17 / 101
第17話 報酬は領地
しおりを挟む
「アウルムさん、これからどうします?」
第二勇者の事など気に留めないフルクは、俺にそう話を振って来た。俺もセクンドスの存在は忘れたいし、無かった事にしたいので忘却の彼方へと追いやった。
「そうだな~。新しい仲間も増えたし、今日はEXダンジョンの第二エリア攻略をしたいところだ。まだ未知の領域だし、どんなモンスターがいるやらな。それに、まだ誰も入手していない激レアアイテムもあるだろう」
「あると思います。今、モードゥスさんに頼んで出品しているアイテムだって、世界初ばかりですもん! このままもっと稼いでいきましょう」
やる気満々のフルクさん。ならば、俺の【レベル投げ】が役に立つ。相変わらずの火力を誇り、第一エリアのモンスターは、ほぼワンパンだった。
「ああ、もっと稼いで領地も手に入れよう。で、いつか国でも作るか!」
「とても面白そうですねッ。乗ります! マルガ様もきっと賛同してくれると思いますし、今からさっそくお話しにいきましょ」
フルクはとてもノリがいい。
意見が一致したし、善は急げだ。
小部屋へ行き、マルガに提案してみた。
「――領地を、ですか? なら、サフィラス伯爵を一緒に監獄送りにして下されば、その礼としてこの辺りの領地を差し上げますよ。このネムスの森も、パルウァエ村も、カリブルヌス村も全てです」
「ええッ!? いいのかよ……」
「わたくしは伯爵にメイドを奪われ、第二勇者から命を狙われる散々な目に遭わされました。ひとりぼっちになってしまった……でも、今はアウルムさんとフルク様があたたかく迎えてくれています。あなた方なら信頼できるのです」
それに、とマルガは話を続ける。
「伯爵の最終目的は、我が領地でしょう。わたくしがこうして逃げ延びた事で、彼の計画が上手くいっていない状況にあるはずです。今は何とか時間を稼げていますが……いずれは向こうも強硬手段を講じてくるかもしれません。なので、伯爵打倒の為に力を合わせて戴けませんか」
頭を下げられ、俺は少し困惑する。
そんな最中でフルクが耳打ちしてきた。
「マルガさんは嘘とかつけない人だと思います。わたしは信じていますよ。アウルムさんもマルガさんも」
そうだな。頭を下げてまで力を合わせようと言ってくれているんだ。それに領地を手に出来れば、カエレスエィス帝国に負けない国を作れるだろう。
俺だけの国を――!
「よろしく頼む」
がっちり握手を交わし、同意した。
「ありがとう、アウルムさん、フルク様」
「サフィラス伯爵は、俺としても気になる人物だ。何故なら、あの第二勇者・セクンドスを支援しているんだろう。つまり、彼の召喚の秘密も何か握っているはずだ」
そう、もともと俺が勇者だった。でも、あの第二勇者とやら召喚されたんだ。普通、そんなモンが召喚されるとは思えない。どう考えてもおかしいだろ。絶対に何か裏がある。
その秘密を暴く為にも俺は、マルガを助ける。勇者としてではない、仲間として。
「そうですね、伯爵なら確実でしょう」
「分かった。とにかく、今はEXダンジョンで稼ごう。金がなければ活動でも出来ないし、これから国を作るとなると資金も膨大だ」
さっそく出発だ……と、一歩踏み出したその時。ぐ~…と音が鳴った。だ、誰だ? とマルガを見るが違った。……という事は、フルクか。
頬を赤くしているし、間違いない。
「出発の前に腹ごしらえだな」
「わ、わたし料理しますね。ちょうど帝国で材料買っておきましたし、食糧庫にありますから。二人とも少々お待ち下さい」
――と、恥ずかしそうにフルクは簡易キッチンへ向かって行ったのであった。そうそう、フルクはお料理スキルが高いようだ。
「フルク様はお料理が出来るのですね!」
「ああ、俺も本格的なのはこれが初めてだよ。楽しみだな」
