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第81話 窮極の闇<ユメ>

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 海賊たちは恐怖におびえていた。

「う、うそだろ……おかしらの足がひでぇことに」「おいおい、この兵器ならスキルを無効に出来るんじゃなかったのかよ、嘘かよ!?」「こ、こんなの聞いてねーぞ!!」「あの闇は何なんだよ、スキルじゃねーって!!」「ふざけるなあ、この国を乗っ取れると聞いたからついてきたんだぞ!?」「お、俺は死にたくねえ!!」「逃げろォ、うあああああ!」

 誰一人逃がすかよ。


 港全体に闇の極解放ダークフォームを展開、海賊100人を闇に捕縛した。もう全員、俺の闇から逃げることは出来ない。

「なんだこりゃアアアアア!!」「う、動けねええ!!」「助けてくれえええ!!」「やめろやめてくれえええ!」「こんなつもりはなかったんだ!」「許してくれええええ」「謝る、謝るからああああああ!!」


 一度ならず二度までも俺の国を襲い、仲間に手を出した。


「もう遅いんだよ……お前たちは絶対にやってはならない事をした。だがな、雑魚に用はねえ、さっさと失せろやああああああボケエエエエエエエエ!!!!!!!!!」


 そう、下の下の下っ端はどうでもいい。
 まとめてぶっ飛ばすことにした。
 ただし、再起不能になるほどの大ダメージを与えたうえで。



『――――――イベントホライゾン!!!!!!!!!!!!!!』



 ネーブルを守りつつ、ピエトロを除いた全員を吹き飛ばした。
 もう断末魔だんまつまも聞こえやしない。いや、そんな虫の羽音すらどうでも良かった。

「ネーブル!!」
「………………ユメ、ご、ごめんね」

 弱弱しく声を出すネーブルを俺は抱きかかえた。

「俺の方こそごめんな」
「ううん。ユメのせいじゃない……これは、わたしの油断だから、気にしないで。ただ、この国を守りたかったから頑張ったんだけど……敵の奴等、変な武器を……」

 あの謎の筒か。
 俺はその答えを知りたかった。だから、あえてピエトロを生かしたのもあった。前回も今回も、この海賊騒動の裏で糸を引いているヤツがいる。

 間違いない。

 パラドックスは何者かによって狙われているのだ。

「待ってろ。ピエトロから情報を引き出し、ぶち殺したら帰るからな」
「……ユメ」

 ネーブルは何かを言おうとしていたが、脱力し、気絶した。


「…………」


 俺は、地面につくばっているピエトロを――いや、ゴミを見つめた。

「…………チャンスをやろう」
「……がっ、ちゃ、ちゃんす…………だと」

「素直に雇い主の情報を話すんだ。どいつに雇われた……覇王・ナイアルラトホテプか。それとも別のヤツか」

「は、話せば命だけは助けてくれるのか……!?」

 闇でピエトロの頭をつかみ、地面に叩き落とした。

「――――ぶえぇっ!?」

「お前は今まで何人助けた?」
「………………ゼ、ゼロだ」

「散々、女子供を襲ったよな」

 ピエトロに対し、俺は手をかざした。


「…………そうだ。俺様はいろんな国を襲い、街や村から金品を略奪し、男と子供は殺し、女を欲望のまま蹂躙じゅうりんしまくった…………はっ、なぜだ。なぜ俺様はこんなことを勝手に喋ってしまうんだ!?」


「……そうか」

 ソウルフォースを発動していた俺は、ピエトロから引き出せる情報を吐かせていた。ただし、欲深い真実に限るので、犯人とかは特定できないかもしれない。

 しかし、これは酷過ぎる。
 こんなヤツが野放しになっていたとは。

 もう救いようのないゴミ以下である。


「いいさ、どうせ覇王に違いない。ピエトロ、お前を闇の覇国アニュスにある地獄――『コモリオム』へ招待してやろう。そこには世界最強の不死属性モンスターがんでいてね。……大丈夫、すぐには食べられないさ。ヤツは生物を溶かすのに3000年も掛けるらしい。良かったな。お前という存在は3000年も生き続ける……地獄の中で」


「ひぃ…………! わわわわ分かった。分かったよ! 話す、全てを話すから!!」

 恐れおののくピエトロは、ようやく話す気になった。


「……あれは一週間前だ。元船長・アリアが理由は知らんが……この国へ行くと言い出したんだ。なんでも、王子を届けるとか何とか。知ったこっちゃなかったが、略奪ついでだと思ってついて行くことにした。だが、お前にぶっ飛ばされてな……それから海を彷徨さまよっていところ、俺はヤツ・・に助けられた。顔面に重症を負っていたが、一瞬で回復してくれたし、しかも、あのスキル無効兵器……『ジェイルブレイク』をタダで貰った……! 仲間と武器をやる代わりに、このパラドックスを襲えと言われたんでな、俺様としちゃお前に復讐が出来るからな……願ってもない話だったわけだよ」

 スキル無効兵器『ジェイルブレイク』だと。
 そんな武器アイテムは聞いたことがない。

「それでヤツとは誰だ!? 誰の事を言っている!! 言え!!」
「……そ、それは…………」


 ピエトロは、犯人の名を口にしようとした――のだが。


「がっっ…………ガガガガガガガガガガガ、ベベベベベベベベ、ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛~~~~~~~~~~!!!!!!!」


 いきなり叫び出し、発狂しだした。


「なんだ!?」


 男だったものは、グニャグニャと変形し別物として姿形を変えてしまった。これではまるで、口封じ。そうか、最初からそのつもりで――。


『グォオッォォォォォォォォォォォォ……!!!!!』


 もうピエトロの原型はない。
 あれは怪物――『ナイトメア』だ。


「悪夢再びってことか……」


 ピエトロだったものは、激しく膨張ぼうちょうし、肉体の変化を完了させた。
 いや、もう肉体と呼べるのかすら怪しい物体となり、数千の触手を生やしていた。黒い塊から大きな口を開き、威嚇いかくをしてくる。

「……いいぜ、最初から殺すつもりだったしな。化け物になってくれて、むしろ感謝する。そっちの方が倒し甲斐がいがあるからな……!」

 ――――俺は、

 窮極の闇・・・・の解放を決めた。
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