヤツを再起不能にする。


「カイト様、わたしも……!」


 そばに戻って来たルナは、俺の手を握った。それに応え、力を合わせようと誓う。

「お願いです、わたしのレベルを最大カンストにして下さい」

「……! だが!」

「大丈夫。戦闘が終わった直後にレベルを下げて戴ければ、呪いは免除されるはず。それに、わたしはカイト様を信じている。貴方を愛しているから――」


 これしか方法はないという事か。


「分かった……レベルアップ!」


 ルナのレベルが『999』を初めて超える。

 1000、3000、5000、8000……そして、9999となった。


「この感じ……久しぶりです」

 その一つ一つの動作に重みを感じた。
 俺なんかよりも、よっぽどの力を感じた。自分も9999のはずなんだがな。やはり、商人とシマープリーストでは、大きなへだたりがあるらしい。


「行きましょう」


 赤ではなく、黒き月が顕現けんげんし、アトモスフィアに対し、えた。


「では、こちらも相応の礼儀をもって迎えてやろう」


 ごうっと光る緑。

 なんて力だ。大気が震える程にうなっている。

 けれど、こちらはそれを覆うように黒く染まっていく。


 ルナは俺の手を握ったまま、片方の手を伸ばす。


 そして――、




『グロリアスオッフェルトリウム』




 黒い光が向かっていく。
 対し、アトモスフィアも――




『――――――コンステレーション』




 衝突する黒と緑。
 激しい光が拮抗きっこうする。


「……く」


 なんて力だ。アトモスフィアの力がこれ程とは……しかも、押されつつあった。これでも足りないのか。俺もルナも『Lv.9999』だぞ。


 どうしてだ。
 なにが違う。


 俺達とアトモスフィアの何が――。



「……」



 俺に出来る事といえば『レベル売買』という特異なスキルだけ。そう、これが俺に許された唯一の能力スキル


 ヤツはなんて言った?


 神の力?


 ――違う、そうじゃない。



 これは大切な人を守る力だ。


 だから、俺は……!


 以前、ルナから『武器レベル操作』を貰った時、同時に『スキルレベルアップ』も習得していた。いくつか獲得した内のひとつだ。

 これを使う。


 ★★★ ★★★ ★★★ ★★★ ★★★

【スキルレベルアップ】Lv.1(MaxLv.1)
【系列】補助
【習得条件】月の加護
【効果】
 対象:スキル

 対象一名のスキルレベルをアップする。

 スキルがMaxレベルの場合、操作不可。
 スキルレベルを下げる事は出来ない。

 使用手数料はない。
 クールタイム:10分

 ★★★ ★★★ ★★★ ★★★ ★★★


 対して『グロリアスオッフェルトリウム』はLv.9999まで存在する超高火力の魔法攻撃。ルナにく所によれば、現在は『3000』レベルジャストだという。


 ならば……!


「スキルレベルアップ……!」
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