上 下
44 / 177

第44話 エルフの復讐

しおりを挟む
「あ、ありえねぇ…………!!!」

 十人いた野盗は、ひとりを残して全員倒した。やはり、あの野盗たちの正体は『ゾンビ』で、人間ではなかった。

「あとはお前だけだな」
「…………ひぃっ!」

 俺は指を鳴らして、野盗に問い詰めた。

「おい、お前。なぜゾンビなんだ。それに、人間をったのか……! 正直に言え」
「……わ、分かった。分かったが、条件がある!」
「なんだ、言ってみろ」

「さすがの俺も命はしい。正直に話すから見逃してくれ!!」

「ああ、俺はお前を殺さない。だから、正直に話せば見逃す」
「へ……へへ。話せば分かるじゃねぇか……。じゃあ、頼むから、命だけは取らないでくれよ」
「約束しよう」

 野盗はここまでの経緯を話した。

「魔神だよ。ディオネってヤツが俺たちを強くしてくれるっていうからよ……。で、話に乗った。そしたらどうよ、簡単には死なない体になった! それで女も襲い放題ってワケ! 村や街を襲って金も何もかも奪ってやった……!」

「そんな下衆げす話はいらん」

「す、すまねぇ。……でな、ディオネに指示されたんだよ」
「ほう?」
「ゾンビを作る能力スキルを与えてやったから、そこらに適当に放てってな。そしたらよ、いつしか噂を聞きつけた闇使いが現れるから、その時は報告しろってよ」

 なるほどな。いつしか現れたキル三兄弟のように、野盗たちはおそらく、クリーチャー化してしまったのだ。モンスターにも魔神にもなれない半端なバケモノ、クリーチャーに。なんてヤツ等だ。

「ディオネな、分かった。あとは何かあるか」
「…………ねぇよ。俺はもう行くぞ。死にたくないんでね」

 そう野盗はきびすを返した。
 背を向け立ち去ろうとしたが――。


 突然、野盗は射貫いぬかれ……炎に焼かれた。


『ギャアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!! 殺さないって約束だろうが!! ああああうあああああああああああああああッッ!!!』


俺は・・お前を殺さない。……そう言っただけだ」


 野盗を倒したのは、コライユだった。
 押し倒された時に耳打ちを受けたのだが、どうやら彼女の村は、あの野盗共によって滅ぼされたようだったのだ。だから、深い恨みがあったと。


「申し訳ないです、ユメさん。私たちの村はゾンビに襲われてしまって……村の人たちや家族を殺されて、女の子たちは……酷い目に……。だから、その……かたきちたくて。お強いあなたの力を借りようと思っていたのです」
「事情は分かっていたよ」
「……え」
「俺を頼りたいと必死だったし、キミの瞳はずっと悲しげだった。でも、あの野盗たちが現れたとき、ヤツ等に対する憎しみが見えたし、明確な殺意があった」

「……はい。決してだまそうと思ったわけでは無かったのです。いつか話そうとは思っていたのですが……」

「いいよ。俺もあの野盗たちは許せなかった。あれはもう人間ですらなかったし」

 魔神・ディオネ……俺はそいつを絶対に倒す。
 これ以上、この国を破滅へ向かわせやしない。フォースの故郷でもあるこの国を。


 ◆


 別の場所で野宿して、朝を迎えた。
 しかし、起きたのは俺だけ。夜明け前なのだから、当然だけど。

 せっかくなので、朝風呂へ向かった。

 地の神国クレドは、少し歩けば天然温泉が見つかる。それほど充実しているのには、理由わけがあった。
 地の王が温泉大好きのようなのだ。それゆえ、偉大な力を使って天然温泉をつくり出したとかなんとか――そんな伝説があった。

 偉大な力……それはつまり、ソウルフォースだろう。

「会ったことないけどなぁ~」

 手近な温泉を発見し、俺は服を脱いで入った。

 ふぅ…………。朝風呂は最高だ。

 などと、高揚こうようしていれば――俺の隣に誰か入って来た。

「…………誰!?」
「…………あらぁ、先客がいたのですね」

 顔を合わせると、相手は女性だった。少し大人びた感じの。もちろん、裸である。……最近よく女体を目撃するなぁ。
 女性は顔を近づけて、凝視してきた。近い……かなり。

「う……なんで、そんな近くで見る……」
「すみません。私は目が悪く近眼なもので……こうして、至近距離でないと顔が見えないのです」
「ああ、じゃあ普段は眼鏡めがねを」
「ええ、お風呂ではくもってしまうので。……ふむふむ、って、男の子!?」
「今更っすか。声で分るでしょうに」

