上 下
319 / 443

アカシックレコード Lv.10

しおりを挟む
 マルクスの船が帰ったあと、エドゥが俺の服を引っ張ってきた。

「……ラスティ様」
「なんだい、エドゥ。お腹でも空いたのかい」
「いえ。その、不吉な予感がするのです」

 大賢者であるエドゥの予見だ。
 間違いはないはず。
 きちんと聞いてやるか。

「話してみろ」
「はい。自分の……女の勘になりますが」
「ふむ」
「この島に災いが降りかかる可能性があります。情報を確定させるのなら、世界聖書を使う方がよろしいかと」

「災いねぇ。てか、世界聖書で分かるものなのか?」

「はい。世界聖書は、過去・現在・未来を読み取ることが出来るのです」


 ああ、そういえば以前に能力の開示があった。
 改めて見てみよう。
 俺はスコルを呼び、聖書の能力を確認した。


 [世界聖書ウルガタ]
 [効果]
  世界に一冊しか存在しない聖書。
  これを所持する者は真の聖人となれる。
  ヒエロニムスという特殊な言語で書かれており、エルフの聖女でなければ解読できない。
  最大七つの効果を持つ。

  ①アカシックレコード Lv.10
   歴史を保存したり読み取る力。
   世界聖書の基本的スキル。
   このページがなければ世界聖書は使用できない。

  ②ソウルコンバージョン Lv.10
   体力・魔力を吸収、変換、供給可能。

  ③スーパーノヴァ Lv.10
   膨大な魔力を消費する。
   街レベルで破壊的な爆発を起こす。

   無属性ダメージ:100000%

   このスキルを使用後、反動でしばらく動けなくなる。

  ④解読できていません
  ⑤解読できていません
  ⑥解読できていません
  ⑦解読できていません


 改めて確認しても、凄まじい内容だ。

「あ、あの……ラスティさん、なぜ聖書を」
「スコル、未来を視れないかな。アカシックレコード Lv.10を使ってさ」
「可能ですが、物凄い魔力を消費するので……わたし、しばらく動けなくなります」

 そうだった。世界聖書は魔力バカ食いの高燃費らしい。ひとつのスキルを使うだけで、本人がダウンするという。

 だから、無理に使うことはなかった。

「大丈夫。俺がスコルを守るから」
「それなら安心ですっ! で、では……スキルを発動しますね」


 みんなに下がってもらった。

 スコルは世界聖書ウルガタに魔力を込め、ページを開く。本は宙に浮き、ペラペラとめくれていく。
 とあるページで止まった。『アカシックレコード Lv.10』だ。

 やがて、スコルの中へ膨大な情報が与えらえていくような光が見えた。

 な、なんて神々しい黄金の光。
 まぶしくて直視できない。

 これがアカシックレコード。あらゆる時間に干渉し、読み取る力なのか。

 しかも、これはエルフの聖女でなければ読み取れない。ヒエロニムスという特殊言語が使われている。
 そんな言語たちが周囲に出現して、より神秘を増した。


「スコル、大丈夫か?」
「今、終わりました」
「なにか分かった?」

 確認をすると、スコルは青ざめていた。
 なんだ……様子がおかしいぞ。


「……はい。今から日が沈む前に……島国ラルゴの近くに……太陽が降ってきました」

「え……? 太陽だって……?」


 その言葉の意味が理解できなかった。なんだ、太陽って。……いや、あの空にある太陽だよな。それが降ってくるって、只事じゃないぞ。

 焦っていると、テオドールが興味を示した。


「なるほど。古代魔導兵器の可能性があるな」
「テオドール、知っているのか」

「ラスティ、君はちょっと過去を勉強した方がいいぞ。……ま、それよりだ。古代魔導兵器は、魔王ドヴォルザークが開発したという、最強兵器。島を消滅させるほどの威力がある。ほら、その元勇者が強すぎたからね」


 ジロっとルドミラを見るテオドール。彼女は逆にテオドールを睨みつけていた。


「失礼ですね、テオドール。私は確かに勇者でした。魔王を倒すために立ち上がっただけです……!」

 ぷんぷんと怒るルドミラ。なるほど、過去の戦いか。けど、島を消滅させるって、どんな威力だよ。俺の防衛兵器の魔導レーザーでも、そこまでの威力はない。

 太陽が降ってくる……ヤバすぎるな。


「ルドミラ、その太陽を見た事があるんだな?」
「ええ、一度だけです。それはオラトリオ大陸に落とされたのです」
「オラトリオ大陸だって? エルフの国がある場所じゃないか」

「ええ、まあ。当時はボロディンを拠点にしていたんです」
「そうだったのか」
「テオドールがハーフエルフであり、彼の実家があったので」


 そういえばそうだった!
 完全に忘れていたよ。


「ちなみに、私はグラズノフ共和国出身なんだがね。父上が人間でね」


 そういうことか。
 昔の戦いでも古代魔導兵器が使われたんだな。それが今も使われようとしているんだ。いったい、誰が……? なんの為に……?

 ……まさか帝国、なのか。
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

無限初回ログインボーナスを貰い続けて三年 ~辺境伯となり辺境領地生活~

桜井正宗
ファンタジー
 元恋人に騙され、捨てられたケイオス帝国出身の少年・アビスは絶望していた。資産を奪われ、何もかも失ったからだ。  仕方なく、冒険者を志すが道半ばで死にかける。そこで大聖女のローザと出会う。幼少の頃、彼女から『無限初回ログインボーナス』を授かっていた事実が発覚。アビスは、三年間もの間に多くのログインボーナスを受け取っていた。今まで気づかず生活を送っていたのだ。  気づけばSSS級の武具アイテムであふれかえっていた。最強となったアビスは、アイテムの受け取りを拒絶――!?

金貨増殖バグが止まらないので、そのまま快適なスローライフを送ります

桜井正宗
ファンタジー
 無能の落ちこぼれと認定された『ギルド職員』兼『ぷちドラゴン』使いの『ぷちテイマー』のヘンリーは、職員をクビとなり、国さえも追放されてしまう。  突然、空から女の子が降ってくると、キャッチしきれず女の子を地面へ激突させてしまう。それが聖女との出会いだった。  銀髪の自称聖女から『ギフト』を貰い、ヘンリーは、両手に持てない程の金貨を大量に手に入れた。これで一生遊んで暮らせると思いきや、金貨はどんどん増えていく。増殖が止まらない金貨。どんどん増えていってしまった。  聖女によれば“金貨増殖バグ”だという。幸い、元ギルド職員の権限でアイテムボックス量は無駄に多く持っていたので、そこへ保管しまくった。  大金持ちになったヘンリーは、とりあえず念願だった屋敷を買い……スローライフを始めていく!?

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います

登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」 「え? いいんですか?」  聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。  聖女となった者が皇太子の妻となる。  そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。  皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。  私の一番嫌いなタイプだった。  ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。  そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。  やった!   これで最悪な責務から解放された!  隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。  そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

【完結】義姉上が悪役令嬢だと!?ふざけるな!姉を貶めたお前達を絶対に許さない!!

つくも茄子
ファンタジー
義姉は王家とこの国に殺された。 冤罪に末に毒杯だ。公爵令嬢である義姉上に対してこの仕打ち。笑顔の王太子夫妻が憎い。嘘の供述をした連中を許さない。我が子可愛さに隠蔽した国王。実の娘を信じなかった義父。 全ての復讐を終えたミゲルは義姉の墓前で報告をした直後に世界が歪む。目を覚ますとそこには亡くなった義姉の姿があった。過去に巻き戻った事を知ったミゲルは今度こそ義姉を守るために行動する。 巻き戻った世界は同じようで違う。その違いは吉とでるか凶とでるか……。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

宮廷から追放された聖女の回復魔法は最強でした。後から戻って来いと言われても今更遅いです

ダイナイ
ファンタジー
「お前が聖女だな、お前はいらないからクビだ」 宮廷に派遣されていた聖女メアリーは、お金の無駄だお前の代わりはいくらでもいるから、と宮廷を追放されてしまった。 聖国から王国に派遣されていた聖女は、この先どうしようか迷ってしまう。とりあえず、冒険者が集まる都市に行って仕事をしようと考えた。 しかし聖女は自分の回復魔法が異常であることを知らなかった。 冒険者都市に行った聖女は、自分の回復魔法が周囲に知られて大変なことになってしまう。

投獄された聖女は祈るのをやめ、自由を満喫している。

七辻ゆゆ
ファンタジー
「偽聖女リーリエ、おまえとの婚約を破棄する。衛兵、偽聖女を地下牢に入れよ!」  リーリエは喜んだ。 「じゆ……、じゆう……自由だわ……!」  もう教会で一日中祈り続けなくてもいいのだ。

処理中です...