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第39話 楽園
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星が落ちてきそうだった。
エメラルドグリーンのオーロラが揺り籠となって、星を揺らしているようにも見えた。あの幻想的な光と同等の瞳が俺をずっと見ていた。
「……フォース。俺じっと見つめてくれるのは嬉しいけど、その、なんだ……そう密着されるとね、動けないっていうか。いや、嬉しいけどね」
ただ、問題なのはバスタオル一枚なこと。
かなり危ういけど、それはネーブルやゼファも一緒だし、まあいつもの光景といえば、いつもの光景。すっかり慣れた。
しかし、こうも身を委ねる形で密着されるのは初めてかもしれない。さすがの俺もドキドキして、心拍数もかなり上昇していた。
「…………」
小さな魔法使いは何も答えなかった。
ただ瞳で「ずっとこうしていたい」と訴えてくるだけだった。ので、俺は仕方なく、そうしていた。まあいいか、ネーブルは屋根に飛び乗って星を眺めているし、ゼファは隣で酒を楽しんでいた。
「ユメ様。ご一献どうぞ」
「……ありがとう。こんな星空の下で飲む酒は最高だなぁ」
「そうですね~。ここは他の国と違って、夜空が素晴らしいです。ですから、ずっとこの国を存続させていくべきですよ。ねぇ、フォースちゃん」
こくっと頷くフォースは、やっと口を開いた。
「まだ魔神は残ってる。この国を守るためにあたしも頑張る」
「はい、わたくしも全力でお守り致します。……ですので、フォースちゃん。そろそろ、ユメ様を――」
「ゼファもこっちに来ればいいよ」
と、フォースはゼファを手招きなさった。
え……。
「ちょ、ゼファ! マジ!?」
「……フォースちゃんばかりズルいですから、わたくしもっ」
あのウルトラナイスバディのゼファが密着してきた。俺の腕が大きな胸によって挟まれ、包まれ、形を変えていた。……ばいんばいんと。
「…………っおう!? ゼ、ゼファ……そそそそそれは、いくらなんでも大胆つーか、やばいって……! うわぁ……」
「ふふっ、あとお耳を拝借しますね……」
ゼファの顔が接近してくると、俺の右耳をはむっとしてくれた。
うあぁ…………なんて破壊力だ。どうかなりそうってか、もうどうかなっている。このまま死んでもいいかも。そう思えるほどに、ぞくぞくっとしてびくびくっとした。
負けじとフォースも今度は、俺の左耳をはむっと、あの小さな口で挟んできた。……それはやばいって!! あんな小さくて桜色の唇ではむはむされたら、俺は……俺は。
「………………う」
顔が熱い。
いや、全身が熱い……。
ていうか、なんでどうして、こうなった。
右にゼファ、左にフォース。
二人が俺の耳をはむはむ~~~~~~~~~~~~~!!!!!
そこで俺は頭が真っ白になって――――気を失った。
◆
意識を取り戻すと、ベッドの上にいた。
「俺の部屋か……う、頭が痛い」
気を失っていたらしい。
なにがあったっけ。とても素晴らしい楽園で過ごしていたような気がするが……なぜか思い出せない。一時的な記憶障害だろうか。それとも夢?
「ユメ」
「あれ、この声はネーブルか……って、うわっ! 下着姿で隣に寝てるし」
「あははは……ごめんごめん。ほら、今日はわたしと寝るって約束だったし」
「ああ、そりゃそうか。分かった。じゃ一緒に寝よっか」
「うん。あとね、一応言っておくけど~ちなみにこれ、パジャマだから」
嘘だろ……。
そんな下着も同然なパジャマがあってたまるか……!
