上 下
103 / 177

第103話 復興祝い

しおりを挟む
 家へ帰る前にフォースと鉢合わせた。

「んぉ、フォース。こんなところで珍しいな」
「ユメを探してた」
「そうなのか。なにか緊急の用事か?」
「うん。湖へ行こう」
「え、湖?」

 手を引っ張られて、俺は湖へ向かった。


 ◆


 気持ち良い天気だ。
 風が心地よく、空気もうまい。湖はキラキラと輝いていてキレイだし、人の気配もなくて落ち着いていた。こんなに閑散としているとはな。快適そのものだ。

「なんだ、たまには散歩か」
「ここ、座って」
「……ああ」

 すると、フォースは小さな体を寄せて来た。
 ぴったりと。

「……っ、どした。いつも通りっちゃいつも通りだけど」

 横顔がなんだか緊張しているようにも見えた。
 なんで?

 すると、フォースはすっくと立ちあがって、俺を押し倒してきた。

「んあ!? フォース、なにをする……」
「ユメ、ここで……しよ……」
「え?」
「だ、だから…………しよ」


 …………!!


 それ以上、言葉に出せないのか、口をパクパクさせるフォース。

 って、おぉい! まさか!!

「こんな外で?」
「…………ユメがしないなら、あたしからいく」

 と、フォースは俺の頬に両手をえてきた。
 ――確かに人気ひとけはないけど……!!


 けど……、


 ……俺は欲に負けた。


 ・
 ・
 ・


「――――はっ! もうこんな時間か」

 ずっとくちびるを重ね合わせていれば、日が沈み始めていた。

「…………」
「……ちょっとハリキリすぎちゃったな……すまん」
「ううん。別に平気。むしろ嬉しかったから……ユメの顔をまともに見れないだけ……」

 ……おぉ、フォースがあんなに顔を赤くするとは。
 俺も人の事は言えないけど。

「な、なんだ、怒ってたわけじゃないのか」
「怒ってない。それより、帰ろう。肩車してくれる?」
「いいぞ」

 楽しい時間を過ごせた。帰ろう。


 ◆


 家へ帰れば、みんながワイワイやっていた。

「ユメ~! 今日はパラドックスの復興祝いよ~騒ぐわよ~!」
「うわ、ネーブル! 酒臭いぞ……」

 すでにネーブルが酩酊めいてい状態だった。
 どんだけ飲んでいたんだか!?

「ユメ様、さあこちらへ。お食事の用意が出来ておりますよ」
「おう、ありがとうゼファ。おお、こりゃ美味そうだな。酒も?」
「はい、お祝いですからね」

 そうだな、やっとここまで復興できたんだ。
 少しくらい羽目を外さないとな。……すでにしたけど。

「フォース、こっち来て」

 テスラに手招きされるフォースは、彼女の方へ向かった。
 うんうん、すっかり仲良くなったなぁ。微笑ましい。

「はい、ユメ様。お酒です」
「ありがとう。ゼファ、俺の隣に座りなよ」
「では、ありがたく」

 ゼファは俺の隣ではなく、俺のひざの上に乗った。

「ゼファ、俺の上が良いのか?」
「……はい。ユメ様の上がいいんです」
「ゼファは素直で可愛いなぁ。じゃあ、酒を注いでくれるかい」
「分かりました♪」

 まさかひざの上に乗ってくれるとはな~!
 涙が出るほど嬉しかった。

「もー、ユメってばぁ、わたしも構いなさいよー!」

 ネーブルがぴったりくっついてくる。
 胸が……あの無駄に大きい胸が俺の頭に!

 このままでいっか!

 フォースとテスラは楽しくやってるし、俺はネーブルとゼファと楽しくやろうっと。


 ・
 ・
 ・


 気づけば、みんな泥酔いでぶっ倒れていた。

「………………あ、飲み過ぎた。って、えぇ!?」

 みんな裸じゃないか……。
 どうしてそうなった……。

「もう、みんな風を引くぞ」

 仕方ない、ゼファだけでも起こして皆を何とかしてもらおう。

「ゼファ、起きてくれ。みんなが大変なんだ」
「…………ん、ユメ様?」
「おお、起きてくれたか」

「…………」

 ありゃ、起きたはいいが、ボケボケっぽいぞ。

「ゼファ?」
「ユメ様ぁ~…」

 いきなり抱きついてきた。全裸で。

「わっ、ゼファ!」

 だめか~。仕方ない。俺が何とかしよう……。


 ◆


 なんとか女子全員を各部屋に寝かせた。
 さすがに服を着せる余裕はなかったので、全裸で寝てもらっている。……この家に今、四人の女の子が全裸で寝ていると思うと、さすがに意識してしまい、目がえてしまった。

「はぁ、寝れん」

 ひとり、パラドックスの夜を彷徨さまよった。


 ダークウォール。


 この国を守る鉄壁にして、最強の防壁。
 決して崩壊することのなかった守り。今回のMVPではないだろうか。

 俺はその天辺で国と外の海を見渡していた。
 良い眺めだ。

 しかも星空も広がって、美しい。


「――――――」


 ぼうっとしていると怪しい人影が。
 ん、誰だ……?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

俺は善人にはなれない

気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。

前世軍医だった傷物令嬢は、幸せな花嫁を夢見る

花雨宮琵
恋愛
侯爵令嬢のローズは、10歳のある日、背中に刀傷を負い生死の境をさまよう。 その時に見た夢で、軍医として生き、結婚式の直前に婚約者を亡くした前世が蘇る。 何とか一命を取り留めたものの、ローズの背中には大きな傷が残った。 “傷物令嬢”として揶揄される中、ローズは早々に貴族女性として生きることを諦め、隣国の帝国医学校へ入学する。 背中の傷を理由に六回も婚約を破棄されるも、18歳で隣国の医師資格を取得。自立しようとした矢先に王命による7回目の婚約が結ばれ、帰国を余儀なくされる。 7人目となる婚約者は、弱冠25歳で東の将軍となった、ヴァンドゥール公爵家次男のフェルディナンだった。 長年行方不明の想い人がいるフェルディナンと、義務ではなく愛ある結婚を夢見るローズ。そんな二人は、期間限定の条件付き婚約関係を結ぶことに同意する。 守られるだけの存在でいたくない! と思うローズは、一人の医師として自立し、同時に、今世こそは愛する人と結ばれて幸せな家庭を築きたいと願うのであったが――。 この小説は、人生の理不尽さ・不条理さに傷つき悩みながらも、幸せを求めて奮闘する女性の物語です。 ※この作品は2年前に掲載していたものを大幅に改稿したものです。 (C)Elegance 2025 All Rights Reserved.無断転載・無断翻訳を固く禁じます。

二度も親を失った俺は、今日も最強を目指す

SO/N
ファンタジー
主人公、ウルスはあるどこにでもある小さな町で、両親や幼馴染と平和に過ごしていた。 だがある日、町は襲われ、命からがら逃げたウルスは突如、前世の記憶を思い出す。 前世の記憶を思い出したウルスは、自分を拾ってくれた人類最強の英雄・グラン=ローレスに業を教わり、妹弟子のミルとともに日々修行に明け暮れた。 そして数年後、ウルスとミルはある理由から魔導学院へ入学する。そこでは天真爛漫なローナ・能天気なニイダ・元幼馴染のライナ・謎多き少女フィーリィアなど、様々な人物と出会いと再会を果たす。 二度も全てを失ったウルスは、それでも何かを守るために戦う。 たとえそれが間違いでも、意味が無くても。 誰かを守る……そのために。 【???????????????】 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー *この小説は「小説家になろう」で投稿されている『二度も親を失った俺は、今日も最強を目指す』とほぼ同じ物です。こちらは不定期投稿になりますが、基本的に「小説家になろう」で投稿された部分まで投稿する予定です。 また、現在カクヨム・ノベルアップ+でも活動しております。 各サイトによる、内容の差異はほとんどありません。

~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる

静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】 【複数サイトでランキング入り】 追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語 主人公フライ。 仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。 フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。 外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。 しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。 そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。 「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」 最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。 仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。 そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。 そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。 一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。 イラスト 卯月凪沙様より

処理中です...