上 下
157 / 177

第157話 ビギナーキラー

しおりを挟む
「この森を抜ければ、トールダンジョンだ」

 よくある迷いの森。
 ここからは、モンスターも強くなる。気を引き締めて行かねば、俺はともかく、ネーブルが危ない。


「ぶ、不気味ね」
「俺が先陣を切る。フォースは少し距離を取って魔法を、ゼファは支援を、ネーブルは俺が守るが、可能な限り戦闘もしてくれ」

「分かったわ」


 ゆっくり慎重に薄暗い森を歩いて行く。ちょっと肌寒いな……と、寒気を感じていれば、奥からモンスターらしき気配が……ん?


「――止まれ、これはモンスターじゃない。人間の気配・・・・・だ。つーか……」


 驚いた。
 まさか、あの人影は――。


「うそ……」


 ネーブルさえ驚いていた。
 あの酒場にいた男たちだったからだ。


「ようよう! 兄ちゃんよォ、それとネーブル!! 酒場ではよくもやってくれたな!!」


 部下を引き連れてやって来たらしい。つけられていたか。全員、斧を持ち、威嚇いかくしてきていた。面倒な。


「お前たちしつこいぞ」

「うるせぇ、小僧! 俺達は風の帝国キリエ近辺の初心者狩りギルド『ビギナーキラー』だぜ。でもって、俺様の名は――ぶあぁぁぁッ!!」


 フォースが右手をヤツ等に向けて『ソウルフォース』を撃ち放っていた。容赦ようしゃねぇなぁ。


「うるさい」
「うん、それは認める」


 よくぞやったとフォースを褒め称えていると、男は立ち上がってブチギレた。


「クソ、クソ、クソがああああ! 俺様を馬鹿にしやがって!! いいか、よく聞け! 俺様の名は『ハービィ』だ! 初心冒険者が恐れる『ハービィ』様だああああ、野郎共、女は裸に剥いちまえ!!」


 男の部下十人ほどが襲い掛かって来た。


「ユ、ユメ!」
「大丈夫だよ、ネーブル。俺が――」


 一歩踏み出したその時、足元が本来の意味通り、すくわれた。――あみトラップか!!


 しかも、俺以外の皆が罠に掛かり、網の中だった。……クソ、こんな姑息な罠を。この男!


「てめぇ!」
「ククク……これほど簡単に罠にはまってくれるとはな。これで女共は俺達のモンだ。てめぇは指を咥えて見てろや。――おぉと、動くなよ、小僧。妙な動きを少しでも見せれば、そうだな、あのちびっこ魔法使いが……どうかなっちまうかもなァ!?」


 フォースを指さすハービィ。
 卑劣極まりない手段に、果てしない苛立ちを覚え、俺はブチギレ寸前だった。


「……分かった。何が望みだ」
「へえ、なんだ、案外素直じゃねぇか。じゃあ、まずは土下座だ。この前の酒場で俺様にしたことを謝って貰おう。それから、あの女共をお前の目の前で裸にする。それから、最高のパーティの始まりだ」


「サイテー野郎かよ。聞いたぞ、酒場のマスターに。お前、初心者狩りで女性冒険者も襲っているようだな」


 そう、俺はあの酒場を去る前に情報を得ていた。コイツの黒い噂を。


「あぁ、上手いこと誘惑すりゃあ、女共は簡単にホイホイついてくる。で、ヤリたい放題ってワケさ。そこのネーブルは、初心者すぎて論外だったがな……おぉと、動くなって言ったろ。オイ!」


 部下に指示するハービィ、ネーブルを降ろした。何をする気だ?


「よぉ、ネーブル。お前を一度は追放したが……今日、役に立つ」
「なっ! さ、触らないでよ!!」
「ネーブル、お前は顔も良いし、胸も無駄にでけえ。初心者すぎてつい忘れていたが……お前の体で遊んでいなかったぜ」

