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新章
第85話 圧倒的勝利
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魔王軍十万を放ったルードスは、かつての父親が敗北を喫したインケルタの崖で屈辱を味わっていた。
「クソオオオオオオオ!! どうしてだ! どうして十万で勝てんのだああああああああああ……!!」
あり得ない事態だった。
ルードスは、この時の為に十万もの強力なモンスターを集結させ、戦力を整えたというのに大敗北という結果に終わった。
「おのれぇ……アウルム・キルクルス! よくも! よくもォ!!」
魔王軍の戦力は申し分なかった。だが、四分統治・フルクトゥアト全体を囲うように設置されていた『硫酸の落とし穴』と『魔導砲』が桁違いの強さを誇っていた。それにより、魔王軍は壊滅させられてしまったのだ。
「数ではダメだ……あの罠を掻い潜れるもっと強い……最強のモンスターが必要だ。やはり、父の偉大な計画【ファクシミリ】を完成させるしかないのだな」
ニヤリとルードスは笑う。もはや、手段を選んでいる時ではない。あの真の勇者であるアウルム・キルクルスを抹殺するには、魔界を生贄に捧げるしかないと悟った。
◇◆◇◆◇
フルクトゥアトは無事だった。
今俺の目の前にはモンスターは一体も残されていない。あるのは、精々残骸くらい。ほとんどが硫酸の落とし穴か魔導砲によって消滅した。多少は国へ侵入した魔物もいたが、S~SSS級武具をフル装備した俺の兵によって処理された。
「アウルム様、勝利おめでとうございます。モンスターを一匹残らず消滅させましたね。これで国は安泰です」
相変わらず、カルニは俺の背後から抱きついたまま。なんだか離れたくないらしい。だが、少し懸念もあった。
「なあ、カルニ。同じ魔族として心が痛まないか?」
「……痛まないと言えばウソになるでしょう。でも、あたしはハーフですし、半分は人間です。確かに魔王の秘書という重要な立場にいましたけど、家族の為だったのです」
「家族の為?」
「ええ、この世界にの何処かにいる育ての親、両親です。二人から大事にしてもらい、ここまで育てて戴いた恩があるんです。だから、止むを得なく先代魔王の秘書を務めさせて戴いておりました」
……そういう事情だったのか。
カルニは美人だし、とても健康的な体つきをしている。良い両親なんだろうなと俺は思った。
「また詳しい事を聞かせてくれ。とりあえず、魔王軍を殲滅完了したし、城塞都市・イニティウムへ戻ろうか」
「ん~、そうですね。でも、アウルム様、もう少しこのままでいませんか。ほら、戻っちゃうと二人きりになれないですよ?」
誘ってくれているのか。気持ちは嬉しいけどなぁ……。そう言われると、カルニと二人きりはあんまりない気がするケド。
「分かったよ、カルニ。せっかくのお誘いだし、少し寄り道するか」
「ありがとうございます。そういうお優しいアウルム様が好きなんですっ」
ぎゅぅっと抱きつかれ、寄り道を選んで正解だったとガッツーポーズ。しばらくは、カルニとイチャイチャした。
◆
城塞都市・イニティウムへ戻ると、住民が俺に振り向き――
「おぉおぉぉ、アウルムさん!」「やりましたなあ!」「魔王軍十万を潰したんだって!?」「さすが勇者様だぜ!!」「ああ、四分統治をまとめ上げているだけある」「魔導砲カッコよすぎでしょ」「落とし穴も凄かったぞ」「負傷者はひとりも出なかったって話だ」「この国、最強すぎじゃね!?」「アウルム様、ぜひ、わたしとお見合いを!」
凄い人だかりが出来てしまった。
しかも賞賛の嵐。
「それ程でもないさ! またまだ防衛力を上げていくぞ。期待してくれ、みんな!」
「「「「「おおおおおおおおおッ!!!」」」」」
俺は住民の皆に手を振って、ユウェンスの屋敷へ戻った。
「良かったですね、アウルム様」
