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第47話 神の降臨
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洞窟は即死トラップ満載だったが、俺とフォースの力で無力化したので、それほど脅威ではなかった。
となると、攻略も時間の問題だろう。
洞窟の中は岩でゴツゴツしているのかと思えば、閉鎖的な迷宮のような道が続くだけだった。あちこちに階段が続き、特殊な地形となっていた。その為、少し戦闘には不向きというか、戦い辛い。しかしそれでも、今のところ支障なく進んでいた。
「なんだ、思ったより楽勝だな。モンスターもそれほど強くないし」
薄い影のような『アートマン』なる念属性モンスターがやたら出現していた。けど、攻撃もたいしたことなければ、ほぼ一撃で倒せていた。
そして、そのアートマンこそ『エクサダイト』をドロップするモンスターであった。おかげで、かなりの量を手に入れた。
「すごいわね、ユメ。もう持ちきれないくらいにあるわよ」
「もうかれこれ三時間はいるからな。ネーブルはもう満杯か?」
「うん、これ以上はちょっと……重量もかなりあるし」
「そうか。ゼファは?」
「わたくしもこれ以上は、行動に支障が……」
だよな。
もう少し持っていきたかったが、これが限界か。
「フォース、あとどれくらい持てる?」
「あたしはワープでパラドックスへ転送している」
「……え、なんだって?」
「転送してる」
そ、その手があったか……。道理で、フォースは重くなさそうだと持ったよ。
「おいおい、早く言ってくれよ!?」
「だって、みんな必死だったから……」
ショボンとなるフォース。
「いや、怒ってはないよ。よし、じゃ俺たちの分も転送を頼むよ」
「了解した」
俺、ネーブル、ゼファのエクサダイトも転送した。
「ふぅ、これで身軽になったな。さすがに重かったぜ」
さて、この調子でどんどんエクサダイトを採りまくって――――。
ついに洞窟の奥へ来た。
そこには大きな扉があって、いかにもな雰囲気があった。てか、あからさまなボス部屋である。
「あー…。これって、エクストラボスの部屋よね。ていうか、そうだわ」
ライジンスキルで感じ取ったのか、ネーブルは怪訝な顔をして言った。確からしいな。
「嫌な予感がします……ユメ様」
「そうだな、ゼファ。俺たちはエクサダイトを採りに来ただけだし、倒すメリットもないだろう。もっとアートマン狩って帰ろうぜ」
そうさ、ボスの相手をしている暇はない。
さあ、戻ろうとしたその時だった――。
扉がいきなり開放され、そして、俺たちを飲み込もうとした。
「なっ――――――!? 扉が勝手に……!!」
開いた。
開きやがった。
……いきなり!
急に扉が開いたかと思えば、すごい吸引力で俺たちを引っ張った。
「きゃあぁぁぁ……!」「す、吸い込まれてしまいますっ……」
「ネーブル、ゼファ!!」
まずい。二人とも謎の力にどんどん引っ張られている。
フォースは!?
「……あたしは平気」
ソウルフォースで、ものともしていなかった。
……よし、俺も。
バランスに傾け、力を集中させた。
「…………ネーブル、ゼファ!」
飛ばされそうになっている二人を引き寄せ、手を繋いだ。あっぶね~!
「ユメ!」「ユメ様っ」
「ふたりとも手を離すなよ……!! フォース、扉を何とか出来ないのか!?」
「無理。このような特殊ダンジョンの場合、開いたら二度と閉じれない。扉が開いた影響で、ワープ・テレポートの類も使用不可能になった。このままボス部屋に突入するしかない」
「結局、入るしか選択はないのかよ……!」
仕方ない。
どんなボスが出てくるか未知数だが、倒すまでだ。
◆
部屋の中はシンプルな広場になっていた。
だだっ広く、けれど虚しい空間がそこにはあった。
「なんだか不思議な場所ですね……」ゼファは一帯を見回し、「こんな何もないところ……逆に不気味ね」とネーブルは少し怖がっていた。
……って、あれ、フォースの感想もあるかと思ったが。
「そいや、フォースの姿がないぞ。どこいった!?」
「フォースちゃん!?」「え、フォース?」
いない、どこだ……。
「こっち。下にいる」
声がした。下?
