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第63話 世界同盟
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【 光の天国・夢幻騎士団本部 】
女王の指パッチンで気づけば、俺たちは騎士団本部にいた。
倒れた夢幻騎士の三人は、別室に運ばれていった。息はあったし、ゼファの応急処置も早かった。だからきっと大丈夫。
ひとまず安心していると、フィラデルフィアの気の重そうな視線が俺に注がれていることに気づいた。ありゃ、宮廷破壊や夢幻騎士たちが倒されたことで、相当参ってそうだな。表情こそは冷静だけど、目元は隠せていない。
とにかく。
「フィ、話を頼む。俺の妹と姉ちゃん、母さんはどこへ消えたんだ」
「――うむ。では、掻い摘んでいこう。まず、ユメの身内だが……あれは、我が領海内で起きた事件だった。彼女らは、闇の覇国へ向かっていたようだ。独特の気配を感知できたからな。
だが、彼女らは四番目の『ディオネ』と三番目の『テティス』――そして、今回の一番目『ミマス』の奇襲に遭い、捕らえていた。無論、我が領海で起きたことなのでな、看過は出来なかった。早急に夢幻騎士・プロキオンを派遣したのだが、時は既に遅かった……すまぬ」
そう謝るフィだが、彼女は悪くない。
そうか、三体の魔神に襲われたのか――けれど、母さんたちが遅れを取るとは到底思えなかった。おかしい、何かがおかしい。
「ユメ、その顔はやはり納得いかんようだな」
「ああ……。メイ……妹と姉ちゃんはともかくとして、母さんがやられるはずがないんだ。母さんは最強の魔王だった……」
「シンリか。そうよな、余も同感だ。しかし、三番目の力は特異でな。あれは、なんといったら良いか……。とにかく、テティスとかいう魔神はシンリを『封印』したのだ。恐ろしい力を持っているようだ。気をつけろ」
封印……。
なるほどな、『シールスキル』の使い手ってところだろうか。魔王の幹部にも似たようなヤツがいた。けど、あの母さんを捕らえるようなヤツだ。かなり強力な『業気』を持つに違いない。
今のところ未知数だ。
「ありがとう、フィ。魔神を……テティスを倒すしかないってことだな……」
「そうだ。魔神がいる以上、我らに平穏はない。ヤツらは手段と問わず、自らを強化しようと躍起になる。そう、ユメ、お前が強くなれば、あちらも順応し強くなる。だから、苦戦を強いられた時もあったのではないか?」
あった。
ディオネの作った『ナイトメア』には随分と苦しめられた。
フォースだって消えかけたほどだ。
「ユメよ、身内を取り戻すのであれば、場所は教えよう。だが、今動ける者はお主たちだけだ。特に国を動かすにはユメの力が必要不可欠。ユメが世界の中心だ。だから、今こそ全属性国と手を組む時ではないだろうか。『世界同盟』を結べば最強となろう。現状、このままでは、我らに未来はない。なれば、手を取り合い、より強い力をつける方が合理的とは思わぬか」
きっぱりと断言するフィラデルフィアの言葉は重かった。
それに反論する余地などなかった。あの一番目のミマスが目的があったとはいえ、光の天国を襲った。地の神国だってゾンビだらけにされた。そうだ、他の国もこれから、どんどん酷い目に……。
そうなると、行き場を失った人たちが安住の地を求めて、一番安定しているパラドックスに移民が流れ込んでくる可能性もある。残念ながらウチにそれほどのキャパシティはない。全世界規模ともなれば尚更。だったら、フィラデルフィアの言う通り、最初から手を組み、国を助ける方がより合理的。
まあ、味方は多い方が良いとも言う。決まりだな。
「分かった。『火の大国』、『水の聖国』とは同盟の話が出ている。すぐに承認しよう。でもな……」
ひとつ問題があった。
それをフォースが代弁するようにつぶやいた。
「風の帝国」
「あ~…やっぱりそこが問題よね」ネーブルが苦笑いし、「…………どうしましょう」ゼファも困った顔をしていた。
