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第44話 エルフの復讐
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「あ、ありえねぇ…………!!!」
十人いた野盗は、ひとりを残して全員倒した。やはり、あの野盗たちの正体は『ゾンビ』で、人間ではなかった。
「あとはお前だけだな」
「…………ひぃっ!」
俺は指を鳴らして、野盗に問い詰めた。
「おい、お前。なぜゾンビなんだ。それに、人間を喰ったのか……! 正直に言え」
「……わ、分かった。分かったが、条件がある!」
「なんだ、言ってみろ」
「さすがの俺も命は惜しい。正直に話すから見逃してくれ!!」
「ああ、俺はお前を殺さない。だから、正直に話せば見逃す」
「へ……へへ。話せば分かるじゃねぇか……。じゃあ、頼むから、命だけは取らないでくれよ」
「約束しよう」
野盗はここまでの経緯を話した。
「魔神だよ。ディオネってヤツが俺たちを強くしてくれるっていうからよ……。で、話に乗った。そしたらどうよ、簡単には死なない体になった! それで女も襲い放題ってワケ! 村や街を襲って金も何もかも奪ってやった……!」
「そんな下衆話はいらん」
「す、すまねぇ。……でな、ディオネに指示されたんだよ」
「ほう?」
「ゾンビを作る能力を与えてやったから、そこらに適当に放てってな。そしたらよ、いつしか噂を聞きつけた闇使いが現れるから、その時は報告しろってよ」
なるほどな。いつしか現れたキル三兄弟のように、野盗たちはおそらく、クリーチャー化してしまったのだ。モンスターにも魔神にもなれない半端なバケモノ、クリーチャーに。なんてヤツ等だ。
「ディオネな、分かった。あとは何かあるか」
「…………ねぇよ。俺はもう行くぞ。死にたくないんでね」
そう野盗は踵を返した。
背を向け立ち去ろうとしたが――。
突然、野盗は射貫かれ……炎に焼かれた。
『ギャアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!! 殺さないって約束だろうが!! ああああうあああああああああああああああッッ!!!』
「俺はお前を殺さない。……そう言っただけだ」
野盗を倒したのは、コライユだった。
押し倒された時に耳打ちを受けたのだが、どうやら彼女の村は、あの野盗共によって滅ぼされたようだったのだ。だから、深い恨みがあったと。
「申し訳ないです、ユメさん。私たちの村はゾンビに襲われてしまって……村の人たちや家族を殺されて、女の子たちは……酷い目に……。だから、その……仇を討ちたくて。お強いあなたの力を借りようと思っていたのです」
「事情は分かっていたよ」
「……え」
「俺を頼りたいと必死だったし、キミの瞳はずっと悲しげだった。でも、あの野盗たちが現れたとき、ヤツ等に対する憎しみが見えたし、明確な殺意があった」
「……はい。決して騙そうと思ったわけでは無かったのです。いつか話そうとは思っていたのですが……」
「いいよ。俺もあの野盗たちは許せなかった。あれはもう人間ですらなかったし」
魔神・ディオネ……俺はそいつを絶対に倒す。
これ以上、この国を破滅へ向かわせやしない。フォースの故郷でもあるこの国を。
◆
別の場所で野宿して、朝を迎えた。
しかし、起きたのは俺だけ。夜明け前なのだから、当然だけど。
せっかくなので、朝風呂へ向かった。
地の神国は、少し歩けば天然温泉が見つかる。それほど充実しているのには、理由があった。
地の王が温泉大好きのようなのだ。それゆえ、偉大な力を使って天然温泉を創り出したとかなんとか――そんな伝説があった。
偉大な力……それはつまり、ソウルフォースだろう。
「会ったことないけどなぁ~」
手近な温泉を発見し、俺は服を脱いで入った。
ふぅ…………。朝風呂は最高だ。
などと、高揚していれば――俺の隣に誰か入って来た。
「…………誰!?」
「…………あらぁ、先客がいたのですね」
顔を合わせると、相手は女性だった。少し大人びた感じの。もちろん、裸である。……最近よく女体を目撃するなぁ。
女性は顔を近づけて、凝視してきた。近い……かなり。
「う……なんで、そんな近くで見る……」
「すみません。私は目が悪く近眼なもので……こうして、至近距離でないと顔が見えないのです」
「ああ、じゃあ普段は眼鏡を」
「ええ、お風呂では曇ってしまうので。……ふむふむ、って、男の子!?」
「今更っすか。声で分るでしょうに」
「あらぁ、これは大変ですね。でもいいでしょう。話している限り、野盗ではなさそうですから」
おや、この女性も訳ありかな。
「その野盗ならもう倒した。安心していいよ」
「そ、そうなのですか! それは良かった……ゾンビは出るわ、村や街は滅ぶわ……この国は大変なことになってしまいました。ですから、私自ら出向いたのです。あとは魔神を追い払うだけですが……上手くいくかどうか」
「魔神を? ひとりで? んな無茶な……」
「無茶かどうかは、やってみなければ分かりませんよ」
いやぁ、さすがに女性ひとりではなぁ。なんか危なっかしい人だなぁと俺は思った。――むぅ、これ以上パーティを増やしたくない気もするのだが、どうしようか。拾ってあげるべきだろうか。
悩んでいると。
女性はいきなり俺の手を掴んできた。
両手でガッシリ握られてる。
「あ、あの……これはいったい」
「突然で申し訳ありません。あなたを知りたくて」
そんな超近い距離で言われてもな。すっげぇドキドキする……。
――――って、この感じ。
まさか…………!
「この力、ソウルフォース……」
「あらぁ、ご存じでしたか。そうですよ、ソウルフォースであなたの素性を調べようかと、でも無理でした。あなたは特別なのですね」
そんな天使のような柔らかい笑顔を向けられた。
…………そうか、この女性はもしかすると。
十人いた野盗は、ひとりを残して全員倒した。やはり、あの野盗たちの正体は『ゾンビ』で、人間ではなかった。
「あとはお前だけだな」
「…………ひぃっ!」
俺は指を鳴らして、野盗に問い詰めた。
「おい、お前。なぜゾンビなんだ。それに、人間を喰ったのか……! 正直に言え」
「……わ、分かった。分かったが、条件がある!」
「なんだ、言ってみろ」
「さすがの俺も命は惜しい。正直に話すから見逃してくれ!!」
「ああ、俺はお前を殺さない。だから、正直に話せば見逃す」
「へ……へへ。話せば分かるじゃねぇか……。じゃあ、頼むから、命だけは取らないでくれよ」
「約束しよう」
野盗はここまでの経緯を話した。
「魔神だよ。ディオネってヤツが俺たちを強くしてくれるっていうからよ……。で、話に乗った。そしたらどうよ、簡単には死なない体になった! それで女も襲い放題ってワケ! 村や街を襲って金も何もかも奪ってやった……!」
「そんな下衆話はいらん」
「す、すまねぇ。……でな、ディオネに指示されたんだよ」
「ほう?」
「ゾンビを作る能力を与えてやったから、そこらに適当に放てってな。そしたらよ、いつしか噂を聞きつけた闇使いが現れるから、その時は報告しろってよ」
なるほどな。いつしか現れたキル三兄弟のように、野盗たちはおそらく、クリーチャー化してしまったのだ。モンスターにも魔神にもなれない半端なバケモノ、クリーチャーに。なんてヤツ等だ。
「ディオネな、分かった。あとは何かあるか」
「…………ねぇよ。俺はもう行くぞ。死にたくないんでね」
そう野盗は踵を返した。
背を向け立ち去ろうとしたが――。
突然、野盗は射貫かれ……炎に焼かれた。
『ギャアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!! 殺さないって約束だろうが!! ああああうあああああああああああああああッッ!!!』
