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地下帝国・ウェイクフィールド
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屋敷を出て酒場へ向かった。
看板には【ボンボヤージュ】の文字。
ここか、ここが隠し通路になっていたんだな。
いたって普通の酒場だけど、クリフォードの屋敷からかなり離れているし、この辺りは更に人気がなかった。
朝だというのに寂れているな。とはいえ――朝っぱらから飲みにくる人もいないだろうけど。
特に番人とかもいない。
そのまま扉へ向かい、クリフォードがノックをする。中からの反応は……なし。どうやら、人の気配はないようだ。
「鍵は開いてる。入ろう」
「分かった。ヨーク、スイカ、アサシンさん、気を引き締めてね」
三人ともうなずく。
この先は未知数だ。
敵がいてもおかしくはない。
ゆっくりと進入していく。
罠も警戒しなくちゃな。
中へ入ると、そこは普通の酒場だった。椅子、机、カウンター。全てが木造でどこにも異常はない。客やマスターはいないのか。
「静かすぎますね……」
ぽつりと、つぶやくヨーク。その通り、静かすぎる。人の気配は感じられないし、けれど、血の臭いを感じた。それはクリフォードとアサシンさんも理解しているようで、酷く警戒していた。
「ヘンリーくん、俺が先頭を行くけど、十分に気を付けてくれ。血の臭いがする」
「う、うん」
店の奥へ進むと、キッチンで人が倒れていた。それも一人や二人じゃない。五、六人はいるぞ。全員、惨殺されて血塗れだった。ひどいや。
「こ、これは……なぜ、こんなことに」
顔を顰めるクリフォード。
僕やヨークたちも同様だった。
そんな空気の中、アサシンさんが地下を発見。
「あそこだ。あの死体の下にあるようだぞ」
血が地下室へ流れている。
これは、間違いない。
地下通路だ。
遺体をどかし、クリフォードが地下へ続くであろう扉を開けた。すると、そこには確かに通路があった。
「こんなところに……アサシンさんの言う通りだった」
「ああ、ヘンリー。これでガヘリスを追い詰められるぞ」
「今度こそ決着をつけよう」
地下へ降り、直ぐに『転送』の魔法陣があった。これか。この六芒星の魔法陣が転送か。うん、魔力を感じる。あの上に乗ればガヘリスの潜伏先へ転送してくれるに違いない。
「俺が先に行く。ヘンリーくんたちは、その後に続いてくれ」
「分かった。クリフォードについていく」
クリフォードが転送の魔法陣に乗ると姿が消えた。僕達も続いていく。
* * *
【ウェイクフィールド】
薄暗い神殿のような中にいた。
ここは常夜であるかのように不気味だな。地下というだけあって、たいまつしか明かりはなかった。
「拾い通路ですね。この先なのでしょうか」
キョロキョロと周囲を見渡すスイカが、僕の服を引っ張る。
「だろうね。通路は一直線だし、この先だろう」
「なんだか寒いです」
「スイカ、ドラゴンになっておくんだ」
「はい、分かりました」
戦闘準備をしておかないと、何が起きるか分からない。ヨークは僕が守る。アサシンさんは強いし、自分を守るくらいの力はあるはず。
クリフォードは、最強の聖騎士。きっとガヘリスを一瞬で捕まえてくれるはず。
先へ進んでいくと、奥地に入った。なんだ、この場所……ん? 上の方に男の姿があった。何十人もの護衛を従えている。
そのすぐ傍では、女性達を鎖で縛り、自由を奪っていた。全員が若い女の子。どの子も美人で……でも、ほぼ裸の状態だった。
人間としての尊厳を奪われ、目の前で蹂躙されていた。なんてことだ。
「ガヘリス、ようやく見つけたぞ!!」
僕は叫ぶ。
怒りのままに。
「ヘ、ヘンリー!! そんな馬鹿な!! お前はランカスター帝国から追放したはずだぞ!!! 呪いは発動しなかったのか? なぜだ、なぜこの地下帝国にいる!?」
