上 下
76 / 101

第76話 終わりと始まり(仮完結)

しおりを挟む
 更に三日後。
 無事に魔導砲を入手。百門を各所に設置しまくった。兵器のサイズは、森の大木よりも大きく、試し打ちしてみると大岩が粉々に吹っ飛んだ。

「やべえ……」

 これ、モンスターなんて粉微塵じゃん。


 そんな最中――


 久しぶりに魔王軍の襲来があった。

 共和国と同じ数、5万規模。


「さあ、見せて貰うぜ……魔導砲の威力を!」


 イニティウムの、あれから更に増設された展望台へ上がり、周囲を見渡す。……良い眺めだ。おっと、いたいた。東から大量にモンスターの軍団だ。


 モンスターがあるラインに到達した瞬間、魔導砲が自動で敵を感知し――砲撃を開始。魔導レーザーを一斉射撃した。


 凄まじい轟音と共に放たれる赤いエネルギーは、周囲にズバズバと放たれ、どんどん魔王軍の数を減らしていった。


「す、凄すぎるだろ……」


 俺がつぶやくと、みんなも同じように茫然ぼうぜんと立ち尽くし、同じようにつぶやいた。

「アウルムさん、これ……大魔法レベルですよ。これなら国を守れますね!」
「あ、ああ……そうだな、フルク」


 無意識の内にフルクを背後から抱きかかえていた。状況に興奮して、思わずだった。でも、フルクは嫌がっていないっていうか、多分、兵器の方に意識が向いているから気づいていないだけっぽい。



 ――ここまで来れたのは、フルクトゥアトがいたからだ。彼女が俺に【レベル投げ】をくれたからこそ、今がある。



 聖女フルクトゥアトに感謝したい。
 この国『フルクトゥアト』に感謝したい。


 ・
 ・
 ・


 魔導砲を導入して、あの防衛から一週間。魔王軍の動きがピタリと止んだ。あの防衛で向こうは5万規模のモンスターを失った。


 恐らく、ルードスはどこかで絶望しているだろう。その間にも帝国も共和国も防衛力を強化してしまった。


「帝国は……何を考えているか分からんけど、とりあえず、口を閉ざしているっていうか、不気味なくらい静かだ」

「こちらでも調査してみましたが、帝国の皇帝は沈黙を保ったままです」


 マルガに潜入調査してもらったが、動きは掴めなかった。ルードスの居場所も分からない。けれど、こっちは万全の体制。

 四分統治テトラルキアは維持され、村はすっかり『都市』の姿になった。今や、森の姿はなく――広大な街並みが広がっていた。



「そうか。でも、平和が保たれているのなら、いいだろう。とりあえず、こっちは魔導砲を更に増備したしな」



 デウス・エクス・マキナと物々交換しまくった結果、魔導砲は千門まで増えた。あっちこっちに砲台が有るため、見栄えがアレだが、これが便利で一般モンスターすらも自動迎撃していた。


「治安はすっかりよくなりました。人口もあれから帝国や共和国、その他国々から移住が増えて一万人です」


 フルクからの報告だ。
 へえ、我が国もだいぶ人口が増えたものだ。もちろん、厳しい面接を行った上らしい。担当はユウェンスに任せているが……まあ、大丈夫だろう。彼なら信用できる。元々は150人のクセ者揃いの冒険者を纏め上げていたリーダーだから、素質はある。


 ◆


 ――更に半年後。



 四分統治テトラルキア・フルクトゥアト全体を囲うように巨大な壁が出来ていた。魔導砲は三千門。SSS級武具を装備した兵力は一万五千規模。ドラゴンの育成にも全力を注いでいれば、百のドラグーン部隊が完成。


 共和国との同盟関係も継続された。


「……あれから半年、ここまで国が変わるとはな。街並みのコントラストが綺麗すぎて、目に染みるぜ」

「まったくだよ、アウルム」


 遺跡に腰かけていると、ユウェンスが飽きれた顔で現れた。ガシャガシャと重苦しいSSSSS級の防具に身を包み、豪華な身なりをしていた。


「なんだ、ユウェンスか。今日もEXダンジョンか」

「ああ、お前がダンジョン攻略しなくなったから、私が代わりにしてるんだよ。今や武具ランクもSSSSSSSSSS級まで確認された。もっと強いアイテムが眠っているんだよ、このダンジョンには……恐ろしいよ」


 かなり奥まで潜った冒険者による噂によれば……SSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSS級まであるのではないかと聞いた。あくまで説らしいが。