まあ、いいか。
やれやれとネーブルと視線を合わせていると、なぜかニヤリと笑っていた。
「ん、どうした、ネーブル」
「……はい、これ」
「へ……これって、うわっ!! これ、お前のパジャマじゃ……あれ、てことは、今は……む!?」
「えへへ……」
えへへ、じゃない。
俺の掌には、ネーブルのパジャマ上下セットが乗っかっていた。大事なことなのでもう一度。これはパジャマである。
つまり、今のネーブルは……。
「見たら怒るからね」
とか言いつつも、ネーブルは密着してきた。
柑橘系のサッパリした良い匂い。薄っすら見える健康的な肉体。ひとつも欠点はなく、ただただ見ほれるほどに美しい。どうしたら、あんなキュっと引き締まった体になるのだろうか。まさに女性の神秘。あとなんといっても、ゼファの胸を超える巨乳なのである。必然的にそちらへ目が向けられてしまうワケでして――。
「ばか……」
「仕方ないだろう。この至近距離だし」
「そ、そうだよね。ユメだってそういうの興味あるよね」
「そういうのってなんだよ」
「う、うるさい……。大体、ユメはどーしてわたしもだけど、フォースやゼファに手を出さないのよ。す、少しくらいいのよ……触るくらい」
「いやいや、触ろうとすると怒るじゃん。ネーブルは胸、フォースはお尻、ゼファは……なんか聖女で触りづらいし、なんかこう禁断つーか、あえて逆鱗に触れたいのだけど、触れられない切なさ……分からないかなぁ」
「なにそれ……」
理解できないと、ネーブルは少し引き気味だった。
「ま、今のでも十分嬉しいよ。生まれたままのネーブルと一緒に寝られるとかさ、今日が初めてだし……これでもかなり緊張しているんだぜ」
「そ、そうみたいね。心音が凄いし……わたしもだけど」
「と、とにかく寝るか。……あとな、隣より上に覆いかぶさるようにしてくれる方が嬉しいけどな。それくらいいだろ?」
「う、うえ!? …………分かった。でも、ヘンなところ触らないでよね」
「ああ、それは約束する」
ゴソゴソとネーブルは動き出し、上になった。
顔が良く見える。
美しい体も。
今宵は良い夢が見れそうだな。
エメラルドグリーンのオーロラが揺り籠となって、星を揺らしているようにも見えた。あの幻想的な光と同等の瞳が俺をずっと見ていた。
「……フォース。俺じっと見つめてくれるのは嬉しいけど、その、なんだ……そう密着されるとね、動けないっていうか。いや、嬉しいけどね」
ただ、問題なのはバスタオル一枚なこと。
かなり危ういけど、それはネーブルやゼファも一緒だし、まあいつもの光景といえば、いつもの光景。すっかり慣れた。
しかし、こうも身を委ねる形で密着されるのは初めてかもしれない。さすがの俺もドキドキして、心拍数もかなり上昇していた。
「…………」
小さな魔法使いは何も答えなかった。
ただ瞳で「ずっとこうしていたい」と訴えてくるだけだった。ので、俺は仕方なく、そうしていた。まあいいか、ネーブルは屋根に飛び乗って星を眺めているし、ゼファは隣で酒を楽しんでいた。
「ユメ様。ご一献どうぞ」
「……ありがとう。こんな星空の下で飲む酒は最高だなぁ」
「そうですね~。ここは他の国と違って、夜空が素晴らしいです。ですから、ずっとこの国を存続させていくべきですよ。ねぇ、フォースちゃん」
こくっと頷くフォースは、やっと口を開いた。
「まだ魔神は残ってる。この国を守るためにあたしも頑張る」
「はい、わたくしも全力でお守り致します。……ですので、フォースちゃん。そろそろ、ユメ様を――」
「ゼファもこっちに来ればいいよ」
と、フォースはゼファを手招きなさった。
え……。
「ちょ、ゼファ! マジ!?」
「……フォースちゃんばかりズルいですから、わたくしもっ」
あのウルトラナイスバディのゼファが密着してきた。俺の腕が大きな胸によって挟まれ、包まれ、形を変えていた。……ばいんばいんと。
「…………っおう!? ゼ、ゼファ……そそそそそれは、いくらなんでも大胆つーか、やばいって……! うわぁ……」
「ふふっ、あとお耳を拝借しますね……」
ゼファの顔が接近してくると、俺の右耳をはむっとしてくれた。
うあぁ…………なんて破壊力だ。どうかなりそうってか、もうどうかなっている。このまま死んでもいいかも。そう思えるほどに、ぞくぞくっとしてびくびくっとした。
負けじとフォースも今度は、俺の左耳をはむっと、あの小さな口で挟んできた。……それはやばいって!! あんな小さくて桜色の唇ではむはむされたら、俺は……俺は。
「………………う」
顔が熱い。
いや、全身が熱い……。
ていうか、なんでどうして、こうなった。
右にゼファ、左にフォース。
二人が俺の耳をはむはむ~~~~~~~~~~~~~!!!!!
