317 / 434
帝国乗っ取り計画
しおりを挟む
なんにせよ、共和政ドヴォルザークの復活なんて……元老院が得しかしない。
俺の島国ラルゴを認めない元老院議長マルクス・ヴァンデルハート。コイツが権力を持ってしまえば、俺の島に攻め込んでくる可能性すらある。
マズイな。
仕方ない。
不本意ながら、俺は決断を下した。
「マルクス……ラルゴはたった今から、聖戦に参加する」
「……!!」
俺の言葉に、全員が驚愕していた。
騒然となり、叫ぶ者すらいた。
「ええッ!? 兄上、本当にいいのか!?」
「落ち着けハヴァマール。俺だって悩みに悩んだ。けどな、どちらにせよ……マルクスは待っちゃくれない。ルサルカさんを利用する気だし、このままにはしておけないだろ」
「た、確かに……しかし」
「いいんだ。住民を巻き込んだこと、これは俺の責任。だから、上に立つ者として、俺が聖戦に参加する」
そう宣言すると、マルクスは意外そうに――けれども、ニヤリと笑った。コイツ……まさか、最初からそのつもりで。
「よくぞ言ってくれた、ラスティ。これでラルゴも無関係とはいかなくなったわけだ」
「そうだな。みんなにも参加する権利がある」
「ルサルカを守ったつもりだろうが、しかし安心しないことだ」
「分かっている。戦いが待っているんだろ」
「もちろんだ。我々は共和政ドヴォルザークの復活を望んでいる。だが、皇帝になれば、それもまた同義。この私も参加するということを忘れるなよ」
背を向けるマルクス。
どうやら船に戻るらしい。
「帰るのか」
「聖戦への参加を聞ければ十分。グランツ、お前も来い」
マルクスは、息子のグランツを呼ぶ。
だが、彼は拒んだ。
「ふざけんじゃねえ、親父。俺は帰らねぇよ」
「なにを言っている。さっさと戻るぞ」
「まだこの島を理解していない」
「言っている意味が分からんな」
「親父には分からんさ」
あくまでグランツは、ラルゴに留まるらしい。なぜ、そこまでこだわるのやら。俺でも理解し難い状況だった。
けれど、止める気もなかった。
ラルゴは自由だからだ。
「……まあいい。グランツ、お前は勝手にしろ」
「あぁ、勝手にする」
意外にもマルクスは、グランツの滞在を許して船へ戻っていく。
ルサルカと母親は残していくようだ。それなら都合がいい。二人は島に置く。その方が安全だ。
やがて、マルクスの船は出航。
ラルゴから離れていった。
……なんだか潔いというか、聞き分けが良すぎる気がするが……島国に危害を加えないのなら戦争はない。
聖戦で決着をつける、ということか。
「あの、ラスティさん」
心配そうに話しかけてくるスコル。俺は彼女の手を取った。
「安心してくれ、スコル。俺は負けないよ」
「でも……皇帝になるかもしれないって……」
「そうだな。でも、帝国を支配させるわけにもいかない。この島国の平和が脅かされるかもしれないから」
マルクスは本気で帝国を乗っ取る気だろう。そうはさせない。
もしもヤツが頂点に立てば、周辺国に危害が及ぶだけでなく、この島国すらも侵攻の対象になりかねない。領土拡大の為にな。
ともかく、今はルサルカさんだ。
「ルサルカさん、これで良かったかな」
「……はい。ありがとうございます、ラスティ様! おかげでお母様と再会できました」
「君は静かに暮らすといい。聖戦のことは俺に任せて」
「すみません」
申し訳なさそうにするルサルカさん。母親も同様に感謝してきた。
「あの、娘をありがとうございます」
「いや、構わないよ。ぜひ、二人で暮らしてくれ」
「本当になにからなにまで……」
二人は喜んでいた。
少なくとも、この選択に間違いはなかった。
しかし、ルドミラは妙な顔をしていた。なにか納得できないようで、俺に耳打ちしてきた。
「ラスティくん、どうも腑に落ちないのです」
「なにが?」
「あの母親を名乗る方です」
「ふむ……話してみろ」
「彼女は、確かにドワーフです。ですが、こんな都合よく母親が現れるでしょうか。本当に隠し子なんているのかどうか」
ルドミラの言っていることはもっともだ。そもそも、マルクスの話は本当なのだろうか。しばらく様子を見る必要がありそうだな。
俺の島国ラルゴを認めない元老院議長マルクス・ヴァンデルハート。コイツが権力を持ってしまえば、俺の島に攻め込んでくる可能性すらある。
マズイな。
仕方ない。
不本意ながら、俺は決断を下した。
「マルクス……ラルゴはたった今から、聖戦に参加する」