下を見るが、何もない。
「ユメ、そっちは上。こっちが下」
見上げると、そこには逆さまになったフォースがいた。
「んなところに!? いつの間にそんな師匠みたいなことになってたんだよ」
「こっちが地上。そっちは天空。だから危険、すぐ下りて」
「降りろって……ん~、ジャンプすりゃいいのか?」
ぴょんと跳躍すると、力に引かれて俺はフォースの隣に下りた。……マジ?
「こわっ。どうなってんだこの空間……。おーい、ゼファとネーブルも来いよー」
「わ、分かりました!」
跳ねてくるゼファをお姫様抱っこで受け止めた。
「……ユメ様」
「ゼファ、今日も綺麗だな」
「……う、嬉しいです♡」
体勢を崩し、抱きついてくるゼファを、俺も抱きしめ返した。……実のところ、あの飛び越えが怖かったんだろうな。
「ちょ、ちょっと! ユメ! ゼファとイチャイチャしてないで、わたしも受け止めてよ!?」
「あー、悪い。てことで、ゼファ。少し離れていてくれ」
「はい……」
名残惜しそうにゼファは俺から離れた。
さて、次はネーブルを受け止めねば。
「さあ、来い。ネーブル」
「……うん」
ダンっと飛んでくるネーブルは、俺の方に目掛けて突っ込んできた。なかなか勢いがあったが、俺は見事にキャッチ。腕に納めた――つもりだった。
「…………」
「な、なんでわたしの時は無言なのよ!?」
「んや、ネーブル、お前……わざとだろ!? 俺の顔面……お前の胸にめり込んでいるんだが。身動き出来ないし……正面から密着しすぎだろ」
天国すぎて、もうワケが分かりません。
「不可抗力よ……仕方なかったの!」
「そうか、不可抗力か。最高すぎだなそれ――――っと、ボスのお出ましか」
みんなが地上へ降り立つと、唐突に重圧が圧し掛かってきた。なんてプレッシャーだ……ウソだろ。これは今までに感じたことのないヤベェ感じだ。
「天空から出現」
フォースが杖を構えた。
最悪な展開らしい。
そうして、ヤツは現れた。
『………………』
なんて大きさだ。
堕天使タイプの大型モンスターか。しかし、デカすぎる。前に戦ったドラゴンやゴーレムを遥に超えるサイズだった。
「…………ユメ。あれは、エクストラボスを超える『レジェンドボス』。我々の属性とは異なる存在。『天空』、『空間』、『虚空』を司る神・アーカーシャという」
「なんだって……神様の登場かよ。そんなん倒せるのかよ」
「不可能。あれに物理も魔法も効かない」
「へ、へぇ。そりゃやべぇな」
「やばい。逃げるべきと助言する……けど、逃走も不可能」
「に、逃げられないの!?」
俺の代わりに驚くネーブルは、絶句した。
「無理。たった今、この空間と外界は完全に遮断された。あたしたちは孤立した。今、どこにいて、どの空間、どの時間にいるのかすら分からない」
高防御スキル『スペシャルガード』を付与してくれるフォースだったが、その顔に余裕はなかった。……おいおい、フォースがそんな顔するとか、マジでやべぇぞ。
聖女スキル『グロリアスブレッシング』、『グロリアスアジリティ』の全体支援が入った。これはゼファだ。
けど、これでも生き残れるかどうか。
「仕方ないわね!」
「ネーブル?」
「ライジンの補助スキルを使う。でも、その代償にわたしの行動に制限が掛かるから、ユメに全てを任せるわ」
「……分かった」
『エレクトリックテール――――――!!!!!』
――――さぁて、準備は万端だ。
となると、攻略も時間の問題だろう。
洞窟の中は岩でゴツゴツしているのかと思えば、閉鎖的な迷宮のような道が続くだけだった。あちこちに階段が続き、特殊な地形となっていた。その為、少し戦闘には不向きというか、戦い辛い。しかしそれでも、今のところ支障なく進んでいた。
