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第33話 最強の同盟・天国への扉

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 フィラデルフィア女王は、玉座で堂々と構えていた。
 だが、なぜか白いベールで顔を隠し、沈黙を貫いていた。

「……う~ん。困った」

 話が進まない。
 更に困ったことに、女王の希望で俺だけが残った。俺以外の謁見えっけんは許されずと、厳格な命令が下されてしまったのだ。

「むー…。その、なんだ。これ、手土産なんだけど」

 名酒・アクアフロンティアを差し出してみた。
 すると、少しだけ反応があった。……ほう、酒には弱いか?


「…………ユメは相変わらず奇特よな。余の心を渦潮で乱し、しかし晴れやかな気持ちにさせてくれる。この清々しい高揚感には敗北さえ覚える。――だが、そこに不思議と悔しさはない。この気持ちは、余が探求し続けた究極の恋心かもしれぬな。いやしかし、真に求むは『究極の愛』よ。それを理解し、教授したい。それが我が最大の願いだ」


 ある夢幻騎士は言った――『女王には、恋もなければ愛さえもない。心がない』と。それからだ、この国が滅亡の危機に陥ったのは。

 あの大幹部との戦い。
 ……が、今はその話は後だ。

「フィ、俺の願いを聞いてくれ」
「いいだろう。即援助を約束しよう」

「はやっ!? まだ何も言ってないけど……」

「ユメの獅子奮迅の働き、噂は常に耳に入っておる。国を作ったのだろう。それと、忌むべき魔神だ。奴等を滅ぼさねば、我々に未来はない。なれば、手を取り合い『同盟』結ぶべきと考えるがどうだろうか」

 同盟。
 なんて魅力的な提案だ。

 光の天国ベネディと同盟を組めれば、そりゃもう無敵も無敵だろう。

「ぜひ同盟を結びたい。あとできれば、武器を輸出したいんだ。買ってくれないか?」
「ほう、武器をとな。いいだろう」
「まてまて、いくらなんでも返事が早すぎるって。そりゃ、信用してくれるのは嬉しいけれどさ……ほら、この剣を見て」

 俺は、ブラックスミスから預かった名剣をフィに差し出した。

「……これは素晴らしい。しかし、剣というには形状が異質であるな」
「それは『刀』っていうんだよ。……あれ。そや、魔神も刀を使っていたな。でも、最近会った魔神はフレイルとか使っていたけど、ありゃ刀じゃなかったな。う~ん?」

 アトラスの言っていたことは間違っていたのだろうか。それとも、あのフレイルとか実は刀の部類なのかもしれない……まあ魔神の事なんぞどうでもいいか。

「気に入ったぞ。これは高く買おう。量産は可能なのだろう?」
「ああ、うちには優秀なブラックスミスがいるんだ」
「期待しているぞ、ユメ。
 最近、民へ被害も及んでいる。魂を抜かれた者さえいる。……これは許されざる大罪。魔神王にはいつか報いを。だが、今は防衛力を高めねばならない時だ。民あってこその我が天国。魔神けがれの侵入をこれ以上させるわけにもいかないのでね」

 その言葉には重みがあり、少し憎しみさえあった。

「分かった。これからは協力関係――同盟だ」

 フィラデルフィア女王は不敵に笑った。
 これは、決して人を馬鹿にしているわけではない。同意・・ということだ。

 俺は頭を下げ、お礼を言った。

「ありがとう」
「いや、礼には及ばぬ。それより、もう帰るのか」
「そうだな、パラドックスの状況も気になるし……。あ、そうだ。こちらへのワープの特例を認めてくれれば、フォースがメモするから、それでどうかな」

「いいだろう。我らは同盟関係だ。それくらい何の問題もない。好きにするといい」
「助かる! けど、これでいつでもフィに会えるな」
「…………次回も楽しみにしているぞ」

 それから女王は何も答えなくなった。

 黙って去れということだ。


 ◆


 無事に資金援助と武器輸出の約束を取り付けた。
 これで、俺の国・パラドックスはまだまだ生き残れる。

 そのことをみんなに話した。

「え~~~! ほんとー!! さっすがユメね!」
「ほんとほんと」

 嬉しさのあまりか、ネーブルが抱きついてきた。
 ……なんて凶器を俺に押し付けてくるんだ。このまま死んでも後悔はないな!

「ユメ様、これで我が国は安泰ですね!!」
「おう、やったぜ!」

 ゼファも喜びを分かち合いと抱きついて、俺の首に腕を回してきた。これが俺の天国だ!! 間違いない!!

 出遅れたフォースは背後から。

「ユメ、あたしもあたしも~!」
「フォース、うおっ」

 よじ登ってきて、抱きついてきた。


 なんだこの天国は~~~!!!
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