「俺ひとりの手柄じゃないさ。カルニや皆のおかげさぁ~。特に今回はカルニの監視使い魔とテレポートは役に立った。有能な秘書を持てて、俺は嬉しいよ」
本音を伝えると、カルニはまた抱きついてきた。すげぇ嬉しそうに。どうやら、カルニは俺に抱きつくのが好きらしい。俺も好きだけど。
「ありがとうございますっ! あたし、アウルム様にお仕えできて本当に良かった……。前の魔王は褒めてもくれませんでしたし、あたしをただの道具としか見てくれなかった。だから、今がとっても楽しいです」
魔王なんてそんなモンだしな。俺は勇者だし、ちゃんと貢献してくれた人を褒めるのだ。
「ああ、これからも頑張ってくれ。――さて、着いた」
本部に入って、元の部屋を目指す。
扉の前まで到着し、ノックして入った。
「あ! アウルムさん、おかえりなさい!」
俺の存在に真っ先に気づいたフルクは、トコトコと走ってきて、俺の前に。上目遣いで、なんだか心配そうに俺を見て来た。まるで仔猫のようで可愛い。
「ただいま。魔王軍十万を討伐してきた。大丈夫、ケガはないし、カルニも無事だ。彼女のおかげで今がある」
「いえ、アウルム様のレベル投げの勝利です。そのスキルで防衛設備のレベルをアップし、攻撃力を上げたからこそです」
遠慮するカルニさん。まったく、そんな謙遜する事ないのに。少なくとも、俺はカルニの能力を認めた。もう外せない戦力だし、これからも頑張って貰う。
「カルニは俺に勝利を譲りたいらしいから、仕方ないな、そういう事にしておくか」
「ええ、それでいいんです」
まったくもう、最高の秘書だな!
「それじゃ、ユウェンス。俺たちは戻るよ」
「ああ、事後処理は任せろって。魔導砲のメンテナンス、罠の再設置を急がねばならん」
「あとは頼んだ。それと、フェルスとメディケさんを頼む」
「了解した。……と、そうそう」
ユウェンスは、ちょっと渋い顔をしてこう言った。
「実はなぁ、最近、食糧問題が出始めている。人口の増加のせいだ。アウルム、悪いがなんとかして欲しい」
そろそろ出るんじゃないかと思っていたが、早くも食糧問題に直面したか。……うむ、そうだな、家へ帰ってじっくり考えるとするか。
カルニにテレポートをお願いし、俺たちは帰還した。
◆
「おかりなさいませ、主様」
屋敷に戻ると、マルガが丁寧に頭を下げた。なんだろう、こうして普通にしてくれるのなら、本当に普通のメイドさんなのだが。
「ただいま、マルガ。多分、気配とかで感じていたとは思うけど、魔王軍十万を倒した。魔導砲と落とし穴、かなり活躍したぞ」
「ええ、存じております。素晴らしい戦果を上げられたようで。これならば、もっとデウス・エクス・マキナから防衛設備を導入して良さそうですね」
あの魔導機械国は、最近、新型兵器を作りまくっているらしい。次はどんな兵器が出てくるのやら、楽しみだな。それまでに金を作っておかねばな。
となると、EXダンジョンの出番だが――今日はもう疲れた。
「そうだな、検討しておく。マルガ、俺は自室へ戻る」
フルクとカルニも同じ模様。特にフルクは体調不良もあったからな、療養して欲しい。そんなわけで、俺は皆と別れて部屋へ向かった。
「――あれ」
背後から気配を感じて振り向くと、マルガだった。なんだかニヤニヤしていらっしゃる。嫌な予感だ。
「どうした、マルガ」
「えへへ……主様ぁん♡」
「うわぁッ! 廊下で脱ごうとするな!」
「寂しかったんですもの。よろしいではありませんか……。因みに、今、主様のお気に召しそうな……すっごくえっちな勝負下着をつけています♡」
余計な情報がついているが、まったくもう……最高かよ。――って、そうじゃない。落ち着け、俺。野獣になるな、理性的になれ俺。
「後でいっぱい構ってやるから、大人しくしていなさい」
「承知しました。……ですが」
急に重苦しい口調になるマルガ。なんだ、只ならぬ雰囲気だ……。
「主様、帝国に動きが見られるようですよ。お気をつけて」
くるっと華麗に背を向けるマルガは、戻っていった。――帝国に動きか……いよいよ、何か仕掛けてくるのか?
そんな事を考えながら、自室へ戻る。
服を着替えようとして、ふとベッドに視線を送ると……『主様へ。お使い下さい♡』と手紙の添えられた下着セットが丁寧に置かれていた。
「あのヘンタイメイドー!!」
……隠しておくか。
「クソオオオオオオオ!! どうしてだ! どうして十万で勝てんのだああああああああああ……!!」
あり得ない事態だった。
ルードスは、この時の為に十万もの強力なモンスターを集結させ、戦力を整えたというのに大敗北という結果に終わった。
「おのれぇ……アウルム・キルクルス! よくも! よくもォ!!」
魔王軍の戦力は申し分なかった。だが、四分統治・フルクトゥアト全体を囲うように設置されていた『硫酸の落とし穴』と『魔導砲』が桁違いの強さを誇っていた。それにより、魔王軍は壊滅させられてしまったのだ。
「数ではダメだ……あの罠を掻い潜れるもっと強い……最強のモンスターが必要だ。やはり、父の偉大な計画【ファクシミリ】を完成させるしかないのだな」
ニヤリとルードスは笑う。もはや、手段を選んでいる時ではない。あの真の勇者であるアウルム・キルクルスを抹殺するには、魔界を生贄に捧げるしかないと悟った。
◇◆◇◆◇
フルクトゥアトは無事だった。
今俺の目の前にはモンスターは一体も残されていない。あるのは、精々残骸くらい。ほとんどが硫酸の落とし穴か魔導砲によって消滅した。多少は国へ侵入した魔物もいたが、S~SSS級武具をフル装備した俺の兵によって処理された。
「アウルム様、勝利おめでとうございます。モンスターを一匹残らず消滅させましたね。これで国は安泰です」
相変わらず、カルニは俺の背後から抱きついたまま。なんだか離れたくないらしい。だが、少し懸念もあった。
「なあ、カルニ。同じ魔族として心が痛まないか?」
「……痛まないと言えばウソになるでしょう。でも、あたしはハーフですし、半分は人間です。確かに魔王の秘書という重要な立場にいましたけど、家族の為だったのです」
「家族の為?」
「ええ、この世界にの何処かにいる育ての親、両親です。二人から大事にしてもらい、ここまで育てて戴いた恩があるんです。だから、止むを得なく先代魔王の秘書を務めさせて戴いておりました」
……そういう事情だったのか。
カルニは美人だし、とても健康的な体つきをしている。良い両親なんだろうなと俺は思った。
「また詳しい事を聞かせてくれ。とりあえず、魔王軍を殲滅完了したし、城塞都市・イニティウムへ戻ろうか」
「ん~、そうですね。でも、アウルム様、もう少しこのままでいませんか。ほら、戻っちゃうと二人きりになれないですよ?」
誘ってくれているのか。気持ちは嬉しいけどなぁ……。そう言われると、カルニと二人きりはあんまりない気がするケド。
「分かったよ、カルニ。せっかくのお誘いだし、少し寄り道するか」
「ありがとうございます。そういうお優しいアウルム様が好きなんですっ」
ぎゅぅっと抱きつかれ、寄り道を選んで正解だったとガッツーポーズ。しばらくは、カルニとイチャイチャした。
◆
城塞都市・イニティウムへ戻ると、住民が俺に振り向き――
「おぉおぉぉ、アウルムさん!」「やりましたなあ!」「魔王軍十万を潰したんだって!?」「さすが勇者様だぜ!!」「ああ、四分統治をまとめ上げているだけある」「魔導砲カッコよすぎでしょ」「落とし穴も凄かったぞ」「負傷者はひとりも出なかったって話だ」「この国、最強すぎじゃね!?」「アウルム様、ぜひ、わたしとお見合いを!」
凄い人だかりが出来てしまった。
しかも賞賛の嵐。
「それ程でもないさ! またまだ防衛力を上げていくぞ。期待してくれ、みんな!」
「「「「「おおおおおおおおおッ!!!」」」」」
俺は住民の皆に手を振って、ユウェンスの屋敷へ戻った。
「良かったですね、アウルム様」
「俺ひとりの手柄じゃないさ。カルニや皆のおかげさぁ~。特に今回はカルニの監視使い魔とテレポートは役に立った。有能な秘書を持てて、俺は嬉しいよ」
本音を伝えると、カルニはまた抱きついてきた。すげぇ嬉しそうに。どうやら、カルニは俺に抱きつくのが好きらしい。俺も好きだけど。
「ありがとうございますっ! あたし、アウルム様にお仕えできて本当に良かった……。前の魔王は褒めてもくれませんでしたし、あたしをただの道具としか見てくれなかった。だから、今がとっても楽しいです」
魔王なんてそんなモンだしな。俺は勇者だし、ちゃんと貢献してくれた人を褒めるのだ。
「ああ、これからも頑張ってくれ。――さて、着いた」
本部に入って、元の部屋を目指す。
扉の前まで到着し、ノックして入った。
「あ! アウルムさん、おかえりなさい!」
俺の存在に真っ先に気づいたフルクは、トコトコと走ってきて、俺の前に。上目遣いで、なんだか心配そうに俺を見て来た。まるで仔猫のようで可愛い。
「ただいま。魔王軍十万を討伐してきた。大丈夫、ケガはないし、カルニも無事だ。彼女のおかげで今がある」
「いえ、アウルム様のレベル投げの勝利です。そのスキルで防衛設備のレベルをアップし、攻撃力を上げたからこそです」
遠慮するカルニさん。まったく、そんな謙遜する事ないのに。少なくとも、俺はカルニの能力を認めた。もう外せない戦力だし、これからも頑張って貰う。
「カルニは俺に勝利を譲りたいらしいから、仕方ないな、そういう事にしておくか」
「ええ、それでいいんです」
まったくもう、最高の秘書だな!
「それじゃ、ユウェンス。俺たちは戻るよ」
「ああ、事後処理は任せろって。魔導砲のメンテナンス、罠の再設置を急がねばならん」
「あとは頼んだ。それと、フェルスとメディケさんを頼む」
「了解した。……と、そうそう」
ユウェンスは、ちょっと渋い顔をしてこう言った。
「実はなぁ、最近、食糧問題が出始めている。人口の増加のせいだ。アウルム、悪いがなんとかして欲しい」
そろそろ出るんじゃないかと思っていたが、早くも食糧問題に直面したか。……うむ、そうだな、家へ帰ってじっくり考えるとするか。
カルニにテレポートをお願いし、俺たちは帰還した。
◆
「おかりなさいませ、主様」
屋敷に戻ると、マルガが丁寧に頭を下げた。なんだろう、こうして普通にしてくれるのなら、本当に普通のメイドさんなのだが。
「ただいま、マルガ。多分、気配とかで感じていたとは思うけど、魔王軍十万を倒した。魔導砲と落とし穴、かなり活躍したぞ」
「ええ、存じております。素晴らしい戦果を上げられたようで。これならば、もっとデウス・エクス・マキナから防衛設備を導入して良さそうですね」
あの魔導機械国は、最近、新型兵器を作りまくっているらしい。次はどんな兵器が出てくるのやら、楽しみだな。それまでに金を作っておかねばな。
となると、EXダンジョンの出番だが――今日はもう疲れた。
「そうだな、検討しておく。マルガ、俺は自室へ戻る」
フルクとカルニも同じ模様。特にフルクは体調不良もあったからな、療養して欲しい。そんなわけで、俺は皆と別れて部屋へ向かった。
「――あれ」
背後から気配を感じて振り向くと、マルガだった。なんだかニヤニヤしていらっしゃる。嫌な予感だ。
「どうした、マルガ」
「えへへ……主様ぁん♡」
「うわぁッ! 廊下で脱ごうとするな!」
「寂しかったんですもの。よろしいではありませんか……。因みに、今、主様のお気に召しそうな……すっごくえっちな勝負下着をつけています♡」
余計な情報がついているが、まったくもう……最高かよ。――って、そうじゃない。落ち着け、俺。野獣になるな、理性的になれ俺。
「後でいっぱい構ってやるから、大人しくしていなさい」
「承知しました。……ですが」
急に重苦しい口調になるマルガ。なんだ、只ならぬ雰囲気だ……。
「主様、帝国に動きが見られるようですよ。お気をつけて」
くるっと華麗に背を向けるマルガは、戻っていった。――帝国に動きか……いよいよ、何か仕掛けてくるのか?
そんな事を考えながら、自室へ戻る。
服を着替えようとして、ふとベッドに視線を送ると……『主様へ。お使い下さい♡』と手紙の添えられた下着セットが丁寧に置かれていた。
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