まー…、風の帝国とはトラブルがあったからなぁ……。
が、風の帝王・エレイソンはなぜか必死に関係修復を謀って……いや、図っていたが。
「…………どうしたものか」
「なんだ、ユメ。お主とエレイソンの間に何かあったのか」
「まあ、なんだ……故郷と決めていた風の帝国を一方的に追放された。家もメチャクチャにされたしさ、こっちはブチギレよ。だから、出て行った。でも、出て行ってから魔神が現れ……風の帝国は……帝王は必死になって俺を戻そうとした。結局、奴は俺を利用したかっただけなんだ。だから見限ったんだけどな」
「……そうか、では、風の帝国は抜きとするか? その場合、見捨てると同義となるがな」
フィラデルフィアは、俺を冷徹な瞳で見て来た。
……そうだな、詰まるところ、そういう意味になるよな。
少し、考えていると、
「ユメ様……わたくしは風の帝国の方たちを見捨てるなんて……できません。でも……ユメ様のお考えを否定することも出来ません。どんな選択であろうとも、わたくしはあなたのお傍です」
ゼファの気持ちは分かった。
「ネーブルは何かあるか?」
あえて聞いてみると、
「わたしもゼファと同じよ。あえて言うと、わたしって身内にしか興味ないのよね……ごめん、こんな意見で」
「いや、その気持ちも分かる」
俺も身内が、パラドックスが大切だし。
ネーブルは国というよりは、身内を大切にするタイプだからな。
「最後にフォース」
「……全属性国の力が必要。『火の大国』、『水の聖国』、『風の帝国』、『地の神国』、『光の天国』、『闇の覇国』どれひとつ欠けてもいけない」
「未来を視たのか」
エメラルドグリーンの瞳が告げていた。
あんな風に訴えかけられてはな。
「分かった。すべての国と同盟を組む。みんなの力を合わせ、魔神を滅ぼす……! 平和を取り戻すんだ」
「よく言った。ユメよ、それではさっそく『風の帝国』へ向かうが良い。テティスもそこにいると情報がある」
「なんだと!?」
同盟ついでに魔神をぶっ倒す。
母さんたちを助け出すんだ。
「みんな、『風の帝国』へ向かう! いいな!」
女王の指パッチンで気づけば、俺たちは騎士団本部にいた。
倒れた夢幻騎士の三人は、別室に運ばれていった。息はあったし、ゼファの応急処置も早かった。だからきっと大丈夫。
ひとまず安心していると、フィラデルフィアの気の重そうな視線が俺に注がれていることに気づいた。ありゃ、宮廷破壊や夢幻騎士たちが倒されたことで、相当参ってそうだな。表情こそは冷静だけど、目元は隠せていない。
とにかく。
「フィ、話を頼む。俺の妹と姉ちゃん、母さんはどこへ消えたんだ」
「――うむ。では、掻い摘んでいこう。まず、ユメの身内だが……あれは、我が領海内で起きた事件だった。彼女らは、闇の覇国へ向かっていたようだ。独特の気配を感知できたからな。
だが、彼女らは四番目の『ディオネ』と三番目の『テティス』――そして、今回の一番目『ミマス』の奇襲に遭い、捕らえていた。無論、我が領海で起きたことなのでな、看過は出来なかった。早急に夢幻騎士・プロキオンを派遣したのだが、時は既に遅かった……すまぬ」
そう謝るフィだが、彼女は悪くない。
そうか、三体の魔神に襲われたのか――けれど、母さんたちが遅れを取るとは到底思えなかった。おかしい、何かがおかしい。
「ユメ、その顔はやはり納得いかんようだな」
「ああ……。メイ……妹と姉ちゃんはともかくとして、母さんがやられるはずがないんだ。母さんは最強の魔王だった……」
「シンリか。そうよな、余も同感だ。しかし、三番目の力は特異でな。あれは、なんといったら良いか……。とにかく、テティスとかいう魔神はシンリを『封印』したのだ。恐ろしい力を持っているようだ。気をつけろ」
封印……。
なるほどな、『シールスキル』の使い手ってところだろうか。魔王の幹部にも似たようなヤツがいた。けど、あの母さんを捕らえるようなヤツだ。かなり強力な『業気』を持つに違いない。
今のところ未知数だ。
「ありがとう、フィ。魔神を……テティスを倒すしかないってことだな……」
