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第60話 S級の聖剣・インペラトル

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 ボルケーノゴーレムを全て撃破。
 ついに『第三エリア』前に到達した。


「マルガ、荷物の状況は?」

「今のところ問題ありません。まだまだ所持可能ですよ~。さすが【アイテムボックス拡張】スキルです。雲泥うんでいの差ですね」


 商人職でもない魔法使いマギステルであるマルガがドロップアイテムをどんどん収納してくれていた。かなりの量を手渡したが、まだ余裕がありそうだった。


「さすが2億セルの大枚をはたいただけはある。もう元も取れそうだけどな。EXダンジョン様様だ」

「これでやっと第三エリアへ行けるんですね。では、アウルムさん、マルガさん。治癒と支援を掛けておきますね」


 フルクのグロリアスヒールやグロリアスブレッシングなど、様々な聖女の力を受ける。此処ここから先はまた未知の領域。

 どんなモンスターがいるやらな。


「準備はいいな?」


 二人に確認を取ると、静かにうなずく。
 権限を使い『第三エリア』へ突入開始。念じると、大きな扉がゆっくりと開いていく。この先が――。



 ――第三エリア――



 S級の聖剣・インペラトルが胴体をかすめた。


「――――ぐッ!!!」


 第三エリアは、空も大地も赤黒く……存在するのは巨大な十字架。そこから湧き出る人型スライム『アウグストゥス』。


 体の透き通った白いスライムだ。
 顔とかこそないが、人型を成し軽量アーマーで身をまとっていた。一丁前に人間の真似事かよ。


 ヤツ等は三~五体の陣形を組んで襲って来た。しかも、S級の聖剣持ち。やばすぎるぜ……。


「フルク、マルガ……! 後退しろッ! コイツ等の一撃は、俺の聖槍には及ばんが、かなりの火力だ……バケモンだぞ」


 少なくとも二人がダメージを受けたら、即死だ。近寄らせないよう、守らねば。



『聖槍・プリムスウィクトール!!!』



 槍を投げると、スライムを複数体も撃破した。なんだ、防御力はたいした事なさそうだな。これなら――。


「アウルムさん、アレ!!」


 フルクが何かに気づいた。
 注視していると、生き残っているスライムがS級の聖剣・インペラトルを拾い上げ、投げてきやがった。

 それだけじゃない、ドロップアイテムも!


「嘘だろ!! ドロップアイテムを投擲とうてきするんのかよッ!! ありえねえ、反則だ!!」


 昔の伝承で『ポーションなぞ使ってんじゃねぇ!』と、アイテムを使わせてくれないボスモンスターがいたらしいが、これは……『ドロップアイテムなぞ拾ってるんじゃねぇ!』と言わんばかりの攻撃だ。


 まずい、複数の聖剣とアイテムが飛んできやがる。これに対し、俺は聖槍で反撃を開始した。



「とりゃぁあああぁッ!!」



 ブンと槍を振って、風圧で飛んでくるアイテムを押し返す。だが、第二軍のアイテム投擲とうてきがあったらしく、それが目の前に――まずッ!!


 背後へ振り向き、フルクとマルガをかばう。二人を押し倒すような恰好になって済まないが、これしか方法がなかった。


「「きゃ!?」」


「ぐうッ!!」


 聖剣とアイテムが俺の背中に衝突。


 ……なんてこった。



「ア、アウルムさん、腹部が!」
「聖剣に貫かれた。でも横っ腹で助かった……引き抜くから、直ぐにヒールを頼む」

「わ、分かりました」


 剣に手を掛ける。
 乱れた息の中、俺は一気に引き抜く。

 すると、血がドバドバと出て……やべ、意識が朦朧もうろうと……。



「グロリアスヒールです!!」



「――っぶね! 死ぬところだったぜ……」


 なんとか傷が治療された。
 フルクのヒールは通常のものとは違い、さっきのような重症でも一瞬で治療できる。けど、これは参ったな。あのスライム野郎共……強い。


「主様……どうなされますか」


 撤退も視野に、といきたいところだが……もう少し見極めておきたい。

「スライムは無限に沸いてくる。あの十字架からな……つまり、あれを破壊すれば出現しなくなると思うんだが」

「あの大きな、建物のような十字架ですか。ですが、攻撃する前にまたアイテムを投げられますから……難しいかと」


 マルガの言う通り、接近が容易ではなかった。
 せめて防御してくれる人でもいれば……。


 第三エリアはここまでか。


 でも、第二エリアのボルケーノゴーレムを倒した成果は十分に出ている。今回のを売却すれば、まずは国の基盤くらいは作り上げられるだろう。
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