「俺はお前を殺さない。……そう言っただけだ」
野盗を倒したのは、コライユだった。
押し倒された時に耳打ちを受けたのだが、どうやら彼女の村は、あの野盗共によって滅ぼされたようだったのだ。だから、深い恨みがあったと。
「申し訳ないです、ユメさん。私たちの村はゾンビに襲われてしまって……村の人たちや家族を殺されて、女の子たちは……酷い目に……。だから、その……仇を討ちたくて。お強いあなたの力を借りようと思っていたのです」
「事情は分かっていたよ」
「……え」
「俺を頼りたいと必死だったし、キミの瞳はずっと悲しげだった。でも、あの野盗たちが現れたとき、ヤツ等に対する憎しみが見えたし、明確な殺意があった」
「……はい。決して騙そうと思ったわけでは無かったのです。いつか話そうとは思っていたのですが……」
「いいよ。俺もあの野盗たちは許せなかった。あれはもう人間ですらなかったし」
魔神・ディオネ……俺はそいつを絶対に倒す。
これ以上、この国を破滅へ向かわせやしない。フォースの故郷でもあるこの国を。
◆
別の場所で野宿して、朝を迎えた。
しかし、起きたのは俺だけ。夜明け前なのだから、当然だけど。
せっかくなので、朝風呂へ向かった。
地の神国は、少し歩けば天然温泉が見つかる。それほど充実しているのには、理由があった。
地の王が温泉大好きのようなのだ。それゆえ、偉大な力を使って天然温泉を創り出したとかなんとか――そんな伝説があった。
偉大な力……それはつまり、ソウルフォースだろう。
「会ったことないけどなぁ~」
手近な温泉を発見し、俺は服を脱いで入った。
ふぅ…………。朝風呂は最高だ。
などと、高揚していれば――俺の隣に誰か入って来た。
「…………誰!?」
「…………あらぁ、先客がいたのですね」
顔を合わせると、相手は女性だった。少し大人びた感じの。もちろん、裸である。……最近よく女体を目撃するなぁ。
女性は顔を近づけて、凝視してきた。近い……かなり。
「う……なんで、そんな近くで見る……」
「すみません。私は目が悪く近眼なもので……こうして、至近距離でないと顔が見えないのです」
「ああ、じゃあ普段は眼鏡を」
「ええ、お風呂では曇ってしまうので。……ふむふむ、って、男の子!?」
「今更っすか。声で分るでしょうに」
「あらぁ、これは大変ですね。でもいいでしょう。話している限り、野盗ではなさそうですから」
おや、この女性も訳ありかな。
「その野盗ならもう倒した。安心していいよ」
「そ、そうなのですか! それは良かった……ゾンビは出るわ、村や街は滅ぶわ……この国は大変なことになってしまいました。ですから、私自ら出向いたのです。あとは魔神を追い払うだけですが……上手くいくかどうか」
「魔神を? ひとりで? んな無茶な……」
「無茶かどうかは、やってみなければ分かりませんよ」
いやぁ、さすがに女性ひとりではなぁ。なんか危なっかしい人だなぁと俺は思った。――むぅ、これ以上パーティを増やしたくない気もするのだが、どうしようか。拾ってあげるべきだろうか。
悩んでいると。
女性はいきなり俺の手を掴んできた。
両手でガッシリ握られてる。
「あ、あの……これはいったい」
「突然で申し訳ありません。あなたを知りたくて」
そんな超近い距離で言われてもな。すっげぇドキドキする……。
――――って、この感じ。
まさか…………!
「この力、ソウルフォース……」
「あらぁ、ご存じでしたか。そうですよ、ソウルフォースであなたの素性を調べようかと、でも無理でした。あなたは特別なのですね」
そんな天使のような柔らかい笑顔を向けられた。
…………そうか、この女性はもしかすると。
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