 つまり、それが正しければ『100』までレアリティあるらしい。そんなモンをドロップするエリアに到達するまでに何年掛かるやらな。


 あれからエリアは、第三十五まで攻略が進んでいた――。


 ◆


 その夜、すっかり大きくなった屋敷へ戻り、皆の元へ戻った。どうやら、皆自由に生活しているようで、俺はフルクを探した。


「いないな」
「おや、アウルムさん。もしかして、フルクさんをお探しですかぁ~。三階の方で見ましたよー」


 豪華なドレスに身を包むフェルスに聞かされ、俺は三階を目指した。もしかして、俺の部屋か。


 自分の部屋に戻ると、ベッドの上にスカート丈の短いワンピース姿のフルクがいた。純白だから、綺麗だ。


「どうした、こんな所で」
「ずっと待っていました」

「待ってたの?」

「ええ、あれから国は大きく成長し、平和そのもの。皆もわたしも日々成長しています。それでなんですが……最近、アウルムさんが不在だとなんだか落ち着かなくて……。不安になってしまうんです。どうしてでしょう?」


 複雑そうにしているが、俺には分かる。
 ベッドに腰を掛けて――横になる。


「こうすれば、不安がなくなるよな」
「はい……」


「そ、そうそう。魔王……ルードスが噂によれば、戦意喪失しているらしい。人間側があまりに強くなってしまったからな。だから、最近襲ってこないようだな」

「それでなんですね。ここ一週間は静かです。こんな平和がずっと続けばいいのに」

「続かせるさ。だから、平和な今のうちに……フルク、まずは俺と一緒になってくれないか」

「も……もちろんです。でも、わたし、よく分かんなくて……恋とかもした事なくて……どうすればいいんですか?」


 フルクの小さな手を取って、抱き寄せた。
 それから顔をゆっくり近づけ――唇を。




 ――その一年後、俺とフルクは結婚した。




 国の平和は今でも続いている――。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生幼児は夢いっぱい

meimei
ファンタジー
日本に生まれてかれこれ27年大学も出て希望の職業にもつき順風満帆なはずだった男は、 ある日親友だと思っていた男に手柄を横取りされ左遷されてしまう。左遷された所はとても忙しい部署で。ほぼ不眠不休…の生活の末、気がつくとどうやら亡くなったらしい?? らしいというのも……前世を思い出したのは 転生して5年経ってから。そう…5歳の誕生日の日にだった。 これは秘匿された出自を知らないまま、 チートしつつ異世界を楽しむ男の話である! ☆これは作者の妄想によるフィクションであり、登場するもの全てが架空の産物です。 誤字脱字には優しく軽く流していただけると嬉しいです。

私が産まれる前に消えた父親が、隣国の皇帝陛下だなんて聞いてない

丙 あかり
ファンタジー
 ハミルトン侯爵家のアリスはレノワール王国でも有数の優秀な魔法士で、王立学園卒業後には婚約者である王太子との結婚が決まっていた。  しかし、王立学園の卒業記念パーティーの日、アリスは王太子から婚約破棄を言い渡される。  王太子が寵愛する伯爵令嬢にアリスが嫌がらせをし、さらに魔法士としては禁忌である『魔法を使用した通貨偽造』という理由で。    身に覚えがないと言うアリスの言葉に王太子は耳を貸さず、国外追放を言い渡す。    翌日、アリスは実父を頼って隣国・グランディエ帝国へ出発。  パーティーでアリスを助けてくれた帝国の貴族・エリックも何故か同行することに。  祖父のハミルトン侯爵は爵位を返上して王都から姿を消した。  アリスを追い出せたと喜ぶ王太子だが、激怒した国王に吹っ飛ばされた。  「この馬鹿息子が!お前は帝国を敵にまわすつもりか!!」    一方、帝国で仰々しく迎えられて困惑するアリスは告げられるのだった。   「さあ、貴女のお父君ーー皇帝陛下のもとへお連れ致しますよ、お姫様」と。 ****** 週3日更新です。  

自害したら転生して、異世界生活??~起きたら貴族になっていた~

棚から牡丹
ファンタジー
東軍と西軍と戦があった。その時東軍は完敗し、その責任をとって自害した武士は転生した。 転生するときに神(じじい)は魔法が使える異世界と呼ばれるところに行かしてくれるらしい。 魔法は全属性にしてくれた。 異世界とはなんだ?魔法とはなんだ?全く意味不明のまま、飛ばされた。 目を覚ますと赤ちゃんからやり直し、しかも貴族でも上のほうらしい。 そんなドタバタ、行き当たりばったりな異世界生活を始めた。 小説家になろうにも投稿しています。 完結に設定するのを忘れていました。 (平成30/09/29) 完結した後もお気に入り登録して頂きありがとうございます!! (平成31/04/09)

