上 下
344 / 443

最強の転移スキル『ハイパードライブ Lv.10』

しおりを挟む
「スコル、ちょっとズルかもしれないけど『世界聖書ウルガタ』で転移スキルを使えるか試してみてくれ」

「もちろんです!」


 聖戦中は転移スキルの使用が禁止され、使えなくなるだけの話。今まで説明を受けた限りでは罰則自体もないようだし、それに俺自身が使うわけではない。
 あくまで協力してくれているスコルが使うだけ。

 これでもし、転移が可能なら直ぐに島国ラルゴへ帰還する。

 見守っているとスコルは世界聖書ウルガタを召喚して、発動した。


「おぉ、世界聖書ウルガタの魔力が増大しているのだ」
「ハヴァマール。世界聖書ウルガタなら転移が可能だと思うか?」
「うむ。あの本はただの本ではない。そもそも『無人島開発スキル』もあの世界聖書から生まれたのだ」

「え……?」


 ま、まてまて。 
 サラリと重要なことを言っていなかったか……!?

 詳しく聞こうとしたが、それよりも先に世界聖書ウルガタが反応を示した。

 神々しい光に包まれ、更に魔力が上がった。
 やがて本がペラペラとめくれはじめ、40ページ目で止まった。


 [世界聖書ウルガタ]
 [効果]
  世界に一冊しか存在しない聖書。
  これを所持する者は真の聖人となれる。
  ヒエロニムスという特殊な言語で書かれており、エルフの聖女でなければ解読できない。
  最大七つの効果を持つ。

 ①アカシックレコード Lv.10
 ②ソウルコンバージョン Lv.10
 ③スーパーノヴァ Lv.10

 ④ハイパードライブ Lv.10
  あらゆる場所へ移動可能な特殊転移スキル。
  禁止エリアでも使用可能。
  イメージした好きな場所へ転移する。ただし、イメージできる場所のみ。
  制限人数はない。
  このスキルは使用後、スキルLv.×1分のクールタイムが存在する。

 ⑤解読できていません
 ⑥解読できていません
 ⑦解読できていません


「こ、これは……!」
「おぉ、新しいスキルが追加されているな、スコル!」
「はい! いつの間にか増えていました。これなら転移可能かと思います」


 ハイパードライブ Lv.10か。
 確かに禁止エリアでも使用可能と明記されている。聖戦の禁止も関係なしに使用可能かもしれない。


「よし、試しに頼む」
「了解しました。では、少し離れてください」


 スコルの指示に従い、俺とハヴァマール、そしてストレルカは少し距離を取った。
 世界聖書ウルガタが浮き上がり、膨大な魔力によって包まれていた。こ、こりゃすごい。桁違いだぞ。

 やがて光の柱が立った。
 そこに【Ψ】の紋様が刻まれていた。
 ……あれ、これどこかで見覚えが。

 確かルドミラたちの神器にも同じようなマークがあったような。世界聖書ウルガタと何か関連があるのだろうか。

 いやそれよりも、スキルが発動して展開された。

 これは間違いなく“転移”の光。


「す、凄いのだ、兄上!」
「あ、ああ……俺もビックリだよ」


 ハヴァマールは興奮を抑えきれないのか、世界聖書ウルガタの――スコルの造り出した転移スキルを物珍しそうに観察していた。

 一方でストレルカも感心というか、見とれていた。


「なんて神秘的な光なのでしょう。この先は天国かもしれませんね」
「それは困るな。死んじゃうし」
「すみません。そうでしたよね」


 ともあれ、これで『島国ラルゴ』へ行ける可能性が高い。いや、スコルの世界聖書ウルガタなら転移できるはずだ。


「俺が先に行く」
「ラスティさん……でも」
「大丈夫だ。俺はスコルを信じているからな」
「ありがとうございます。嬉しいです……!」


 不安も心配もいらない。
 俺はただ、光の中へ飛び込んだ。

 ……その先は。
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

無限初回ログインボーナスを貰い続けて三年 ~辺境伯となり辺境領地生活~

桜井正宗
ファンタジー
 元恋人に騙され、捨てられたケイオス帝国出身の少年・アビスは絶望していた。資産を奪われ、何もかも失ったからだ。  仕方なく、冒険者を志すが道半ばで死にかける。そこで大聖女のローザと出会う。幼少の頃、彼女から『無限初回ログインボーナス』を授かっていた事実が発覚。アビスは、三年間もの間に多くのログインボーナスを受け取っていた。今まで気づかず生活を送っていたのだ。  気づけばSSS級の武具アイテムであふれかえっていた。最強となったアビスは、アイテムの受け取りを拒絶――!?

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

金貨増殖バグが止まらないので、そのまま快適なスローライフを送ります

桜井正宗
ファンタジー
 無能の落ちこぼれと認定された『ギルド職員』兼『ぷちドラゴン』使いの『ぷちテイマー』のヘンリーは、職員をクビとなり、国さえも追放されてしまう。  突然、空から女の子が降ってくると、キャッチしきれず女の子を地面へ激突させてしまう。それが聖女との出会いだった。  銀髪の自称聖女から『ギフト』を貰い、ヘンリーは、両手に持てない程の金貨を大量に手に入れた。これで一生遊んで暮らせると思いきや、金貨はどんどん増えていく。増殖が止まらない金貨。どんどん増えていってしまった。  聖女によれば“金貨増殖バグ”だという。幸い、元ギルド職員の権限でアイテムボックス量は無駄に多く持っていたので、そこへ保管しまくった。  大金持ちになったヘンリーは、とりあえず念願だった屋敷を買い……スローライフを始めていく!?

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います

登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」 「え? いいんですか?」  聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。  聖女となった者が皇太子の妻となる。  そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。  皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。  私の一番嫌いなタイプだった。  ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。  そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。  やった!   これで最悪な責務から解放された!  隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。  そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。

投獄された聖女は祈るのをやめ、自由を満喫している。

七辻ゆゆ
ファンタジー
「偽聖女リーリエ、おまえとの婚約を破棄する。衛兵、偽聖女を地下牢に入れよ!」  リーリエは喜んだ。 「じゆ……、じゆう……自由だわ……!」  もう教会で一日中祈り続けなくてもいいのだ。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う

たくみ
ファンタジー
 圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。  アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。  ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?                        それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。  自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。  このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。  それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。 ※小説家になろうさんで投稿始めました

宮廷から追放された聖女の回復魔法は最強でした。後から戻って来いと言われても今更遅いです

ダイナイ
ファンタジー
「お前が聖女だな、お前はいらないからクビだ」 宮廷に派遣されていた聖女メアリーは、お金の無駄だお前の代わりはいくらでもいるから、と宮廷を追放されてしまった。 聖国から王国に派遣されていた聖女は、この先どうしようか迷ってしまう。とりあえず、冒険者が集まる都市に行って仕事をしようと考えた。 しかし聖女は自分の回復魔法が異常であることを知らなかった。 冒険者都市に行った聖女は、自分の回復魔法が周囲に知られて大変なことになってしまう。

処理中です...