そこで俺は頭が真っ白になって――――気を失った。
◆
意識を取り戻すと、ベッドの上にいた。
「俺の部屋か……う、頭が痛い」
気を失っていたらしい。
なにがあったっけ。とても素晴らしい楽園で過ごしていたような気がするが……なぜか思い出せない。一時的な記憶障害だろうか。それとも夢?
「ユメ」
「あれ、この声はネーブルか……って、うわっ! 下着姿で隣に寝てるし」
「あははは……ごめんごめん。ほら、今日はわたしと寝るって約束だったし」
「ああ、そりゃそうか。分かった。じゃ一緒に寝よっか」
「うん。あとね、一応言っておくけど~ちなみにこれ、パジャマだから」
嘘だろ……。
そんな下着も同然なパジャマがあってたまるか……!
まあ、いいか。
やれやれとネーブルと視線を合わせていると、なぜかニヤリと笑っていた。
「ん、どうした、ネーブル」
「……はい、これ」
「へ……これって、うわっ!! これ、お前のパジャマじゃ……あれ、てことは、今は……む!?」
「えへへ……」
えへへ、じゃない。
俺の掌には、ネーブルのパジャマ上下セットが乗っかっていた。大事なことなのでもう一度。これはパジャマである。
つまり、今のネーブルは……。
「見たら怒るからね」
とか言いつつも、ネーブルは密着してきた。
柑橘系のサッパリした良い匂い。薄っすら見える健康的な肉体。ひとつも欠点はなく、ただただ見ほれるほどに美しい。どうしたら、あんなキュっと引き締まった体になるのだろうか。まさに女性の神秘。あとなんといっても、ゼファの胸を超える巨乳なのである。必然的にそちらへ目が向けられてしまうワケでして――。
「ばか……」
「仕方ないだろう。この至近距離だし」
「そ、そうだよね。ユメだってそういうの興味あるよね」
「そういうのってなんだよ」
「う、うるさい……。大体、ユメはどーしてわたしもだけど、フォースやゼファに手を出さないのよ。す、少しくらいいのよ……触るくらい」
「いやいや、触ろうとすると怒るじゃん。ネーブルは胸、フォースはお尻、ゼファは……なんか聖女で触りづらいし、なんかこう禁断つーか、あえて逆鱗に触れたいのだけど、触れられない切なさ……分からないかなぁ」
「なにそれ……」
理解できないと、ネーブルは少し引き気味だった。
「ま、今のでも十分嬉しいよ。生まれたままのネーブルと一緒に寝られるとかさ、今日が初めてだし……これでもかなり緊張しているんだぜ」
「そ、そうみたいね。心音が凄いし……わたしもだけど」
「と、とにかく寝るか。……あとな、隣より上に覆いかぶさるようにしてくれる方が嬉しいけどな。それくらいいだろ?」
「う、うえ!? …………分かった。でも、ヘンなところ触らないでよね」
「ああ、それは約束する」
ゴソゴソとネーブルは動き出し、上になった。
顔が良く見える。
美しい体も。
今宵は良い夢が見れそうだな。
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