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ポーションダンジョン

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 エドゥに詳しいことを聞いた。
 未知のダンジョンは仮称『ポーションダンジョン』と言うらしい。なんだ、そりゃ。


「ダンジョン内にポーションがたくさん落ちているんです。なので、そう仮の名をつけたそうですね」


 淡々たんたんと説明するエドゥ。そういうことね。
 しかし、ポーションが落ちているダンジョンか。確かに聞いたことがないし、未知だな、そりゃ。

 そんなところにシベリウスは迷い込んだらしい。


「エドゥさん、そこって遠いんですか?」


 スコルが質問を投げる。


「ドヴォルザーク帝国の北北東。徒歩で半日、移動手段があれば一時間程度かと」


 つまり、馬車か騎乗モンスターが必要ってわけか。だがなぁ、今は世界規模の討伐イベントが実施されていて、どこも空いていないと聞く。

 だけど、徒歩で向かうわけにもいかんな。遠すぎて足が疲れちゃうし。


「テレポートは可能か?」
「残念ですが、上級監督官シベリウス様の指示でテレポート禁止エリアです」

「こんな時に……」


 余計なことをしたな、シベリウスめ。けど、未知のダンジョンだから調査が必要だったんだろうな。
 仕方ない、徒歩で向かうか。


 ハヴァマールおよびストレルカは待機。
 俺、スコル、エドゥで向かうことにした。


 城を出て、ドヴォルザーク帝国の街中を突き進んでいく。多くの冒険者とすれ違いながら、ようやく街の外へ出た。

 こういう時は、行商に交渉すればいいのさ。

 門の前にいる、いくつかの商人に声を掛けた。しかし、断られるばかり。やはり、偽者討伐の方が需要じゅようあるようだな。


「わたしに任せてくださいっ!」
「いいのか、スコル」
「はい。たまには役に立ちたいんですっ」

 トコトコと歩いて行ってしまう、スコル。大丈夫かなぁ……心配だけど、見守るしかないな。
 スコルは、あっちこっちに聞きに回っていた

 さすが聖女というか、恐らく男の冒険者たちはスコルの美貌びぼうに見惚れ、ヘコヘコしているように見えた。いや、ありゃ確実にそうだな。
 なんかナンパしようとしているヤツもいるし。

 やがて、スコルは商人との交渉を終えて、その人と共にこちらへやってきた。


「お、スコル。その人は?」
「やりました! この男性はドルコス男爵で、現在は行商人のようです!」


 ド、ドルコス男爵って貴族ってことじゃないか。
 なんだかワケアリそうな服装ボロボロの中年男性だが……大丈夫なのだろうか。


「おぉ、新しい陛下ではありませんか!」
「あなたが馬車を出してくれるドルコス男爵?」
「はい。聖女スコル様のご要望とあらば、どこまでもお供いたします」


 どうやら彼はその昔、スコルに助けられた過去があるらしい。ほ~、そんなこともあったんだな。
 しかし、なんでこんな服装がボロいんだ?

「その、ドルコス男爵。貴族なのに貧相じゃないか?」
「……そうなのです。我が家は“没落貴族”ですので……お金がありません」

「なんだって!?」

「だからこうして、商人として働き……労働で対価を戴いて日銭を稼いでいるわけでございます」


 今の貴族は、自ら肉体労働に身を投じているものなのか……知らなかった。それとも、このドルコス男爵が特殊なのか? あまりにボロすぎて不憫ふびんに思ってしまった。


「どうしてそんな貧乏なんだよ」
「それは……。婚約していた相手に全てを奪われたからです」
「ひどいな」
「はい。悲しいですが、だまされた私も悪いのです」


 なんて人だ。あまりにも可哀想だ。なんとかしてやりたいが、今はシベリウスの捜索が最優先である。
 スコルも同じように感じ取ったのか、彼をあわれんでいた。
 少しでも足しにと『アリアーガ銅貨』をあげていた。



 男爵のボロ馬車に乗り、草原フィールドへ。
 おだやかな風が流れ、レベルの高くないモンスターがウロついている。この辺りは危険も少ないが、先へ行けば強いモンスターも出現する。気をつけていこう。

 しかし、馬車がすでに悲鳴をあげていた。ガッタガッタのボロボロで、今にも底が抜けそうな危険な香り。

 てか、馬もなんだかやる気がない。ちゃんと食べているのだろうか……。


「せめて馬には元気になってもらわないとな」


 アイテムボックスから回復ポーションを取り出す。これを馬に飲ませれば、元気になって走ってくれるだろう。
 馬車も俺の『無人島開発スキル』で新品のように修繕した。


「うぉぉ!? なんです、このスキル。凄いですね、陛下!」


 お祭り騒ぎのように喜ぶ男爵。めちゃくちゃ感謝された。……いや、別にいいんだけどさ。移動手段が欲しかったわけで、これくらいの礼はしないとね。
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