こう言ってはなんだが、聖女なのに料理が出来るとは思わなかった。マルガにメイドの趣味があるように、フルクにも趣味があったというわけだ。
腹がいっぱいになったら、EXダンジョンでSSS級アイテムを入手しまくろう。そして、その稼いだ金で高級食材をゲットして、フルクに美味いもんを作って貰おう。そういう楽しみも大事だ。
◇◆◇◆◇
一方その頃、第二勇者・セクンドスは、サフィラス伯爵の屋敷を訪ねていた。
「……話が違うではないか、サフィラス伯爵! ルードスのボコボコにされたアウルムはあのまま二度と冒険に出られず、無能勇者として歴史に名を刻むのではなかったのか!!」
「お、落ち着け、セクンドスよ。確かにそのようにルードスに注文しておいたが……まさか復活を遂げて、EXダンジョンを入手するとは思わなかった。これは不測の事態だ」
「これが落ち着いていられるか! EXダンジョンを取られただけじゃない……ギルドも崩壊した。このままでは……魔王を倒して名を広めても意味がない」
確かに、とサフィラス伯爵は顎に手を当てる。このまま手をこまねいていれば、第一勇者に何もかもを奪われてしまう――と。
「仕方あるまい。この手は使いたくはなかったが、グラティア辺境伯の領地を奪う。そうすれば、EXダンジョンも手に入るだろう!」
「なにか手があるのか、伯爵」
「――あぁ、あるとも悪魔的な方法がな。……ククク、今に見ているがいい、アウルム・キルクルス。それと何処かで隠遁しているグラティア辺境伯……! フハハハハハハ……!」
第二勇者の事など気に留めないフルクは、俺にそう話を振って来た。俺もセクンドスの存在は忘れたいし、無かった事にしたいので忘却の彼方へと追いやった。
「そうだな~。新しい仲間も増えたし、今日はEXダンジョンの第二エリア攻略をしたいところだ。まだ未知の領域だし、どんなモンスターがいるやらな。それに、まだ誰も入手していない激レアアイテムもあるだろう」
「あると思います。今、モードゥスさんに頼んで出品しているアイテムだって、世界初ばかりですもん! このままもっと稼いでいきましょう」
やる気満々のフルクさん。ならば、俺の【レベル投げ】が役に立つ。相変わらずの火力を誇り、第一エリアのモンスターは、ほぼワンパンだった。
「ああ、もっと稼いで領地も手に入れよう。で、いつか国でも作るか!」
「とても面白そうですねッ。乗ります! マルガ様もきっと賛同してくれると思いますし、今からさっそくお話しにいきましょ」
フルクはとてもノリがいい。
意見が一致したし、善は急げだ。
小部屋へ行き、マルガに提案してみた。
「――領地を、ですか? なら、サフィラス伯爵を一緒に監獄送りにして下されば、その礼としてこの辺りの領地を差し上げますよ。このネムスの森も、パルウァエ村も、カリブルヌス村も全てです」
「ええッ!? いいのかよ……」
「わたくしは伯爵にメイドを奪われ、第二勇者から命を狙われる散々な目に遭わされました。ひとりぼっちになってしまった……でも、今はアウルムさんとフルク様があたたかく迎えてくれています。あなた方なら信頼できるのです」
それに、とマルガは話を続ける。
「伯爵の最終目的は、我が領地でしょう。わたくしがこうして逃げ延びた事で、彼の計画が上手くいっていない状況にあるはずです。今は何とか時間を稼げていますが……いずれは向こうも強硬手段を講じてくるかもしれません。なので、伯爵打倒の為に力を合わせて戴けませんか」
頭を下げられ、俺は少し困惑する。
そんな最中でフルクが耳打ちしてきた。
「マルガさんは嘘とかつけない人だと思います。わたしは信じていますよ。アウルムさんもマルガさんも」
そうだな。頭を下げてまで力を合わせようと言ってくれているんだ。それに領地を手に出来れば、カエレスエィス帝国に負けない国を作れるだろう。
俺だけの国を――!
