上 下
200 / 443

グラズノフ共和国の姫騎士

しおりを挟む
 ボスモンスターを倒してからは平穏が訪れた。特にトラブルに見舞われることなく、グラズノフ共和国へ辿り着いた。

 見えてくる広々とした港。
 多くの漁船や商船で埋め尽くされ、以前よりも活気があった。明るく賑やかで共和国らしい空気感だ。

 空いている桟橋に着け、ついに共和国の大地に降り立った――のだが。

「そこの少年、外国の商船は入国許可証と入国料を支払っていただきます。まずは許可証を提示してください」

 大人びた女性にそう言われ、俺は焦った。……まてまて、入国許可証だって? 以前はそんなのいらなかったぞ。でも、あれはブレアがいたからかな。

 しかも、入国料まで払わないといけないのかよ。困惑しているとストレルカが詳細を教えてくれた。

「ラスティ様、近くの方に聞いたんです。どうやら、外国の商船は別の港で入国審査をしないといけないようです。すみません、わたくしの船が該当してしまって」

「いや、ストレルカのせいではないよ。う~ん、仕方ない……許可証を取りにいくかね」
「それが……申請には“一ヶ月”も掛かるそうです」

 い、一ヶ月!?

 そんなに待てるかっ!
 ここは事情を話して通してもらうか。

 俺は改めて女性の方へ向き直り、事情を説明した。


「俺は『島国ラルゴ』から来たラスティ。このことを『ブレア姫』に伝えて欲しい」
「……はい?」

 女性は、何言ってんだコイツみたいな目で俺を見てきた。なんでそんな可哀想な子を見るみたいな目で見てくるんだ。

 しかも、周囲のおっさん達も大笑い。


「ガハハハハ!」「おいおい、ブレア姫だってさ」「会えるわけねってーの」「ガキを相手にしているほど姫様は暇じゃねえよ」「てか、島国ってどこだよ」「こりゃ、強制退去だな」


 などと見下してきていたが――事態は一変。大通りから、見覚えのある人物が現れた。あの赤い髪、堂々とした顔立ち、立ち振る舞いは間違いない。


「よう、ブレア」
「これはこれでは、港が騒がしいかと思えばラスティではないか」


 ニヤッと笑うブレアは、前と変わらず元気そうだ。ガッチリ握手を交わすと、周囲は騒然となった。


「え……ウソだろ」「ひ、姫様があんな少年とぉ!?」「あの凛々しく気高い姫様が……どうなっているんだ!!」「ありえね、ありえねえ!!」「そんな馬鹿な」「な、何者なんだ、あの少年」


 そんなに驚かれるとはな。
 過去にブレアと協力関係になっておいて良かったぜ。


「ブレア、君に話があるんだ。けどさ、入国許可証と入国料を求められていて困っているんだ」
「ふむ、では昔のよしみだ。免除しよう」


「「「「「えええええええええッ!!!!!」」」」」


 また周囲の男達が叫んでいた。
 コイツ等いちいち反応が面白いな。

 けど、それはスコルたちも一緒だった。


「さすがラスティさん!」と目をキラキラ輝かせるスコル。その隣でハヴァマールも「兄上は顔が広いからな。元第三皇子だし」と何度も頷く。更にエドゥは「これは驚きました。やっぱりラスティ様についてきて良かったです」と尊敬の眼差しを向けられた。

 ストレルカは目がハートになっていた。そう褒められると嬉しいな。


 なんとか入国許可証も入国料も免除になり、俺たちは正式にグラズノフ共和国へ入国できた。


 * * *


 ブレアは俺たちが来ることを予測していたようだ。

「世界情勢は把握している。神聖王国ガブリエルが進軍し、ドヴォルザーク帝国と戦争状態であるとな」
「このままだと帝国崩壊の危機だ。ニールセンが真の皇帝になれば、次は俺の国か……あるいは共和国だろう。アイツは“支配王”だからな」

「そうらしいな。このままではグラズノフ共和国もいずれ……。だから来たんだろう、ラスティ」

「そうだ、協力関係を改めて確認しに来た。それと交渉もある」
「なるほど。詳しくは城で聞こう。将軍である父上にも会わせたいし」

 大通りは坂道になっていて、丘の上に大きな城があった。あれは『城塞』だな。いくつもの大砲が備え付けられており、厳重だ。

 まずは話からだな。
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

無限初回ログインボーナスを貰い続けて三年 ~辺境伯となり辺境領地生活~

桜井正宗
ファンタジー
 元恋人に騙され、捨てられたケイオス帝国出身の少年・アビスは絶望していた。資産を奪われ、何もかも失ったからだ。  仕方なく、冒険者を志すが道半ばで死にかける。そこで大聖女のローザと出会う。幼少の頃、彼女から『無限初回ログインボーナス』を授かっていた事実が発覚。アビスは、三年間もの間に多くのログインボーナスを受け取っていた。今まで気づかず生活を送っていたのだ。  気づけばSSS級の武具アイテムであふれかえっていた。最強となったアビスは、アイテムの受け取りを拒絶――!?

金貨増殖バグが止まらないので、そのまま快適なスローライフを送ります

桜井正宗
ファンタジー
 無能の落ちこぼれと認定された『ギルド職員』兼『ぷちドラゴン』使いの『ぷちテイマー』のヘンリーは、職員をクビとなり、国さえも追放されてしまう。  突然、空から女の子が降ってくると、キャッチしきれず女の子を地面へ激突させてしまう。それが聖女との出会いだった。  銀髪の自称聖女から『ギフト』を貰い、ヘンリーは、両手に持てない程の金貨を大量に手に入れた。これで一生遊んで暮らせると思いきや、金貨はどんどん増えていく。増殖が止まらない金貨。どんどん増えていってしまった。  聖女によれば“金貨増殖バグ”だという。幸い、元ギルド職員の権限でアイテムボックス量は無駄に多く持っていたので、そこへ保管しまくった。  大金持ちになったヘンリーは、とりあえず念願だった屋敷を買い……スローライフを始めていく!?

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います

登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」 「え? いいんですか?」  聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。  聖女となった者が皇太子の妻となる。  そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。  皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。  私の一番嫌いなタイプだった。  ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。  そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。  やった!   これで最悪な責務から解放された!  隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。  そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。

宮廷から追放された聖女の回復魔法は最強でした。後から戻って来いと言われても今更遅いです

ダイナイ
ファンタジー
「お前が聖女だな、お前はいらないからクビだ」 宮廷に派遣されていた聖女メアリーは、お金の無駄だお前の代わりはいくらでもいるから、と宮廷を追放されてしまった。 聖国から王国に派遣されていた聖女は、この先どうしようか迷ってしまう。とりあえず、冒険者が集まる都市に行って仕事をしようと考えた。 しかし聖女は自分の回復魔法が異常であることを知らなかった。 冒険者都市に行った聖女は、自分の回復魔法が周囲に知られて大変なことになってしまう。

投獄された聖女は祈るのをやめ、自由を満喫している。

七辻ゆゆ
ファンタジー
「偽聖女リーリエ、おまえとの婚約を破棄する。衛兵、偽聖女を地下牢に入れよ!」  リーリエは喜んだ。 「じゆ……、じゆう……自由だわ……!」  もう教会で一日中祈り続けなくてもいいのだ。

【完結】義姉上が悪役令嬢だと!?ふざけるな!姉を貶めたお前達を絶対に許さない!!

つくも茄子
ファンタジー
義姉は王家とこの国に殺された。 冤罪に末に毒杯だ。公爵令嬢である義姉上に対してこの仕打ち。笑顔の王太子夫妻が憎い。嘘の供述をした連中を許さない。我が子可愛さに隠蔽した国王。実の娘を信じなかった義父。 全ての復讐を終えたミゲルは義姉の墓前で報告をした直後に世界が歪む。目を覚ますとそこには亡くなった義姉の姿があった。過去に巻き戻った事を知ったミゲルは今度こそ義姉を守るために行動する。 巻き戻った世界は同じようで違う。その違いは吉とでるか凶とでるか……。

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う

たくみ
ファンタジー
 圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。  アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。  ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?                        それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。  自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。  このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。  それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。 ※小説家になろうさんで投稿始めました

処理中です...