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第76話 終わりと始まり(仮完結)

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 更に三日後。
 無事に魔導砲を入手。百門を各所に設置しまくった。兵器のサイズは、森の大木よりも大きく、試し打ちしてみると大岩が粉々に吹っ飛んだ。

「やべえ……」

 これ、モンスターなんて粉微塵じゃん。


 そんな最中――


 久しぶりに魔王軍の襲来があった。

 共和国と同じ数、5万規模。


「さあ、見せて貰うぜ……魔導砲の威力を!」


 イニティウムの、あれから更に増設された展望台へ上がり、周囲を見渡す。……良い眺めだ。おっと、いたいた。東から大量にモンスターの軍団だ。


 モンスターがあるラインに到達した瞬間、魔導砲が自動で敵を感知し――砲撃を開始。魔導レーザーを一斉射撃した。


 凄まじい轟音と共に放たれる赤いエネルギーは、周囲にズバズバと放たれ、どんどん魔王軍の数を減らしていった。


「す、凄すぎるだろ……」


 俺がつぶやくと、みんなも同じように茫然ぼうぜんと立ち尽くし、同じようにつぶやいた。

「アウルムさん、これ……大魔法レベルですよ。これなら国を守れますね!」
「あ、ああ……そうだな、フルク」


 無意識の内にフルクを背後から抱きかかえていた。状況に興奮して、思わずだった。でも、フルクは嫌がっていないっていうか、多分、兵器の方に意識が向いているから気づいていないだけっぽい。



 ――ここまで来れたのは、フルクトゥアトがいたからだ。彼女が俺に【レベル投げ】をくれたからこそ、今がある。



 聖女フルクトゥアトに感謝したい。
 この国『フルクトゥアト』に感謝したい。


 ・
 ・
 ・


 魔導砲を導入して、あの防衛から一週間。魔王軍の動きがピタリと止んだ。あの防衛で向こうは5万規模のモンスターを失った。


 恐らく、ルードスはどこかで絶望しているだろう。その間にも帝国も共和国も防衛力を強化してしまった。


「帝国は……何を考えているか分からんけど、とりあえず、口を閉ざしているっていうか、不気味なくらい静かだ」

「こちらでも調査してみましたが、帝国の皇帝は沈黙を保ったままです」


 マルガに潜入調査してもらったが、動きは掴めなかった。ルードスの居場所も分からない。けれど、こっちは万全の体制。

 四分統治テトラルキアは維持され、村はすっかり『都市』の姿になった。今や、森の姿はなく――広大な街並みが広がっていた。



「そうか。でも、平和が保たれているのなら、いいだろう。とりあえず、こっちは魔導砲を更に増備したしな」



 デウス・エクス・マキナと物々交換しまくった結果、魔導砲は千門まで増えた。あっちこっちに砲台が有るため、見栄えがアレだが、これが便利で一般モンスターすらも自動迎撃していた。


「治安はすっかりよくなりました。人口もあれから帝国や共和国、その他国々から移住が増えて一万人です」


 フルクからの報告だ。
 へえ、我が国もだいぶ人口が増えたものだ。もちろん、厳しい面接を行った上らしい。担当はユウェンスに任せているが……まあ、大丈夫だろう。彼なら信用できる。元々は150人のクセ者揃いの冒険者を纏め上げていたリーダーだから、素質はある。


 ◆


 ――更に半年後。



 四分統治テトラルキア・フルクトゥアト全体を囲うように巨大な壁が出来ていた。魔導砲は三千門。SSS級武具を装備した兵力は一万五千規模。ドラゴンの育成にも全力を注いでいれば、百のドラグーン部隊が完成。


 共和国との同盟関係も継続された。


「……あれから半年、ここまで国が変わるとはな。街並みのコントラストが綺麗すぎて、目に染みるぜ」

「まったくだよ、アウルム」


 遺跡に腰かけていると、ユウェンスが飽きれた顔で現れた。ガシャガシャと重苦しいSSSSS級の防具に身を包み、豪華な身なりをしていた。


「なんだ、ユウェンスか。今日もEXダンジョンか」

「ああ、お前がダンジョン攻略しなくなったから、私が代わりにしてるんだよ。今や武具ランクもSSSSSSSSSS級まで確認された。もっと強いアイテムが眠っているんだよ、このダンジョンには……恐ろしいよ」


 かなり奥まで潜った冒険者による噂によれば……SSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSS級まであるのではないかと聞いた。あくまで説らしいが。


 つまり、それが正しければ『100』までレアリティあるらしい。そんなモンをドロップするエリアに到達するまでに何年掛かるやらな。


 あれからエリアは、第三十五まで攻略が進んでいた――。


 ◆


 その夜、すっかり大きくなった屋敷へ戻り、皆の元へ戻った。どうやら、皆自由に生活しているようで、俺はフルクを探した。


「いないな」
「おや、アウルムさん。もしかして、フルクさんをお探しですかぁ~。三階の方で見ましたよー」


 豪華なドレスに身を包むフェルスに聞かされ、俺は三階を目指した。もしかして、俺の部屋か。


 自分の部屋に戻ると、ベッドの上にスカート丈の短いワンピース姿のフルクがいた。純白だから、綺麗だ。


「どうした、こんな所で」
「ずっと待っていました」

「待ってたの?」

「ええ、あれから国は大きく成長し、平和そのもの。皆もわたしも日々成長しています。それでなんですが……最近、アウルムさんが不在だとなんだか落ち着かなくて……。不安になってしまうんです。どうしてでしょう?」


 複雑そうにしているが、俺には分かる。
 ベッドに腰を掛けて――横になる。


「こうすれば、不安がなくなるよな」
「はい……」


「そ、そうそう。魔王……ルードスが噂によれば、戦意喪失しているらしい。人間側があまりに強くなってしまったからな。だから、最近襲ってこないようだな」

「それでなんですね。ここ一週間は静かです。こんな平和がずっと続けばいいのに」

「続かせるさ。だから、平和な今のうちに……フルク、まずは俺と一緒になってくれないか」

「も……もちろんです。でも、わたし、よく分かんなくて……恋とかもした事なくて……どうすればいいんですか?」


 フルクの小さな手を取って、抱き寄せた。
 それから顔をゆっくり近づけ――唇を。




 ――その一年後、俺とフルクは結婚した。




 国の平和は今でも続いている――。
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