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第35話 滅びを回避せよ
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混沌は闇よりも性質が悪い。
かつて、俺は混沌に闇を教わり、その道を極めていった。だが、ヤツは……覇王・ナイアルラトホテプは俺を利用したいだけだった。
光属性だった俺を闇属性の染め上げ、究極の闇さえ与えてくれた。
おかげで最強になった。
その事実は確かにあった。
でも、それはこうして全てを奪うためだったのだ。
家畜が肥えてきたところを絞め殺し、美味しく戴くように、俺は同様に育て上げられていたのだ。なにが息子同然だ。あの褒め言葉も、家も、家族もすべては偽物。その挙句、俺の国さえも滅ぼしやがった。
きっと魔神さえもあの覇王の手によるものだろう。
全ての元凶はヤツに違いない。
◆
「…………ユメ」
「――――ん」
ここは……。
気づくと、ベッドの上にいた。記憶は――引き継いでいる。俺等は過去へ戻ったらしい。けど、まて。
「覇王・ナイアルラトホテプはどうした……フォース」
「女王との謁見後、直ぐにパラドックスへワープで戻ったので、闇の覇王とのエンカウントまでは猶予がある。覇王が襲ってくる時間はおそらくあと十分後」
「分かった。じゃあ、ぶっ倒すわ」
俺がそう断言すると、フォースはため息を吐きながら拒絶した。
「ダメ」
「ダメって……どういうことだ」
「相手は混沌そのもの。闇雲に戦っても勝ち目はない。でも、国をもっと強化すれば撃退は可能」
「まて、フォース。俺はあいつをぶっ倒したいんだよ」
だけど、そこでフォースは珍しく俺の頬を叩いた。
威力は抑え気味だったけど、それでも痛く感じた。
「……フォース」
「ユメ、未来を変えるのはとても大変なこと。一歩間違えれば何もかも終わり。その先には虚無しかない。あたしはユメの為ならなんだってする。でも、間違ったことはきちんと正すよ」
「……そうだな。そうだった。俺はまた道を踏み外すところだった。ありがとう。そして、すまなかった」
俺は、久しぶりに小さな魔法使いの頭を撫でた。
しばらくそうしていると、金髪の少女が髪を揺らしてやってきた。
なんだか企んだ様子で。
「ユメ~、お目覚め~?」
「よう、ネーブル。もうすぐ敵がやってくる」
「焦りは禁物よ、ユメ。この国を守っていくんでしょ。数百人の命が掛かっているの、気合入れなさい!!」
「おう。そうだな……で、なにか秘策がありそうな顔をしているな」
「うん。秘策があるから教えに来たの。今ね、ゼファがデイブレイクにお願いしているところ。上手くいけば防衛値が数十倍になるかもね」
「数十倍だって!? まてまて、もう防衛力の限界値が近いけど……は、まさか」
「そう、そのまさかよ」
ネーブルは、ニカリと美しい花のように笑った。
やっぱり、あの顔はなにか企んでいるな。こりゃ、期待度100%だな。
かつて、俺は混沌に闇を教わり、その道を極めていった。だが、ヤツは……覇王・ナイアルラトホテプは俺を利用したいだけだった。
光属性だった俺を闇属性の染め上げ、究極の闇さえ与えてくれた。
おかげで最強になった。
その事実は確かにあった。
でも、それはこうして全てを奪うためだったのだ。
家畜が肥えてきたところを絞め殺し、美味しく戴くように、俺は同様に育て上げられていたのだ。なにが息子同然だ。あの褒め言葉も、家も、家族もすべては偽物。その挙句、俺の国さえも滅ぼしやがった。
きっと魔神さえもあの覇王の手によるものだろう。
全ての元凶はヤツに違いない。
◆
「…………ユメ」
「――――ん」
ここは……。
気づくと、ベッドの上にいた。記憶は――引き継いでいる。俺等は過去へ戻ったらしい。けど、まて。
「覇王・ナイアルラトホテプはどうした……フォース」
「女王との謁見後、直ぐにパラドックスへワープで戻ったので、闇の覇王とのエンカウントまでは猶予がある。覇王が襲ってくる時間はおそらくあと十分後」
「分かった。じゃあ、ぶっ倒すわ」
俺がそう断言すると、フォースはため息を吐きながら拒絶した。
「ダメ」
「ダメって……どういうことだ」
「相手は混沌そのもの。闇雲に戦っても勝ち目はない。でも、国をもっと強化すれば撃退は可能」
「まて、フォース。俺はあいつをぶっ倒したいんだよ」
だけど、そこでフォースは珍しく俺の頬を叩いた。
威力は抑え気味だったけど、それでも痛く感じた。
「……フォース」
「ユメ、未来を変えるのはとても大変なこと。一歩間違えれば何もかも終わり。その先には虚無しかない。あたしはユメの為ならなんだってする。でも、間違ったことはきちんと正すよ」
「……そうだな。そうだった。俺はまた道を踏み外すところだった。ありがとう。そして、すまなかった」
俺は、久しぶりに小さな魔法使いの頭を撫でた。
しばらくそうしていると、金髪の少女が髪を揺らしてやってきた。
なんだか企んだ様子で。
「ユメ~、お目覚め~?」
「よう、ネーブル。もうすぐ敵がやってくる」
「焦りは禁物よ、ユメ。この国を守っていくんでしょ。数百人の命が掛かっているの、気合入れなさい!!」
「おう。そうだな……で、なにか秘策がありそうな顔をしているな」
「うん。秘策があるから教えに来たの。今ね、ゼファがデイブレイクにお願いしているところ。上手くいけば防衛値が数十倍になるかもね」
「数十倍だって!? まてまて、もう防衛力の限界値が近いけど……は、まさか」
「そう、そのまさかよ」
ネーブルは、ニカリと美しい花のように笑った。
やっぱり、あの顔はなにか企んでいるな。こりゃ、期待度100%だな。
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