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第62話 神槍・グングニル
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瀕死のミマスはまだ息があった。
『……本来なら、私がこの世界の勇者になるはずだった…………。だが、お前という闇が先に生まれ、世界から勇者として認められていた。だから、私の存在は不要になってしまったのだ』
俺を憎しみの瞳で見つめる男。
そうか、ミマスが呼ばれていたのなら、『光の勇者』としてこの世界を守っていたはずなんだ。
『元を辿れば……覇王・ナイアルラトホテプ……ヤツが邪魔さえしなければ……この私は光の天国から生まれ、皆を、世界を照らす存在となるはずだったのだがな…………」
「だから俺を恨んでいたのか」
『そうだ。お前が憎い。この光の天国もな。深すぎる憎悪が魔神王を呼び寄せたが、それはチャンスでもあった。こうしてお前に復讐できるのだからな』
「そうか、なら俺の敵であることに違いはない」
『ああ……殺るなら、さっさと殺るがいい。ただし、私の心臓は特別なエクサダイトで出来ているのでな。破壊しようものなら、この空間は簡単に吹き飛ぶだろう』
なっ…………!
なんて卑怯な。
「てめぇ……! そこまでして俺を……」
『クハハハハハハ……そうだ。お前への憎しみは無限に等しい。永遠に晴れることのない嫌忌よ。さあ……殺れ……! 殺るいがいい!! 最期はお前を魔神としてではなく、勇者として道連れにし……華々しく散ってやる……!!! フハハハハ、アハハハハハハハハハハハハ!!!』
なるほど、コイツ……最初から自爆覚悟だったということか。
だからこんな簡単に俺にやられて……!
「勇者としてだと……! そんなこと軽々しく口にするんじゃねえ!!! くたばるなら一人で勝手にくたばりやがれぇ!!!」
俺は拳にダークエンチャントを付与し――、
ミマスの顔面を思い切り殴った。
『――――――ゴッぶッ!?!?!?!?!?!?』
激しく変形するミマスの顔、身体が高速回転して宙へ舞っていく。
それから、近くに落ちていたプロキオンの神器をソウルフォースで引き寄せ、手にした。勝利を確信した俺は、助走をつけ、それを思いっきりブン投げた。
『神槍・グングニル――――――ッ!!!!!!!』
神器級の武器ともなれば、敵の効果を低確率で打ち消すものもある。
まさに神槍・グングニルにはそんな効果があった。
【NAME】神槍・グングニル
【ATK】125000
【ATTRIBUTE】[闇] / [光]
【EFFECT】
任意で属性を変更・付与できる。
[闇]か[光]のどちらかに限る。
神槍・グングニル命中時、対象のいかなる魔法(錬金術・呪術・忍術等、アイテム効果も含む)は完全に無効化される。この効果の発動確率は [ 1% ] である。
状態異常①:[大量出血] を低確率で与える。
状態異常②:[精神崩壊] を低確率で与える。
専用スキル [エリミネーター] 使用可能。
俺は奇跡的にもその『1%』を引いた。
おかげでミマスの『エクサダイト』の自爆効果は無効化。ヤツは槍で穿たれ、今度こそ完全消滅した。
「……ふぅ」
なんとか倒せたな。奴の自爆攻撃でなかったら、正直戦いはもっと長引いていたところだった。だけど、運はこちらに味方したのだ。
「ユメ!」
背後から小さな衝撃を感じた。
少し振り向くとフォースが子供の様に抱きついてきていた。
「良かった……」
「なんだ、起きてから随分と甘えん坊さんだな」
黙ったまま俺にピッタリだ。
……離れたくないと。うん、俺もだ。
「ユメ様、念のためグロリアスヒールを」
「ありがとう、ゼファ」
ヒールを貰う傍らで、ネーブルが胸を撫でおろしていた。
「道連れとか聞いたときは心配したわぁ。あんな魔神もいるのね。でも、あれって『一番』だったんでしょ。てことは、もう強いのも残っていないんじゃ」
「うーん。どうだろうな。あと二番と三番だったかな。ちなみに、五番とは手を組んでいるから安心しろ」
「そういえば、レアって子なんだっけ」
「そ。そのレア」
なるほどね~と軽く納得したネーブルは、妙な顔もしていた。
「どうした、ネーブル。なにか気になるのか」
「あー…うん。ちょっとね。あのミマスって奴、一番にしては弱かったかなって。まあ、ユメが強すぎたのかもしれないけどさ」
「俺が強すぎたんだろう。ディオネ戦以降、俺の闇はどんどん濃くなっている。そや、アザトースと会ってから変なんだよなぁ?」
闇の力が増したというか、キレが上がったというか。
もともと極めているけど、更に極めそうな――そんな感じがしていた。
自身のことを考えていると、フィラデルフィアが不機嫌な顔を露わにしていた。そうだよな、宮廷もやられたし、夢幻騎士も。
「――って、そうだ。シリウスたちは!?」
「わたくしのグロリアスヒールで治癒しておきました」
「ナイス、ゼファ!」
ネーブルが救出してくれたようで、三人とも地面で気絶して倒れていた。……良かった。死んではいない。無事だったか。
「ユメよ。一度、光の天国へ戻るぞ。宮廷こそ破壊されてしまったが、再建すればよい。代わりと言ってはなんだが、騎士団で話を済まそう」
女王が指をパチンと鳴らすと――
空間が激しく動き始めた。
どうやら、移動開始のようだ。
『……本来なら、私がこの世界の勇者になるはずだった…………。だが、お前という闇が先に生まれ、世界から勇者として認められていた。だから、私の存在は不要になってしまったのだ』
俺を憎しみの瞳で見つめる男。
そうか、ミマスが呼ばれていたのなら、『光の勇者』としてこの世界を守っていたはずなんだ。
『元を辿れば……覇王・ナイアルラトホテプ……ヤツが邪魔さえしなければ……この私は光の天国から生まれ、皆を、世界を照らす存在となるはずだったのだがな…………」
「だから俺を恨んでいたのか」
『そうだ。お前が憎い。この光の天国もな。深すぎる憎悪が魔神王を呼び寄せたが、それはチャンスでもあった。こうしてお前に復讐できるのだからな』
「そうか、なら俺の敵であることに違いはない」
『ああ……殺るなら、さっさと殺るがいい。ただし、私の心臓は特別なエクサダイトで出来ているのでな。破壊しようものなら、この空間は簡単に吹き飛ぶだろう』
なっ…………!