驚きを隠せないガヘリス。
僕は『金貨』を強く握り込んだ――。
看板には【ボンボヤージュ】の文字。
ここか、ここが隠し通路になっていたんだな。
いたって普通の酒場だけど、クリフォードの屋敷からかなり離れているし、この辺りは更に人気がなかった。
朝だというのに寂れているな。とはいえ――朝っぱらから飲みにくる人もいないだろうけど。
特に番人とかもいない。
そのまま扉へ向かい、クリフォードがノックをする。中からの反応は……なし。どうやら、人の気配はないようだ。
「鍵は開いてる。入ろう」
「分かった。ヨーク、スイカ、アサシンさん、気を引き締めてね」
三人ともうなずく。
この先は未知数だ。
敵がいてもおかしくはない。
ゆっくりと進入していく。
罠も警戒しなくちゃな。
中へ入ると、そこは普通の酒場だった。椅子、机、カウンター。全てが木造でどこにも異常はない。客やマスターはいないのか。
「静かすぎますね……」
ぽつりと、つぶやくヨーク。その通り、静かすぎる。人の気配は感じられないし、けれど、血の臭いを感じた。それはクリフォードとアサシンさんも理解しているようで、酷く警戒していた。
「ヘンリーくん、俺が先頭を行くけど、十分に気を付けてくれ。血の臭いがする」
「う、うん」
店の奥へ進むと、キッチンで人が倒れていた。それも一人や二人じゃない。五、六人はいるぞ。全員、惨殺されて血塗れだった。ひどいや。
「こ、これは……なぜ、こんなことに」
顔を顰めるクリフォード。
僕やヨークたちも同様だった。
そんな空気の中、アサシンさんが地下を発見。
「あそこだ。あの死体の下にあるようだぞ」
血が地下室へ流れている。
これは、間違いない。
地下通路だ。
遺体をどかし、クリフォードが地下へ続くであろう扉を開けた。すると、そこには確かに通路があった。
「こんなところに……アサシンさんの言う通りだった」
「ああ、ヘンリー。これでガヘリスを追い詰められるぞ」
「今度こそ決着をつけよう」
地下へ降り、直ぐに『転送』の魔法陣があった。これか。この六芒星の魔法陣が転送か。うん、魔力を感じる。あの上に乗ればガヘリスの潜伏先へ転送してくれるに違いない。
「俺が先に行く。ヘンリーくんたちは、その後に続いてくれ」
「分かった。クリフォードについていく」
クリフォードが転送の魔法陣に乗ると姿が消えた。僕達も続いていく。
* * *
【ウェイクフィールド】
薄暗い神殿のような中にいた。
ここは常夜であるかのように不気味だな。地下というだけあって、たいまつしか明かりはなかった。
「拾い通路ですね。この先なのでしょうか」
キョロキョロと周囲を見渡すスイカが、僕の服を引っ張る。
「だろうね。通路は一直線だし、この先だろう」
「なんだか寒いです」
「スイカ、ドラゴンになっておくんだ」
「はい、分かりました」
戦闘準備をしておかないと、何が起きるか分からない。ヨークは僕が守る。アサシンさんは強いし、自分を守るくらいの力はあるはず。
クリフォードは、最強の聖騎士。きっとガヘリスを一瞬で捕まえてくれるはず。
先へ進んでいくと、奥地に入った。なんだ、この場所……ん? 上の方に男の姿があった。何十人もの護衛を従えている。
そのすぐ傍では、女性達を鎖で縛り、自由を奪っていた。全員が若い女の子。どの子も美人で……でも、ほぼ裸の状態だった。
人間としての尊厳を奪われ、目の前で蹂躙されていた。なんてことだ。
「ガヘリス、ようやく見つけたぞ!!」
僕は叫ぶ。
怒りのままに。
「ヘ、ヘンリー!! そんな馬鹿な!! お前はランカスター帝国から追放したはずだぞ!!! 呪いは発動しなかったのか? なぜだ、なぜこの地下帝国にいる!?」
驚きを隠せないガヘリス。
僕は『金貨』を強く握り込んだ――。
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