「なんだ、思ったより楽勝だな。モンスターもそれほど強くないし」
薄い影のような『アートマン』なる念属性モンスターがやたら出現していた。けど、攻撃もたいしたことなければ、ほぼ一撃で倒せていた。
そして、そのアートマンこそ『エクサダイト』をドロップするモンスターであった。おかげで、かなりの量を手に入れた。
「すごいわね、ユメ。もう持ちきれないくらいにあるわよ」
「もうかれこれ三時間はいるからな。ネーブルはもう満杯か?」
「うん、これ以上はちょっと……重量もかなりあるし」
「そうか。ゼファは?」
「わたくしもこれ以上は、行動に支障が……」
だよな。
もう少し持っていきたかったが、これが限界か。
「フォース、あとどれくらい持てる?」
「あたしはワープでパラドックスへ転送している」
「……え、なんだって?」
「転送してる」
そ、その手があったか……。道理で、フォースは重くなさそうだと持ったよ。
「おいおい、早く言ってくれよ!?」
「だって、みんな必死だったから……」
ショボンとなるフォース。
「いや、怒ってはないよ。よし、じゃ俺たちの分も転送を頼むよ」
「了解した」
俺、ネーブル、ゼファのエクサダイトも転送した。
「ふぅ、これで身軽になったな。さすがに重かったぜ」
さて、この調子でどんどんエクサダイトを採りまくって――――。
ついに洞窟の奥へ来た。
そこには大きな扉があって、いかにもな雰囲気があった。てか、あからさまなボス部屋である。
「あー…。これって、エクストラボスの部屋よね。ていうか、そうだわ」
ライジンスキルで感じ取ったのか、ネーブルは怪訝な顔をして言った。確からしいな。
「嫌な予感がします……ユメ様」
「そうだな、ゼファ。俺たちはエクサダイトを採りに来ただけだし、倒すメリットもないだろう。もっとアートマン狩って帰ろうぜ」
そうさ、ボスの相手をしている暇はない。
さあ、戻ろうとしたその時だった――。
扉がいきなり開放され、そして、俺たちを飲み込もうとした。
「なっ――――――!? 扉が勝手に……!!」
開いた。
開きやがった。
……いきなり!
急に扉が開いたかと思えば、すごい吸引力で俺たちを引っ張った。
「きゃあぁぁぁ……!」「す、吸い込まれてしまいますっ……」
「ネーブル、ゼファ!!」
まずい。二人とも謎の力にどんどん引っ張られている。
フォースは!?
「……あたしは平気」
ソウルフォースで、ものともしていなかった。
……よし、俺も。
バランスに傾け、力を集中させた。
「…………ネーブル、ゼファ!」
飛ばされそうになっている二人を引き寄せ、手を繋いだ。あっぶね~!
「ユメ!」「ユメ様っ」
「ふたりとも手を離すなよ……!! フォース、扉を何とか出来ないのか!?」
「無理。このような特殊ダンジョンの場合、開いたら二度と閉じれない。扉が開いた影響で、ワープ・テレポートの類も使用不可能になった。このままボス部屋に突入するしかない」
「結局、入るしか選択はないのかよ……!」
仕方ない。
どんなボスが出てくるか未知数だが、倒すまでだ。
◆
部屋の中はシンプルな広場になっていた。
だだっ広く、けれど虚しい空間がそこにはあった。
「なんだか不思議な場所ですね……」ゼファは一帯を見回し、「こんな何もないところ……逆に不気味ね」とネーブルは少し怖がっていた。
……って、あれ、フォースの感想もあるかと思ったが。
「そいや、フォースの姿がないぞ。どこいった!?」
「フォースちゃん!?」「え、フォース?」
いない、どこだ……。
「こっち。下にいる」
声がした。下?
