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【144】 新しいお店
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帝国・レッドムーン『N地区』の中央広場へ向かった。進むにつれ、人間の往来も多くなる。大きな建物も密集して、買い物客で賑わっていた。
こう人間の波が続くと、迷ってしまう恐れもある。ので、俺は一番背の低く、見失う可能性の高いミーティアを保護する為に手を繋いだ。
「……カイト、その」
「こんな荒波で見失ったら大変だからな。それに、転倒して踏まれでもしたら、大ケガだぞ」
「ありがと……です」
嬉しそうにして、ぎゅっと手に力が入る。
頬が真っ赤だな。
元エルドラードの建物は、もう直ぐだ。
有名なお菓子屋と宝石店、ちょうど武具店も建ち並ぶ、そんな大手ショップに挟まれるようにある建物。少し前までは、そこにギルドがあった。
エルドラード。
彼等は『武器商人』ギルド。
宝剣、宝斧、宝杖、宝弓、宝槍など、やたら金ピカな武器を製造し、皇帝陛下に献上していると聞いた。その収入は莫大だったと小耳に挟んだ。
そして、ギルドメンバーは、なんとたったの三人しかいない。
ギルドマスターの『オール』。
メンバーの『ノーブル』と『エーデル』、二人は兄妹だ。
俺の知っている情報はこれくらいだった。
だが、追放された。
まさか、シャロウと手を組んでいたとはな。
――さて、到着。
四人で並んで、その建物を見上げた。
「おぉ」
「大きいです」
「これは驚いたわ」
「立派ですね」
俺、ルナ、ソレイユ、ミーティアの順に驚く。
そのイルミネイトとなる建物は、五階建て。
縦に長く、他の店に勝るとも劣らない頑丈な作り。……多分、木造じゃないぞ。これは、石造。あの巨大塔・オルビスにも使われているローマン・コンクリートだろう。
耐震性にも優れ、防音も完璧と聞く。
そんな家は初めてだから、胸が躍るな。
ミーティアの手を引っ張りながら、店の出入り口へ向かう。この大きな扉、観音開きタイプのフレンチドアこそ、玄関口。これから俺たちが出たり入ったり――お客様を迎える通路になる。
「入ろう」
◆
いきなり大きな階段が俺たちを迎えた。
二階へ続くレッドカーペット。その幅は人間五人分以上だろうか……なんて広さ。
「まるで貴族の家ね」
まさに貴族のソレイユがそんな感想を。
すぐ隣に客室のような部屋がいくつかあった。ミーティアが既に俺から離れ、部屋を探索していた。落ち着きのない……いやでも、この規模の家を見せられては、テンションも上がる。
「カイト! 部屋の数が凄いです! どこも広いし……高級な机や椅子が沢山。便利な魔導具もあっちこっちに」
これはトニーの趣味だろうな。
以前のエルドラードの内装とはまるで違っていたからな。そんな風に頭を巡らせていると、ミーティアはどんどん奥へ。二階まで行ってしまった。本当に落ち着きのない。
ソレイユも「ちょっと行ってくるわ~」と爽やかに二階へ。
やっぱり、みんな二階が気になるんだな。
でもなあ、この建物は五階まであるからな。上がっていくのも大変だが、掃除とかも大変だぞ。人手が欲しいかもな。
そんなわけで、俺とルナの二人きりとなった。
「俺たちも二階へ行くか」
「ええ。そ、その……よろしければ、お手を」
俺の拳に手を添えてくるルナ。なんだかギコチナイな。あー…、そっか。さっきまでミーティアを引っ張っていたからな。ずっと視線を感じていたけど、ルナだったか。口数も少なかったしな。
「お姫様、お手を」
「ありがとうございます、カイト様」
ルナの細くて白い手を優しく取って、階段を上がっていく。ゆっくりと上がっていったつもりだったが――突然、ルナが足を滑らせた。
俺の方にルナが。
「……え、ルナ?」
「ご、ごめんなさい」
ひょっとして……わざとだろうか。
もしかして、寂しかったのかな。こうわざとらしいと、ちょっと嬉しいっていうか――あれぇ、なんか抱きつかれたし。
「ルナ!?」
ふわっとした感触が俺を包む。
「やっとお店が開けますね」
「……そうだな、イルミネイト復活だよ」
「わたしは嬉しいのです。またお店が開けて、みんなと一緒に過ごせる……何よりもカイト様のお傍にいられる事が幸せです」
それは俺も同じ気持ちだ。
でも、まだお店はこれからだ。
「ああ。でも、これは小さな一歩だが、大いなる一歩でもある」
いつしかの、ワンダの言葉だった。
それを引用した。
というか、この名言が割と気に入っていた。
それからルナは顔を近づけて――
俺の頬にキスを――。
「ここまでのご褒美ですよ」
ま、まさか……ご褒美をくれるなんて。
嬉しすぎる。
ここまで頑張った甲斐があったな。
でも、まだこれからだ。
さあ、始めよう――『レベル売買』を。
こう人間の波が続くと、迷ってしまう恐れもある。ので、俺は一番背の低く、見失う可能性の高いミーティアを保護する為に手を繋いだ。
「……カイト、その」
「こんな荒波で見失ったら大変だからな。それに、転倒して踏まれでもしたら、大ケガだぞ」
「ありがと……です」
嬉しそうにして、ぎゅっと手に力が入る。
頬が真っ赤だな。
元エルドラードの建物は、もう直ぐだ。
有名なお菓子屋と宝石店、ちょうど武具店も建ち並ぶ、そんな大手ショップに挟まれるようにある建物。少し前までは、そこにギルドがあった。
エルドラード。
彼等は『武器商人』ギルド。
宝剣、宝斧、宝杖、宝弓、宝槍など、やたら金ピカな武器を製造し、皇帝陛下に献上していると聞いた。その収入は莫大だったと小耳に挟んだ。
そして、ギルドメンバーは、なんとたったの三人しかいない。
ギルドマスターの『オール』。
メンバーの『ノーブル』と『エーデル』、二人は兄妹だ。
俺の知っている情報はこれくらいだった。
だが、追放された。
まさか、シャロウと手を組んでいたとはな。
――さて、到着。
四人で並んで、その建物を見上げた。
「おぉ」
「大きいです」
「これは驚いたわ」
「立派ですね」
俺、ルナ、ソレイユ、ミーティアの順に驚く。
そのイルミネイトとなる建物は、五階建て。
縦に長く、他の店に勝るとも劣らない頑丈な作り。……多分、木造じゃないぞ。これは、石造。あの巨大塔・オルビスにも使われているローマン・コンクリートだろう。
耐震性にも優れ、防音も完璧と聞く。
そんな家は初めてだから、胸が躍るな。
ミーティアの手を引っ張りながら、店の出入り口へ向かう。この大きな扉、観音開きタイプのフレンチドアこそ、玄関口。これから俺たちが出たり入ったり――お客様を迎える通路になる。
「入ろう」
◆
いきなり大きな階段が俺たちを迎えた。
二階へ続くレッドカーペット。その幅は人間五人分以上だろうか……なんて広さ。
「まるで貴族の家ね」
まさに貴族のソレイユがそんな感想を。
すぐ隣に客室のような部屋がいくつかあった。ミーティアが既に俺から離れ、部屋を探索していた。落ち着きのない……いやでも、この規模の家を見せられては、テンションも上がる。
「カイト! 部屋の数が凄いです! どこも広いし……高級な机や椅子が沢山。便利な魔導具もあっちこっちに」
これはトニーの趣味だろうな。
以前のエルドラードの内装とはまるで違っていたからな。そんな風に頭を巡らせていると、ミーティアはどんどん奥へ。二階まで行ってしまった。本当に落ち着きのない。
ソレイユも「ちょっと行ってくるわ~」と爽やかに二階へ。
やっぱり、みんな二階が気になるんだな。
でもなあ、この建物は五階まであるからな。上がっていくのも大変だが、掃除とかも大変だぞ。人手が欲しいかもな。
そんなわけで、俺とルナの二人きりとなった。
「俺たちも二階へ行くか」
「ええ。そ、その……よろしければ、お手を」
俺の拳に手を添えてくるルナ。なんだかギコチナイな。あー…、そっか。さっきまでミーティアを引っ張っていたからな。ずっと視線を感じていたけど、ルナだったか。口数も少なかったしな。
「お姫様、お手を」
「ありがとうございます、カイト様」
ルナの細くて白い手を優しく取って、階段を上がっていく。ゆっくりと上がっていったつもりだったが――突然、ルナが足を滑らせた。
俺の方にルナが。
「……え、ルナ?」
「ご、ごめんなさい」
ひょっとして……わざとだろうか。
もしかして、寂しかったのかな。こうわざとらしいと、ちょっと嬉しいっていうか――あれぇ、なんか抱きつかれたし。
「ルナ!?」
ふわっとした感触が俺を包む。
「やっとお店が開けますね」
「……そうだな、イルミネイト復活だよ」
「わたしは嬉しいのです。またお店が開けて、みんなと一緒に過ごせる……何よりもカイト様のお傍にいられる事が幸せです」
それは俺も同じ気持ちだ。
でも、まだお店はこれからだ。
「ああ。でも、これは小さな一歩だが、大いなる一歩でもある」
いつしかの、ワンダの言葉だった。
それを引用した。
というか、この名言が割と気に入っていた。
それからルナは顔を近づけて――
俺の頬にキスを――。
「ここまでのご褒美ですよ」
ま、まさか……ご褒美をくれるなんて。
嬉しすぎる。
ここまで頑張った甲斐があったな。
でも、まだこれからだ。
さあ、始めよう――『レベル売買』を。
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