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新章
第83話 監視の使い魔
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魔王軍の十万規模は初めてだ。
そうか、しばらく襲って来ないと思ったら、戦力増大の為にコソコソやっていたんだな。ついにルードスは魔王となったのだ。
「カルニ、お前は元魔王の秘書だ。つまり、モンスターを増強する仕組みも知っているはずだよな」
俺は、長い桃色の髪を弄っているカルニに聞いた。
「あたしは確かに元魔王の秘書であり、魔族の事は大体存じております。ただ、そのルードスという人物に関しては分かりかねます。ですが、魔王のモンスターは魔界の住人ですから、そこで生まれ、育ち、この世界に解き放たれるのですよ」
「有益な情報をありがとう、カルニ」
「いえいえ。その代わり、今夜は一緒に寝て下さいね」
投げキスをされて、俺はちょっと照れた。……まったく、誰に似たんだか。
「分かった分かった。それにしても十万規模か。これは前例のない奇襲だ……果たして国が耐えられるかどうか」
「それでしたら、あたしにお任せを」
と、カルニは指をパチンと鳴らし、目の前に大きな映像を映し出した。……こ、これはまさか! 魔王軍のビジョンか。
「すげぇ鮮明だな。どういう手品だ?」
「手品ではございません。これは、あたしの秘書としてのビジョンスキル。実は、上空から監視を得意とする使い魔ドクトル・パーガーノールムと契約しておりまして、その昔は勇者の行動を監視していた頃もありました」
ドクトル・パーガーノールム……なんて独特な名前をした使い魔なんだ。それに、監視していたって、それって俺の事か? ……色目でジロジロ見られているし、そうなんだろうなぁ。ていうか、なんでそんな目で俺を見るのー!
「わぁ、カルニさんって変わったスキルを持っているんですね!」
初めてみる映像に感動するフルク。そうだな、普通はこんなモンあるわけねえ。カルニが特殊すぎるんだ。本人は得意気に俺を見る。だから、俺を見られてもッ!
「うむ、カルニ殿がこちら側で良かったかもしれん。このスキルがあれば、相手の戦力や戦術が読み取れるからな。羨ましいぞ、アウルム」
今度はユウェンスから羨ましがられた。ま、まあ……あんなヘンタイ魔族秘書でも、俺の仲間だからな。
ちなみに、フェルスはぶっ倒れたメディケさんを看病していた。……やれやれ。
「いやしかし、モンスターの数が尋常じゃないな。今まで、三万とか五万規模はあったけど、十万ともなると……こんなにも多いのか」
映像でも入りきらない程の軍勢がワラワラと進軍していた。あんなの、全部倒し切れるのか?
いやだが、こっちには『魔導砲』が二十五門、新トラップの『硫酸の落とし穴』が千二百設置されているらしい。
なんだか落とし穴が異様に多いが、大量生産しやすいし、安価だから! という、マルガの一押しだった。
「これからどうなるんでしょう……」
「大丈夫だよ、フルク。落とし穴が沢山あるし、魔導砲も威力絶大。更に、兵も二千の戦力がある。全員S~SSS級武具を装備した猛者達。そして、最後は俺が動く」
フルクの手を握って、安心させた。
すると、手を握り返してくれた。
「……そうですよね、アウルムさんが作ったこの国なら、絶対に大丈夫ですもんね。信じています」
「おうよ、任せろって。なんたって俺はレベル0で、レベル投げの勇者だからな」
安心したのかフルクは、小さな頭を俺に預けてきた。俺は抱き寄せて、映像を見つめた。……さあ、いざとなれば、俺の【レベル投げ】が火を噴くぜ。
そうか、しばらく襲って来ないと思ったら、戦力増大の為にコソコソやっていたんだな。ついにルードスは魔王となったのだ。
「カルニ、お前は元魔王の秘書だ。つまり、モンスターを増強する仕組みも知っているはずだよな」
俺は、長い桃色の髪を弄っているカルニに聞いた。
「あたしは確かに元魔王の秘書であり、魔族の事は大体存じております。ただ、そのルードスという人物に関しては分かりかねます。ですが、魔王のモンスターは魔界の住人ですから、そこで生まれ、育ち、この世界に解き放たれるのですよ」
「有益な情報をありがとう、カルニ」
「いえいえ。その代わり、今夜は一緒に寝て下さいね」
投げキスをされて、俺はちょっと照れた。……まったく、誰に似たんだか。
「分かった分かった。それにしても十万規模か。これは前例のない奇襲だ……果たして国が耐えられるかどうか」
「それでしたら、あたしにお任せを」
と、カルニは指をパチンと鳴らし、目の前に大きな映像を映し出した。……こ、これはまさか! 魔王軍のビジョンか。
「すげぇ鮮明だな。どういう手品だ?」
「手品ではございません。これは、あたしの秘書としてのビジョンスキル。実は、上空から監視を得意とする使い魔ドクトル・パーガーノールムと契約しておりまして、その昔は勇者の行動を監視していた頃もありました」
ドクトル・パーガーノールム……なんて独特な名前をした使い魔なんだ。それに、監視していたって、それって俺の事か? ……色目でジロジロ見られているし、そうなんだろうなぁ。ていうか、なんでそんな目で俺を見るのー!
「わぁ、カルニさんって変わったスキルを持っているんですね!」
初めてみる映像に感動するフルク。そうだな、普通はこんなモンあるわけねえ。カルニが特殊すぎるんだ。本人は得意気に俺を見る。だから、俺を見られてもッ!
「うむ、カルニ殿がこちら側で良かったかもしれん。このスキルがあれば、相手の戦力や戦術が読み取れるからな。羨ましいぞ、アウルム」
今度はユウェンスから羨ましがられた。ま、まあ……あんなヘンタイ魔族秘書でも、俺の仲間だからな。
ちなみに、フェルスはぶっ倒れたメディケさんを看病していた。……やれやれ。
「いやしかし、モンスターの数が尋常じゃないな。今まで、三万とか五万規模はあったけど、十万ともなると……こんなにも多いのか」
映像でも入りきらない程の軍勢がワラワラと進軍していた。あんなの、全部倒し切れるのか?
いやだが、こっちには『魔導砲』が二十五門、新トラップの『硫酸の落とし穴』が千二百設置されているらしい。
なんだか落とし穴が異様に多いが、大量生産しやすいし、安価だから! という、マルガの一押しだった。
「これからどうなるんでしょう……」
「大丈夫だよ、フルク。落とし穴が沢山あるし、魔導砲も威力絶大。更に、兵も二千の戦力がある。全員S~SSS級武具を装備した猛者達。そして、最後は俺が動く」
フルクの手を握って、安心させた。
すると、手を握り返してくれた。
「……そうですよね、アウルムさんが作ったこの国なら、絶対に大丈夫ですもんね。信じています」
「おうよ、任せろって。なんたって俺はレベル0で、レベル投げの勇者だからな」
安心したのかフルクは、小さな頭を俺に預けてきた。俺は抱き寄せて、映像を見つめた。……さあ、いざとなれば、俺の【レベル投げ】が火を噴くぜ。
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