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新たなる敵

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 今日は、久しぶりに自分の屋敷でゆっくりした。お風呂に入って、エドワードとアルマの作る美味しい料理をいただき――自室へ戻った。

「一緒に寝ましょう~、ヘンリーさん」
「そうだった。ヨークと一緒の部屋だったんだ」
「そうですよぉ、わたくしを置いて行かないで下さい」
「ごめんごめん」

 ベッドに入ってくる寝間着姿のヨーク。僕の体にくっ付いて機嫌が良さそうだった。こうして、二人で――スイカもドラゴンの姿でいるけど、誰にも邪魔されず、まったりとした空間なのは一週間ぶりだ。

「明日からどうしましょう」
「そうだなあ、ガヘリスも倒したし……うーん、やっぱり農業かな」
「きっと運命が許さないと思いますよ」

「え……どいうことだい?」

「わたくしには『神託』で分かるんです」
「例の……妖精王の神託か。まだ何かあるっていうのかい」

 それ以上、ヨークは話さなかった。
 なにがあるっていうんだ。
 もうこれ以上、倒す敵もいないはず。

「おやすみなさい」
「あ、ちょ……」

 僕の胸の上でまぶたを閉じるヨーク。可愛い寝顔を晒して、無防備すぎる。ついつい、頬を突いてみたくなる。けど、抑えた。

 それから僕も眠くなって――

 眠りに就いたんだ。


 * * *


 翌日。
 今日は珍しく雨が降った。この中立地帯でも大雨は振るんだ。ザアザアと振り続け、とでもじゃないけど、外には出られなかった。

 これでは農業って場合でもないな。


「う~ん、困ったな」


 大広間でみんなと一緒に紅茶を楽しむ。幸せな一時だ。こんな風に、ネヴィルやリナと一緒に過ごせるだなんて……夢のようだ。


「ヘンリー、これでは農業できまい」
「そうだねえ。地下ダンジョンの攻略でも進めようかな」
「やめておけ。この天候で庭に出れば流されて、湖へポチャンだ」
「マジ? それは嫌だな」


 ダンジョンも行けないなんて、退屈だなあ。なんて思っていると“ドンドン”と音がして、みんなが音にビックリした。

「どなたでしょう?」

 ヨークが不安気に声を漏らす。

「恐らく来客だ。俺が見てこよう」

 ネヴィルが席を立つ。
 僕も気になって一緒に向かった。


 玄関へ向かい、扉を開けるとそこにはフードを深く被った人物がいた。……誰だ?


「何用かな。この屋敷は現在、ヘンリーのものだ。もう俺ものではない」

『――金貨のニオイがする。そこの少年、お前だ』


 僕に用があるのか、この男?
 しかも、声がヘンだ。
 まるでモンスターみたいな声。

 モンスターの中には、人間の言語を理解している魔物もいるらしい。その類か。


「僕がどうした」
『これを返しに来た』

「な、なんだ?」


 フードの男は、指から『金貨』を弾いた。……血のついた金貨。えっ、まさか……あれって。


『気づいたようだな、少年。そうだ、これはあの女暗殺者の所持していた金貨』

「おまえ……アサシンさんに何をした!」


 不敵に笑う男は、フードを外した。


『フハハハ!! 我はレッドオークのグレン。お前の暗殺者はすでに我々――ぐあぁぁぁ!!』


 余裕ぶってたレッドオークの首が吹き飛んだ。ちょ、え!!


「レッドオーク、成敗!!」


 いきなりブラッドアックスが掠めていったんだ。って、これは、アサシンさん!!


「あれ、生きていたんだな!」
「当たり前だ。死んだふりをして生き延びた。こいつは、私が死んだと勘違いしていたようだがな」


 ――ザンッと斧でトドメを刺すアサシンさん。良かった、戻ってきてくれたんだ。


「帰ってきてくれたんだね」
「あ、ああ……ヘンリー、お前も趣味が悪いぞ。私のアイテムボックスにテレポートスクロールを複数枚忍ばせておくとはな。おかげで、レッドオークに奪われて、必死に追い駆けたんだ」

 そうか、それでレッドオークがここに現れたんだ。


「ごめん、でも助かったよ」
「いいさ。それと、ネヴィル……モンスターを中に入れてしまって――もうしわけ……ない」

 バタッと倒れるアサシンさん。
 背中が血に塗れ傷だらけだった。


「アサシンさん!! そんな!!」
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