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番外編③

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 新郎に化けていた魔王の大幹部・イエローファングは、フォースに襲い掛かり、あと寸でのところで彼女の喉元を切り裂こうとしたが――ソウルフォースの力で強く、激しく突き飛ばされて、地面に激突した。


「ぐわぁぁぁ……っ!!」


 フォースはそのままゆっくり歩き、敵に掌を向けつつプレッシャーを与え続けては、ノックバックで追い詰めていた。敵との距離がどんどん遠くなっていく。大幹部が米粒になってらあ。

「おぉ、相変わらずスゲェ威力だ。さすが極魔法使いアルティメットウィザードだ。――さて、今度こそ決着ケリをつけてやる」


 と、思ったが。


『――――――クエーサー!!!!!』


 無詠唱でスキルが発動した。
 あれは、フォースの大魔法のひとつ。

 それは赤方偏移せきほうへんいを持ち、強烈な電波エネルギーとなって敵を容赦なく穿うがった。さらに、【再生不能】の特殊状態異常を与え、イエローファングはもだえ苦しんだ。

「…………ぁ……が、ば…………か、な」

 シュワッと溶けるようにして敵は消え去った。

「よくやった、フォース。そうか、おばさんも新郎も化けていた存在だった……ん、まてよ。そうなると花嫁の方は――――ぐわぁぁぁ!?」


 体が…………俺の腹が爪でつらぬかれていた。


『フハハハハハ……油断したな小僧。我はブルーファング!! そうさ、ここにいたババア役と新郎新婦は化けていたのさ!! その姿、ざまあないねえ~~~!!!』


 やはり、おばさんも新郎新婦も……!!


「だましたな!!!」
『だまされる方が悪いのさ。それになァ、お前はもうオレ様のエサなんだよ。そんな串刺しじゃ、すぐ死ぬ。だからな、喰ってやるッ!!』

「うるせーよ。お前は小指で引き裂いてやる」

 俺は小指を突き立て、敵を威嚇いかくした。


『はァ!? 笑わせるな、小僧!! 小指で何ができ――――――』


 ブンっと下から上に軌道を描いた。
 すると、ブルーファングは真っ二つになって、地面に転がった。


『…………………………ハ?』


「どうだ、引き裂かれた気持ちは?」


『ありえん……小指でオレ様ヲ…………貴様、ナニヲシタ!?』

「なぁに、ちょっと極上の闇を、『ダークエンチャント』を指に付与しただけだ」

『……クソガアアアアアアァァ!!!』
「クソはテメェだ!! 街をメチャクチャに破壊しやがって……これは街の人の恨みだ」

『………………カハッ』


 魔剣・エクスカイザーを突き立て、敵を消滅させた。


「これで大幹部は倒しきったはずだ。もう出ないよな……?」
「大丈夫。もう気配はない」
「そうか、お疲れさん、フォース」
「……うん。肩車してくれる……?」
「いいよ。じゃ、次の街も助けに行こうか」
「うん」

 いざ旅立とうすると、ホンモノ人間の生存者がお礼を言った。

「ありがとう、勇者殿。あなたの噂はかねがね……」
「どうか魔王を倒して、世界を平和にしてください」


「…………では」

 ぺこっと頭を下げて街を出た。
 ……俺は別に勇者になりたいわけじゃなかった。でも、みんなが勇者という理想を求めてくるのだから、それを受け入れた。ただそれだけだった。

 なんて、ちょっと感傷にひたっていたら――
 フォースが俺の頬を引っ張った。

「ふぉふぃー……」
「人は人、自分は自分。ユメらしくやればいい。というか、いつのもユメでいい。だって、ユメはみんなを照らす光ではなく、この世の理にあまねく闇だから」
「それがいまいち実感が湧かないんだよなぁ。けどいいや、世界に名だたる極魔法使いアルティメットウィザード様のご助言だ。ありがたく心に留めておくよ」


 そうして、俺は次の街を救いに――その前に。

 地の神国クレドには、天然の温泉があちこちにある。

 少し寄り道をしていこう。

 最近、フォースと二人きりで温泉にかるのが日課になっていたのだ。

「温泉♪ 温泉♪」
「おいおい、人の心を勝手に読むなよ~」
「あたしとユメはソウルフォースで繋がってるもん。あと、いつか体も……♡」
「う……馬鹿。そういうのは……もうちょい成長してから言いなさい!」
「ううん~。でも温泉入ると、ユメすっごくドキドキしているよね」
「そりゃ当然だ」

「なんで~?」

「言わせんな恥ずかしい。……心を読めばいいだろ」
「そーゆーのは口に出して言って欲しいから」
「…………心を読め」

「…………。気持ちは一緒なんだね♡」
「さ、さあな」

 俺は誤魔化ごまかすようにして、先を急いだ。
 今日からフォースの甘え度が倍増したのは言うまでもあるまい。
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