「……!!」
俺の言葉に、全員が驚愕していた。
騒然となり、叫ぶ者すらいた。
「ええッ!? 兄上、本当にいいのか!?」
「落ち着けハヴァマール。俺だって悩みに悩んだ。けどな、どちらにせよ……マルクスは待っちゃくれない。ルサルカさんを利用する気だし、このままにはしておけないだろ」
「た、確かに……しかし」
「いいんだ。住民を巻き込んだこと、これは俺の責任。だから、上に立つ者として、俺が聖戦に参加する」
そう宣言すると、マルクスは意外そうに――けれども、ニヤリと笑った。コイツ……まさか、最初からそのつもりで。
「よくぞ言ってくれた、ラスティ。これでラルゴも無関係とはいかなくなったわけだ」
「そうだな。みんなにも参加する権利がある」
「ルサルカを守ったつもりだろうが、しかし安心しないことだ」
「分かっている。戦いが待っているんだろ」
「もちろんだ。我々は共和政ドヴォルザークの復活を望んでいる。だが、皇帝になれば、それもまた同義。この私も参加するということを忘れるなよ」
背を向けるマルクス。
どうやら船に戻るらしい。
「帰るのか」
「聖戦への参加を聞ければ十分。グランツ、お前も来い」
マルクスは、息子のグランツを呼ぶ。
だが、彼は拒んだ。
「ふざけんじゃねえ、親父。俺は帰らねぇよ」
「なにを言っている。さっさと戻るぞ」
「まだこの島を理解していない」
「言っている意味が分からんな」
「親父には分からんさ」
あくまでグランツは、ラルゴに留まるらしい。なぜ、そこまでこだわるのやら。俺でも理解し難い状況だった。
けれど、止める気もなかった。
ラルゴは自由だからだ。
「……まあいい。グランツ、お前は勝手にしろ」
「あぁ、勝手にする」
意外にもマルクスは、グランツの滞在を許して船へ戻っていく。
ルサルカと母親は残していくようだ。それなら都合がいい。二人は島に置く。その方が安全だ。
やがて、マルクスの船は出航。
ラルゴから離れていった。
……なんだか潔いというか、聞き分けが良すぎる気がするが……島国に危害を加えないのなら戦争はない。
聖戦で決着をつける、ということか。
「あの、ラスティさん」
心配そうに話しかけてくるスコル。俺は彼女の手を取った。
「安心してくれ、スコル。俺は負けないよ」
「でも……皇帝になるかもしれないって……」
「そうだな。でも、帝国を支配させるわけにもいかない。この島国の平和が脅かされるかもしれないから」
マルクスは本気で帝国を乗っ取る気だろう。そうはさせない。
もしもヤツが頂点に立てば、周辺国に危害が及ぶだけでなく、この島国すらも侵攻の対象になりかねない。領土拡大の為にな。
ともかく、今はルサルカさんだ。
「ルサルカさん、これで良かったかな」
「……はい。ありがとうございます、ラスティ様! おかげでお母様と再会できました」
「君は静かに暮らすといい。聖戦のことは俺に任せて」
「すみません」
申し訳なさそうにするルサルカさん。母親も同様に感謝してきた。
「あの、娘をありがとうございます」
「いや、構わないよ。ぜひ、二人で暮らしてくれ」
「本当になにからなにまで……」
二人は喜んでいた。
少なくとも、この選択に間違いはなかった。
しかし、ルドミラは妙な顔をしていた。なにか納得できないようで、俺に耳打ちしてきた。
「ラスティくん、どうも腑に落ちないのです」
「なにが?」
「あの母親を名乗る方です」
「ふむ……話してみろ」
「彼女は、確かにドワーフです。ですが、こんな都合よく母親が現れるでしょうか。本当に隠し子なんているのかどうか」
ルドミラの言っていることはもっともだ。そもそも、マルクスの話は本当なのだろうか。しばらく様子を見る必要がありそうだな。
0
お気に入りに追加
493
あなたにおすすめの小説
無限初回ログインボーナスを貰い続けて三年 ~辺境伯となり辺境領地生活~
桜井正宗
ファンタジー
元恋人に騙され、捨てられたケイオス帝国出身の少年・アビスは絶望していた。資産を奪われ、何もかも失ったからだ。
仕方なく、冒険者を志すが道半ばで死にかける。そこで大聖女のローザと出会う。幼少の頃、彼女から『無限初回ログインボーナス』を授かっていた事実が発覚。アビスは、三年間もの間に多くのログインボーナスを受け取っていた。今まで気づかず生活を送っていたのだ。
気づけばSSS級の武具アイテムであふれかえっていた。最強となったアビスは、アイテムの受け取りを拒絶――!?
