61 / 234
知り合いのトレジャーハンター
しおりを挟む
高校の授業はまだ再開していない。
無人島での出来事が、連日ニュースで取り上げられ、大事件となっていたのだ。
この事件は、学年主任・橘川が主犯とされ、大々的に報道された。
ネット掲示板でも大炎上に近い状態で、特に橘川や倉島の情報が晒されまくっていた。恐ろしい世界だな、ネットは。
そんな状態が一ヶ月は続いていた。
そうか、あれから一ヶ月か。
俺は無人島で女子十五人と暮らしていたというのにな。そのうち二人とは、数時間程度の関係だったけど。
あれから、みんなはバラバラになった。
最後に会った『織田 星』と『織田 月』は行方不明だ。理由は分からない。
今のところ連絡が取れるのが天音、北上、千年世、リコ、大伊の五人だけだった。他は入院中だの、面会謝絶だの、引き籠っているだの……あまり良い情報は聞かない。
近くのカフェへ移り、俺はコーヒーを味わった。
「……美味い。こんな美味いもんが、当たり前に飲めるとかな」
「そうだね。こんな甘々の飲み物が飲めるだなんて……幸せなことだね」
スターライトバックスのトリプルチョコレートフラペチーノを本当に幸せそうに味わう天音。その隣で俺を見つめる北上。
そういえば、北上は迷彩服だな。やっぱり、サバゲー女子なんだ。
「それで、北上さん。話ってなんだよ」
「ええ、学校は事件のせいで当分は再開しませんし、暇なんですよ」
「ほう?」
「そこで考えたんです。財宝探しにでも行かないかなと」
「――は?」
まてまて。
北上は今、なんと言った!?
俺は耳を疑い過ぎて、北上の言ったことが信じられなかった。
「ちょ、ちょっと待ってよ、北上さん。やっと本州に戻れたのに、逆戻り!? 馬鹿じゃないの!?」
さすがの天音も声を荒げてキレていた。そりゃそうだ。せっかく日常に戻れたのに、わざわざ地獄へ戻る必要あるのかね。
俺なんか、天音と北上と一緒に過ごせるだけで十分だというのに。
「大丈夫です。今度はちゃんと装備を整えて行きますから。それに、行方不明者がまだ残っているかも」
「政府の発表によれば、生存者は194名。内死亡が33名。行方不明が66名……らしい」
「一ヶ月経っても尚、行方不明者が66名もいるのですよ。きっと、どこかの島で生き永らえているのかも」
「そんな馬鹿な。俺たちの島はいろいろ流れ着いていたから、なんとかなったけどさ……他の島はどうか分からない」
もうあの島にも生存者がいたとは思えなかったし。その気配はもなかった。大体、海上保安庁とかレスキュー隊が突入して、散々探し回ったらしいからな。
もう俺たちの出る幕はないはずだ。
「それで、お宝探しか」
「いいではないですか。三人で山分けして大金持ちになるんです」
「大金持ちねぇ~」
俺はあまり乗り気がしなかった。
なにか嫌な予感がしたからだ。
だけど、お金は必要だ。
学校もやっていないし、バイトをしようにも……ニュースの影響で身バレとかリスクも高い。
となると財宝を探す方がいいのかな。
「やっぱり乗り気ではなかったですよね」
しゅんと落ち込む北上だが、分かりやすい演技を。なにかあるな。
「北上さん、なにを隠している」
「バレましたか。実は今日、知り合いのトレジャーハンターを呼んであるんです」
「「ト、トレジャーハンター!?」」
俺も天音もビックリして声を上げた。
「どうぞ、来てください」
北上が呼ぶと、その人物が後ろにいた。い、いつの間にいたんだ!?
しかも、その顔には見覚えがあった。
「ま、まさか……大伊さん?」
「そ、そうよ。なにか文句ある?」
「いやないけど……」
トレジャーハンターではないよな。
ていうか、私服姿の大伊さん……すげぇ可愛いな。
スカート短くて、いわゆる地雷系ファッションだ。意外すぎるって。
「まったく、北上さんってば冗談は止して」
「申し訳ありません。ちょっと場を盛り上げようとして」
「も~」
なんだか二人は仲良さそうだな。
俺の隣に大伊が座ったが――これはいったい、どういうことだ?
「ちょっと、北上さん。早坂くんが困ってるでしょ。詳しい説明を求む」
天音が代わりにツッコんでくれた。
「ええ。大伊さんはこの一ヶ月の間に原付免許、小型特殊免許、船舶免許、危険物取扱者など様々な資格を取得したようです」
「マジかよ。すげぇな、大伊さん」
思わず天音と共に拍手をしてしまった。
本人は照れて俯いていた。可愛すぎかっ。
「つまり船に乗れるというわけです」
「……なるほど。って、まさか!!」
「大伊さんに操縦してもらい、宝島へ向かいます」
んな無茶な!!
しかも大伊さんも「え!? 嘘!?」みたいな表情で北上を見つめているし、本人に説明していなかったんかーい!
「あのな、北上さん。船はどうするんだよ」
「大丈夫です。知り合いの漁船を借りますから」
「ぎょ、漁船……」
漁船で宝島まで向かうのか。んな無茶な。
「大伊さんはどうなの?」
「その、天音さん……私は正直、反対」
「「ほっ……」」
俺も天音も大伊の言葉に安心した。
「だけど、お金持ちにはなりたいじゃん? 一生遊んで暮らせるお金があれば……みんなも助けられる」
「大伊さん、そのみんなって」
「ウチの篠山、大塚、野茂……千年世さんや桃瀬さんや琴吹さんたちのこと。私も含めて、だけど」
「どういうことだい?」
「私はこの一ヶ月、資格の取得に邁進していた。でも、それはあの出来事を少しでも薄めて忘れるためだった。でも、それは無理だった。病院へ行けば、みんなが放心状態で心が病んでいた。立ち直れない子が大半なの」
みんなを助けたい一心で――だったのか。そこまで思ってくれていたとは。
「少し考えさせてくれ。結論を出すにはまだ早い」
「そうだね。とにかく私と北上さんは賛成。あとは早坂くんと天音さん次第だね」
これは非常に難しい問題だ。
さて……どうしたものかね。
今日のところは解散となり、俺はこのことを家へ持ち帰ることにした。
無人島での出来事が、連日ニュースで取り上げられ、大事件となっていたのだ。
この事件は、学年主任・橘川が主犯とされ、大々的に報道された。
ネット掲示板でも大炎上に近い状態で、特に橘川や倉島の情報が晒されまくっていた。恐ろしい世界だな、ネットは。
そんな状態が一ヶ月は続いていた。
そうか、あれから一ヶ月か。
俺は無人島で女子十五人と暮らしていたというのにな。そのうち二人とは、数時間程度の関係だったけど。
あれから、みんなはバラバラになった。
最後に会った『織田 星』と『織田 月』は行方不明だ。理由は分からない。
今のところ連絡が取れるのが天音、北上、千年世、リコ、大伊の五人だけだった。他は入院中だの、面会謝絶だの、引き籠っているだの……あまり良い情報は聞かない。
近くのカフェへ移り、俺はコーヒーを味わった。
「……美味い。こんな美味いもんが、当たり前に飲めるとかな」
「そうだね。こんな甘々の飲み物が飲めるだなんて……幸せなことだね」
スターライトバックスのトリプルチョコレートフラペチーノを本当に幸せそうに味わう天音。その隣で俺を見つめる北上。
そういえば、北上は迷彩服だな。やっぱり、サバゲー女子なんだ。
「それで、北上さん。話ってなんだよ」
「ええ、学校は事件のせいで当分は再開しませんし、暇なんですよ」
「ほう?」
「そこで考えたんです。財宝探しにでも行かないかなと」
「――は?」
まてまて。
北上は今、なんと言った!?
俺は耳を疑い過ぎて、北上の言ったことが信じられなかった。
「ちょ、ちょっと待ってよ、北上さん。やっと本州に戻れたのに、逆戻り!? 馬鹿じゃないの!?」
さすがの天音も声を荒げてキレていた。そりゃそうだ。せっかく日常に戻れたのに、わざわざ地獄へ戻る必要あるのかね。
俺なんか、天音と北上と一緒に過ごせるだけで十分だというのに。
「大丈夫です。今度はちゃんと装備を整えて行きますから。それに、行方不明者がまだ残っているかも」
「政府の発表によれば、生存者は194名。内死亡が33名。行方不明が66名……らしい」
「一ヶ月経っても尚、行方不明者が66名もいるのですよ。きっと、どこかの島で生き永らえているのかも」
「そんな馬鹿な。俺たちの島はいろいろ流れ着いていたから、なんとかなったけどさ……他の島はどうか分からない」
もうあの島にも生存者がいたとは思えなかったし。その気配はもなかった。大体、海上保安庁とかレスキュー隊が突入して、散々探し回ったらしいからな。
もう俺たちの出る幕はないはずだ。
「それで、お宝探しか」
「いいではないですか。三人で山分けして大金持ちになるんです」
「大金持ちねぇ~」
俺はあまり乗り気がしなかった。
なにか嫌な予感がしたからだ。
だけど、お金は必要だ。
学校もやっていないし、バイトをしようにも……ニュースの影響で身バレとかリスクも高い。
となると財宝を探す方がいいのかな。
「やっぱり乗り気ではなかったですよね」
しゅんと落ち込む北上だが、分かりやすい演技を。なにかあるな。
「北上さん、なにを隠している」
「バレましたか。実は今日、知り合いのトレジャーハンターを呼んであるんです」
「「ト、トレジャーハンター!?」」
俺も天音もビックリして声を上げた。
「どうぞ、来てください」
北上が呼ぶと、その人物が後ろにいた。い、いつの間にいたんだ!?
しかも、その顔には見覚えがあった。
「ま、まさか……大伊さん?」
「そ、そうよ。なにか文句ある?」
「いやないけど……」
トレジャーハンターではないよな。
ていうか、私服姿の大伊さん……すげぇ可愛いな。
スカート短くて、いわゆる地雷系ファッションだ。意外すぎるって。
「まったく、北上さんってば冗談は止して」
「申し訳ありません。ちょっと場を盛り上げようとして」
「も~」
なんだか二人は仲良さそうだな。
俺の隣に大伊が座ったが――これはいったい、どういうことだ?
「ちょっと、北上さん。早坂くんが困ってるでしょ。詳しい説明を求む」
天音が代わりにツッコんでくれた。
「ええ。大伊さんはこの一ヶ月の間に原付免許、小型特殊免許、船舶免許、危険物取扱者など様々な資格を取得したようです」
「マジかよ。すげぇな、大伊さん」
思わず天音と共に拍手をしてしまった。
本人は照れて俯いていた。可愛すぎかっ。
「つまり船に乗れるというわけです」
「……なるほど。って、まさか!!」
「大伊さんに操縦してもらい、宝島へ向かいます」
んな無茶な!!
しかも大伊さんも「え!? 嘘!?」みたいな表情で北上を見つめているし、本人に説明していなかったんかーい!
「あのな、北上さん。船はどうするんだよ」
「大丈夫です。知り合いの漁船を借りますから」
「ぎょ、漁船……」
漁船で宝島まで向かうのか。んな無茶な。
「大伊さんはどうなの?」
「その、天音さん……私は正直、反対」
「「ほっ……」」
俺も天音も大伊の言葉に安心した。
「だけど、お金持ちにはなりたいじゃん? 一生遊んで暮らせるお金があれば……みんなも助けられる」
「大伊さん、そのみんなって」
「ウチの篠山、大塚、野茂……千年世さんや桃瀬さんや琴吹さんたちのこと。私も含めて、だけど」
「どういうことだい?」
「私はこの一ヶ月、資格の取得に邁進していた。でも、それはあの出来事を少しでも薄めて忘れるためだった。でも、それは無理だった。病院へ行けば、みんなが放心状態で心が病んでいた。立ち直れない子が大半なの」
みんなを助けたい一心で――だったのか。そこまで思ってくれていたとは。
「少し考えさせてくれ。結論を出すにはまだ早い」
「そうだね。とにかく私と北上さんは賛成。あとは早坂くんと天音さん次第だね」
これは非常に難しい問題だ。
さて……どうしたものかね。
今日のところは解散となり、俺はこのことを家へ持ち帰ることにした。
0
お気に入りに追加
631
あなたにおすすめの小説
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件
森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。
学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。
そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……
【全話挿絵】発情✕転生 〜何あれ……誘ってるのかしら?〜【毎日更新】
墨笑
ファンタジー
『エロ×ギャグ×バトル+雑学』をテーマにした異世界ファンタジー小説です。
主人公はごく普通(?)の『むっつりすけべ』な女の子。
異世界転生に伴って召喚士としての才能を強化されたまでは良かったのですが、なぜか発情体質まで付与されていて……?
召喚士として様々な依頼をこなしながら、無駄にドキドキムラムラハァハァしてしまう日々を描きます。
明るく、楽しく読んでいただけることを目指して書きました。
クラスで一人だけ男子な僕のズボンが盗まれたので仕方無くチ○ポ丸出しで居たら何故か女子がたくさん集まって来た
pelonsan
恋愛
ここは私立嵐爛学校(しりつらんらんがっこう)、略して乱交、もとい嵐校(らんこう) ━━。
僕の名前は 竿乃 玉之介(さおの たまのすけ)。
昨日この嵐校に転校してきた至極普通の二年生。
去年まで女子校だったらしくクラスメイトが女子ばかりで不安だったんだけど、皆優しく迎えてくれて ほっとしていた矢先の翌日……
※表紙画像は自由使用可能なAI画像生成サイトで制作したものを加工しました。
男女比の狂った世界で愛を振りまく
キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。
その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。
直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。
生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。
デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。
本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。
※カクヨムにも掲載中の作品です。
妻がエロくて死にそうです
菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。
美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。
こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。
それは……
限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常
【R18 】必ずイカせる! 異世界性活
飼猫タマ
ファンタジー
ネットサーフィン中に新しいオンラインゲームを見つけた俺ゴトウ・サイトが、ゲーム設定の途中寝落すると、目が覚めたら廃墟の中の魔方陣の中心に寝ていた。
偶然、奴隷商人が襲われている所に居合わせ、助けた奴隷の元漆黒の森の姫であるダークエルフの幼女ガブリエルと、その近衛騎士だった猫耳族のブリトニーを、助ける代わりに俺の性奴隷なる契約をする。
ダークエルフの美幼女と、エロい猫耳少女とSEXしたり、魔王を倒したり、ダンジョンを攻略したりするエロエロファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる