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第17話 報酬は領地
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「アウルムさん、これからどうします?」
第二勇者の事など気に留めないフルクは、俺にそう話を振って来た。俺もセクンドスの存在は忘れたいし、無かった事にしたいので忘却の彼方へと追いやった。
「そうだな~。新しい仲間も増えたし、今日はEXダンジョンの第二エリア攻略をしたいところだ。まだ未知の領域だし、どんなモンスターがいるやらな。それに、まだ誰も入手していない激レアアイテムもあるだろう」
「あると思います。今、モードゥスさんに頼んで出品しているアイテムだって、世界初ばかりですもん! このままもっと稼いでいきましょう」
やる気満々のフルクさん。ならば、俺の【レベル投げ】が役に立つ。相変わらずの火力を誇り、第一エリアのモンスターは、ほぼワンパンだった。
「ああ、もっと稼いで領地も手に入れよう。で、いつか国でも作るか!」
「とても面白そうですねッ。乗ります! マルガ様もきっと賛同してくれると思いますし、今からさっそくお話しにいきましょ」
フルクはとてもノリがいい。
意見が一致したし、善は急げだ。
小部屋へ行き、マルガに提案してみた。
「――領地を、ですか? なら、サフィラス伯爵を一緒に監獄送りにして下されば、その礼としてこの辺りの領地を差し上げますよ。このネムスの森も、パルウァエ村も、カリブルヌス村も全てです」
「ええッ!? いいのかよ……」
「わたくしは伯爵にメイドを奪われ、第二勇者から命を狙われる散々な目に遭わされました。ひとりぼっちになってしまった……でも、今はアウルムさんとフルク様があたたかく迎えてくれています。あなた方なら信頼できるのです」
それに、とマルガは話を続ける。
「伯爵の最終目的は、我が領地でしょう。わたくしがこうして逃げ延びた事で、彼の計画が上手くいっていない状況にあるはずです。今は何とか時間を稼げていますが……いずれは向こうも強硬手段を講じてくるかもしれません。なので、伯爵打倒の為に力を合わせて戴けませんか」
頭を下げられ、俺は少し困惑する。
そんな最中でフルクが耳打ちしてきた。
「マルガさんは嘘とかつけない人だと思います。わたしは信じていますよ。アウルムさんもマルガさんも」
そうだな。頭を下げてまで力を合わせようと言ってくれているんだ。それに領地を手に出来れば、カエレスエィス帝国に負けない国を作れるだろう。
俺だけの国を――!
「よろしく頼む」
がっちり握手を交わし、同意した。
「ありがとう、アウルムさん、フルク様」
「サフィラス伯爵は、俺としても気になる人物だ。何故なら、あの第二勇者・セクンドスを支援しているんだろう。つまり、彼の召喚の秘密も何か握っているはずだ」
そう、もともと俺が勇者だった。でも、あの第二勇者とやら召喚されたんだ。普通、そんなモンが召喚されるとは思えない。どう考えてもおかしいだろ。絶対に何か裏がある。
その秘密を暴く為にも俺は、マルガを助ける。勇者としてではない、仲間として。
「そうですね、伯爵なら確実でしょう」
「分かった。とにかく、今はEXダンジョンで稼ごう。金がなければ活動でも出来ないし、これから国を作るとなると資金も膨大だ」
さっそく出発だ……と、一歩踏み出したその時。ぐ~…と音が鳴った。だ、誰だ? とマルガを見るが違った。……という事は、フルクか。
頬を赤くしているし、間違いない。
「出発の前に腹ごしらえだな」
「わ、わたし料理しますね。ちょうど帝国で材料買っておきましたし、食糧庫にありますから。二人とも少々お待ち下さい」
――と、恥ずかしそうにフルクは簡易キッチンへ向かって行ったのであった。そうそう、フルクはお料理スキルが高いようだ。
「フルク様はお料理が出来るのですね!」
「ああ、俺も本格的なのはこれが初めてだよ。楽しみだな」
こう言ってはなんだが、聖女なのに料理が出来るとは思わなかった。マルガにメイドの趣味があるように、フルクにも趣味があったというわけだ。
腹がいっぱいになったら、EXダンジョンでSSS級アイテムを入手しまくろう。そして、その稼いだ金で高級食材をゲットして、フルクに美味いもんを作って貰おう。そういう楽しみも大事だ。
◇◆◇◆◇
一方その頃、第二勇者・セクンドスは、サフィラス伯爵の屋敷を訪ねていた。
「……話が違うではないか、サフィラス伯爵! ルードスのボコボコにされたアウルムはあのまま二度と冒険に出られず、無能勇者として歴史に名を刻むのではなかったのか!!」
「お、落ち着け、セクンドスよ。確かにそのようにルードスに注文しておいたが……まさか復活を遂げて、EXダンジョンを入手するとは思わなかった。これは不測の事態だ」
「これが落ち着いていられるか! EXダンジョンを取られただけじゃない……ギルドも崩壊した。このままでは……魔王を倒して名を広めても意味がない」
確かに、とサフィラス伯爵は顎に手を当てる。このまま手をこまねいていれば、第一勇者に何もかもを奪われてしまう――と。
「仕方あるまい。この手は使いたくはなかったが、グラティア辺境伯の領地を奪う。そうすれば、EXダンジョンも手に入るだろう!」
「なにか手があるのか、伯爵」
「――あぁ、あるとも悪魔的な方法がな。……ククク、今に見ているがいい、アウルム・キルクルス。それと何処かで隠遁しているグラティア辺境伯……! フハハハハハハ……!」
第二勇者の事など気に留めないフルクは、俺にそう話を振って来た。俺もセクンドスの存在は忘れたいし、無かった事にしたいので忘却の彼方へと追いやった。
「そうだな~。新しい仲間も増えたし、今日はEXダンジョンの第二エリア攻略をしたいところだ。まだ未知の領域だし、どんなモンスターがいるやらな。それに、まだ誰も入手していない激レアアイテムもあるだろう」
「あると思います。今、モードゥスさんに頼んで出品しているアイテムだって、世界初ばかりですもん! このままもっと稼いでいきましょう」
やる気満々のフルクさん。ならば、俺の【レベル投げ】が役に立つ。相変わらずの火力を誇り、第一エリアのモンスターは、ほぼワンパンだった。
「ああ、もっと稼いで領地も手に入れよう。で、いつか国でも作るか!」
「とても面白そうですねッ。乗ります! マルガ様もきっと賛同してくれると思いますし、今からさっそくお話しにいきましょ」
フルクはとてもノリがいい。
意見が一致したし、善は急げだ。
小部屋へ行き、マルガに提案してみた。
「――領地を、ですか? なら、サフィラス伯爵を一緒に監獄送りにして下されば、その礼としてこの辺りの領地を差し上げますよ。このネムスの森も、パルウァエ村も、カリブルヌス村も全てです」
「ええッ!? いいのかよ……」
「わたくしは伯爵にメイドを奪われ、第二勇者から命を狙われる散々な目に遭わされました。ひとりぼっちになってしまった……でも、今はアウルムさんとフルク様があたたかく迎えてくれています。あなた方なら信頼できるのです」
それに、とマルガは話を続ける。
「伯爵の最終目的は、我が領地でしょう。わたくしがこうして逃げ延びた事で、彼の計画が上手くいっていない状況にあるはずです。今は何とか時間を稼げていますが……いずれは向こうも強硬手段を講じてくるかもしれません。なので、伯爵打倒の為に力を合わせて戴けませんか」
頭を下げられ、俺は少し困惑する。
そんな最中でフルクが耳打ちしてきた。
「マルガさんは嘘とかつけない人だと思います。わたしは信じていますよ。アウルムさんもマルガさんも」
そうだな。頭を下げてまで力を合わせようと言ってくれているんだ。それに領地を手に出来れば、カエレスエィス帝国に負けない国を作れるだろう。
俺だけの国を――!
「よろしく頼む」
がっちり握手を交わし、同意した。
「ありがとう、アウルムさん、フルク様」
「サフィラス伯爵は、俺としても気になる人物だ。何故なら、あの第二勇者・セクンドスを支援しているんだろう。つまり、彼の召喚の秘密も何か握っているはずだ」
そう、もともと俺が勇者だった。でも、あの第二勇者とやら召喚されたんだ。普通、そんなモンが召喚されるとは思えない。どう考えてもおかしいだろ。絶対に何か裏がある。
その秘密を暴く為にも俺は、マルガを助ける。勇者としてではない、仲間として。
「そうですね、伯爵なら確実でしょう」
「分かった。とにかく、今はEXダンジョンで稼ごう。金がなければ活動でも出来ないし、これから国を作るとなると資金も膨大だ」
さっそく出発だ……と、一歩踏み出したその時。ぐ~…と音が鳴った。だ、誰だ? とマルガを見るが違った。……という事は、フルクか。
頬を赤くしているし、間違いない。
「出発の前に腹ごしらえだな」
「わ、わたし料理しますね。ちょうど帝国で材料買っておきましたし、食糧庫にありますから。二人とも少々お待ち下さい」
――と、恥ずかしそうにフルクは簡易キッチンへ向かって行ったのであった。そうそう、フルクはお料理スキルが高いようだ。
「フルク様はお料理が出来るのですね!」
「ああ、俺も本格的なのはこれが初めてだよ。楽しみだな」
こう言ってはなんだが、聖女なのに料理が出来るとは思わなかった。マルガにメイドの趣味があるように、フルクにも趣味があったというわけだ。
腹がいっぱいになったら、EXダンジョンでSSS級アイテムを入手しまくろう。そして、その稼いだ金で高級食材をゲットして、フルクに美味いもんを作って貰おう。そういう楽しみも大事だ。
◇◆◇◆◇
一方その頃、第二勇者・セクンドスは、サフィラス伯爵の屋敷を訪ねていた。
「……話が違うではないか、サフィラス伯爵! ルードスのボコボコにされたアウルムはあのまま二度と冒険に出られず、無能勇者として歴史に名を刻むのではなかったのか!!」
「お、落ち着け、セクンドスよ。確かにそのようにルードスに注文しておいたが……まさか復活を遂げて、EXダンジョンを入手するとは思わなかった。これは不測の事態だ」
「これが落ち着いていられるか! EXダンジョンを取られただけじゃない……ギルドも崩壊した。このままでは……魔王を倒して名を広めても意味がない」
確かに、とサフィラス伯爵は顎に手を当てる。このまま手をこまねいていれば、第一勇者に何もかもを奪われてしまう――と。
「仕方あるまい。この手は使いたくはなかったが、グラティア辺境伯の領地を奪う。そうすれば、EXダンジョンも手に入るだろう!」
「なにか手があるのか、伯爵」
「――あぁ、あるとも悪魔的な方法がな。……ククク、今に見ているがいい、アウルム・キルクルス。それと何処かで隠遁しているグラティア辺境伯……! フハハハハハハ……!」
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