下を見るが、何もない。
「ユメ、そっちは上。こっちが下」
見上げると、そこには逆さまになったフォースがいた。
「んなところに!? いつの間にそんな師匠みたいなことになってたんだよ」
「こっちが地上。そっちは天空。だから危険、すぐ下りて」
「降りろって……ん~、ジャンプすりゃいいのか?」
ぴょんと跳躍すると、力に引かれて俺はフォースの隣に下りた。……マジ?
「こわっ。どうなってんだこの空間……。おーい、ゼファとネーブルも来いよー」
「わ、分かりました!」
跳ねてくるゼファをお姫様抱っこで受け止めた。
「……ユメ様」
「ゼファ、今日も綺麗だな」
「……う、嬉しいです♡」
体勢を崩し、抱きついてくるゼファを、俺も抱きしめ返した。……実のところ、あの飛び越えが怖かったんだろうな。
「ちょ、ちょっと! ユメ! ゼファとイチャイチャしてないで、わたしも受け止めてよ!?」
「あー、悪い。てことで、ゼファ。少し離れていてくれ」
「はい……」
名残惜しそうにゼファは俺から離れた。
さて、次はネーブルを受け止めねば。
「さあ、来い。ネーブル」
「……うん」
ダンっと飛んでくるネーブルは、俺の方に目掛けて突っ込んできた。なかなか勢いがあったが、俺は見事にキャッチ。腕に納めた――つもりだった。
「…………」
「な、なんでわたしの時は無言なのよ!?」
「んや、ネーブル、お前……わざとだろ!? 俺の顔面……お前の胸にめり込んでいるんだが。身動き出来ないし……正面から密着しすぎだろ」
天国すぎて、もうワケが分かりません。
「不可抗力よ……仕方なかったの!」
「そうか、不可抗力か。最高すぎだなそれ――――っと、ボスのお出ましか」
みんなが地上へ降り立つと、唐突に重圧が圧し掛かってきた。なんてプレッシャーだ……ウソだろ。これは今までに感じたことのないヤベェ感じだ。
「天空から出現」
フォースが杖を構えた。
最悪な展開らしい。
そうして、ヤツは現れた。
『………………』
なんて大きさだ。
堕天使タイプの大型モンスターか。しかし、デカすぎる。前に戦ったドラゴンやゴーレムを遥に超えるサイズだった。
「…………ユメ。あれは、エクストラボスを超える『レジェンドボス』。我々の属性とは異なる存在。『天空』、『空間』、『虚空』を司る神・アーカーシャという」
「なんだって……神様の登場かよ。そんなん倒せるのかよ」
「不可能。あれに物理も魔法も効かない」
「へ、へぇ。そりゃやべぇな」
「やばい。逃げるべきと助言する……けど、逃走も不可能」
「に、逃げられないの!?」
俺の代わりに驚くネーブルは、絶句した。
「無理。たった今、この空間と外界は完全に遮断された。あたしたちは孤立した。今、どこにいて、どの空間、どの時間にいるのかすら分からない」
高防御スキル『スペシャルガード』を付与してくれるフォースだったが、その顔に余裕はなかった。……おいおい、フォースがそんな顔するとか、マジでやべぇぞ。
聖女スキル『グロリアスブレッシング』、『グロリアスアジリティ』の全体支援が入った。これはゼファだ。
けど、これでも生き残れるかどうか。
「仕方ないわね!」
「ネーブル?」
「ライジンの補助スキルを使う。でも、その代償にわたしの行動に制限が掛かるから、ユメに全てを任せるわ」
「……分かった」
『エレクトリックテール――――――!!!!!』
――――さぁて、準備は万端だ。
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