なんて卑怯な。
「てめぇ……! そこまでして俺を……」
『クハハハハハハ……そうだ。お前への憎しみは無限に等しい。永遠に晴れることのない嫌忌よ。さあ……殺れ……! 殺るいがいい!! 最期はお前を魔神としてではなく、勇者として道連れにし……華々しく散ってやる……!!! フハハハハ、アハハハハハハハハハハハハ!!!』
なるほど、コイツ……最初から自爆覚悟だったということか。
だからこんな簡単に俺にやられて……!
「勇者としてだと……! そんなこと軽々しく口にするんじゃねえ!!! くたばるなら一人で勝手にくたばりやがれぇ!!!」
俺は拳にダークエンチャントを付与し――、
ミマスの顔面を思い切り殴った。
『――――――ゴッぶッ!?!?!?!?!?!?』
激しく変形するミマスの顔、身体が高速回転して宙へ舞っていく。
それから、近くに落ちていたプロキオンの神器をソウルフォースで引き寄せ、手にした。勝利を確信した俺は、助走をつけ、それを思いっきりブン投げた。
『神槍・グングニル――――――ッ!!!!!!!』
神器級の武器ともなれば、敵の効果を低確率で打ち消すものもある。
まさに神槍・グングニルにはそんな効果があった。
【NAME】神槍・グングニル
【ATK】125000
【ATTRIBUTE】[闇] / [光]
【EFFECT】
任意で属性を変更・付与できる。
[闇]か[光]のどちらかに限る。
神槍・グングニル命中時、対象のいかなる魔法(錬金術・呪術・忍術等、アイテム効果も含む)は完全に無効化される。この効果の発動確率は [ 1% ] である。
状態異常①:[大量出血] を低確率で与える。
状態異常②:[精神崩壊] を低確率で与える。
専用スキル [エリミネーター] 使用可能。
俺は奇跡的にもその『1%』を引いた。
おかげでミマスの『エクサダイト』の自爆効果は無効化。ヤツは槍で穿たれ、今度こそ完全消滅した。
「……ふぅ」
なんとか倒せたな。奴の自爆攻撃でなかったら、正直戦いはもっと長引いていたところだった。だけど、運はこちらに味方したのだ。
「ユメ!」
背後から小さな衝撃を感じた。
少し振り向くとフォースが子供の様に抱きついてきていた。
「良かった……」
「なんだ、起きてから随分と甘えん坊さんだな」
黙ったまま俺にピッタリだ。
……離れたくないと。うん、俺もだ。
「ユメ様、念のためグロリアスヒールを」
「ありがとう、ゼファ」
ヒールを貰う傍らで、ネーブルが胸を撫でおろしていた。
「道連れとか聞いたときは心配したわぁ。あんな魔神もいるのね。でも、あれって『一番』だったんでしょ。てことは、もう強いのも残っていないんじゃ」
「うーん。どうだろうな。あと二番と三番だったかな。ちなみに、五番とは手を組んでいるから安心しろ」
「そういえば、レアって子なんだっけ」
「そ。そのレア」
なるほどね~と軽く納得したネーブルは、妙な顔もしていた。
「どうした、ネーブル。なにか気になるのか」
「あー…うん。ちょっとね。あのミマスって奴、一番にしては弱かったかなって。まあ、ユメが強すぎたのかもしれないけどさ」
「俺が強すぎたんだろう。ディオネ戦以降、俺の闇はどんどん濃くなっている。そや、アザトースと会ってから変なんだよなぁ?」
闇の力が増したというか、キレが上がったというか。
もともと極めているけど、更に極めそうな――そんな感じがしていた。
自身のことを考えていると、フィラデルフィアが不機嫌な顔を露わにしていた。そうだよな、宮廷もやられたし、夢幻騎士も。
「――って、そうだ。シリウスたちは!?」
「わたくしのグロリアスヒールで治癒しておきました」
「ナイス、ゼファ!」
ネーブルが救出してくれたようで、三人とも地面で気絶して倒れていた。……良かった。死んではいない。無事だったか。
「ユメよ。一度、光の天国へ戻るぞ。宮廷こそ破壊されてしまったが、再建すればよい。代わりと言ってはなんだが、騎士団で話を済まそう」
女王が指をパチンと鳴らすと――
空間が激しく動き始めた。
どうやら、移動開始のようだ。
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