「あらぁ、これは大変ですね。でもいいでしょう。話している限り、野盗ではなさそうですから」

 おや、この女性ひとも訳ありかな。

「その野盗ならもう倒した。安心していいよ」
「そ、そうなのですか! それは良かった……ゾンビは出るわ、村や街は滅ぶわ……この国は大変なことになってしまいました。ですから、私自ら出向いたのです。あとは魔神を追い払うだけですが……上手くいくかどうか」

「魔神を? ひとりで? んな無茶な……」
「無茶かどうかは、やってみなければ分かりませんよ」

 いやぁ、さすがに女性ひとりではなぁ。なんか危なっかしい人だなぁと俺は思った。――むぅ、これ以上パーティを増やしたくない気もするのだが、どうしようか。拾ってあげるべきだろうか。

 悩んでいると。

 女性はいきなり俺の手をつかんできた。
 両手でガッシリにぎられてる。

「あ、あの……これはいったい」
「突然で申し訳ありません。あなたを知りたくて」

 そんな超近い距離で言われてもな。すっげぇドキドキする……。

 ――――って、この感じ・・

 まさか…………!

「この力、ソウルフォース……」
「あらぁ、ご存じでしたか。そうですよ、ソウルフォースであなたの素性すじょうを調べようかと、でも無理でした。あなたは特別・・なのですね」

 そんな天使のような柔らかい笑顔を向けられた。

 …………そうか、この女性ひとはもしかすると。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

転生令嬢は現状を語る。

みなせ
ファンタジー
目が覚めたら悪役令嬢でした。 よくある話だけど、 私の話を聞いてほしい。

トップ冒険者の付与師、「もう不要」と言われ解雇。トップ2のパーティーに入り現実を知った。

ファンタジー
そこは、ダンジョンと呼ばれる地下迷宮を舞台にモンスターと人間が暮らす世界。 冒険者と呼ばれる、ダンジョン攻略とモンスター討伐を生業として者達がいる。 その中で、常にトップの成績を残している冒険者達がいた。 その内の一人である、付与師という少し特殊な職業を持つ、ライドという青年がいる。 ある日、ライドはその冒険者パーティーから、攻略が上手くいかない事を理由に、「もう不要」と言われ解雇された。 新しいパーティーを見つけるか、入るなりするため、冒険者ギルドに相談。 いつもお世話になっている受付嬢の助言によって、トップ2の冒険者パーティーに参加することになった。 これまでとの扱いの違いに戸惑うライド。 そして、この出来事を通して、本当の現実を知っていく。 そんな物語です。 多分それほど長くなる内容ではないと思うので、短編に設定しました。 内容としては、ざまぁ系になると思います。 気軽に読める内容だと思うので、ぜひ読んでやってください。

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~

名無し
ファンタジー
お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

二度も親を失った俺は、今日も最強を目指す

SO/N
ファンタジー
主人公、ウルスはあるどこにでもある小さな町で、両親や幼馴染と平和に過ごしていた。 だがある日、町は襲われ、命からがら逃げたウルスは突如、前世の記憶を思い出す。 前世の記憶を思い出したウルスは、自分を拾ってくれた人類最強の英雄・グラン=ローレスに業を教わり、妹弟子のミルとともに日々修行に明け暮れた。 そして数年後、ウルスとミルはある理由から魔導学院へ入学する。そこでは天真爛漫なローナ・能天気なニイダ・元幼馴染のライナ・謎多き少女フィーリィアなど、様々な人物と出会いと再会を果たす。 二度も全てを失ったウルスは、それでも何かを守るために戦う。 たとえそれが間違いでも、意味が無くても。 誰かを守る……そのために。 【???????????????】 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー *この小説は「小説家になろう」で投稿されている『二度も親を失った俺は、今日も最強を目指す』とほぼ同じ物です。こちらは不定期投稿になりますが、基本的に「小説家になろう」で投稿された部分まで投稿する予定です。 また、現在カクヨム・ノベルアップ+でも活動しております。 各サイトによる、内容の差異はほとんどありません。

西からきた少年について

ねころびた
ファンタジー
西から来た少年は、親切な大人たちと旅をする。

処理中です...