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第28話 夢幻騎士のファントムスキル
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あのあどけない笑顔の青年は間違いない。
夢幻騎士のひとり『シリウス』だった。
「まさか、あんただったとはな」
「やあやあ、ユメ。元気そうで何よりだ。
ギガアイスタイタンの件に関してはすまなかった。けど、女王様のご命令でね。ユメがこの国にやって来ると未来予知をなさった。すると、ご覧の通りだったってわけさ」
そいや、女王にはそんな能力があったな。
「なるほ。そりゃいいんだが、ネーブルがやばくってよ。どうにかならんか、シリウス」
「ほう、ネーブルが? なんと……こんな薄着でこの極寒の地に来られるとはな……失礼だが、馬鹿なのかい!?」
「ああ、反論の言葉もないよ。とにかく、急いで暖を取りたい」
「分かった。では、入国を認めるのでテレポートを許可しよう」
よし、これで。
「フォース、テレポートを頼む」
「了解」
・
・
・
フォースのテレポートで一気に、光の天国に入った。シリウスの顔パスで宿を取り、やっと冷え切った体を暖められた。暖炉はいいものだ。身も心もすぐに暖かくなった。
「ゼファ、ネーブルの具合は?」
「グロリアスヒールで治癒し、今は体を温めている最中です。さっきまで体がかなり冷え切っていましたけれど、この分なら時期によくなるかと思います」
「良かったよ。それを聞けて安心した。じゃ、あとは見ていてくれるか」
「分かりました。ユメ様はどちらへ?」
「ちょっと、外へシリウスと共に野暮用だ」
フォースは疲れで寝ちまった。
まあ、いいタイミングだったかもな。
◆
俺はシリウスと共に宿屋を出た。
「ユメ、もう察していると思うが……」
「知ってる。つけられていたよな」
「うむ、この国も完璧ではなくてな。クリーチャーがある程度は侵入してくる。……いや、ここまでやってこれる者は恐らく魔神だろう」
だろうな。
この気配は魔神のモノで間違いない。こそこそと背後をついてきていたし、今までの魔神とは弱い気配だったので放置したが――。
「おーい、近くにいる魔神。もう捕まえたぞ」
「――――――!?」
闇がそいつの正体を暴き、空へ打ち放った。
『ギャアアアアアア――――――!!!』
雪の中から飛び出てきたソイツは、投げ出されて地面に落ちた。……アトラスのような青年タイプか。人型をしているが、魔神特有の『業気』を纏っている。
「おい、魔神。俺たちになんの用だ」
「なんの用? そんなこと決まっている……! お前たちを暗殺するためだ!」
「暗殺ねえ」
「特にそこの闇使い! 貴様はイアペトゥス 、フェーベ、ヒペリオン、タイタンを倒しただろう! よくも我が仲間を!」
「知らん」
「知らんだと! もう許さん……闇使い、お前の絶望と恐怖を戴く!! 確か、あの宿屋に仲間がいたはずだよな」
ニカリと笑う魔神は、宿の方へ恐ろしい眼を向けた。
……まさか!!
「やめろ!!」
「もう遅い!! お前の仲間たちは爆破してやる!!」
『ランドマイン散布、強制発動!!』
なっ、地雷を強制発動……だと!!
その瞬間、宿屋が大爆発で吹っ飛び、粉々に散った。
「み、みんな!!!」
「ワハハハハハハハハ!!! ざまあみろ、闇使い!! 貴様の仲間はバラバラに吹き飛んだぞ!! これで復讐は果たされた……!!」
そ、そんな……。
宿屋に地雷を投げ込まれるなんて……。
ちくしょう。
あれではフォースたちはきっと……!
絶望しかけた、その時。
シリウスが俺の肩に手を置いた。
「ユメ、あれはファントムスキルの幻だ」
「まさか……噂の?」
「あの宿屋は『シャインファントム』で作った幻なのだよ」
「ま、まじか! 初めて見た……」
次第に幻は消えてなくなった。マジだった……。
そもそも焦っていて忘れていたが、フォースとの繋がりは途絶えていない。
良かった……みんな無事だ。
「お、おぉぉぉ……! ナイス、シリウス!! 助かったぜ!!」
「本当の宿屋はどこかにある。すまない、ユメ、君にも幻を見せていた」
「いやいいって。みんなが助かっているなら! それより、魔神だ……よくも俺の仲間を殺しかけたな!」
「ま、まぼろしだと……ありえん。ありえん!!」
魔神はすっかり意気消沈していた。
もう隙だらけである。
その隙を逃すまいと、俺は瞬間移動するや――。
魔剣・エクスカイザーを即生成し、ヤツ目掛けて振り下ろし――魔神を真っ二つにした。
「…………え」
魔神の体が二つになり、バタリと倒れた。
「勝ったな」
「やったな、お疲れユメ」
「いや、シリウスのおかげだよ。助かった」
「うむ、お礼はゼファ様の膝枕で頼む」
「ふざけんな。ゼファは俺のだからな」
「少しくらいいではないか! 少しくらい!」
「ダメなもんはダメ! ……てか、なんかおかしくねえか」
「む?」
「いやさ、魔神が塵になっていないんだが。真っ二つのままだ」
「なあに、死んではいるだろうよ」
そりゃそうかもしれんが――
しかし、その時だった。
魔神の死体が急に動き出し、なんと二つに分裂したのだ。
『我が名はエリアポ』
『我が名はシャルナク』
額に『28』と『29』の番号が振られている……!
つまり、あの魔神は二人が合体していたということか。なんて魔神だ。初めてのパターンだな。てか、一人の時よりも禍々しいっていうか、肌も灰色になっているし、目つきもヤベエ。鬼のように目が充血しているし、なんか嫌な予感がするな。
けどな。
『闇の極解放』
白い世界に、黒い闇を覆わせて俺は堂々と前へ出た。
「「………………っ!」」
背から這い出る俺の常闇を見て、二人はすっと汗を流した。
「シリウス、下がってろ」
「おう、そうさせてもらうよ。君の仲間はオレが守っておくから、ユメは安心して魔神を滅ぼすといいよ」
夢幻騎士のひとり『シリウス』だった。
「まさか、あんただったとはな」
「やあやあ、ユメ。元気そうで何よりだ。
ギガアイスタイタンの件に関してはすまなかった。けど、女王様のご命令でね。ユメがこの国にやって来ると未来予知をなさった。すると、ご覧の通りだったってわけさ」
そいや、女王にはそんな能力があったな。
「なるほ。そりゃいいんだが、ネーブルがやばくってよ。どうにかならんか、シリウス」
「ほう、ネーブルが? なんと……こんな薄着でこの極寒の地に来られるとはな……失礼だが、馬鹿なのかい!?」
「ああ、反論の言葉もないよ。とにかく、急いで暖を取りたい」
「分かった。では、入国を認めるのでテレポートを許可しよう」
よし、これで。
「フォース、テレポートを頼む」
「了解」
・
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フォースのテレポートで一気に、光の天国に入った。シリウスの顔パスで宿を取り、やっと冷え切った体を暖められた。暖炉はいいものだ。身も心もすぐに暖かくなった。
「ゼファ、ネーブルの具合は?」
「グロリアスヒールで治癒し、今は体を温めている最中です。さっきまで体がかなり冷え切っていましたけれど、この分なら時期によくなるかと思います」
「良かったよ。それを聞けて安心した。じゃ、あとは見ていてくれるか」
「分かりました。ユメ様はどちらへ?」
「ちょっと、外へシリウスと共に野暮用だ」
フォースは疲れで寝ちまった。
まあ、いいタイミングだったかもな。
◆
俺はシリウスと共に宿屋を出た。
「ユメ、もう察していると思うが……」
「知ってる。つけられていたよな」
「うむ、この国も完璧ではなくてな。クリーチャーがある程度は侵入してくる。……いや、ここまでやってこれる者は恐らく魔神だろう」
だろうな。
この気配は魔神のモノで間違いない。こそこそと背後をついてきていたし、今までの魔神とは弱い気配だったので放置したが――。
「おーい、近くにいる魔神。もう捕まえたぞ」
「――――――!?」
闇がそいつの正体を暴き、空へ打ち放った。
『ギャアアアアアア――――――!!!』
雪の中から飛び出てきたソイツは、投げ出されて地面に落ちた。……アトラスのような青年タイプか。人型をしているが、魔神特有の『業気』を纏っている。
「おい、魔神。俺たちになんの用だ」
「なんの用? そんなこと決まっている……! お前たちを暗殺するためだ!」
「暗殺ねえ」
「特にそこの闇使い! 貴様はイアペトゥス 、フェーベ、ヒペリオン、タイタンを倒しただろう! よくも我が仲間を!」
「知らん」
「知らんだと! もう許さん……闇使い、お前の絶望と恐怖を戴く!! 確か、あの宿屋に仲間がいたはずだよな」
ニカリと笑う魔神は、宿の方へ恐ろしい眼を向けた。
……まさか!!
「やめろ!!」
「もう遅い!! お前の仲間たちは爆破してやる!!」
『ランドマイン散布、強制発動!!』
なっ、地雷を強制発動……だと!!
その瞬間、宿屋が大爆発で吹っ飛び、粉々に散った。
「み、みんな!!!」
「ワハハハハハハハハ!!! ざまあみろ、闇使い!! 貴様の仲間はバラバラに吹き飛んだぞ!! これで復讐は果たされた……!!」
そ、そんな……。
宿屋に地雷を投げ込まれるなんて……。
ちくしょう。
あれではフォースたちはきっと……!
絶望しかけた、その時。
シリウスが俺の肩に手を置いた。
「ユメ、あれはファントムスキルの幻だ」
「まさか……噂の?」
「あの宿屋は『シャインファントム』で作った幻なのだよ」
「ま、まじか! 初めて見た……」
次第に幻は消えてなくなった。マジだった……。
そもそも焦っていて忘れていたが、フォースとの繋がりは途絶えていない。
良かった……みんな無事だ。
「お、おぉぉぉ……! ナイス、シリウス!! 助かったぜ!!」
「本当の宿屋はどこかにある。すまない、ユメ、君にも幻を見せていた」
「いやいいって。みんなが助かっているなら! それより、魔神だ……よくも俺の仲間を殺しかけたな!」
「ま、まぼろしだと……ありえん。ありえん!!」
魔神はすっかり意気消沈していた。
もう隙だらけである。
その隙を逃すまいと、俺は瞬間移動するや――。
魔剣・エクスカイザーを即生成し、ヤツ目掛けて振り下ろし――魔神を真っ二つにした。
「…………え」
魔神の体が二つになり、バタリと倒れた。
「勝ったな」
「やったな、お疲れユメ」
「いや、シリウスのおかげだよ。助かった」
「うむ、お礼はゼファ様の膝枕で頼む」
「ふざけんな。ゼファは俺のだからな」
「少しくらいいではないか! 少しくらい!」
「ダメなもんはダメ! ……てか、なんかおかしくねえか」
「む?」
「いやさ、魔神が塵になっていないんだが。真っ二つのままだ」
「なあに、死んではいるだろうよ」
そりゃそうかもしれんが――
しかし、その時だった。
魔神の死体が急に動き出し、なんと二つに分裂したのだ。
『我が名はエリアポ』
『我が名はシャルナク』
額に『28』と『29』の番号が振られている……!
つまり、あの魔神は二人が合体していたということか。なんて魔神だ。初めてのパターンだな。てか、一人の時よりも禍々しいっていうか、肌も灰色になっているし、目つきもヤベエ。鬼のように目が充血しているし、なんか嫌な予感がするな。
けどな。
『闇の極解放』
白い世界に、黒い闇を覆わせて俺は堂々と前へ出た。
「「………………っ!」」
背から這い出る俺の常闇を見て、二人はすっと汗を流した。
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