「よろしく頼む」
がっちり握手を交わし、同意した。
「ありがとう、アウルムさん、フルク様」
「サフィラス伯爵は、俺としても気になる人物だ。何故なら、あの第二勇者・セクンドスを支援しているんだろう。つまり、彼の召喚の秘密も何か握っているはずだ」
そう、もともと俺が勇者だった。でも、あの第二勇者とやら召喚されたんだ。普通、そんなモンが召喚されるとは思えない。どう考えてもおかしいだろ。絶対に何か裏がある。
その秘密を暴く為にも俺は、マルガを助ける。勇者としてではない、仲間として。
「そうですね、伯爵なら確実でしょう」
「分かった。とにかく、今はEXダンジョンで稼ごう。金がなければ活動でも出来ないし、これから国を作るとなると資金も膨大だ」
さっそく出発だ……と、一歩踏み出したその時。ぐ~…と音が鳴った。だ、誰だ? とマルガを見るが違った。……という事は、フルクか。
頬を赤くしているし、間違いない。
「出発の前に腹ごしらえだな」
「わ、わたし料理しますね。ちょうど帝国で材料買っておきましたし、食糧庫にありますから。二人とも少々お待ち下さい」
――と、恥ずかしそうにフルクは簡易キッチンへ向かって行ったのであった。そうそう、フルクはお料理スキルが高いようだ。
「フルク様はお料理が出来るのですね!」
「ああ、俺も本格的なのはこれが初めてだよ。楽しみだな」
こう言ってはなんだが、聖女なのに料理が出来るとは思わなかった。マルガにメイドの趣味があるように、フルクにも趣味があったというわけだ。
腹がいっぱいになったら、EXダンジョンでSSS級アイテムを入手しまくろう。そして、その稼いだ金で高級食材をゲットして、フルクに美味いもんを作って貰おう。そういう楽しみも大事だ。
◇◆◇◆◇
一方その頃、第二勇者・セクンドスは、サフィラス伯爵の屋敷を訪ねていた。
「……話が違うではないか、サフィラス伯爵! ルードスのボコボコにされたアウルムはあのまま二度と冒険に出られず、無能勇者として歴史に名を刻むのではなかったのか!!」
「お、落ち着け、セクンドスよ。確かにそのようにルードスに注文しておいたが……まさか復活を遂げて、EXダンジョンを入手するとは思わなかった。これは不測の事態だ」
「これが落ち着いていられるか! EXダンジョンを取られただけじゃない……ギルドも崩壊した。このままでは……魔王を倒して名を広めても意味がない」
確かに、とサフィラス伯爵は顎に手を当てる。このまま手をこまねいていれば、第一勇者に何もかもを奪われてしまう――と。
「仕方あるまい。この手は使いたくはなかったが、グラティア辺境伯の領地を奪う。そうすれば、EXダンジョンも手に入るだろう!」
「なにか手があるのか、伯爵」
「――あぁ、あるとも悪魔的な方法がな。……ククク、今に見ているがいい、アウルム・キルクルス。それと何処かで隠遁しているグラティア辺境伯……! フハハハハハハ……!」
1
お気に入りに追加
894
あなたにおすすめの小説
アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~
うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」
これしかないと思った!
自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。
奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。
得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。
直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。
このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。
そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。
アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。
助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。
隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜
桜井正宗
ファンタジー
能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。
スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。
真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。
神々の間では異世界転移がブームらしいです。
はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》
楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。
理由は『最近流行ってるから』
数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。
優しくて単純な少女の異世界冒険譚。
第2部 《精霊の紋章》
ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。
それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。
第3部 《交錯する戦場》
各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。
人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。
第4部 《新たなる神話》
戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。
連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。
それは、この世界で最も新しい神話。
大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる
遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」
「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」
S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。
村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。
しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。
とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。
金貨増殖バグが止まらないので、そのまま快適なスローライフを送ります
桜井正宗
ファンタジー
無能の落ちこぼれと認定された『ギルド職員』兼『ぷちドラゴン』使いの『ぷちテイマー』のヘンリーは、職員をクビとなり、国さえも追放されてしまう。
突然、空から女の子が降ってくると、キャッチしきれず女の子を地面へ激突させてしまう。それが聖女との出会いだった。
銀髪の自称聖女から『ギフト』を貰い、ヘンリーは、両手に持てない程の金貨を大量に手に入れた。これで一生遊んで暮らせると思いきや、金貨はどんどん増えていく。増殖が止まらない金貨。どんどん増えていってしまった。
聖女によれば“金貨増殖バグ”だという。幸い、元ギルド職員の権限でアイテムボックス量は無駄に多く持っていたので、そこへ保管しまくった。
大金持ちになったヘンリーは、とりあえず念願だった屋敷を買い……スローライフを始めていく!?
【完】転職ばかりしていたらパーティーを追放された私〜実は88種の職業の全スキル極めて勇者以上にチートな存在になっていたけど、もうどうでもいい
冬月光輝
ファンタジー
【勇者】のパーティーの一員であったルシアは職業を極めては転職を繰り返していたが、ある日、勇者から追放(クビ)を宣告される。
何もかもに疲れたルシアは適当に隠居先でも見つけようと旅に出たが、【天界】から追放された元(もと)【守護天使】の【堕天使】ラミアを【悪魔】の手から救ったことで新たな物語が始まる。
「わたくし達、追放仲間ですね」、「一生お慕いします」とラミアからの熱烈なアプローチに折れて仕方なくルシアは共に旅をすることにした。
その後、隣国の王女エリスに力を認められ、仕えるようになり、2人は数奇な運命に巻き込まれることに……。
追放コンビは不運な運命を逆転できるのか?
(完結記念に澄石アラン様からラミアのイラストを頂きましたので、表紙に使用させてもらいました)
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
異世界で穴掘ってます!
KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる