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第68話 消えた女騎士

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 風の帝王・エレイソンは死にかけていた。

「ユメよ……。きっとお主が来てくれると信じておったぞ……」
「あんたの為じゃない。あくまで国の人たちの為だ」
「構わん……それでも助けてくれた事実は変わらんのだ。……ああ、最期に謝罪が出来て良かった」

「お、おい! 帝王あんたまさか……」

「本当にすまなかった……追放あれは余の本位ではなか――――」

 ガクっと力尽きる帝王。

「そんな……」

 ……帝王が死んだ……? うそだろ……。


「ぐごーーーーーーーーーーーーー」


「……へ」


「ユメ、帝王は気絶して寝ているだけ。瀕死ではなかったけれど、ゼファがグロリアスヒールで治療を施したので大事には至らなかった」

「………………」


 紛らわしんだよ、アホがっ!!!


「ユ、ユメ様。帝王様はなんとかご無事です。ですからご安心くださいね」

 いつの間にか駆けつけていたゼファが苦笑い。
 俺はクソデカ溜息。


「心配して損したぜ……」


 やれやれ、あのおっさん帝王はそう簡単にはくたばらんか。
 まあいい……それならそれで国はまだ何とかなる。立て直せる。

「あーでも、そうなると……残るは魔神王だけか」
「そうなの?」
「そうなんだよ、フォース。エンケラドゥスによれば、テティスは取り込んでしまったみたいだし、レアは例外として、これで全部だろう」

 そう、これでいよいよ決着がつく。

「あと少しなんだね」
「おう。魔神王……なんつったっけな。まあ、そいつをぶっ倒せば終わりだ」

 上級系の魔神がほとんど消えた以上、そろそろ魔神王が出てきてもおかしくはないだろう。それに世界終焉も近づいているようだしな。

 フォースを肩車すると、ちょうどネーブルがやって来た。
 ライジン移動で。

「…………っと! あ、いたいた。みんな! 探したわよー」
「よ、ネーブル。国の人たちはどうだ」
「避難完了よ。全部走って回ったからさ、もう大丈夫よ。で、魔神は?」
「もう倒した」
「え……なんだー、もう倒したのね。でもさ、国はボロボロよ。これ、復興できるのかな……」
「復興できるさ。帝王は死んではいないし、まぁ一応、同盟も組むしさ」
「そうなんだ。帝王のこと許したの?」
「いや……許してはいない。けど、国の人たちに罪はないからな」

 理由はそれだけで十分だ。

「ユメさーん」

 フーコも駆けつけてきた。

「終わったよ」
「お、終わったのですね。予想以上の早さに驚きました。さすが、ユメさんです。風の帝国キリエをお守り戴きありがとうございました」
「んや、礼はいいよ。それより、トルネードは見つかったか?」

「いえ、騎士長の所在は……」

「そうか。でも待ってろ。すぐ見つけてやるよ」
「ほ、本当ですか!?」

 俺の手を握ってくるフーコ。いきなりだったので少しドキっとした。

「あ、ああ……任せろって」

 気づけば、ネーブルが俺の左腕を。ゼファが右腕にくっ付いていた。やや膨れっ面で。なんで二人とも張り合っている!?

 なにげに凄い状況になっちまったなぁ。


「す、すみません……」


 圧に負けたフーコは手を離した。
 いや、キミは謝らなくてイイゾ。

「とりあえず、国の復興を急がないとな。その為にもトルネードを探す必要があるが……日が沈む。また明日にしよう」

「分かりました。では、私は国の防衛に回ります。風帝結界テンペストがない以上、モンスターが攻めて来てしまいますからね」

「大丈夫だ。ゼファ」
「はい、ユメ様のお望みであるのなら」

 さりげな~く胸を押し当ててきながら、ゼファはスキルを発動した。


『グロリアスサンクチュアリです!』


 聖域を国中に張り巡らせた。
 これでしばらくは安心だろう。

「苦労を掛けてしまってすまない」
「なにをおっしゃるのですか、ユメ様。あなた様のためなら、わたくしは何だってできます」

 ぐいぐい押し付けてくる……。
 今日のゼファは積極的である。……正直、たまりません。


「さて、じゃ、俺たちは元家の場所で野宿でもするかな」
「何から何までありがとうございます……。この御恩は必ず……身体で」
「か、身体で!? 冗談だよな、フーコ!?」
「冗談なんかではありません。それくらいの事をしてもらったのですから、当然でしょう。私の肉体でよければ安いものです」

 キッパリ言われた。
 いや、安くないと思うけどな……その、フーコはスレンダーで可愛いし。
 で、しかも、ゼファとネーブルの押し当て・・・・が激しくなるのだが――。これはこれでアリだな。うん。
 ちなみに、フォースもぎゅうぎゅう俺の頭に当てて来ているが……すまん。お前のじゃ、分からん……まな板すぎて……。


「ま、まあお礼はまた別の機会に。それじゃ」


 フーコは、最後まで頭をブンブン振って感謝の気持ちを表していた。落ち着きのないところが彼女らしい。


 ◆


 元邸宅のあった場所は、チンピラ集団に不法占拠されていた。

「なんだお前ら」

「そりゃ、こっちのセリフだぜェ!?」「おうおうおう、こりゃ美人な女を三人も連れてやがるじゃねぇか」「こいつは上等! 一晩中……いや、永遠に楽しめそうだぞォ!」「殺っちまおうぜ!」「オラァ、あの金髪の姉ちゃんがいいなァ」

 そうか、一度結界が破れたことにより、こんな治安の悪いヤツ等が不法侵入してきたんだな。しかも今の風の帝国キリエには騎士団もほぼ不在。圧倒的な人手不足。そんなところを狙われたのだ。

 チンピラのひとりがナイフを取り出し、いきなり襲い掛かってきた。
 おいおい、いきなり俺を刺そうってか――。


「――――っしゃあああああ!!!」


 グサっと腹部を刺された。


「ブハハハハハハ!! こいつ避けもしないでやんの!! ちびったんじゃね!?」


「……あ? うるせえよボケ」


 俺はナイフで刺してきたチンピラに対し、デコピンした。


「え……ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」

 
 チンピラは遠くへ吹っ飛んでしまった。


「……は!? どどどどどうなってやがる!?」「オレが知るかよ!!」「あの男、なんかヘンだぞ……」「チクショウ。せっかく魔神から女が手に入ると教えてもらったのによ」「そうだ、あの女騎士を手に入れたんだ。もうズラかろうぜ」


 焦りまくるチンピラ共。いい加減、出て行って欲しいのだが……ん? 女騎士? まさか……コイツ等。


「おい、チンピラ共。その女騎士の話を聞かせろ」

「アァン!? おめぇなんかに教えるかってーの!!」

 ヤツ等は散り散りになって逃げ始めた。逃がすか!!

 俺はネーブルに合図し、任せた。


『――――――ライトニングボルト!!!!!』


 そうだな、それくらいの威力じゃないと、あのチンピラ共を殺してしまう。ライトニングボルトなら、ダメージもそこそこだし、麻痺もする。


「「「「「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」」」」」


 チンピラたちは全員倒れた。


 さあて、トルネードのことを聞き出そうか……!
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