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無人島へ向かえ!!

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 シベリウスを待つこと一時間。かなり待ったが、ようやく姿を現した。

「遅かったじゃないか、シベリウ……」

 俺は立ち止まった。
 足を引きずり、こちらにゆっくりと歩いてくるシベリウスの姿が尋常じんじょうではなかったからだ。
 直ぐに駆け寄って彼の姿を視界に入れ、驚いた。


「…………す、すまねえ」


 短い言葉だけ発してシベリウスはそのまま倒れた。
 顔や身体にヒドイ傷とれ。服がズタボロに引き裂かれていた。こ、これはいったい……いや、まさか。


「クラウスにやられたのか?」
「ああ……僕としたことが油断した。クラウス議員の住むプロドスィア邸へ立ち入ると、そこにはディミトリー議員もいたんだ」

 どうやらその時、クラウス議員に任意同行を求めた瞬間に反撃にったようだった。やったのはディミトリーのようだ。
 まさか、あの男が手を出すとはな。

「それで、二人は?」
「プロドスィア邸から去り、たぶん……無人島へ向かった」

「なんだって!?」


 もう夜だぞ。こんな夜中に船で向かう気か? ドラゴンの騎乗でも厳しいと思うがな。なんにせよ、ドヴォルザーク帝国から逃亡したか。

 とにかく、シベリウスを治療せねば。
 俺はすぐにスコルを呼び、ヒールを頼んだ。


「わっ……シベリウスさん、どうしたのですか!?」

 彼の姿を見て困惑するスコル。あわてながらも、ヒールをほどこしてくれた。
 服装こそは直らないが、傷は癒えていく。


「…………ぐっ」


 しかし、シベリウスは顔をしかめていた。よく見ると服には血がにじんでいた。

「おい、出血しているじゃないか!」
「すまん、ラスティ。僕は、もうダメかもしれない……」
「馬鹿。親友のお前を死なせるわけねえだろ! 勝手にくたばるんじゃねえぞ」


 俺はスコルに指示を出し、治療ヒールを続けてもらった。くそう、ディミトリーの野郎、なんてことをしてくれた。これは立派な反逆行為はんぎゃくこういだぞ。

 このままではシベリウスの容態が危険だと判断。

 スケルツォを呼び、適切な処置をお願いした。


「これは大変です。通常のヒールでは傷口をふさぐのは難しいでしょう。私にお任せください」

 救急セットの箱を持参していたスケルツォは、その箱の中から注射を出して――いきなり、シベリウスの下半身にぶっ刺した。すると「ぎょぉっ!」と変な声で叫んでいた。不意打ちだったからビックリしたんだろうか。

「痛みなど我慢しなさい、ブルース」
「ぼ、ぼくは……シベリウスだ」

 本名を呼ばれ、訂正しようとするシベリウスだが……冗談言っとる場合か。
 更に奇妙な道具を取り出すスケルツォは、シベリウスの腹になにやら『針』らしきものを打ち込んでいた。
 あれは皮膚ひふを効率よく縫合ほうごうする道具ってことか。

『バチン!』

 と、凄い音がした。


「うああああああああ!」
「なぜ叫ぶのです。あなたの感覚は薬によって麻痺まひしているはず」

「……い、言われてみれば。しかも眠い……」

 さっきの注射の効果だろうか、シベリウスはうとうとしていた。少しすると眠った。麻酔ますいだったのか。

 その後、スケルツォの適切な治療の甲斐かいもあり、シベリウスの容体は安定した。


「お役に立てなくてすみません」

 しょんぼりするスコル。ヒールの性質上は仕方ないさ。

「いや、十分よくやってくれた。シベリウスは任せて、俺たちはクラウスとディミトリーを追う」

「分かりました。わたしもついていきます」



 直ぐにみんなを大広間に緊急招集。ディミトリー議員が上級監督官であるシベリウスに重症を負わせたことを話した。それと、これからディミトリ―とクラウスを捕まえにいくことも話した。


「そんなことがあったのですね」


 静かに口を開くエドゥは、いつでも飛べるとテレポートの準備を進めていた。いや、まだどこに行くとか考えていないんだがな。


「気が早いな、エドゥ」
「ある程度はテレパシーで“傍受ぼうじゅ”していましたので」
「おま……。まあいい、話が早くて助かる」
「行き場所は『無人島』です」

 ならば、みんなで止めにいく。
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