【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです

ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。 女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。 前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る! そんな変わった公爵令嬢の物語。 アルファポリスOnly 2019/4/21 完結しました。 沢山のお気に入り、本当に感謝します。 7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。 2021年9月。 ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。 10月、再び完結に戻します。 御声援御愛読ありがとうございました。

無関係だった私があなたの子どもを生んだ訳

キムラましゅろう
恋愛
わたし、ハノン=ルーセル(22)は術式を基に魔法で薬を 精製する魔法薬剤師。 地方都市ハイレンで西方騎士団の専属薬剤師として勤めている。 そんなわたしには命よりも大切な一人息子のルシアン(3)がいた。 そしてわたしはシングルマザーだ。 ルシアンの父親はたった一夜の思い出にと抱かれた相手、 フェリックス=ワイズ(23)。 彼は何を隠そうわたしの命の恩人だった。侯爵家の次男であり、 栄誉ある近衛騎士でもある彼には2人の婚約者候補がいた。 わたし?わたしはもちろん全くの無関係な部外者。 そんなわたしがなぜ彼の子を密かに生んだのか……それは絶対に 知られてはいけないわたしだけの秘密なのだ。 向こうはわたしの事なんて知らないし、あの夜の事だって覚えているのかもわからない。だからこのまま息子と二人、 穏やかに暮らしていけると思ったのに……!? いつもながらの完全ご都合主義、 完全ノーリアリティーのお話です。 性描写はありませんがそれを匂わすワードは出てきます。 苦手な方はご注意ください。 小説家になろうさんの方でも同時に投稿します。

英雄になった夫が妻子と帰還するそうです

白野佑奈
恋愛
初夜もなく戦場へ向かった夫。それから5年。 愛する彼の為に必死に留守を守ってきたけれど、戦場で『英雄』になった彼には、すでに妻子がいて、王命により離婚することに。 好きだからこそ王命に従うしかない。大人しく離縁して、実家の領地で暮らすことになったのに。 今、目の前にいる人は誰なのだろう? ヤンデレ激愛系ヒーローと、周囲に翻弄される流され系ヒロインです。 珍しくもちょっとだけ切ない系を目指してみました(恥) ざまぁが少々キツイので、※がついています。苦手な方はご注意下さい。

悪役令嬢は隣国で錬金術を学びたい!

花宵
ファンタジー
 音楽の都と名高いウィルハーモニー王国。楽器を美しく奏でる事が一種のステータスであるこの国で……不運な事に、公爵令嬢のリオーネは触れた傍から楽器を壊してしまう特殊なスキルの持ち主だった。  真っ二つに折れたヴァイオリンを見て前世の記憶を思い出したリオーネは、音楽系恋愛シミュレーションゲーム「夢色セレナーデ」に出てくる嫌味な悪役令嬢に生まれ変わってしまったのだと知る。  作中のリオーネは双子の兄と共に奇跡の双子と称され名高いヴァイオリンの名手として登場するはずなのだが……  いえいえ、私は楽器なんて弾けません。悪役令嬢役? 壊れた楽器を見てこちらが馬鹿にされて終わりです。それにこのままでは公爵家の名誉を傷つけてしまい、家族に迷惑をかけてしまいます。  なので、家を去ることを決意。隣国は前世の婚約者が大好きだったゲーム「リューネブルクの錬金術士」の舞台。ということで、音楽とは無縁の隣国で錬金術を学びたい! と、奮起する少女の物語です。  ※小説家になろう、ノベルバでも掲載中

【完結】よくある婚約破棄なので

おのまとぺ
恋愛
ディアモンテ公爵家の令嬢ララが婚約を破棄された。 その噂は風に乗ってすぐにルーベ王国中に広がった。なんといっても相手は美男子と名高いフィルガルド王子。若い二人の結婚の日を国民は今か今かと夢見ていたのだ。 言葉数の少ない公爵令嬢が友人からの慰めに対して放った一言は、社交界に小さな波紋を呼ぶ。「災難だったわね」と声を掛けたアネット嬢にララが返した言葉は短かった。 「よくある婚約破棄なので」 ・すれ違う二人をめぐる短い話 ・前編は各自の証言になります ・後編は◆→ララ、◇→フィルガルド ・全25話完結

処理中です...