「そうだ。魔神がいる以上、我らに平穏はない。ヤツらは手段と問わず、自らを強化しようと躍起になる。そう、ユメ、お前が強くなれば、あちらも順応し強くなる。だから、苦戦を強いられた時もあったのではないか?」
あった。
ディオネの作った『ナイトメア』には随分と苦しめられた。
フォースだって消えかけたほどだ。
「ユメよ、身内を取り戻すのであれば、場所は教えよう。だが、今動ける者はお主たちだけだ。特に国を動かすにはユメの力が必要不可欠。ユメが世界の中心だ。だから、今こそ全属性国と手を組む時ではないだろうか。『世界同盟』を結べば最強となろう。現状、このままでは、我らに未来はない。なれば、手を取り合い、より強い力をつける方が合理的とは思わぬか」
きっぱりと断言するフィラデルフィアの言葉は重かった。
それに反論する余地などなかった。あの一番目のミマスが目的があったとはいえ、光の天国を襲った。地の神国だってゾンビだらけにされた。そうだ、他の国もこれから、どんどん酷い目に……。
そうなると、行き場を失った人たちが安住の地を求めて、一番安定しているパラドックスに移民が流れ込んでくる可能性もある。残念ながらウチにそれほどのキャパシティはない。全世界規模ともなれば尚更。だったら、フィラデルフィアの言う通り、最初から手を組み、国を助ける方がより合理的。
まあ、味方は多い方が良いとも言う。決まりだな。
「分かった。『火の大国』、『水の聖国』とは同盟の話が出ている。すぐに承認しよう。でもな……」
ひとつ問題があった。
それをフォースが代弁するようにつぶやいた。
「風の帝国」
「あ~…やっぱりそこが問題よね」ネーブルが苦笑いし、「…………どうしましょう」ゼファも困った顔をしていた。
まー…、風の帝国とはトラブルがあったからなぁ……。
が、風の帝王・エレイソンはなぜか必死に関係修復を謀って……いや、図っていたが。
「…………どうしたものか」
「なんだ、ユメ。お主とエレイソンの間に何かあったのか」
「まあ、なんだ……故郷と決めていた風の帝国を一方的に追放された。家もメチャクチャにされたしさ、こっちはブチギレよ。だから、出て行った。でも、出て行ってから魔神が現れ……風の帝国は……帝王は必死になって俺を戻そうとした。結局、奴は俺を利用したかっただけなんだ。だから見限ったんだけどな」
「……そうか、では、風の帝国は抜きとするか? その場合、見捨てると同義となるがな」
フィラデルフィアは、俺を冷徹な瞳で見て来た。
……そうだな、詰まるところ、そういう意味になるよな。
少し、考えていると、
「ユメ様……わたくしは風の帝国の方たちを見捨てるなんて……できません。でも……ユメ様のお考えを否定することも出来ません。どんな選択であろうとも、わたくしはあなたのお傍です」
ゼファの気持ちは分かった。
「ネーブルは何かあるか?」
あえて聞いてみると、
「わたしもゼファと同じよ。あえて言うと、わたしって身内にしか興味ないのよね……ごめん、こんな意見で」
「いや、その気持ちも分かる」
俺も身内が、パラドックスが大切だし。
ネーブルは国というよりは、身内を大切にするタイプだからな。
「最後にフォース」
「……全属性国の力が必要。『火の大国』、『水の聖国』、『風の帝国』、『地の神国』、『光の天国』、『闇の覇国』どれひとつ欠けてもいけない」
「未来を視たのか」
エメラルドグリーンの瞳が告げていた。
あんな風に訴えかけられてはな。
「分かった。すべての国と同盟を組む。みんなの力を合わせ、魔神を滅ぼす……! 平和を取り戻すんだ」
「よく言った。ユメよ、それではさっそく『風の帝国』へ向かうが良い。テティスもそこにいると情報がある」
「なんだと!?」
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母さんたちを助け出すんだ。
「みんな、『風の帝国』へ向かう! いいな!」
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