 ハービィの手がネーブルの胸に触れようとする。


「……やだ、やめてよぉ。たすけて……ユメ!」

「ああ、秒で助けてやる。フォース!」


 俺は『テレパシー』でフォースに指示を出していた。


「――準備完了。ゼファ、向こうのの敵を」
「グロリアスホーリークロスです……!」


 白い閃光が男たちに下り、天罰を食らっていた。


「「「ぎゃあああああああああッ!」」」


 今だ。
 俺は手をハービィに向けた。



「ソウルテレキネシス……!」



「……へ、うああああああああああああ!!」


 ドンと重い衝撃で吹き飛ぶ。
 その間に俺は、闇属性の弓を生成、遠距離攻撃・ダークアローを放った。


「ほいっと!」


 網を撃ち落とし、フォースとゼファの両方を抱えて救出した。二人とも軽いから助かる。


「よいしょっと。二人とも無事か?」

「うん、無事。ユメが絶対助けてくれるって信じてるもん」

 俺の袖を引っ張るフォース。


「ありがとうございます、ユメ様。フォースちゃんはお任せを。ネーブルさんをお願いします」
「おう。じゃあ頼んだぞ」


 俺は二人から離れ、ネーブルの方へ向かって行くが、あのハービィも起き上がって来ていた。しつこいな。


「ハービィ、もう俺たちに関わるな! 初心者狩りも辞めろ! さもなければ、お前は監獄行きだぞ」

「だまれ、だまれ、だまれえええええ!! こうなれば仕方あるまい……呪いアイテムでネーブルを呪い殺してやる……っ!」


 懐から怪しい水晶。なんだありゃ。


「死の呪いだよ。これを食らえば、相手は、死ぬ!!」


 ピカァっと黒く光る水晶は、ネーブルの方へ――させるかよ!! 呪いが到達する前に、俺はネーブルを抱えてかばった。


「ユ、ユメ!!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ハズレ職業のテイマーは【強奪】スキルで無双する〜最弱の職業とバカにされたテイマーは魔物のスキルを自分のものにできる最強の職業でした〜

平山和人
ファンタジー
Sランクパーティー【黄金の獅子王】に所属するテイマーのカイトは役立たずを理由にパーティーから追放される。 途方に暮れるカイトであったが、伝説の神獣であるフェンリルと遭遇したことで、テイムした魔物の能力を自分のものに出来る力に目覚める。 さらにカイトは100年に一度しか産まれないゴッドテイマーであることが判明し、フェンリルを始めとする神獣を従える存在となる。 魔物のスキルを吸収しまくってカイトはやがて最強のテイマーとして世界中に名を轟かせていくことになる。 一方、カイトを追放した【黄金の獅子王】はカイトを失ったことで没落の道を歩み、パーティーを解散することになった。

金貨増殖バグが止まらないので、そのまま快適なスローライフを送ります

桜井正宗
ファンタジー
 無能の落ちこぼれと認定された『ギルド職員』兼『ぷちドラゴン』使いの『ぷちテイマー』のヘンリーは、職員をクビとなり、国さえも追放されてしまう。  突然、空から女の子が降ってくると、キャッチしきれず女の子を地面へ激突させてしまう。それが聖女との出会いだった。  銀髪の自称聖女から『ギフト』を貰い、ヘンリーは、両手に持てない程の金貨を大量に手に入れた。これで一生遊んで暮らせると思いきや、金貨はどんどん増えていく。増殖が止まらない金貨。どんどん増えていってしまった。  聖女によれば“金貨増殖バグ”だという。幸い、元ギルド職員の権限でアイテムボックス量は無駄に多く持っていたので、そこへ保管しまくった。  大金持ちになったヘンリーは、とりあえず念願だった屋敷を買い……スローライフを始めていく!?

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

異世界で穴掘ってます!

KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語

最弱テイマーの成り上がり~役立たずテイマーは実は神獣を従える【神獣使い】でした。今更戻ってこいと言われてももう遅い~

平山和人
ファンタジー
Sランクパーティーに所属するテイマーのカイトは使えない役立たずだからと追放される。 さらにパーティーの汚点として高難易度ダンジョンに転移され、魔物にカイトを始末させようとする。 魔物に襲われ絶体絶命のピンチをむかえたカイトは、秘められた【神獣使い】の力を覚醒させる。 神に匹敵する力を持つ神獣と契約することでスキルをゲット。さらにフェンリルと契約し、最強となる。 その一方で、パーティーメンバーたちは、カイトを追放したことで没落の道を歩むことになるのであった。

チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?

桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」  その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。  影響するステータスは『運』。  聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。  第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。  すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。  より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!  真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。 【簡単な流れ】 勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ 【原題】 『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』

処理中です...