上 下
191 / 234

島を開発して奇襲に備える

しおりを挟む
 雷のような轟音に鼓膜が震えた。
 なんて銃声だ……耳がキーンとしたぞ。

 物陰から様子を伺うと、敵は倒れ――そのまま海に落ちた。

 千年世の狙撃は完璧だった。
 どうやら、敵の頭部に命中させたようだ。

「啓くん、このまま対象を引き上げましょう」
「何者か確認するんだな」
「はい。ロシア人かどうか知っておかねばです」

 北上さんの指示にしたがった。
 そうだな、俺自身も敵が何者か知りたい。

 浮き輪にロープを括りつけ、死体に向けて投げた。俺が行こうとしたが、北上さんが飛び込んでいった。……野生児かよっ。というか、さすがだ。

 しかも、もう一度トドメを刺しているところを見ると……プロすぎてゾッとした。

 敵が死体になっていても疑え。
 北上さん曰く、死んだふりをしている場合があるようだ。だから念入りにトドメを入れるようだ。やりすぎな気もするが、万が一にも起き上がってきたら大変だからな。

 死体を引き上げ、さっそく確認した。

「どうだい、北上さん」
「恐らく偽名ですが、彼はボリス。秘密警察NKVD所属です」
「またか! ということは、奴らはここを特定したってことか」
「ええ、そうでしょうね。この方はあくまで偵察しに来たのでしょう。可能なら、我々を抹殺しようとしたのでしょうね」

「なんてヤツ等だ。いよいよ戦争になりそうだな」
「ええ、早めに要塞を築いた方がいいでしょう」

 ロシア人はそこまで迫ってきている。
 早く備えておかないと、取り返しのつかないことになりそうだ。

 一度みんなを招集し、情報を共有した。


「というわけだ。今日、ついにこの神造島にロシア人が現れた」
「……ついに来たんだね」

 顔を青くするリコ。みんなも同様に気が重そうだった。
 そうだな、もう少しこの場所でゆっくりできると俺も思った。だが、敵はどうも俺たちの場所を把握しているようだった。
 おそらく、本国にある“偵察衛星”でも使っているのだろう。
 でなければ、こんな島を特定できるはずがない。

「みんな、いつでも戦闘ができるよう常に備えてくれ。少なくともハンドガンは常備するように」


 みんな静かにうなずいた。
 そんな沈黙の中、万由里さんが手を挙げた。

「あの、早坂様」
「どうしたんだい、万由里さん」
「今までこんな戦闘を何度も経験しているのですか……?」
「ああ、今まで何度も死線を潜り抜けてきた。みんなの力のおかげさ」
「お若いのに凄いです。尊敬します!」

 手を握られ、褒められた。そんな顔を近づけられると照れるって。
 ……って、みんなが俺を見ている。
 そんな怖い顔しないで!?

 その後、島の開発を更に進め――キャンピングカーを島の奥へ隠すようにした。港から離れたのでこれで奇襲があっても安心だ。



 時間は過ぎ――午後十九時。



 俺はキャンピングカーから少し離れた場所で椅子に座り、焚火をしていた。
 すると迷彩服姿の千年世が現れ、今後のことを話したいと言ってきた。


「どうした、千年世」
「今回の件を踏まえ、塹壕を掘るべきかと」
「もちろんだ。これからもっと敵が増えるはずし、備えていかないとね」
「ありがとうございます」
「いや、いいんだ。ていうか、疲れてないか?」
「大丈夫ですよ。私のことなら心配なく」

 いや、顔が明らかに疲れているようだぞ。

「まて、千年世」
「……あぅ」
「やっぱり疲れているじゃないか。ほら、座って」
「はい……」
「今日の戦闘が堪えたのか?」
「いえ、戦闘に関してはもう慣れました。ですが」
「ですが?」
「……早坂くん、私……欲求不満かもしれません」

 真面目な顔して打ち明けられたので、俺は固まった。な、なにを言っているんだー!?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

【全話挿絵】発情✕転生 〜何あれ……誘ってるのかしら?〜【毎日更新】

墨笑
ファンタジー
『エロ×ギャグ×バトル+雑学』をテーマにした異世界ファンタジー小説です。 主人公はごく普通(?)の『むっつりすけべ』な女の子。 異世界転生に伴って召喚士としての才能を強化されたまでは良かったのですが、なぜか発情体質まで付与されていて……? 召喚士として様々な依頼をこなしながら、無駄にドキドキムラムラハァハァしてしまう日々を描きます。 明るく、楽しく読んでいただけることを目指して書きました。

クラスで一人だけ男子な僕のズボンが盗まれたので仕方無くチ○ポ丸出しで居たら何故か女子がたくさん集まって来た

pelonsan
恋愛
 ここは私立嵐爛学校(しりつらんらんがっこう)、略して乱交、もとい嵐校(らんこう) ━━。  僕の名前は 竿乃 玉之介(さおの たまのすけ)。  昨日この嵐校に転校してきた至極普通の二年生。  去年まで女子校だったらしくクラスメイトが女子ばかりで不安だったんだけど、皆優しく迎えてくれて ほっとしていた矢先の翌日…… ※表紙画像は自由使用可能なAI画像生成サイトで制作したものを加工しました。

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

男女比の狂った世界で愛を振りまく

キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。 その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。 直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。 生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。 デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。 本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

妻がエロくて死にそうです

菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。 美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。 こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。 それは…… 限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常

【R18 】必ずイカせる! 異世界性活

飼猫タマ
ファンタジー
ネットサーフィン中に新しいオンラインゲームを見つけた俺ゴトウ・サイトが、ゲーム設定の途中寝落すると、目が覚めたら廃墟の中の魔方陣の中心に寝ていた。 偶然、奴隷商人が襲われている所に居合わせ、助けた奴隷の元漆黒の森の姫であるダークエルフの幼女ガブリエルと、その近衛騎士だった猫耳族のブリトニーを、助ける代わりに俺の性奴隷なる契約をする。 ダークエルフの美幼女と、エロい猫耳少女とSEXしたり、魔王を倒したり、ダンジョンを攻略したりするエロエロファンタジー。

処理中です...