元勇者は魔力無限の闇属性使い ~世界の中心に理想郷を作り上げて無双します~
桜井正宗
ファンタジー
魔王を倒した(和解)した元勇者・ユメは、平和になった異世界を満喫していた。しかしある日、風の帝王に呼び出されるといきなり『追放』を言い渡された。絶望したユメは、魔法使い、聖女、超初心者の仲間と共に、理想郷を作ることを決意。
帝国に負けない【防衛値】を極めることにした。
信頼できる仲間と共に守備を固めていれば、どんなモンスターに襲われてもビクともしないほどに国は盤石となった。
そうしてある日、今度は魔神が復活。各地で暴れまわり、その魔の手は帝国にも襲い掛かった。すると、帝王から帝国防衛に戻れと言われた。だが、もう遅い。
すでに理想郷を築き上げたユメは、自分の国を守ることだけに全力を尽くしていく。
チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?
桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」
その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。
影響するステータスは『運』。
聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。
第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。
すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。
より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!
真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。
【簡単な流れ】
勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ
【原題】
『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』
金貨増殖バグが止まらないので、そのまま快適なスローライフを送ります
桜井正宗
ファンタジー
無能の落ちこぼれと認定された『ギルド職員』兼『ぷちドラゴン』使いの『ぷちテイマー』のヘンリーは、職員をクビとなり、国さえも追放されてしまう。
突然、空から女の子が降ってくると、キャッチしきれず女の子を地面へ激突させてしまう。それが聖女との出会いだった。
銀髪の自称聖女から『ギフト』を貰い、ヘンリーは、両手に持てない程の金貨を大量に手に入れた。これで一生遊んで暮らせると思いきや、金貨はどんどん増えていく。増殖が止まらない金貨。どんどん増えていってしまった。
聖女によれば“金貨増殖バグ”だという。幸い、元ギルド職員の権限でアイテムボックス量は無駄に多く持っていたので、そこへ保管しまくった。
大金持ちになったヘンリーは、とりあえず念願だった屋敷を買い……スローライフを始めていく!?
S級パーティを追放された無能扱いの魔法戦士は気ままにギルド職員としてスローライフを送る
神谷ミコト
ファンタジー
【祝!4/6HOTランキング2位獲得】
元貴族の魔法剣士カイン=ポーンは、「誰よりも強くなる。」その決意から最上階と言われる100Fを目指していた。
ついにパーティ「イグニスの槍」は全人未達の90階に迫ろうとしていたが、
理不尽なパーティ追放を機に、思いがけずギルドの職員としての生活を送ることに。
今までのS級パーティとして牽引していた経験を活かし、ギルド業務。ダンジョン攻略。新人育成。そして、学園の臨時講師までそつなくこなす。
様々な経験を糧にカインはどう成長するのか。彼にとっての最強とはなんなのか。
カインが無自覚にモテながら冒険者ギルド職員としてスローライフを送るである。
ハーレム要素多め。
※隔日更新予定です。10話前後での完結予定で構成していましたが、多くの方に見られているため10話以降も製作中です。
よければ、良いね。評価、コメントお願いします。励みになりますorz
他メディアでも掲載中。他サイトにて開始一週間でジャンル別ランキング15位。HOTランキング4位達成。応援ありがとうございます。
たくさんの誤字脱字報告ありがとうございます。すべて適応させていただきます。
物語を楽しむ邪魔をしてしまい申し訳ないですorz
今後とも応援よろしくお願い致します。
ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
平明神
ファンタジー
ユーゴ・タカトー。
それは、女神の「推し」になった男。
見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。
彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。
彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。
その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!
女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!
さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?
英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───
なんでもありの異世界アベンジャーズ!
女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕!
※毎週、月、水、金曜日更新
※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。
※追放要素、ざまあ要素は第二章からです。
大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる
遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」
「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」
S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。
村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。
しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。
とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。
外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~
そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」
「何てことなの……」
「全く期待はずれだ」
私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。
このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。
そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。
だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。
そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。
そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど?
私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。
私は最高の仲間と最強を目指すから。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる